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陰の影と夜区域  作者: ▽▲▽▲▽
6/8

■chapter1-5 「新たな家族」

◇後書きにTopics◇

◇sideクロム


「しかし、人型の"影"を逃すのは如何なものかと……」


「ここの地区の担当者は別におる。……君らが担当している筈の地区には今、巡回者がおらんことになるけど……大丈夫なんかな?」


「……っ、了解いたしました、フェノール警視」


「分かったらさっさと行き……今なら報告せんでおいたる」


「はい!」


バタバタと足音が遠くなっていった。

……そろそろ大丈夫だろうか。

先程、ネオンと名乗った少年を護るように後ろ手で制しながら音を立てぬよう立ち上がる。

警察の声が聞こえた方向を息を殺して注視する。

もし、まだいるのなら不味いことになるだろう。

暗闇の中目を凝らすと――目があった。


目があった!?

警察か?でも警察なら目があった時点で此方を捕える為に動くだろう。

なら、誰だ? 

……そういえば、先程フェノール警視、と呼ばれていた人物が俺達を追っていた警察を咎めていた。


まさか、俺達の事を庇ってくれた……?

いや、まさか。

というか警視にしては声が若かった。

俺と同じくらいか少し下か……口調も軽かったし……これは関係ないか。


訝しさを感じながらもう一度路地裏の先を見たが、もう誰もいなかった。


ふと視線を感じて振り返ると、ネオンが不安そうな表情(に見える)で俺を見上げていた。

俺はネオンと目線が合うようにしゃがみ、できるだけ優しく話しかけた。


「今度こそ、もう大丈夫だ……怪我はしてないか? 地面は冷たくないか? えっと……白衣しかないな……その格好じゃ寒いだろうし、これ羽織って」


着ていた白衣を脱いで、ネオンの肩にかける。

触れて気がついたが身体が小さく震えている。

……余程怖かったのか……それもそうか、大人が殺意むき出しで追ってきたら怖いに決まってる。

ネオンは、何も悪い事をしていないのに。


「あ……ありがとう、ございます……これ……いいんですか?」


「勿論、もっと分厚い服があればよかったんだけどな……それだけだと寒いだろ?」


「いえ! だ、大丈夫です。……あったかいです」


「それなら良かったよ。あ、そうだ……さっき言いそびれたんだが……家、無いんだよな?」


「あ……は、い……ない、です」


「じゃあ俺の家に来るか? もう一人同居してるやつがいるけど……とても良い奴だよ。路地裏に居るよりかはずっといい筈だ」


「……助けてくれただけじゃなくて……家まで……い、いえ……大丈夫です。これ以上は……いい、です」


「だが……このままここにいても……その、また追われることになると思う。俺と、俺の仲間……ニトロならネオンを守ってあげられる」


「でも! それ……クロムさんに迷惑しか、かけてないです……そんなの……」


「申し訳無いか?」


「……はい」


「俺は……今ここでネオンを置いて行ったら寝付きも夢見も悪くなる。……そして、一生後悔すると思う」


「なんで、ですか」


「俺はな、昔から運が悪いんだ。機械は壊れるし理不尽に怪我を負うこともあるし。……でも、人と出会う運だけはある、と思うんだ。両親もニトロも……俺には勿体無い位良い人間なんだ」


「……僕は、生きてるだけで皆を不幸にするんです」


「……なんでだ? 少なくとも俺は不幸だなんて思ってない」


「だって、皆僕を追ってくるし……お母さんは、僕の事を捨てたから……」


「俺はネオンの事、傷つけないし、捨てない。絶対に」


「……いいん、ですか?」


「何を今更。勿論だ」


目元に涙を浮かべ、震えているネオンをそっと抱きしめる。

一瞬小さく身を震わせ、俺の服をギュッと掴むと俯いて泣き始めた。


挿絵(By みてみん)


「ふ、ぅ…………うぅ……」


声を抑えて泣くネオンをより強く抱きしめ、背中を撫でる。

数分もすると泣き止んで、そっと顔を上げた。


「も、もう、大丈夫、です。その……早く行きましょう。警察に見つかったら大変、ですから」


「あぁ、そうだな……それじゃあ、行こうか」


手を繋ぎ、家に向かって歩き出す。

ふとネオンが問いかけてきた。


「そういえば……最初に逃げるとき、警察の人に何をしたんですか?」


「あぁ……あれは、俺の〈能力〉だ」


「〈能力〉……クロムさんの……」


「そう。俺の〈能力〉は……ざっくり言うと、感情の操作だな。警察の俺達に対する警戒心や不信感を消したんだ」


「そんな事が出来るんですね……!」


「まぁな、……まぁ、距離が開くと解除されるのがちょっと痛いけどな」


「でも、とても凄い事だと思います」


「ん、ありがとな……あ、あれが俺達の家だ」


コンクリートで出来た建物を指差す。

路地裏の奥の目立たない所にあるため、警察が来る事も殆どない。

鍵を開け、扉を開ける。

先にネオンを玄関に入れてから扉を閉め、部屋の中に居るであろうニトロに向かって声をかけた。


「ただいま、ニトロ」


「お、お邪魔します」


「お―おかえ――ん? 誰だ?」


「この子はネオン、訳あって帰る家がないそうだ……うちに住まわせてもいいだろうか?」


「まぁ、その容姿じゃあ外に居たら"影"に勘違いされて追われそうだからな」


「まさにそうだったよ……実際追われたしな」


「あ、そうだったのか……で、ネオン……だったか? ちょっとこっちこい」


「は……はい」


ドアの近くで俺共々立ったままだったネオンがニトロに声をかけられ、大人しく近くに寄る。


「……今から俺様が聞くことに正直に答えろ」


「はい」


……〈能力〉を使ったか。


「お前は、俺達に危害を加えるつもりは無いんだな?」


「ありません」


「クロムの話に嘘はなかったか?」


「はい」


「……警察は怖かったか?」


「……はい」


ふっとニトロが俺と目を合わせる。

ネオンがちょっと驚いたように周りを見ている。


「おう、いいんじゃねぇか? 俺は構わねぇ……ベッドが届くには時間がかかるから数日はクロムのとこで寝とけ」


「そうだな……ネオン、改めてようこそ。……俺達の家に」


「え……? えと……は、はい」


何が起きたかよくわかっていなそうだ……あとでニトロの〈能力〉について話しておこう。


「それじゃあ俺、夕飯の買い出し行ってくる。家の案内は任せたぞ」


「分かった。気をつけて」


おー、と気の抜ける声をあげながらネオンの頭を乱雑に撫で、出ていった。

自分が居ては気まずいだろうと考えた彼なりの気遣いだろう。


「それじゃあ、家を案内するよ」


「あ、……はい、お願いします」


まずは一番近い洗面所だな。

家を案内すべく、ネオンの手を取って歩き出した。


◇Topics◇


【クロムの〈能力〉】

他者の感情を操作することができる。

人間、"影"両方に効くが、人間の方が効きやすいらしい。

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