9.1_後悔
うわーーっ。
番号振り間違えてました。
今日2本投稿します。
すみません。
手引きした当日、予定時刻を過ぎても連絡は来ず、イライラしながら連絡を待っていると、予定時刻より2時間ほど過ぎて紅谷に連絡が来た。
が、知らされた内容に紅谷は愕然とした。
『博士が死んだって……。一体どういう事だ?』
『言葉通りの意味だ。博士は死んだ。計画は失敗した』
『協力するのはあれきりだ。これ以上は動けない』
『ならば、それなりに働け。また連絡する』
電話は一方的に切られた。
コウから博士が死んだと聞かされたとき、紅谷は耳を疑った。
博士は確かに弱ってはいたが、突然死ぬほど体調が悪かった訳ではない。
コウから聞いた話によると、成果を要求された博士はダミーの情報をコピーし、パスワードを入力した途端、苦しみだして、そのまま息絶えたという。
(白鳥博士は確か体内埋め込み型の除細動器を入れていた。制御するプログラムを自分達で改変したのか?)
博士にはプログラミングに長けた娘がいる。
恐らく、外部コマンドから心臓を止めるよう改変でもしたのだろうか?
もし自分なら、そんな事を頼まれても断るだろうが。
(いいや。過程がどうあれ、きっかけを作ったのはこの俺だ……)
直接ではないとしても、博士を死に追いやったのは紅谷で、あの日、紅谷がコウ達を招き入れなければ、博士が死ぬことはなかったのだから。
(俺が…殺した……)
紅谷の口からははっと乾いた笑いがついて出る。
強襲作戦など何度もあった。引き金を引くことに何のためらいもなかった。
その度に倒れる人間の姿など、飽きるほど見た。
死ぬほど吐いて、夢に魘されて、安定剤でごまかし、いつしか慣れた。
なのに、何故いま、こんなにも苦しい?
――私はもう長くない。いずれ死ぬ。護衛は必要ない。
――それよりも、未来ある娘を守ってくれ。
そう言って博士は紅谷に頭を下げた。
(俺は……人殺しなんだ)
思い出した途端に今までの現場がフラッシュバックし、胃が握りつぶされるような感覚を感じて、トイレへ駆け込んで、すべて吐き戻した。
紅谷は両手を広げてじっと見つめた。
両手は小さく震えて、全身に広がっていくようだ。
ぎゅっと握りこぶしを作り、力を籠めて震えを押さえようとしてみるが、全くうまくいかない。
(帰り、たい……。絶対に帰る!)
あの場所へ。
誰かを殺しても、家族に再会し、生まれてくる息子をこの手に抱きたい。
それだけが消えない熾火のように紅谷の心を照らしていた。




