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2.2_部長室

 フロアが広いとはいえ、部長室までそれほどの距離はない。

 あっという間に部長室前に着いてしまった。

 何の用だか思いつかないが後回しにしても仕方がない。

 覚悟を決めて部長室の扉を3回ノックして開けた。


「黒崎部長、おはようございます。お呼びと伺いましたが」

「ああ、おはよう。休暇が明けたが、課長の件、考えてくれたか?」


 藍野は期待を込めた目線で問われ、これだったのかと思い出した。

 急な話だったし、その場を回避しようと休暇中に考えるなんて言って先送りしたのに、休暇明けの朝一に呼び出されるとは。

 回答についても全く考えてはいなかったが、断る方針だけは決めていた。


「忙しくて監査ライセンス取得が間に合いそうにないので、要件を満たせません。他を当たるか、誰か2課に回してください」


 理由には少し弱いと知りつつ、もっともらしく断る理由を述べた。

 時間稼ぎしている間に、藍野は後付け出来そうな理由をフル回転で考えた。

 案件や指導教育に忙しい、課長職の規定要件、他に理由となりそうなものをひねり出さなくては……。


 一つ思い出した。


 何故、主任職の自分が課長の仕事まで引き受けているのか、2課の主任は一ノ瀬もいるし、他の課にも主任はいるのにおかしいじゃないか、と思い至りこの辺を理由に推すことに決めた。


「2課で在籍が一番長いのはお前なのに、いつまで主任のまま代理を続ける気だ。お前が正式に引き受けるのが筋というものではないのか?」


 半ば呆れ顔で黒崎は言った。

 その一言、待ってましたと言いたいのを綺麗に隠して、藍野は不平顔を5割増しくらいにして言い返した。


「別にやりたくてやっている訳ではありません。それを言うなら、主任職でしかない私が案件統括の代理をしている事に苦情を申し上げたい所ですが」


「何が苦情だ。先代が本社へ異動してどれくらい経ったと思ってるんだ。課歴の長さで次はお前しかいないだろう。4課は紅谷が引き受けてるのだから、2課は大人しくお前が引き受けろ」


 課歴を言われると藍野は弱い。

 確かに入社時からずっと2課にいたから、必然、長くなっていた。

 どうにも旗色が悪く、藍野には何か決定的な言い訳が必要だが、何も思いつかなかったので、本音を言ってやることにした。


「4課は課員もたくさんいて、しかも紅谷を入れて3人も課長がいるではありませんか! 2課は一番課員が少なくて、歴が長いといったら私一人しかいませんよ。4課と比べるのは不公平です、せめて一ノ瀬や杜山も対象するか、2課に人員回してください!」


「いくら何でも一ノ瀬や杜山はないだろう。二人はついこの間主任になったばかりだぞ。大体2課は教育課だ。自分の部下くらい育てておかないお前が悪い。教育用の人員は1課や3課でも協力しているぞ」


 黒崎の言うことはいちいちもっともで、ぐうの音も出ない。

 早々に白旗を上げて、作戦変更、時間的延長を要望した。


「うう……わかりました、引き受けます。受けますがもう少し待って下さい。案件統括に本社合同訓練計画と実施、新卒向けの社内訓練、通常任務、自分の訓練で座間キャンプにもなかなか行けないのに、この上監査研修なんてキツいんです!」


 言質をとった黒崎はにやりと笑って言った


「よし、ようやく言ったな。3か月だけ待ってやる。その間に監査ライセンスは取っておけよ。座間は私も付き合ってやろう」


「……わかりましたよ。どうせならついでに新卒訓練と本社合同訓練の講師も付き合って下さいよ」


 結局3か月以内に監査ライセンスを取る羽目になったが、どうにも納得できない様子の藍野だった。


「あとな、明日から入る予定の高坂様の警護、お前は抜けてくれ。代わりは杜山にやらせる」

「ええっ! この時期にですか?」


 思いもよらない一言から、願望がつるりと口から出てきた。

 詩織がアメリカに行くまであとひと月もないというのに、これを逃せば詩織と話す機会もなくなってしまう。

 唐突に食いついた様子の藍野を怪訝そうに見て、黒崎は言った。


「どうした、 杜山では何か問題か?」

「あ……いえ、杜山で構いません……」


 藍野は違う、そうじゃないと本当は声を大にして言いたかった。

 こんな事なら変な小細工などせず、始めから課長を引き受ける条件でもつけて、今回の護衛に入れば良かったと後悔する藍野だった。


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