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13.1_藍野の日曜日

 その日は秋の一日らしく、雲一つなく空が高い日だった。

 藍野は珍しく休暇で日曜という、ごく普通のサラリーマンのような日を過ごそうとしていた。

 ただ、朝6時起きはともかく、2時間かけての10キロのランニングと基礎トレーニングが、普通のサラリーマンのすることとはとても思えないが。


 いつものようにメニューをこなし、一旦自宅に戻り、シャワーを浴びて着替える。

 朝食にと作り置きを何品かとペットボトルの水を取るため、冷蔵庫を開けて藍野は笑み崩れた。

 今日は特別で、シアと一緒に食べようと、いつも通いで来てくれている家事代行サービスに作り置きだけでなく、弁当も依頼しておいたのだ。

 3つのうち一つは子供向けと依頼したから、パンダのおにぎりやピックに刺さったうずらの卵やからあげ、お花のウインナーなどかわいらしいお弁当になっていた。

 2つは藍野とレイの分で、大人向けの普通のお弁当だ

 残念な事にかわいいお弁当箱もおしゃれなお弁当箱も持っていなかったので、いつも作り置きを入れてもらうタッパーになったが、味は折り紙つきだ。

 弁当箱は今度みんなで一緒に買いにいこうと心に決めた。


 作り置きとご飯を取り出して皿に盛り、レンジに放り込み、レンジから取り出せば、立派な朝食だ。

 タブレットでニュースサイトをチェックしながら朝食をとった。


 食べ終えると、皿を片付けるその片手間で、小鍋に水を入れ、沸騰したらイングリッシュブレックファーストのティーパックを入れて煮出しておく。

 カップには温めた牛乳を入れておき、濃いめに煮出した紅茶を注げは食後のミルクティーの完成。

 ミルクティーを飲みながら、タブレットを使って社内システムにアクセスし、申請やら問い合わせやらをいくつか処理し、黒崎に約束させられた監査ライセンスのテキストを開いて目を通す。


(実務研修、誰につこうかな。言い出しっぺの黒崎先輩に頼む?)


 とは言え、黒崎を始め現課長連中は大体忙しく、特に4課や5課は護衛案件以外の企業調査案件も請け負っているから、結構先の予定も埋まっている。

 取得者の一覧表をスワイプでめくっていくと見知った名前に当たり、手を止める。


「へぇ。沢渡って監査取ったんだ。いつの間に……」


 藍野はニンマリと笑って沢渡にアポを入れる。

 週明けの月曜日、メッセージを見た沢渡はその夜、酒量が若干増えた。


 ※ ※ ※


 弁当用のハンカチも袋も持ってないからジッパー付きの密閉袋に入れてから、適当な紙袋に詰め、助手席に置き、鼻歌混じりの上機嫌で車に乗り込み、アクセルを踏む。

 途中シアやレイの好きそうなおやつやスイーツをコンビニで買い込み、車に戻った時に、その連絡は入った。


 けたたましく社用スマホが緊急連絡用の着信音で鳴り響く。

 何事かと藍野が取れば、相手は5課からで「藍野さん! レイさんが部屋に戻ってきません!!」と狼狽した声で伝えられた。


「また!? GPSは追ったか?」


 返答しながらも、藍野は少し違和感を覚えた。

 いくら何でも、こんなに早くレイが約束を破るようなことはしないはず。

 日本に戻って以降も始終張りついていたが、特段変わった報告もなかったし、彼女の身の回りも随分と落ち着いていたはずだ。


「はい。腕時計がビル裏手の公園に落ちていたので、回収済みです」


 彼女が自ら外すとは考えにくい。

 誰かによって(・・・・・・)外された(・・・・)なら?

 犯人は、自分たちのやり方をよく知る者かもしれない可能性が頭をもたげる。


 藍野は詳しい状況の説明を求めると、彼は答えた。


 レイは今朝、近くの商業ビルで朝食とコーヒーを買いたいと警護員をつけて、地下の専用入口まで送った。

 だが、その後の監視カメラ映像にレイが映らない。

 てっきり途中のカフェテリアにでも行ったのだろうと思ったが、中々宿泊室のカメラに映らないのを訝しみ、部屋まで確認しに行ったが部屋は空っぽで、もちろんカフェテリアにもいなかった。

 出入口のカメラを遡って確認したら、一人で外へ出た様子。

 現在は5課とその他の手の空いている者で周辺を探していると伝えた。


「了解。担当メンバーは緊急招集と装備変更を指示。俺も今から行く。部長には俺から報告する」

「お願いします。こちらも捜索続けます」


 藍野が一旦電話を切り、黒崎へと報告を入れ終えると、前回リアムと名乗ったレイのアシスタントから電話がかかってきた。

 藍野は電話を取る。またコイツかと訝しみながら。

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