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第13話 頼むから仲良くしてくれない?といえる男になりたい。

◇◇◇



「すごく雰囲気がいいお店だね!!」



 (たぶんわざと)少し大きめな声を橋元さんがあげたけど、僕は「う、うん……」とうなずくだけだった。



「まぁ、キミはあんまりこのあたりには来れないものね」



 特徴的な声で、ニッコリと笑いながら言う明王寺さん。


 さりげない言葉だけど、医学部(=当然うちの大学のなかでいちばん偏差値が高い)の彼女が言うと、ひとりだけ大学が違う橋元さんをディスっているようにも聞こえる。


 橋元さんは気にしない風で「そうだね、もうちょっと京都探索しなきゃねー」とか言いながらコーヒーを飲むけれど、ここは僕がなにか明王寺さんをたしなめるべきなんだろうか?



 胃が、ちょっとキリキリ痛い。



 僕と同じテーブルに座っている5人の女性。


 僕の隣から向かいに移動した橋元サキさんと、やんわり彼女に捕まるように、やや僕から遠い位置に座らされた明王寺まほろさん(胸をテーブルにのせている)。


 他の3人、山田さんと半村さんと柴田さんは、まだ名前を覚えているだけだ。

 ひとりは先日お弁当を作ってきてくれて、ひとりはクッキーを作ってきてくれて、ひとりは僕が怪我したときに絆創膏を貼ってくれた。

 みんなかわいいけど、なんとなく3人似た感じの流行りのファッションだし、圧倒的に橋元さんと明王寺さんから話しかけられる頻度が多いから、まだいまいちキャラがつかめない。

 


 その計5人に、極力公平に視線を送るように、僕はつとめている。



「ねぇ。神宮寺くんはひとり暮らしなんだよね?」

「どこに住んでるの?」

「――――丸太町の近く」



 待たせていい、という鈴鹿くんの言葉を反芻しつつ、考え、整理しながら言葉を返す。簡単には特定されないように。



「それ前も聞いたけど、結局家がどこなのか教えてくれなかったんだよねー」

「――――あ、はは……」


 明王寺さん押しかけてきそうだから恐い。



「土日普段何してる? 新橋さんと仲がいいけど、遊びにいったりしてるの?」

「(遊びというか何というかだけど、まだ色々連れていかれたりはしているので)うん」


 抜け目のない橋元さんは、早々に新橋さんに取り入って、先輩たちに可愛がられる存在になっていた。



 ―――女の子同士で会話してくれればいいのに、なぜか僕にばかり話しかける。

 ―――僕自身は、薄氷を踏む思いだった。



 恐かった。

 なにか僕が失敗したら、それひとつでこの場が爆発炎上するんじゃないかという恐怖で。

 やましいことは何一つないはずなのに、罪悪感に襲われる。


 アニメやマンガやラノベでこういう場面を見ても、全然平気だったのに。実際になってみると、冷や汗しかない。

 そういえばそういう作品って、主人公が、自分がモテていることに気づいていないんだよな………

 僕も気づかずにいたら、楽だったのかな………

 ………ということは、諸悪の根源はあなたですか新橋さん?



「あ、そうだ。新橋さんがね。延期になってた新歓コンパ、来週土曜にどうかって言ってたよ」


「ああ……そっか、ずっと延期になってたんだった」



 そもそも、新歓コンパに向けて見た目を改造しよう!という話だったし、その新歓コンパはゴールデンウィーク明けに開かれるはずだった。


 だけど延期になってしまった。

 僕より先に入部した男子の1回生が、都合によりしばらくサークルを欠席していたためだ。

 いまはもう、5月も終わりかけている。


 その彼は先日サークルに復帰したし、あとからあとからサークル見学にやってきた女の子たちも無事入部届けを出してくれた。

 タイミングとしてはそろそろいい頃なんだろう。



「店は2回生の先輩が選んでくれるらしいから、みんなの都合を聞いて出欠集めてほしいって。

 神宮寺くんは来れる?」


「――――うん、予定を空ける」



 その時、女の子たちの目がひそかに鋭く光ったような気がしたけど、僕はもう、気づかないふりをした。



◇◇◇

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