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プロローグ
ここは暗いな。
バチバチバチバチ、と傘に落ちる雨粒の音は鳴り止まない。
冬の空の下に晒された体は凍えるように冷たくなる。
血が流れていく。体から、温度と生気というのだろうか、抜け出していくのをただ俺は感じるしかなかった。
死ぬのか……俺は?
だが、今やなす術はない。胸ポケットにある軽いはずの手帳でさえ重いのだ。
携帯を握ることはかなわない。
この日を選んではいけなかったんだ。
十二月十日、不幸でしかない。だから、幸せを感じていたかったのだろう。
だけど、不幸は不幸でしかないのだ。
ああ、眠い。
瞼がゆっくりと閉じられた。
体に重い衝撃が走る。
男は、ただ眠るしかなかった。