第3章 回想 騎士たちは剣を掲げる ①
「今日から貴様らは全員、騎士としてこの国の未来のために忠義を尽くしてもらう! 騎士団に所属する以上、私の命令には絶対だ! いいなッ!!」
「はい!! 騎士団長殿!!!」
壇上の上にいる筋骨隆々な大男に、俺たち騎士見習いの訓練兵は一斉に頭を下げる。
ここにいる人間は全員、騎士団の入団試験に合格した猛者たちだ。
これから先、俺は彼らと共に王国騎士団の一員として働くことになる。
憧れの騎士になれた達成感に、俺の胸は大きく高鳴った。
「ではこれより、貴様らを3つの班に配属する。各班の班長は試験で優秀な成績を修めた者を私が選抜し取り決めた。まず、第1班班長、ギルベルト・リェルス・ゼクトレイシア! 前へ出ろ!」
「はっ!!」
壇上にいる騎士団長に名を呼ばれ、1人の青年が前に出る。
黄金のような髪と青い瞳をした、快活そうな好青年だ。
年齢は恐らく、俺と同じ十代後半くらいだろう。
彼は呼ばれるのが分かっていたかのように、自信に満ち溢れた笑顔をその顔に浮かべている。
「やはり、ゼクトレイシアの嫡子が第1班班長か・・・・」
「そりゃ代々騎士団長を務めるゼクトレイシアの人間だからな。次期騎士団長の登竜門と呼ばれる第1班班長に任命されるのは当然の結果だろ」
周りにいる訓練兵たちからそんな会話が聞こえてくる。
ゼクトレイシアというのは、剣聖と呼ばれる特別な力を持った一族のことだ。
その血族の者は皆等しく剣と魔法の才に恵まれ、古来から英雄として崇められてきている。
まさに、聖騎士になるべくして生まれてきた存在といえるだろう。
俺も、そんな剣聖ゼクトレイシアには少なからず憧れを抱いている。
「第1班班長が剣聖の末裔か。ならばぜひ、俺も第1班に入りたーーーーー」
「次に第2班班長、ロクス・ヴィルシュタイン。前へ出ろ」
「・・・・・へ?」
予期せず名前を呼ばれ、思わず呆けた声を出してしまった。
そんな俺の様子を見て、騎士団長は眉を潜める。
「何をしているロクス! 前へ出ろ!」
「は、はいっ!!!!」
急いで壇上の前へ行き、ギルベルトと呼ばれた青年の隣に立つ。
「ロクス・ヴィルシュタイン? あいつはどこの家の者だ?」
「第2班班長に選ばれるくらいだから、どこかの貴族の出だとは思うんだけど・・・・ヴィルシュタイン? 知らない名だな」
「平民じゃないのか?」
「いやいや、平民が班長に選ばれる訳ないだろ」
がやがやと、訓練兵たちの中で騒めきが巻き起こる。
未来の副団長とも呼ばれる第2班班長に選ばれたのが、俺という実力が不確かな存在だったからだろう。
故に彼らの困惑は正しい。
何たって選ばれた当の本人ですら、わけも分からず混乱しているのだから。
(い、いや、本当に意味が分からん! 何で俺が班長!? 魔法も使えない平民の俺が何故!?)
ひたすら思考してみても答えは出きそうにない。
額から汗をダラダラと垂れ流しながら、俺は目の前に並ぶ訓練兵たちを眺めることしかできなかった。
「最後に第3班班長、レヴィニア・エイン・アルケティウス。前へ出ろ」
「・・・・・・・はい」
騎士団長の呼び声に応じ、群衆の中から藍色の長い髪をした女性が姿を現す。
こちらも俺と年齢は差して変わらないだろう。
17〜9歳といったところか。
細身だがしっかりと腕や脚に筋肉が身についている。
その様子からして、相当鍛錬を重ねてきたことが窺える。
そうして俺がジッと観察していると、何故か彼女が凄い剣幕でこちらを睨んできた。
怯んだ俺は咄嗟に視線を違う方向へと向ける。
「では班長任命の儀はこれで終わりだ。次に、残った者たちから配属する班を取り決める。呼ばれた者は今決定した班長の前にーーーー」
「お待ちください!!!!」
騎士団長の言葉に被せるようにそう叫び、第3班班長、レヴィニアがずいっと前へ出た。
「何故、第2班班長がこのような何処の血とも知れぬ者で、勇者三傑の祖たるアルケティウスの私が第3班班長なのですか!? 理由を説明していただきたい!」
「・・・・騎士団長の私に異を唱えるか? 先程も言っただろう。試験の成績評価で決定したと」
「それは・・・・私がこの者より劣っていると?」
「そうだ。レヴィニア、お前はロクスより実力が劣っている」
「なッ!?」
信じられないものを見たかのように、目を見開き動揺するレヴィニア。
そして彼女は俺の顔に鋭い眼光を向け、口を開いた。
「ならば・・・・私は今これよりこの男に決闘を申し込みます!! それで私が勝った暁には評価を改めていただきたい!!!!」
「本来なら訓練兵の配属を取り決める義を邪魔立てするのは許し難い行為だが・・・・他にも疑問を抱いている者もいるようだからな。致し方あるまい」
「団長殿、感謝致します。では、宿舎前の模擬戦闘場をお借りしても構いませんね?」
「許す。だが、真剣と魔法は無しだ。ルールは模造刀で1本先取にしろ。私が審判を引き受ける」
「ありがとうございます。・・・・ほら、行くぞ、ロクス・ヴィルシュタイン!!」
「え? いや、いきなり意味分からん!!」
こうして俺は騎士団に入団早々、目つきの悪い変な女に決闘を申し込まれたのだった。
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