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第59話 呼び出された真の理由……これが?



「……やっぱり、警察に介入されるとマズイっていう自覚はあるのかな」



 僕は呟く。

 ボイスレコーダーから聴こえてくる声は、いずれも女の子だ。

 男子が仕切っていると思っていたので、それはちょっと意外だった。


 家のなかのみんなは、静かにボイスレコーダーの音に耳をかたむける。



『――――っていうか坂木。めっちゃめちゃ神宮寺に嫌われてんね。

 あんたはもうナシね?』


『え!! いや、それは私だけのせいじゃないでしょ!?』



 坂木さんの声が入ってきた。



(ナシ?とは?)



 何の話だろう?



『うん、やっぱり坂木はナシでしょ。入ると逆効果ぽいから外れろよ。

 最初、自分が連絡すればすぐ落ちるって自信満々だったの、ほんっと、笑えるわぁ』


『そうそう。男どもも坂木も、役に立たないっていうか……』



 ますますわからない。

 落ちる? 何がどこに?



『おいおいおい。役立たずとか、勝手言ってんじゃねぇよ』



 いきなり男の声が混じった。



『そうだよ!!

 俺たち、おまえらがどうしても神宮寺を連れ戻してほしいっていうから、がんばったんだろ?

 それで警察に捕まるようなことになったらまじ理不尽なんだが!』


『捕まったら、おまえたち女子が主犯だって言ってやるからな!!』



 それに怯んだ様子の一切ない女の子の嘲笑が返ってくる。



『えー?

 もとはといえば、京都で神宮寺見かけて絡んで女の子に追っ払われたあんたたちが、神宮寺にギャフンと言わせたいみたいなこと言い出して、わざわざ京都までうちら呼び出したんじゃん』


『まぁ、旅行みたいで楽しかったけど!!

 でも、本当に笑えるよね!!

 あんだけ神宮寺を馬鹿にしまくってたうちらの中で、誰一人、神宮寺に勝てる大学行ってなかったって!!』


『…………いや、そりゃあんな良い大学行ってると思わねぇよ!!

 誰もあいつに関心なかったし、先生とかも言ってなかったし』


『あんたらが反射的にイジメにかかるほどのイケメンになってるし??』



 ぎゃはは、と誰かが笑う。

 なんかクラスにこんな笑い方してる女の子いた気がする……けど、名前はもはや覚えていない。



『ガタガタ言わないの。

 あんたたちのアリバイ工作手伝った分、男子が表に立って、女子のために神宮寺をこっちに呼び戻すって約束でしょ?』



(…………??)



『よ、呼び出したら、本当におまえらの誰かが神宮寺を落とすんだな!? 

 で、和解まで持ち込んでなかったことにできんだよな? 本当だな!?』


『落とすよ。うちの学年で最上位層だった女子が集まってるのよ?

 神宮寺が告白した相手は坂木だけじゃないしね』


『なんだかんだ最低ランクの扱いから一気に男って認めてもらえるわけで、神宮寺だって泣いて喜ぶでしょ』


『でも、なんで神宮寺なんだよ……』


『そりゃーさぁ、みんな見た目じゃ有名大学の女子たちには負けてないけど、結局大学生のモテなんて、8割大学名のブランドじゃん。

 あたしたちの大学じゃ、有名大学の合コンに呼ばれたりしない』



 なんか嫌な8割出た。

 そんなことないと思うよ?

 というかまず人間性見直そ?



『…………そんな中で、地元から超有名大学行ってる同級生がいて、それが180センチごえの長身で、イメチェンして超イケメンになってるなんて』


『そんなの、捕まえるしかないじゃん!!』



(…………誰の話?)



『神宮寺は頭良いというより、ずっとコツコツがんばってたんだよ。

 だから…………私、振るの嫌だったのに…………あんたたちがさぁ、神宮寺いじめる材料に使うからって』



 坂木さんの声。


(……………………)



 ごめん、いま頭のなかがキャパオーバーしてきた。



「…………橋元さんごめん、ちょっと止めて」



 僕の顔を見ていた水上さんが、サキさんに声をかけ、不快な音声は止められた。



「すみません」



 ……深く息をつく。止められて初めて、元同級生たちの会話を聴くのがとても苦しかったことに気づいた。

 水上さんに助けられた。

 僕はいまどんな顔色をしてるんだろう。



「…………ごめん、神宮寺くん、気づかなくて。

 ええとね、つまり今回のことは、元同級生の女子たちがカッコよくなった神宮寺くんと付き合いたくて無理矢理呼び戻そうとしたということ……の、ようです」



 サキさんが総括して、「いや、迷惑すぎっ!!」と新橋さんがコメントを付け加えた。



 僕も少しずつ落ち着いてきたけど、ごめん、いま本格的に女子がわからなくなってきた。


 いや、『女子』って言ったら主語が大きいな。たぶん全員じゃない。

 でも、少なくともこの同級生の女の子たちの思考回路はまったく理解できない。なぜ、ぬけぬけとそういう考えを実行できる?

 自分たちの誰かを必ず好きになるなんていう、わけのわからない自信はどこからくる?



「そんな女子ども振っちゃえ振っちゃえ。バッサリとずたぼろにめちゃくちゃに振っちゃえ」


「新橋さん。それができるコミュ力が僕にあるとお思いで?」


「ないな! 知ってた!」



 おわかりですよね!!

 自分で言ってて悲しくなるなぁ(涙)


 でも相手の動機がわかったのはホッとした。

 僕がその気がないと分かればそれで蹴りがつくだろう。

 直接話すという手もなくはないかも……。



 …………とか考えていたら、僕の携帯が鳴った。

 明王寺さんの番号だ。

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