表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/80

5.5_手引

 黒崎の追及をかわした紅谷は、退勤後、身辺整理をし、今住んでいるマンションの解約手続きとマンスリーマンションの契約、家財道具の所分を手配した。

 水谷は本社出張となり、その間、紅谷は自宅勤務に切り替え、その間に家財道具のほとんどを処分した。

 部屋の明け渡しに立ち会った不動産屋は、どこかいいところが見つかったと思ったのか、ずいぶん急な引っ越しだ、小さなお子さんがいるのに綺麗に使われているし、もし家賃が不満なら家主に交渉しますよと粘られたが、笑ってごまかし、その場で強引に解約してきた。

 尾行を恐れ、身軽にしたかったから、手元には大したものは残せなかった。

 紅谷自身の身の回り品が数日分、二人の貴重品、婚約指輪とアルバム、メイが大事にしていた宝物ボックス、たったそれだけ。

 マンションを出た時は出張用のスーツケース1つ分の手荷物で、ずいぶんと寂しいものだった。


 新しく移ったところは都内にあり、空港線の入る駅近くの小さな1Kのマンスリーマンションだった。

 横浜からは少し遠いが、机と椅子さえあれば、リモート勤務でどこからでも仕事はできるし、彼らの作戦が実行されれば、すぐに香港へ飛べるようにとこのマンションを選び、紅谷は作戦が実行される日を待った。


 ※ ※ ※


 そして決行当日、ノートPCを開き、予定通りに警備用カメラとセンサーに侵入する準備を整え、連絡を待っていると、指定された時間の10分前にコウから連絡が来た。

 作業の邪魔なので、スピーカーモードに切り替えた。


『準備はいいですか?』

『ああ。いつでもいい』

『では、予定時刻に警備機材を停止。その後は待機』

『わかった。約束は守ってもらうぞ』

『もちろんですよ。中国人にとって最初の契約は取引開始のご挨拶ですからね。同士として今後もよろしくお願いしますよ』


 何にも臆する様子もなく、コウは言った。

 しばし無言の時間が続き、PCのリマインダーが作戦開始時刻の1分前を告げた。

 紅谷は堂々と自身のアカウントを使い、オンラインの社内に侵入した。

 リモート勤務だから、自分のアカウントが表示されていても、誰も咎めない。

 易々と警備機材用のPCにログインし、コマンドを打ち込んだ。

 コウから要望された時間は30分、その間だけカメラとセンサーを止める設定を書き加えた。


『予定時刻より30分間、機材を止めた』

『ご協力に感謝しますよ。作戦終了後、連絡します』


 嫌になるほど上機嫌な声でコウは電話を切った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ