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第47話 再び修行期間を開始する?

◇◇◇



 2週間後。

 テストは無事終わり、僕たちは夏休みに突入している。

 たち、と複数形なのは、僕がひとりじゃないからだ。



 ―――友達いない歴18年の僕が、夏休みにひとりじゃない。


 大学入ってから色々なことがおきて、忘れがちなんだけど、よくよく考えればこれも、ものすごい奇跡だ。


 この世には、ぼっちだとかスクールカースト最底辺だとか非リアだとか名乗りながら、でも同性の友達は普通にいるなんていう人間がたくさんいて、特になにも言えない僕は生暖かい目で彼らを見ていたのだけど。


 いま僕には、友達がいる。

 男ひとり、女ひとり。

 なんと幸せな人間だろう。



「さんじゅう、、、いち! さん、じゅう、、、に!! さんじゅ、、、、」


「まだ32回だよー。あと12回、ふぁいとー。

 残り2セットねー」



 ―――――たとえ、それが、容赦なくゴリゴリにしごいてくる友達でも!!


 ただいま僕たちは、猛暑を避けて、大学の体育館の運動スペースにいる。

 おしゃれスポーツウェアの橋元さん、あらため、サキさんに足首を押さえられながら腹筋していたり。



「いちっ、、、にっ、、、さんっ、、、しっ、、、」


「頭を上下させない、天井から一本の糸で吊られてるイメージで、背筋を伸ばせ」


「なんかっ、三条さんが、やってた突きはっ、上下してたよっ!?」


「あれは忘れろ。テコンドーと空手のやり方は違う。

 ほら、前のめりになるな、手だけで突くな」



 大鏡の前で、鈴鹿くんに、空手の突きの初歩の初歩を習ったり、していた。


 ふたりともなかなかに、自覚なくスパルタなので、ひととおり『基礎』をやったら、わりともう動けません。



「いやー、神宮寺。

 体もイケメンになろうなんて、関心関心。

 いい先生たちが見つかってよかったねー?」



 そんな僕のトレーニングに。

 なぜかすべての原因―――元凶?―――の、新橋先輩までジャージ姿で遊びに来ていて、休憩時間にへたりこむ僕のまえにしゃがみこんで話しかけてくる。


 いや、新橋さんは恩人なんだけど。

 今となっては結構いろんな感情が一言で言えない状態でごった煮になってるけど。


 だけど。



「すみません、この前は………ありがとうございます」


「いやー、全然? いつでも先輩を頼りなさい」



 この間の事件の直後。水上さんから連絡をもらったという新橋さんは、わざわざ僕の家まで来てくれた。


 生活は容姿にも表れる。

 ということで、生活が荒れていたことに、ちょっとお説教を食らった。

 その後、素直に先輩の助言に沿い、顔の洗い方、保湿、眉の手入れを見直した。


『よしよしまたイケメンになった』

と満足そうに呟かれると、ちょっと嬉しい自分がいたりする。我ながら、チョロい。



「体を鍛えたい、というわけでもないんですよ。

 やっぱり、自衛とかできるようになりたいなぁと思って。

 男ですし」

 


 ほっといてほしいのに絡んでくる、昔の同級生たちのような人間もいるとわかったし。

 僕は遠く離れた場所においた、自分の荷物に目をやった。

 携帯は電源をきって、バッグのなかにしまっている。


 ――――ここ最近ずっと、携帯に、元同級生の女の子からの連絡が入ってくる。

 明王寺さん経由で、僕の同級生たちが知ったんだろうか?

 ずっと無視しているけれど、しつこく続いている。


 まだ僕を、放っておいてはくれないみたいだ。



「自衛ね!

 たしかにうちには鈴鹿も三条もいるし。

 強いって良いよなぁ。。。。

 まぁ俺は賛成ですよ!」



 今日も明るい新橋先輩。

 表情豊かで、くりくりとした目はいつも、ポジティブだ。


 僕はふと、聞いてみたくなった。

 



「新橋先輩は、どうして僕を改造しようと思ったんですか?」



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