第66話 いざ、リア充の巣窟へ!!
◇◇◇
日本海側の海水浴場に着くまで、僕たちは車のなかで2人きり。
僕の方は早々に話題が尽きていたので、ほぼほぼサキさんの話に乗っかる形での会話になってしまったんだけど。
サキさん、話もめっちゃくちゃ面白い。
何なんだ? この完璧人間。
(ていうか……なんでこの人、僕なんか誘ってるんだろう……?)
もっといい人いるんじゃないの?
手を掛けなくても顔が良くて、運転もできて女の子のエスコートもスムーズな感じで、デートのプランとかもばっちり立てられて、金持ってる男……って、自分で考えてて段々悲しくなってきたぞ。
(年下好き? 女子高生好きの男みたいなノリ?)
うーん。わからん。
────そんなことを考えていたらあっさりと海まで着いた。
早朝出てきて、今もまだ朝といえる時間なのに、すでに真昼のように暑い……海水浴客もいっぱいいる。
海水浴場から少し離れた駐車場に車を停め、僕は自分の荷物とクーラーボックスを持った(重い)。
「持ってくれてありがとう」
「あれ、水着ってどこで着替えるんだろ?」
「あそこだよ」
サキさんが指差すのは、海水浴場手前の建物。
休憩所のように見えるけれど……?
「あそこで更衣室とシャワー室が借りられるんだって」
「そ、そうなんだ」
当たり前のように教えてくれるサキさん。
連れてきてもらっておきながら、事前に調べるぐらいしとけよ、と、自分に突っ込んだ。
着替える前に、すでに込み合い始めている砂浜のなかで僕らの場所を確保する。
レジャーシートなんて敷いたの何年ぶりだろ?
サキさんが借りてきてくれたパラソルを立てる。
「あ、貴重品って預かってもらえるかな……」
「うん。預かってももらえるけど……防水の貴重品入れも持ってきたよ」
「準備いいね!?」
そっか。サキさんは海水浴に慣れているからなのか??
「でも2人とも財布出しててもアレだしね……私が立て替えて、あとで折半する?」
「いやそれも申し訳なさすぎるから」
話し合って、お互い5000円ずつ現金を出してスマホとともにポーチにいれておき、残りのお金は海の家に預けることにした。
1人が砂浜に置いた荷物の番をしながら、1人が着替えることになり。
僕が先に着替えて、断熱シートをかけたクーラーボックスを抱えながらサキさんを待つ。
(…………海だなぁ)
込み合う砂浜には若い男女がいっぱい。
家族連れとかはほとんどいない。
(リア充の巣窟……)
最近の水着は結構、服っぽいデザインのものが多いのか、女の子もそこまで露出してない。
だから、どこを見ても目のやり場に困るということはないんだけど……それ以上に、おしゃれ男女のリア充エネルギーにめっちゃ気圧されている。
いまさらちょっとビビり始めていると、若い女性たちがこちらをチラチラ見ているのと目が合った。
(何!? え、僕別に見てないよ!! 盗撮もしてないし!!)
そもそもスマホはポーチの中だ。
3人の女の子たちはクスクスと何か笑いあっている。
なんだろう。陰キャだと見抜かれた?
『こんなとこ来てんじゃねーよ』
とか陰口叩かれてる?
って、近づいてきた!!
なんで!?
「あのぉ、こんにちは」
「……なにか?」
女の子グループの1人に話しかけられ、キョドりそうになる自分を抑えながら答える。
「1人ですか?」
「?? 友達と来てますけど?」
「お友達はどこに?」
「良かったら一緒に遊びませんか??」
「…………へ?」
何だろうこれは??
一瞬きょとん、としたら後ろから「お待たせーっ」とサキさんの声がかかった。
と、思ったら、何者かに後ろから腕を取られた??
振り返ると、水着の上にパーカーを羽織ったサキさんが、僕の腕をがっちりホールドしていた。
……いや、サキさん!! めちゃくちゃ当たってるんですが!?
「どうしたの?」
「ええと……」
女の子たちは、「あぁ、すみません大丈夫です~」と言いながら後ずさり。
「彼女連れかぁ」「ざんねん……」
とか言いながらどこかへ行く。
(????)
よくわからない女の子たちがいなくなったけど、そんなことより腕が引き続き、水着姿のサキさんにホールドされている。
触覚的な問題もあるけれど、艶やかな白い肌と濃いブルーの大人っぽいビキニのコントラストが、視覚に刺激的すぎて……。
「あ、あの……サキさん?? ……いてっ」
サキさんはコツン、と拳骨で僕の額を軽くこづいた。
「隙ありすぎ」




