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15 新たな鍵を見つける僕

タンザ(タンザライト):主人公。霊能者という精神領域の魔術に長けた珍しい魔術師。

ルルス:フェルパー(猫獣人)の女盗賊。

レイラ:人間の女性。職業はヴァルキリー。

カルロ:ラウルフ(犬獣人)のロード。大手クラン<モーニングスター>のクラン長。

ザック:ドラコン(竜獣人)の盗賊。クラン幹部の一人。

 ――ダンジョン地下9階――



 クラン【明けの明星(モーニングスター)】は一ヵ月前にヴァルキリー・レイラのパーティが遭難した地点へ、再び総出で向かう。

 魔法陣の部屋に再訪しても、魔神(デビル)はもう召喚されなかった。奥の廊下をクランの盗賊系職の者達が調べたが――


「この一ヵ月でここを通り抜けた奴はいないようだ」


 皆がその見解だった。

 レイラが「ふむ……」と呟く。


「地下12階の奥に、情報が書かれた壁があったんだ。私達はそれで9階の天井に隠し戸がある事を知った。同じ情報を手に入れたパーティはまだいないみたいだな」


 前回は開けなかった、廊下の奥の扉。聞き耳をたて、罠を調べ、そして開く。そこは――

 小さな部屋の中央に、下の階へ降りる階段があった。



 ――地下10階――



「一方通行の扉、強力な固定番人……そして帰還できないままこのエリアを探索しなければならないのか。とんでもない場所だな」


 クラン長のカルロが呆れて呟く。だがその口調に焦りは無かった。

 まず扉にはくさびを打ち込んで閉じないようにしてある。退路は確保してあるのだ。

 そしてクラン全員で5つのパーティを作り、拠点として控える中央部隊から4つの班が周囲へ向かって探索する……この方法を以前より高レベル・高精度で行う事ができるようになっている。

 これなら1班あたりの疲労は単独パーティ時の数分の一だ。未知のエリアで持久戦を強いられても何の不安も無い。


 中央部隊のいる部屋に探索から戻ってくる各パーティ。カルロが彼らの報告を聞く。

 しかし……


「2班が遅いな」


 時間になっても戻って来ないパーティがあった。


「よし、出動する!」


 レイラが率いる救援部隊が2班の行った方へ向かう。その中にはタンザの姿もあった。

 予定通りに行かない班へはすぐに救援を出せる。これもまた強味の一つなのだ。


 第2班は広い部屋で魔物の群れに苦戦していた。

 敵は鬼族の重装備戦士、オーガヘビーウォリアー。怪力のオーガの中でもさらに膂力とタフネスに優れる集団で、一度圧されると巻き返しは難しい。

 第2班は半数が弓や魔法等の遠距離攻撃を使い、攻撃魔法やブレス等を使う敵が後列や遠くにいても一早く倒せる編成なのだが、反面、全員で力押ししてくる相手は苦手としていた。


 現れた中央部隊にギラギラした目を向けるオーガの群れ。そいつらへタンザから青い粒子が突風のごとく吹き付ける。

 オーガどもが頭を抑えて悲鳴をあげた。その鼻から、耳から出血して。

 生命力旺盛なオーガの精鋭達は、第2班の矢や魔法に耐えぬいた屈強な鬼族である。タンザの魔法を受けてもなお耐えはした。しかしその大半が口から泡混じりの(よだれ)を撒き散らし、焦点の合わぬ目で武器を振り回した――至近距離の味方へと!

 凄惨な同士討ちが始まった。


【サイオニック・ブラスト】強烈な精神波を敵の脳髄へ叩きこむ呪文。脳神経への直接攻撃と混乱の状態異常を同時に浴びせる。


 体内を負傷し、過半数は混乱して同士討ちする。敵の生命力を侮り難しとみたタンザは、精神をも同時に攻撃したのだ。

 半壊したオーガの群れを他の冒険者も攻撃し……鬼族の群れは呆気なく全滅した。


「凄いもんだ……」


 第2班にいたムークの錬金術師が、勝利後、タンザを振り返って呟いた。



 ――地下10階・最奥――



 新たなエリアはそう広いわけではなく、複数班で進める探索だと割と早く一番奥の部屋を見つける事ができた。

 部屋の奥の壁には門を想起させる装飾が施され、中央には台座があり、そこに紋章の刻まれたメダルが置かれている。

 クランの冒険者達は装飾に見覚えがあった。


「地下1階にも同じ装飾があったよな」


 行き止まり通路の一つ、その突き当りで、誰も彼もが一度はこの装飾を目にしていたのだ。

 盗賊職の者達が部屋や台座を調べたが、罠は見つからない。カルロはメダルを手に取った。


「このエンブレムは何だ?」


 クランの魔術師達が順に手を触れ、アイテムの能力を読み取ろうとする。【鑑定】のスキルだ。

 だが皆が首をふる。


「鑑定の難易度が高いようだ」


 それは逆に希少な品だという事でもある。

 タンザはカルロに申し出た。


「鑑定の呪文を使います」


【アイデンティファイ】物品の真価を読み取る鑑定の呪文。威力(パワーレベル)を上げるほど精度の高い鑑定が可能。大きな消費と引き換えならばスキルによる鑑定能力を上回る。


 タンザがメダルを置いた掌から青い粒子が立ち昇る。

 それが膨大な量となり、額から幾筋もの汗が流れた。複数の魔術師達が皆失敗した鑑定を成功させるため、タンザは急激にMP(魔法力)を消耗してゆく。

 やがて粒子の放出が止まった。

 疲労した顔に、しかしタンザは汗と共に微笑を浮かべる。


「わかりました。特定地点を通過するための鍵ですね。それは……」


 そう言ってメダルを掲げる。奥の壁の前に。

 門のような装飾が、その中央から別れ、壁ごと開く。

 アイテムにより開く隠し扉だったのだ。

 その奥には……一基のエレベーターが!

 第1班がエレベーターに乗り込んで調べる。


「このエレベーター……上は1階、下は地下13階まで行けるみたいだぞ!」


 フェルパーの女盗賊・ルルスは地図を広げた。

 この新しいエリアのMAP。ここに来る前に造られた10階のMAPに書き加えた物を。

 そしてエレベーターのある座標を確認する。


「ここ、1階の行き止まりの向こうだ!」



 ――地下1階――



 冒険者達がエレベーターを降りると、そこは確かに1階の行き止まりだった。壁はエレベーター側からなら触れるだけで開いた。

 皆がエレベーターを降りると、壁は再び閉じる。だが……エンブレムをかざすと、音も無く左右に別れて開く。


「このエンブレムがあれば、1階から13階へ直行できるわけだ」


 感心、納得するカルロ。

 ドラコン盗賊のザックが「ほほう」と感心の声をあげた。


「他のクランは12階の探索も終わっていないのに、我々はその先か」


 この日、【明けの明星(モーニングスター)】はこの街の全てのクランを明確にリードしたのだ。

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