ダイジェスト
疲れ果てた俺様たちの目の前には、漆黒の色をした巨大な扉がある。
この中に魔王の奴がいるはずだ。
ここまで長く苦しい戦いだった……。
あんなに居た討伐メンバーの数も、今じゃ四人。いつものメンツしかいねぇ。
ここに来るまで、何があったのか……話せばちと長くなるぜ?
***
……城門前に集結したまでは良かったんだよ。
俺様がした格好良い士気上げの宣言と共に、兵士共もやる気に満ちてたしな。
ところが、だ。急に上から蒼い竜が来やがったんだ。
おそらく魔城を守る番人みたいなもんだったんだろうな。
そいつが糞強いのなんの! 見た目は火竜の洞窟に居たのと似てたんだが、強さが別物でよ。巨大な火球一発であっという間に三十人いた王国騎士団は半壊したわ。
俺様の防御魔法もすぐぶち破られるしよぉ……。
もう帰りたくなったな、あそこら辺で。まだ城に入っても居ねぇのにな。
アリアは剣を抜いて「くっ、届かないッ!」とか独り言言ってるし、リノは俺様に怖い怖いって抱き付いてるだけ。王国騎士共は上空に居る蒼竜に歯が立たねぇし、役立たずしかいねぇのかよ!って思ったわ。
幸いアレフの奴がすげぇ跳躍で竜の懐まで入って行って、何かすげぇ動きしてて、すげぇ攻撃してたら何時の間にか蒼竜の首が飛んでたけどな。
具体的に何してたのかは良くわからん。だって動きが見えねぇもん。
蒼竜の討伐が終わった頃には三十人いた兵士たちは、十人程度まで減ってたわ。
俺様はあの時悟ったね。ああ、残りも多分どっかで死ぬだろうと。
蒼竜を倒すと城門が大きな音と共に開いて中に入ることが出来た。
どんなシステムだよ。RPGじゃねぇんだぞ。
城内はかなり暗かったんで、俺様が強烈な光を使って周り全体を明るくしつつ先に進んだ。便利魔法はこういう時に役に立つんだよなぁ。
暫く進むと広い部屋に出てよ、そこは明るかったんだが何か嫌な予感がしたんだわ。案の定、奥からでけぇ魔獣が出て来た。あれって中ボスだったんかな。
全身盛り盛りの筋肉で出来たような身体に双角を携えた、どっかで見たような奴だったぜ。強さは、まあ……全身鎧で固めて突っ込んだ王国騎士が体当たりされただけで細切れに千切れて消し飛んで逝く程度にはヤバかった。
そんなやべぇ奴相手に俺様が何を出来ると思う? リノ抱きかかえて、早々に後ろに下がったよ。あんなの喰らったら終わりだろ、多分。
アリアは剣を抜いて「掛かってきなさいよ!」とか言いながら後ろに下がってるし、果敢に向かって行った王国騎士達はゴミみたいに蹴散らされて、残り三人くらいに減ってたな。
つーかアリアぁ!! こいつ役立たずすぎる。
ここに来るまで剣抜いてただけだからな、マジで!
幸いアレフの奴がすげぇ勢いで魔獣に斬りかかって行って、何かすげぇ攻防を暫くした後に、すげぇ光のビームみたいなの出したら、魔獣の身体に穴が開いて動かなくなってたわ。
具体的に何してたのかは良くわからん。ビームだけは見えた。
なんとか力を合わせて魔獣を倒した俺様たちは、先に進んだよ。
この時点で、もう七人しか残ってなかったんだが、まだやべぇのが居たんだ。
先に進んでる途中で王国騎士の一人が急に動かなくなってな、俺様が心配してる演技して近づいたんだよ。そしたら……。
小刻みに震えだした王国騎士の頭が吹っ飛んで、頭の無くなった体内からデカい蟲みたいなのが出て来たんだ。頭の代わりにウネウネ動くのが糞キモすぎて、思わず悲鳴を上げて後ずさっちまったよ。
俺様とリノは震えながら抱き合って、とにかくキモ騎士から距離を取ってたな。
アリアは剣を抜いて「一体何なのよあれッ!!」って叫んでたけど何もせず。
残り二人の王国騎士は、仲間の姿に憤慨して突っ込んでいったけど、頭部の蟲の口がガバッと大きく開いたかと思うと、目に見えねぇような速さで一人の王国騎士の上半身を食いちぎってた。
その光景を見てもう一人の王国騎士が急に怖気づいてよ。
逃げようとしたところを、蟲の口から吐き出された液体で全身溶かされてたな。
騎士の意地とか言ってたのはどうしたんだよ。情けねぇ話だよな。
つーことで、これで王国騎士団は全滅したってわけよ。
ああ、ちなみに蟲人間はアレフが倒したぞ。聖剣で一刀両断だった。一撃で倒されるとか、案外雑魚だったのかな……?
その後も色んな魔獣や魔族が襲ってきたが、力を合わせて打倒してやったぜ!
そして俺様たちは、四人でここ魔王の間までたどり着いたということだ。
***
「ようやく、辿り着いたわね……」
疲れた声で、アリアが言う。お前なんかしたか?
「そうですね、姉さん。この先に……魔王が」
俺様も疲れた声色で、アリアの言葉に続いた。
すると、リノの野郎が心配そうに俺様に近づく。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「リノ、大丈夫ですよ。犠牲になった方々のためにも私達は……」
「ああ、俺たちは勝つ。必ずな」
この中で全く疲れてない様子のアレフが俺様を励ますが、正直お前も魔王くらいに頭痛の種だってことに気が付いて欲しいんだよなぁ。
「ええ、アレフ。それでは皆さん、参りましょう!」
「分かったわ! あたしが……みんなを護るから」
「お姉ちゃんはわたしが護るよ」
「クリスは何も心配するな。早々に魔王の首を獲って終わりにしてやる」
巨大な漆黒の扉をアレフの野郎が強引にこじ開ける。
さて、いよいよ……魔王とのご対面だな!
俺様たちの力……見せてやるよ!




