表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/69

第48話 『ざまぁ』は人生に必要なのか。



「まえにも言ったよね?

 俺が素材だったら限界があるけど、もっといい原石の男だったら超イケメンにできるって」


「え、ええ……」(むしろ限界がある素材は僕なのでは?)


「最初に会ったときから、こいつ超イケメンになれるなって思ってたから、声かけた。それだけ」



 にこっ、と新橋さんは笑う。



「でも、もっとこう………やりやすい奴がよかったとか、思いませんでした?」


「えーなに、珍しいね。

 そういうめんどくさいカノジョみたいな質問するの」



 けらけら笑ったあと、そうねー、と新橋さんは考え、


「まぁ、他の男よりも、神宮寺をイケメンにしたかった、つーのはあるよ」


「それは、なんで……」


「ほっといたら遠慮しすぎで死にそうだから」


「!?」


「なんか、サークルの見学に来てくれてたときから、周りのみんなに遠慮してばっかりでさ。自己評価もひっくいし。

 ああ、これは周りがこれまで、この子をちゃんと評価してこなかったんだなぁ、と思ったら、腹立ってきて。

 その、会ったことないんだけど、腹いせもあってね。神宮寺が超イケメンになって、そいつらが度肝を抜かれればいい、悔しがればいい、って、そう」


「なんで………」


「なんつうか、世の中って理不尽で、たいていのことってやられたもの損、やられっぱなしじゃん。一矢報いたいときってあるよね」


 ぺたん、と、僕の横に新橋さんが体育座りして、続ける。


「まぁ、俺が中学のとき、やられる側、つーか搾取される側だったんですけど。それが嫌で、ちょっと上の方の高校行ったのね。いまの俺なら、そいつらにも反撃できるけど、やり返せる機会はもうない。

 それに、多分2度と会わない方がいい」


「それはどうして……」


「記憶は人によって違うからさ。あいつらの記憶をこちらにぶつけられた時に―――たとえばあいつらにとっては楽しく遊んでるつもりだったとか、加害してるとさえ思ってなかったとか―――さらにダメージをこちらが食らうかもしれないなら、触れない方がいい。

 とかいいつつ、モヤモヤしてんのはモヤモヤしてんのよね。大学にはいって精一杯リア充してるけど、あいつらが見て悔しがるほどじゃないし。

 俺はそんなんだけど、神宮寺はちがう」



 新橋さんは、ぺたぺたと、僕の頬を触った。

 水上さんの触り方に似ている、と僕は思った。

 もしかしたら、昔、誰にも言わずに付き合っていたことがあったのかも、と、ほのかに邪推した。



「僕も――――会わない方がいいと思いますか?」


「うーん。

 俺の個人的感想を言えば、神宮寺をバカにした奴に超イケメンになった神宮寺を見せて、悔しがらせて、それを撮りたい。性格悪いから」



 新橋さんが笑うのに、つられて、笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ