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おじいさん

作者: 明音

おじいさんは、ひとり暮らし

僕も、ひとり暮らし


 とある町の一角に小さな一軒家がたってい

た。小さな庭には、三人掛けのベンチと大き

な木があり、枝には蜜柑がついていた。ちょ

うど食べごろなのに、誰もその存在に気づい

ていないようである。でも、僕は気づいた。

何か運命のようなものを感じる。おおげさす

ぎるかな。そんな風に心の中で思いながら、

「そもそもなんでこの木は、ここにあるのか

な?」ということを考え始めたとき、ひとり

のおじいさんが家の中から庭に出てきた。白

髪でおでこが広いタイプのおじいさん。空を

見つめていた。そして、何もしないで家に戻

った。僕は再び、「あのこと」を考え始めた。

 

 しばらくすると、おじいさんは、白いハン

チングをかぶって家から出てきた。よくみる

と、破けている。「相当長く使い続けている

のだろう」と僕が思っていると、おじいさん

はどこかに向かって歩き始めた。気になって

僕は、後ろからついていった。(ストーカー

ではない、ただなんか心配だった。)おじい

さんは、横断歩道を何度も行ったり来たりし

ていた。十分くらい経ってから、やっと、前

に進み始めた。

「もしかして、ぼけてる?」

と不安に思ったが、後ろからついていくだけ

で、話しかける勇気なんて持ち合わしていな

い。電車でもおばあさんに席をゆずれない。

でも、席からは離れる。そして、そこにおば

あさんが座ってくれるのを願いながら、別の

車両に移動する。俺は、そういう人間だ。


 おじいさんは、小さな公園のベンチに座っ

た。そして、あのときみたいに、空を眺めて

いるようだ。いや、違った。雲を眺めている

のだ。そして、おじいさんはひとりで滑り台

をすべったり、砂場でひとり、山を作っている。

かわいいというか、怖いというか、

なんというかよくわからない感情にさせられた。

この感情を例えるならば、女子高生が顔加工

しまくっている写真、あるいはデジタル画像

を見たときのような感じに近いものである。

まあ、「感動」ということにしておこう。僕

は、それを傍観しているだけである。まる

で、一つの映画を見ているようだ。そして、

おじいさんは雲を眺めた。いや、雲ではなく

「雲の上」の世界を見ているようだ。


 しばらくすると、おじいさんは小さな公園

を後にした。帰りにあの横断歩道を通った。

そのまま普通に渡っていた。そして、おじい

さんは何事もなく、無事に家にたどり着い

た。玄関に明かりがついた。どこからか、肉

じゃがのいい匂いがしてきた。

「ああ、今夜は肉じゃがをたーべよ(笑)」

なんて思いながら、「あのこと」を考えながら、

僕は家路についた。

少し、早歩きで… 。

おばあさんは、どこへ行ったのか?

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