21 またも再会する僕
タンザ(タンザライト):主人公。霊能者という精神領域の魔術に長けた珍しい魔術師。
ルルス:フェルパー(猫獣人)の女盗賊。
レイラ:人間の女性。職業はヴァルキリー。
カルロ:ラウルフ(犬獣人)のロード。大手クラン<モーニングスター>のクラン長。
ザック:ドラコン(竜獣人)の盗賊。クラン幹部の一人。
インテ:エルフの魔術師。クラン幹部の一人。
ギリウス:ドワーフの戦士。
複数の眼球が浮き出た巨岩……その奇怪な魔物達にタンザが青い粒子を放った。すると岩の体が強度を失い、ぐにゃりと曲がりだす。
【アーマーメルト】地領域の呪文。組成に働きかけ、一時的に敵の鎧や体表を軟化させてしまう。
呪文の効果を見届けて前衛達が斬りかかった。
「ふん!」
ヴァルキリー・レイラの槍が魔物を貫く!
他の前衛も優勢ではあったが、この魔物イワポソを倒すには至らない。
タンザは次の呪文を放った。宙に舞う青い粒子が震え、不可視の衝撃波が敵へ叩き込まれる。
【シェリルサウンド】大気領域の呪文。空気を振動させ、超音波を目標に叩きつける。
魔物達の半壊した体が次々と砕けた。
魔物に勝利はしたが、パーティの顔は暗い。
「クソッ、どうやら全滅のようだ……」
「有効な呪文を知らないと厳しい敵だからね」
歯軋りするドワーフ戦士のギリウス。その横で暗い顔を見せるタンザ。
岩石妖怪達に圧し潰された冒険者の屍が、この部屋にはいくつも転がっていた。
さっきの敵には防御力減少のデバフや風属性の攻撃が有効なのだが、敗れた冒険者達は戦闘中にそれを見極める事ができなかったのだ。
クラン<明けの明星>は皆で情報を集めてきたので、今や第二ダンジョン11階の敵への有効な戦法も把握しているが。
「仕方がない。屍を回収するぞ」
レイラの指示に頷き、探索班と救援部隊は2パーティで全滅した冒険者達を運び始めた。
――今回の拠点にした部屋――
屍を見てクラン長・カルロは溜息をつく。
「メダルさえ有れば1階からでも来れてしまうからな。やはり背伸びをして失敗する者達が出たか」
元クランメンバー・二刀の戦士ツイムによってエレベーターを使うためのメダルが出回った結果、他の冒険者を第二ダンジョンで見る機会は確かに増えた。
しかし元より一攫千金を狙う者の多い生き方だ。大金で購入したので元を取りたい気持ちもあるだろう。実力不足のまま来て命を落とす者をそこかしこで見るようになった。
ドラコン盗賊のザックが呆れたように呟く。
「それだけではない。ここらに野盗団が入り込んだとも聞くぞ」
「強力な魔女がうろついて冒険者を襲うとも聞きましたよ」
ムークの錬金術師も自分が聞いた噂を不安いっぱいで口にした。
エルフ魔術師のインテが考え込む。
「これまでの探索にそんな敵はいなかった……そいつらも後から入ったという事か」
実力不足の、あるいは弱った冒険者を狙う強盗。邪教の集団。魔王軍の残党。そういったならず者が徒党を組んで迷宮を根城にする事は多い。
そんな連中でもまともな格好で街中を歩く事はできるので、売っているメダルを購入すればこの第二ダンジョンへ入り込めるのだ。
苛々しながらギリウスが皆を促す。
「早く先へ行くぞ! 11階もあとほんの少しだ!」
「落ち着け。戦闘の直後だろう、もう少し休憩しろ」
レイラが制止をかけたが、その口調にも苛立ちがある。
「しかしな!」
「焦るな!」
声は怒鳴りあいになり、雰囲気はどんどん険悪になった。
そんなギリウスの肩に手が触れる。振り向くと、タンザの心配する目と視線が合った。
「競争しているわけじゃないからね? 本当の、最後の目的は、このダンジョンの機能を停止させること。ここは魔王軍の残した基地跡で、魔物の巣になっているから無力化しようとしているんだ。それを果たすのは、僕達でも、他の誰かでもいいんだよ」
「……ふん」
そう言ってそっぽを向いたが、ギリウスはもう怒鳴ろうとはしなかった。
クラン<明けの明星>は再び探索を開始する。
拠点を動かす事を決め、一団となって移動。この時の先頭はクラン最強のカルロパーティだ。
しかし通路の途中で何かが聞こえた。
クランメンバーの一人が不安げに先を見つめる。
「悲鳴?」
「各班、ここで待機! 2パーティで向かう。救援部隊、来てくれ」
素早く指示を出すカルロ。カルロとタンザを含む10人ほどが、声の聞こえた方向へ急いだ。
――大きな部屋――
開きっぱなしの扉の向こうで三人の冒険者が血まみれで倒れている。
<明けの明星>の2パーティは、警戒しながらも急いで部屋に入った。
倒れている一人が苦しそうに呻きながら顔をあげる。
「た、助けてく……え?」
「え?」
驚くタンザ。
倒れていた者と二人、互いに驚き、思わず何度も瞬きして視線を交わす。
倒れていたのは初めてパーティを組んだ者の一人、かつてタンザを役立たずと追い出した戦士のヤカラだったのだ。
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