永遠を求める聖女
俺様の超感動的なスピーチから二か月が経った。
相変わらず、王都の愚民共は俺様の話題で持ちきりだけどな!
(あの時の快感と来たら、たまんねぇわ。ちょっと前には偉そうな学者みたいな奴も俺様を訪れて来たし……クックック。あれは間違いなく俺様の伝説を書くための著者だな! 俺様もいよいよ偉人かぁ)
まあ、生まれた時から宇宙一偉かったしな。
こうなるのも当然ってもんだぜ! ガハハ!
おっと、考えに耽るのも悪くねぇが、これからまた旅が始まるんだから準備を急がねぇとな……。俺様の最終目的の旅がようやく始まるんだぜ!
なんと! 不老不死の薬が見つかったんだよ! なんでも異国の地にある、不死山とかに神が残したとされる永劫の薬とやらがあるらしい。
それを聞いた俺様は最速で愚王の元へ行き、こう進言したんだわ。
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「国王陛下。永劫の薬の処分を……私に任せてくれませんか?」
「なっ、聖女よ……処分するのか? 不老不死の薬を」
「……私達、人は短い生命だからこそ、必死に生き、老いて、輝いていくのです。それを歪めるような悪しき薬を……決して許すわけには参りません!」
「お、おおお……なんと気高き精神。わかった、この案件は聖女に任せよう!」
「ありがとうございます、国王陛下」
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思い返してみても、アホだろあの愚王。
永遠の命に勝るものなんてあるわけねーじゃん。愚かすぎるわ。
まっ、あいつがアホなおかげで俺様は永遠を独り占めできるっつー訳だがなッ! クククク……ウハハハハ!! なんか最近笑ってばっかりだな!
宿の外に出ると、俺様以外のメンツは既に準備が完了していた。なんだか遅刻したみてぇで面白くねぇな。いや、一番大物っぽい登場だからむしろこれでいいのかもしれん。
「すみません、お待たせしました……(大物なのに謝れる俺様は偉いよなぁ)」
「いや、謝る事なんてない。俺はクリスのためなら何時までも待つ」
「そうだよ~。お姉ちゃんが謝る事なんて何一つないんだよ」
「行こうよクリス! また四人で旅に出れるなんて、あたし嬉しいんだ」
黒いフードを被って全身外套で覆っている不審者、アレフ。
なんか、変なマントをいつの間にか付けてるクソガキ、リノ。
ハヤト専用の糞ヤリマンで股が緩すぎる実の姉、アリア。
はぁ、相変わらず……ロクな仲間達じゃねぇな……。俺様に釣り合ってねぇわ。
もっとも、優しさと知性を併せ持つ聖女の俺様に釣り合う仲間とかいねぇか。
…………まあ。不老不死の薬を飲むまでは、仲間で居てやるか。
こいつらとの付き合いも結構経つからな。情とか全然湧かねぇけどよ。
たまには、その……労いの言葉くらいは……掛けてやってもいいっつーか……。
ああもうッ! うぜぇな。今のはなし! めんどくせぇことはなしだなし!!
俺様は自分の為、不老不死の薬を手に入れて永遠の存在となる!
そして超女神的存在と化すんだ! 全て自分の為に動く、それだけだ。
何なんだかな。伝説達成してる所為か、ちょっと気持ちが甘くなってんな。
大体そういうキャラじゃねーだろ。……ん、どういうキャラなんだ俺様って。
こいつらという戦力をあくまで利用するだけだ、いわば道具。
王国も、愚民も、この三人も……全ては俺様を引き立たせるためにある!
よし、何時もの調子出て来たな。行くぞゴミ共! さっさと不老不死になりてぇんだよ。俺様も、もう十七歳になるんだ……モタモタしてたら少女って歳じゃなくなるぜ。ババアのまま永遠になっても仕方ねぇんだよ!
待ってろよ不老不死! 永遠の美! 永遠の十七歳!
「それでは皆さん、今度の旅も宜しくお願いします(不老不死! 不死!)」
「任せろ、俺が……お前を護ってやる」
「リノが……お姉ちゃんの全部を護ってあげるから、ね?」
「任せてよクリス! あたしもこの義手を付けて、パワーアップしたんだから!」
ああ、何かアリアが左腕の義手を見せびらかしてんな。
そんなもん付けたからって、元が雑魚のヤリマンが強くなるわけねーべ。
どうせなら、義手に大砲でも仕込めよ。紐引っ張るとボン! とかかっこよくね?
「アリアさんは、そんな強そうに見えないよ?」
「リ、リノちゃん……何かひどいよ。でも、頑張るからあたし! リノちゃんの事も、あたしが必ず護るからね!」
「あ、はい。期待してます」
「ううっ……なんか、あまり期待されてない気がする……」
ぶははっ! リノからも馬鹿にされてるし、マジで剣聖って情けねぇなおい。
おっ、アレフもアリアに何か言い始めたな。ほら、もっとへこめ!
「アリア、クリスは俺が護る。お前はリノを護ってやれ」
「ア、アレフ……うん、わかった。……あ、あのさ! いつか、アレフに許してもらえたら……一緒にクリスを護らせてくれないかな?」
「…………ああ。その時は頼む」
「!! よ、よーし! 何だかヤル気湧いて来たかも、あたし!」
あ? いや、俺様を置いて変な会話を始めんなよおおお!? 空気になるだろ!?
なんでだ!? 俺様は伝説の聖女様だぞ! 俺様を中心に会話しろよ糞共がッ!
アリアと話す時は、まず馬鹿にすることを念頭に置いて話してくれッ!
「それでは、参りましょう。異国の地へ!(こっち見ろ! 俺様を! ルック!)」
俺様の気合が入った呼びかけに全員がこっちを向いて賛同する。
それで良いんだ……あくまで、俺様がリーダーなんだ。もっと忖度しろ。
はぁ……なんだか、伝説達成した割にいつもと変わらねぇ気苦労なんだが。
だが、それもあと少しだ。不老不死になれば……。
永遠の美を持った俺様は独り立ちできる! もうこいつらの力に頼る必要も無くなるんだ! 気合入れて頑張るしかねぇ!
そしてその時こそ、真の俺様の時代が始まる時だぜ。
救世の旅は……伝説を作る旅は永遠に続くんだ!
さあ――――俺様をもっと崇めろ!
『異国の地 最終メンバー』
聖女 クリスティーナ 17歳
剣聖 アリア 18歳
勇者 リノ 12歳
魔王 アレフ 18歳
次で終わりです!