20 事態の変化に戸惑う僕
タンザ(タンザライト):主人公。霊能者という精神領域の魔術に長けた珍しい魔術師。
ルルス:フェルパー(猫獣人)の女盗賊。
レイラ:人間の女性。職業はヴァルキリー。
カルロ:ラウルフ(犬獣人)のロード。大手クラン<モーニングスター>のクラン長。
第二ダンジョンの探索を進めるクラン<明けの明星>。
その日も朝からエレベーターへ向かった。
そのエレベーター内で、フェルパーの女盗賊・ルルスが床を調べる。
「どうしたんだ?」
そう訊くクラン長・カルロを、ルルスは屈んだまま見上げた。
「カルロさん、足跡がいっぱいあります。ちょっと人数がわからないぐらい」
他の冒険者も第二ダンジョンに入り始めた。ルルスもそれを気にしていたのだ。
それにしても人数がはっきりしないほど大勢とは?
「俺達みたいにクラン総出で降りる奴らでもいたのかな?」
カルロはそう考えたが、ヴァルキリーのレイラが否定する。
「複数パーティでの同時探索を他のクランが採用しているという話は聞かないぞ」
答えが出ないままに、エレベーターは地下11階に着いた。
――11階入り口通路――
11階に降りた所に他の冒険者パーティがいた。
彼らは<明けの明星>を見ると声をかけてくる。
「カルロか。久しぶりだな」
「ツイム! そうか、お前達なら隠し通路にさえ気づけばメダルの入手もできるな」
驚きつつも納得するカルロ。
剣を両腰にさげた目つきの鋭い戦士に、タンザも微かな見覚えがあった。
(僕がクランに初めて来た日に出て行った高ランク冒険者だ)
二刀の戦士ツイムは大股でカルロへ近づく。
「ついでに大儲けもさせて貰った。おかげで装備の強化も進んだぜ」
「ほう?」
怪訝な顔をするカルロに、ツイムは不敵な笑みを見せた。
「わからんか? 第一のダンジョンを12階……底まで降りて得た情報で、第二ダンジョンに入るためのアイテムを拾っただろう。そのアイテムがあれば第一ダンジョンの1階から直接第二ダンジョンに行ける。そのアイテムは再入手が可能だ」
先ほどの「大儲け」と合わせ、タンザは気付いた。
「他の冒険者に売ったのですか!?」
ツイムの笑みが勝ち誇ったものになる。
「ああ、何度も入手して何個もな。金でショートカットできるなら払う奴は沢山いるさ。中には借金してまで買った奴もいたぞ」
カルロの顔が、一転、険しくなった。
「第一ダンジョンを突破して来る場所だぞ。実力の足りない奴が来ても命を落とす」
それに対してツイムは……「ククク」と小馬鹿にしたような笑い声を漏らす。
「落とせばいいだろう? 腕と危険を天秤にかけて判断する、できない奴は死ぬ……冒険者とはそういう仕事だ」
そしてツイムは、間近で、真正面で、カルロへ叫んだ。
「あんたらが低ランクの面倒を見てチンタラと一ヵ月以上……仲良しごっこの結果が、こうして出し抜かれた現実だ! そんな事をせずに前進し続けていれば、俺達が9階の隠し通路を知る前に、メダルを何度も入手できる事を知る前に、第二ダンジョンの深層まで行けていただろうになあ!」
自分が去ったクランへの全否定。それを口にしながら、なぜかツイムの目にも声にも憤りがある。
彼は「フン」と鼻で笑った。
「今はアンタがこの俺の下、俺の後ろだ」
カルロは……何も言わない。言い返さない。ただ黙っている。視線を合わせたままで。
そんなカルロに、ツイムは一方的に言った。
「今日はこっちが先に降りたんだ。先に始めさせてもらう」
そして背を向け、自分のパーティに戻って行った。通路の奥に消えるツイム達のパーティを見送りながら、タンザは考える。
元いたクランの長に、なぜあれだけ感情を剥き出しにするのか。どうにも複雑な感情が入り混じっていたように見えた。
(ひょっとしたら、元々カルロさんに対抗意識みたいな物があったのかもしれないな)
ある者は戸惑い、ある者は焦り、ある者は腹立ちを見せる<明けの明星>のメンバー達。
カルロはそんな皆に、穏やかな笑顔を見せた。
「気にするな。俺達は俺達のやり方で進めるぞ。まぁ……探索は別の方向から進めるか」
そしてツイムとは違う通路へと皆を先導する。少し遠回りになるが、今日行くつもりだったエリアへはそちらからでも行けるのだ。
11階の探索もあと少しで終わる。
しかしタンザには、波乱が迫っている気がしてならなかった。
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