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16 皆と親睦を深める僕

タンザ(タンザライト):主人公。霊能者という精神領域の魔術に長けた珍しい魔術師。

ルルス:フェルパー(猫獣人)の女盗賊。

カルロ:ラウルフ(犬獣人)のロード。大手クラン<モーニングスター>のクラン長。

ザック:ドラコン(竜獣人)の盗賊。クラン幹部の一人。

ギリウス:ドワーフの戦士。

 クラン一丸で動くスタイルになってから、【明けの明星(モーニングスター)】は拠点のホテルで、皆で夕食をとる事が多かった。

 その日の成果をノートに纏めるため、皆で集まるからだ。そのままついでに食事も……という流れである。


 13階までのエレベーターをものにした、その日もホテルにて皆で食事となった。酒も多めに入り、ちょっとした宴会のようになる。


「【明けの明星(モーニングスター)】のパーティが皆同じ階層にいると、他のクランは不思議に思っているようだ」

 幹部のドラコン盗賊・ザックの口調はどこか楽しそうだ。他のクランが理解できない事を面白がっている。

 他の冒険者達も感心混じりで言葉を交わした。


「こんな方法でダンジョン攻略に乗り出すなんて、思ってもみなかった」


「世の中は弱肉強食。強い奴は成り上がり、弱い奴は落ちて奪われる……そんな考えを持つ冒険者は多いからな」


「おかしな話ですよね」


 そう呟いたのはタンザだ。

 皆が彼を見た。一人が首を傾げる。


「そうか?」


 タンザは……酒のグラスを片手に、どこか遠くを見ているようだった。


「人間、生まれた時は赤子で、誰かに世話してもらわないと生きていけません。大人になっても、自分独りで自分の生活の全てを送っている者はいません」


 断言する。

 決して強い口調では無いが、確信をもって。


「食べ物が無ければ飢える。着る物がなければ凍える。武器がなければ獣に襲われる。他にも必要な道具はたくさん。それ全部、自分の分を全て自分だけで作っている者は一人もいません」


 それは地球でも、この世界でも同じだ。


「弱肉強食というなら、人は皆食われる側の[弱]です」


 そう言って、さらに一口酒をあおる。

 ふう、と溜息を一つ。


「世の中の法則を、腕っぷしが強い人が勝手に決めつけてるだけです。でも誰だって、どうせ集団のどこかにいないと生きていけないんです。なら必要なのは――弱くても小さくても、どこかで何か、引き受けられる役目がある事。それさえあれば……」


 そこでハッと我に返った。皆が驚きの眼差しで注目している事に気づいたのだ。

 慌てて飲みかけのグラスを側のテーブルに置く。


「飲み過ぎですね。すいません」


 その肩をポンと軽く叩く手。

 クラン長・カルロが優しい眼差しを向けていた。


「君はもうここに必要だし、任されてる役目があるからな」


「正直なのはいい事だ。ほらほら、もっと飲め。飲んで正直になっちゃえ」


 フェルパーの女盗賊・ルルスが笑いながらタンザの置いたグラスを強引に持たせ、酒を注ぐ。

 クランの皆も、ある者は声を出して笑い、ある者は苦笑する。

 笑顔である事は皆同じだった。

 タンザは酒に口をつける。ゆっくり味わいながら、喉に流し込んだ。


(明日からも、この先も……きっとここでやっていける)


 これまでの人生で、最も美味い酒だった。

 皆との盛り上がりもあり、つい深酒してしまうほどに……。



 ――翌朝――



 陽光を感じ、タンザは目を覚ました。

 何か心安らぐような暖かさを感じ、微かに甘い香りの中で、ぼんやりした頭がはっきりしてくると……

 かけ布団に首まで埋まるようにして、ルルスと同じ布団で寝ていた。


「!?!?」


 声にならない叫びとともに起きるタンザ。同時に寝る前の事をだんだん思い出して来る。

 確か酔ったルルスが文字通り体ごと()()()来て……



(「私に告白したクセに、あの後なんも無いじゃん! なんで?」)


(「え? え? え?」)


(「チンピラを魔法でミナゴロシにしてまで私を身も心も奪っちゃおうと迫ってきたクセにさ!」)


(「歴史が改変されている!?」)


(「この腰抜け! ビビリ! 私がイケメンに盗られてからボクが先に好きだったのにとか後で言ってももう遅いぞ! ザマア!」)



 その後、床に引きずり倒されたような気がしてきた。

 まさかそのまま酒の勢いで……。

 そんな流れで女性と深い仲になるなど、精神を鍛える事で高みを目指す霊能者(サイオニック)にはあるまじき事だ。男としての責任からも猛省すべきである。


 が、激しい動悸の中、自分が服を着ている事に気づいた。ルルスは下着同然だが、それでも着ている。

 良かった、セーフだった。


 というか背中側を見ればドワーフ戦士のギリウスが大口を開けていびきをかいていた。部屋のあちこちで元低ランクの冒険者が同じように毛布を敷いて寝ている。

 クランメンバーの10人ほどがここで雑魚寝していた。皆で仲良く酔っぱらった後、丁度いい位置にあるメンバーの部屋へ転がり込んでしまったようだ。


 安心しながらもまだ焦りの冷めないタンザの横で、ルルスが「うひひ」とにやけた。


「えっち……タンザ、えっち……」


「!?」


 再び大いに焦りながらも見てみれば、ルルスはまだ寝ている。なんと寝言だ。

 赤面しつつ溜息をつくタンザ。


(どんな夢を見ているのさ……)


 さらにむにゃむにゃと呟くルルス。


「ヌタウナギはウナギとは別種の生き物だよー……」


「いや本当にどんな夢見てんの!?」


 驚きつつも、タンザは布団をルルスにかけ直して自分は起床する事にした。

 そーっと。静かに。

御覧いただきありがとうございます。

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