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19 皆と微速前進する僕

タンザ(タンザライト):主人公。霊能者という精神領域の魔術に長けた珍しい魔術師。

ルルス:フェルパー(猫獣人)の女盗賊。

レイラ:人間の女性。職業はヴァルキリー。

カルロ:ラウルフ(犬獣人)のロード。大手クラン<モーニングスター>のクラン長。

ザック:ドラコン(竜獣人)の盗賊。クラン幹部の一人。

インテ:エルフの魔術師。クラン幹部の一人。

ギリウス:ドワーフの戦士。

 ――<明けの明星(モーニングスター)>本拠地のホテル――



 探索から帰還した<明けの明星(モーニングスター)>の一行は、疲労と情報量を考え、攻略ノートの作成は翌日にまわした。


 次の日。

 各班のMAPを集めて統合し、既存の11階MAPに描き加える。

 それを見てクラン長・カルロは腕組みして唸った。


「なるほど。11階以下のMAPは妙に空白が多かったが……別のダンジョンが食い込んでいたと考えると合点がいくな」


 さらに遭遇した魔物達の情報も統合しつつ、魔物の事が記された書物や辞典等も持ち寄る。

 そうする中で幹部のエルフ魔術師・インテは異国について書かれた書物を開き、指さした。


「女達はこれだろう。フーリー……異国の宗教において、死した勇者に天界で与えられる愛妾達だ」


「天界の住人? どうりで聖属性の呪文が効かないわけだ」


 タンザは納得したが、神職にある者から疑問の声もあがった。


「天界の聖なる住人が、どうして僕達を襲うんです!?」


 それにはドワーフ戦士のギリウスが肩をすくめる。


「召喚されたあちらにすれば、異教徒に容赦する理由こそ無いのかもしれん。聖属性のモンスターなんて他にもいるし、別に不思議でもないわ」


「なんか異質なダンジョンだなー」


 フェルパーの女盗賊・ルルスが不安を隠せず呟くと、幹部のドラコン盗賊・ザックが皆に告げた。


「焦ってもダンジョンが変わってくれるわけではない。ならば気持ちを強く持つべきだ」



 ――数日後――



 その日も前日の探索の情報をまとめる日だった。

 大きく変わった舞台に手間取り、情報の統合や精査にも時間をかけ、第二ダンジョンの探索ペースは決して早くはない。

 それでもかなり増えた魔物のデータカードを見て、ルルスは感慨に浸っていた。


「11階はこれで全部かなー。ミサイルマンティコアには防具の強化が無かったら危なかったよ」


 この地方のマンティコアは尻尾がサソリの毒針になっているが、第二ダンジョンの種は尾の先端が球状をしており、そこに無数の棘が生えていた。戦闘になるとそれを雨のように撃ち出してくる。

 毒で追加ダメージを与えてくると思いきや範囲物理射撃。意表をつかれ、また回避重視の軽戦士には相性の悪い相手でもあり、初遭遇でルルスは重傷を負わされたのだ。

 しかし防具が強化されていたおかげで致命傷は免れた。その防具とは、フーリー達の宝箱から得た布の束。鑑定してみればターバン+2という結構レアな頭防具。


 隣で苦笑しながら聞いていたタンザ。

 そこへギリウスが駆け込んでくる。


「大変だぞ! 第二ダンジョンに別の冒険者達が入りよった!」


「えっ!?」


 思わぬ話にクランのメンバー達が驚いた。


 ギリウスは小腹がすいたので近くの酒場で軽食をとっていた。

 そこへ他のクラン冒険者達が帰還し、彼らのクランメンバーに第二ダンジョンへ行ってきた事を自慢していたのだ。

 その話に耳をそばだてていたギリウスは、語る内容に嘘が無い事を確認したのだという。


 第二ダンジョンを発見したのは自分達だけ。

 そう思っていた<明けの明星(モーニングスター)>のメンバー達は顔を見合わせた。



 ――地下10階・隠しエリア最奥――



明けの明星(モーニングスター)>は調査隊を派遣した。

 隠しエレベーターを使うためのアイテム、紋章の刻まれたメダル。それをあえてホテルに置き、タンザを含む調査隊はメダルを入手した部屋へ再度向かう。

 上位魔神(デビル)の出なくなった部屋を通り、既に余裕をもって倒せる魔物どもを退け、目的の部屋に入ると――


「なるほど。鍵になるアイテムは何度でも出現するのか」


 全く同じメダルを前に、タンザは呟いた。

 ルルスが新たなメダルを拾う。


「じゃ、これは予備としてもらっておくね」



 ――<明けの明星(モーニングスター)>本拠地のホテル――



 二つ目のメダルを持ち帰ると、クラン内に動揺が走った。


「ど、どうするんです?」


 少年騎士にそう訊かれたカルロは軽く肩をすくめる。


「どうするって……別にどうもしないが」


 大半のクランメンバーは呆気にとられた。

 カルロはくすりと彼らに笑いかける。


「第二ダンジョンは俺達の所有物じゃないぞ? 他の冒険者が来るようになっても構わないだろう」


 顔を見合わせるクランメンバー。

 確かにダンジョンは誰の物でもない。強いて言えばこの地を治める領主に所有権があるだろうが、その領主が冒険者全般に探索を許しているのだ。


「そんな……せっかく先行していたのに」


 少年騎士は肩を落とすが、カルロはその肩を優しく叩いた。


「あくまで先行だ。追いつく奴だって出てくるさ。俺達はあくまで俺達のペースで、な」


 そんなやりとりを見ながら、タンザもまたカルロとは違う方向で気楽に考えていた。


(キーアイテムを入手できるパーティしか第二ダンジョンに来ないから、大した人数は訪れないだろう。僕らのアドバンテージが覆る事もないだろうな)


 だが、事態は別方向へと進んだ。

御覧いただきありがとうございます。

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