35 決意を新たにする僕
タンザ(タンザライト):主人公。霊能者という精神領域の魔術に長けた珍しい魔術師。
ルルス:フェルパー(猫獣人)の女盗賊。
エリカ:攻撃呪文を得意とする魔術師の少女。
デメトリオ:ムーク族の中年錬金術師。
リアム:君主の少年騎士。
レイラ:人間の女性。職業はヴァルキリー。
カルロ:ラウルフ(犬獣人)のロード。大手クラン<モーニングスター>のクラン長。
インケンを倒したタンザ達はその奥のエリアも調べた。
邪教団の扉の向こうには部屋が3つあり、最初が戦いの舞台になった神殿。そこを抜けると短い廊下、そして部屋が2つ。
片方は教団員達の宿舎で、沢山のベッドの周りに着替えが散らかっていた。
そしてもう片方は倉庫――様々なアイテムが棚に並べられていたのだ。
「ある意味、一番手前が神殿というのは理由あっての事だったのね」
倉庫の中で納得する女魔術師のエリカ。冒険者達が侵入してきた時、まず教団総出で迎え撃つようになっていたのである。
タンザとムーク錬金術師のデメトリオはアイテムを片っ端から鑑定した。
その側で少年ロードのリアムが疑問を抱く。
「これ、ダンジョンで集めたのかな?」
「ふむふむ。自分達が装備できない物をここに置いてあるみたいですな」
そう言いながらデメトリオはアイテムの効果を説明していく。
それを聞いてエリカが白い水晶の杖を手にした。
「これ、もーらい」
【オーロラの杖】魔術師系統の職業が装備可能。氷属性の魔法の威力を増幅する。
「では私はこれをもらいますぞ」
デメトリオが選んだのは鞄だった。
【マジックバッグ】中に亜空間が広がっており、沢山の物を収納できる。
「私にも何か無いの~?」
物欲しそうなフェルパーの女盗賊・ルルスにタンザが短刀を渡す。
「盗賊にはこれかな」
【甲苦無】敏捷性の増す魔力を秘めた短刀。
「武器や鎧が何個か有るわね。リアム、このさいドバーッとパワーアップしちゃいなさい」
棚にある武具を見てエリカがリアムへ勧める。ロードは戦士系の上級職であり、重量のある強力な武具を使う事にも長けているのだ。
しかし……
一通り調べてみて、その全てをリアムは選ばなかった。
「まさか丁度いい物が無いとは……」
呻くデメトリオ。
実際に使う場合には装備する者の筋力も重要になる。リアムの筋力は戦士系職業としては最低線ギリギリに近く、倉庫に置いてあったどの武具も、自在に扱うには重すぎた。
しかしリアムは気を落としてはいなかった。
その手には右手用の手甲がある。それはインケンの装備していた物で、神聖魔法の技量を――神の聖邪を問わず――底上げしてくれる効果が宿っていたのだ。
上位の即死魔法を切り札としていたインケンだったが、そんな魔法が使えるのもアイテムで己の能力にゲタを履かせていたからなのだ。
手の甲にアンクの彫られた手甲を、リアムは右手に装備する。
「僕もこれなら使えます。使える神聖魔法のレベルが上がるという事は、それだけクランの皆さんのお役に立てる筈です」
「そう言えばタンザ殿は何を?」
デメトリオが問うと、タンザは一着の服を見せた。
「ローブ?」
エリカが訊くとタンザは頷く。
「魔法で強化された防具だけど……超能力系魔法を使える職業用だ」
「そんなん霊能者しかいないじゃん」
ルルスの言い分にタンザはくすりと笑う。
「そうでもないけど<明けの明星>にいるのは僕だけだし、貰っておくよ」
各人が装備できる物を貰っても、倉庫にはまだアイテムが沢山あった。中には9階で見つけたようなメダルもある。
「後は持って帰ろうか」
「一財産になりそうね」
タンザの提案にエリカが頷く。
「お任せを。さっそく役立ちますぞ」
デメトリオがマジックバッグに片っ端からアイテムを入れていった。
その後、12階最奥まで足を運んだタンザ達は、かつてエリカが見たという9階隠し階段の位置が書かれたヒントを見つけた。
「これでよくわかったねー……」
壁に大きく彫られたメッセージを見てルルスが感心した。
天井 12北 12東 9
「お姉ちゃん達も、きっと延々と考え込んだと思うわ」
「階層と座標と位置だと知っているから理解できますけど、この文字からそれに辿り着くのは…‥」
エリカとリアムもルルスに同感のようだった。
「まぁ一度で正解に辿り着かないといけないわけではないので、何度も的外れな事を繰り返したとは思いますぞ」
デメトリオの言い分に頷くタンザ。
「帰ったらレイラさんに改めてお礼を言おう。では、帰還するよ」
「おーっ!」「そうね、帰ろう」「了解です」「もうクタクタですからな」
皆が口々に賛成し、タンザ達のパーティはエレベーターへ向かった。
――<明けの明星>本拠地――
「復帰してくれるのか! それは助かるな」
タンザ達が修行を一段落させた事を告げると、クラン長のカルロは満面の笑みで喜んでくれた。
彼だけではない。他のクランメンバーもだ。
彼らへエリカが胸を張る。
「私達もちょっとしたモノになったわ。期待してよね」
そんな妹を見て、姉のレイラは「ふふっ」と嬉しそうに笑ったが、すぐに顔を引き締めた。
「それは頼もしい事だ。なら遠慮なく言わせてもらうが、第二ダンジョンの探索は行き詰っている」
「そうですか……」
別行動していたとはいえ本拠地は同じ。タンザは薄々勘づいてはいた。
しかしドラコン盗賊のザックが口を開く。
「だがタンザ達の復帰で戦力は前以上に厚くなる。これからは違うぞ」
他のクランメンバー達も、ある者は頷き、ある者は親指を立てた。
タンザと共に訓練していたメンバー……盗賊のルルス、魔術師のエリカ、君主のリアム、錬金術師のデメトリオ……彼ら彼女らにももう不安は無い。皆が自信を持って頷いている。
タンザは身が引き締まる思いだった。
(僕達の、本当の戦いはこれからだ)
――第一部・完――
とりあえずキリのいい所まで進めました。
お付き合いくださった方がもしいればありがとうございます。




