表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/69

第31話 僕は女の子がわかりません!



 ほかでもない、僕の部屋の僕のベッドの上に、2人でいる。



「あ、おはよー神宮寺くん」



 僕の腕のなかで、ぱちっ、と目を覚ました橋元サキさんは、特に驚くことなく、布団の中をずずっとのぼってきて。

 その綺麗な顔が、僕の前まできた。

 僕のからだと手に触れるのは、たおやかな体と、すらりとしながら筋肉で締まったふとももの感触。


 すっぴんでもやっぱり美人。

 至近距離。

 はだきれい。

 目のやり場に困る。

 着ているのは……僕のTシャツ。昨日の夜寝るときに、Tシャツと、運動用のハーフパンツを貸していた。



「橋元さん、確認したいことがあるんですけど」


「ん?なに?」


「確か僕、昨日、床に寝てたよね?」



 昨日の夜、自分のベッドを橋元さんに明け渡し、僕は床で眠りについたはずだ。

 まさか、寝ぼけてベッドに入っちゃった?



「ああ、神宮寺くん、眠ってる時になんだか寒そうだったから。

 ベッドまでひっぱりあげちゃった」


「へ!?」



 ひっぱりあげたって!?

 その細腕で!?

 僕、体重67キロあるんですけど!?

 しかも、ひっぱりあげられた記憶もないって、僕はそこまで眠り込んでたってこと?



「まぁ気にしないでよ。梅雨で微妙に冷えるしさ。

 一緒に眠ったほうがあったかいじゃない」


「いや、気にしますよ?」



 布団の中で橋元さんを抱くかたちになっている、僕の手。

 壊れ物みたいな女の子の感触には、まだ慣れない。

 すすすっ、と、僕は手を引く。



「……起きる、ね」


「そうだね」



 僕が体を起こすと、ごく自然に僕によりかかるように橋元さんが上半身を起こす。

 もたれかかられ、宙に浮いた手が泳ぐ。

 


「……あの、橋元さん? 近くないですか?」


「んー? まだちょっと眠くって」



 ……………だから、あの、そういう距離感やめてください?

 いま朝だし、その。下半身が朝なのでね?


 それにしても、ここからどうしようか、と困った僕の目に、ベッドの下に落ちた携帯が目に入った。一件連絡が入ってる。

 手を伸ばして、携帯を拾う。



「どうしたの? 誰かから連絡?」



 あたりまえのように、橋元さんが寄っかかりながら、僕の顔をのぞきこむ。



「ああ、うん……なんか、サークルの、柴田さんから連絡。

 今日講義が終わったあと会わないかって」


「おお?

 それって、告白というやつですか?」



 なんか橋元さんが楽しそうに言ってくる。

 ラーメンを一緒に食べに行った時も、水上さんのことを友達の恋バナみたいなノリで聞いてきたし。

 単にこういう話が好きなのだろうか。



「いや、それはないと思うよ……?」


「なんで?」


「だって…………」



 柴田さんは、鈴鹿くんがサークルに来る前は、僕をちやほやする一人だったけど、鈴鹿くんが来始めて以来、柴田さんはわかりやすく、完全に鈴鹿くんに夢中になっていた。

 先日柴田さんは鈴鹿くんに告白したそうで。

 鈴鹿くんは断ったそうだけど、少なくとも彼女の好きな人は鈴鹿くんなんだろう。


 ……とは、さすがに、橋元さんには言えない、か。



「もし告白だったとしたら、OKする?」


「え?」


「ここまで神宮寺くんを見ていて、誰のことが好きか、わからないんだよねぇ。

 唯一、この人かなって思った人は、神宮寺くん自身に否定されちゃったし」


「………」



 橋元さんが言ってるのは水上さんのことだ。

 そして僕はまだ、水上さんにどんな気持ちを持っていると明確に言葉にできない。

 正確に言えば、橋元さんにも現在進行形で揺さぶられている。



「告白だったら、OKする?」


「……しないよ」


「そっか。よかった!」



 橋元さんは笑顔を見せて、ベッドから立ち上がった。



「顔洗ってくるね」



 すらりとした後ろ姿に、昨日から僕は翻弄されてばかりだと感じた。

 橋元さんについてわかったこともあるけど、もっとわからないことが増えた。


 なんか僕は、『ちゃんとした恋愛』とは違う道でばかり迷っているような。

 ふうっと力が抜けて、ベッドに背中をつけた。

 僕が未熟なんだと思うけど。女の子が、わからない。



◇◇◇




 その日の5限終了後。



「最初に会った時から、好きだったの。

 どうか、付き合ってください。お願いします」


 (注※柴田さん)





 人生初めて自分が受ける告白は、3日前に僕の友達に告白して断られた女の子からでした。




 ――――――僕には女の子がわかりません!!!




◇◇◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ