一人目殺された男と青い箱
作者の水無瀬です。
この度は、私の作品「案内人」を読み始めていただきありがとうございます。
作者から読者の皆さまにお伝えしたいことがいくつかあります。
私は遅筆のため、投稿の速度が比較的ゆっくりですので、気長にお待ちください。
作品の分類がよく分かっていません。どなたか教えていただけるととても助かります。
作者に対する評価や、作品に対する評価は私にとって作品をよりよくするのに非常に助かります。どうかひとつお願いします。
長くなってしまいましたが、これより案内人が始まります。最後までお読みしていただけることを心からの願いとして、前書きを終わりにします。
一瞬の衝撃に目が覚めた。
ピチョンッ、ピチョンッ。水滴が定期的に落ちる音が反響する。
ここはどこだ。
辺りを見回すと、どこまでも広がっているような岩壁の道。岩肌は湿り気を帯びていて、触れば冷たさと黒い岩の粒が手につく。
ジーパンで拭い落とし、男はもう一度この場を確認する。
洞窟のようだが、上には明かりなどない。それなのに視界はハッキリとして岩壁の凹凸さえ確認できる。
ならば歩くしかない、そう考えた。生きるためには水が必要だ。
水滴の音が聞こえる闇を向き、前へ一歩踏み出した。
歩いても歩いても、水滴の落ちる音が聞こえてくるだけだった。
辺りも変わらない。多少の変化はあるのかもしれないが、分からなかった。
だが、一つだけ異なることがあった。それは、新たに聞こえてきた。
まるで水滴に合わせているかのような足音、ヒールを履いているのかコツッコツッと少しずつ近づいてきた。
「あなたが秋葉雄平さんですか?」
白装束を纏った十六歳前後の少女だった。絹のような白い髪が腰ほどまで伸びており、光を飲み込んだような双眸の闇が秋葉を見ていた。
「俺が秋葉だが、君は誰だ?」
少女は瞬きを一度。彼の言葉をゆっくりと飲み込んだかのように言葉を放った。
「私は案内人のアンナと言います。あなたを導くために来たのです」
「案内人?」
はいそうです、アンナは軽くうなずいた。
「俺を導くといったが、それはどういうことだ? それに……ここはどこなんだ」
彼女は辺りを見渡し、また秋葉をみた。
「一度に何度も質問するのはあまりよろしくないと思いますが……答えましょう。案内人とは、死者の願いを叶えるために導き助ける者のことをいいます」
たとえそれが復讐でも、そう言ったときの彼女の目は悲しそうに見えた。
「そして、ここは生と死の境界というのでしょうか。いわゆる天国と地獄の狭間と考えて貰えればよいかと」
質問は以上でとアンナは聞いてきたが、秋葉はこれ以上質問しようにも質問する内容を見つけるほど頭が冴えてはいなかった。「それでは聞かせてください、あなたの願いを。生きていては叶えることの出来なかった思いを」
秋葉は答えることが出来なかった。願い事はないのかと聞かれたら、あると答えられる。
しかし、それは生きていたらの話だ。死んでしまった今となっては、もう意味がないことなのだから。
「あなたは何か叶えたいことがあるから、ここに来たのではないのですか?」
「分からない」
そう応えるしかなかった。アンナは何も言わない、別に気にもならないというわけではない。
ここに来る人は願いを忘れて届けられてくるがほとんどであった。
極稀に忘れずに来る者は、本当に叶えたいという強い思いがある。それは、殺したいという復讐心や助けたいという切なる願いとそれぞれであった。
「ここに来た者には、ある猶予が課せられます」
沈黙を続けていた秋葉に、アンナは破りにかかる。
「二十日間のうちに、願い・思いを叶えることです」
秋葉は驚いた。目は見開き、睨みつけているようであった。
「願いも分からないのに叶えろっていうのか!」
「はい」
彼女は一言だけ放つ。
「また、その間にも規則がつきます」
「規則?」
「はい。規則です。これも後々お答えします」
アンナは、またお会いしましょうと告げて闇へと消えていった。
「くそっ」
秋葉は、悪態をついて地面へと寝ころんだ。
願いも分からない状態でなにを叶えろっていうんだ。