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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第五章 聖騎士と平和で歪んだ日常
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理解

 デートの約束を取り付けたアレフがクリスの部屋を出る。

 アリアもそれに続くかのように出て来た。


 廊下には二人だけ。しばらくお互いが黙っていたが、やがてアレフが口を開く。


「アリア、さっきは助かった。おかげでクリスと……。上手くいけばもう一度、結婚の約束も復活できるかも知れない」

「う、ううん! あたしは、そんな、何にも。クリスとアレフがお互いを好き合ってるからこそ、上手くいっただけだよ」


 アレフに礼を言われ、照れたアリアは手を振って大げさに答えた。

 そんなアリアを見て、アレフは今までしなかった謝罪の言葉を口にする。


「それと、宿の入り口で言った言葉も謝っておく。ヤリマンなどと、事情も知らずに決めつけて酷いことを言ってしまったな。……すまなかった」

「ア、アレフ……。そんな、あたしは気にしてないからいいよ!」


 嘘である。本当はその件で先ほどから、ずっと引きずっていたのだ。

 その事を謝ってもらえて、アリアは物凄く嬉しい気持ちになっていた。


「……認めてはいるんだ。お前は、魔都でクリスを命がけで護ってくれたらしいじゃないか。クリスからも、酒場で狂人が来た時や、カルマから身を挺して必死に護ってくれたと聞いたぞ?」

「あ、あはは……まあ、護ったと言えばそうかもだけど」


 クリスはアリアの株を上げてアレフに宛がおうと、とりあえずあった出来事を全部アリアの功績にしていたようだ。確かに酒場については本当なのだが、カルマに至っては魅了されスリスリと媚びを売った挙句に、クリスに暴行しようとしていただけなのだが。


 本当の事を言ったら、アレフに嫌われてしまうと思い、アリアはクリスに感謝しつつ黙っていることにした。実際、訂正しようものなら真面目に殺されかねない。


「正直、お前が最初にクリスに誘われた時、俺はお前なんかすぐ死ぬだろうと思っていた」

「…………」

「だが、お前の覚悟は本物だった。お前が居なければ、ひょっとしたら今、俺はクリスを失って発狂していたかも知れない」

「あたしは……そこまでの事は」

「だから、そろそろ心からお前の事を許してやりたいと思ってるんだ。当時は、言葉ばかりで、お前の事を憎んでいた。心底な」

「……そうだったんだ。ううん、そりゃそうだよね。あんなにアッサリ許してくれるわけないよ」


 アレフの本音を聞いて、アリアは許して貰えていないことに気づいたが、特別驚きはしなかった。自分のやった事をあんなにもアッサリと許してくれる人間が、どこにいるというのだろう、と。


「アレフ、あたしを許してくれるの……?」

「ああ、許す――――」


 その言葉を聞いてアリアは一瞬顔を輝かせたが。


「と、言いたいんだが……無理だ」


 続く言葉は、望んでいたものではない。

 やはり、アリアは許されてはいないのだ。


「あっ……」

「許そうと、思っても、チラつくんだよ。俺に暴力を振って、嘲笑を浮かべていたお前が! 俺に見せつけるように、ハヤトに跨り腰を振って嬌声を上げていたお前が! 俺に暴言を吐き、見下していたお前が! そして――――俺を突き落として、満面の笑みを浮かべていたお前の顔が、忘れられないんだ」

「うっ……あっ……アレフ、あ、あたし……」

「わかってる。全部、洗脳だったんだろ? わかってるよ。そうじゃなきゃ、とっくに殺してるからよ」


 分かってると言いつつも、アレフの声色は血も凍りそうな冷たい響きを放っていた。理性では許したくても、他の全てがアリアを拒絶しているとでも言わんばかりに。


「俺にはもう、クリスだけなんだ。クリスと結婚して、クリスと幸せになって、クリスとの間に子供を作って……沢山沢山幸せになれば、お前の事も許せるようになるのかな……?」


 アリアは初めてアレフに再会したとき、意外と元気で良かったなどと思っていた。だが、違った。アレフはとっくに壊れていたのだと気づいてしまった。


 幼馴染三人に暴力を振われ、裏切られ、自身の存在を否定され、殺され掛けて、無事でいられるはずがない。しかも、助けたのは()()クリスだ。


 クリスですら、本心ではアレフを心配していたわけではなく、ただの強力な駒として扱うために演技で心配した振りをしていただけに過ぎない。実質、アレフの味方など勇者パーティには誰も居なかった。


 現在のパーティですら、味方と言えるのは正気に戻ったアリアだけと言ってもいい。……それも遅すぎた。何もかも遅すぎたのだ。


 アレフは聖剣を手にして、身体能力と共に精神も強化された。

 だが、そもそも聖剣を手に入れる前に精神が壊れていたなら無意味でしかない。


 クリス曰く見せ場である火竜戦での演技により、アレフは自分自身を追い詰めすぎて、あの瞬間……壊れてしまっていたのだ。アレフに止めを刺したのは、クリスと言ってもいい。


 哀れな英雄。まさに道化だ。

 それにすら本人は気づかず、クリスへひたむきな愛を捧げている。


 アリアを見るとイライラするのは、心のどこかで未だにアリアを大事に思っている部分がアレフに残っているからなのかも知れない。


 当時の暴力的なアリアを思い出すようになったのも、アリアがこのパーティに入って来てからなのだから。大事に思っているからこそ、憎しみも増すのだ。


 アレフの事情が分かったところで、アリアにはもうどうしようもない。

 後はクリスに祈るばかりだ。


「クリス……。お願い。アレフを、助けてあげて」


 アレフが自室へ戻った後も、アリアはただ廊下に立ち尽くしていた。




 一方、その頃のクリスはと言うと――


(恋人ムーブって……どうすりゃいいんだ?)


 真面目にデートを乗り切ることを考えていた。

 なんでもなりきって乗り越えようとするのがクリスの悪い癖だ。


(聖女の服でデートとか冗談じゃねぇから、私服で行きましょうとかつい言っちまったけど……何着りゃ良いんだよ)


 英雄と聖女が街でベタベタしてたら、クリスの伝説はあっという間に恋愛伝説に変わってしまう。それを避けるために、私服でのデートと言う事で手を打たせた。


 だが、村を出てから純白の一張羅(いっちょうら)しか着てなかったことが災いして、普段何を着ていたのか思い出せなくなっていた。


(買いに行くか……? いや、聖女が服屋に行くとかイメージダウンだろ。でも、他に着るもんねーんだよなぁ……あーめんどくせぇ)


 結局、自分で行くのが億劫になったクリスは、アリアとリノに頼んで色々な服を買ってもらう事にした。


 服のサイズやらどうしようかと思ってたのだが、何故かリノが胸のサイズから全部把握してたので、クリスは楽をすることが出来た。


 そして、一晩が過ぎた。

 恋人ムーブを完成させたクリスが、いざ出陣する!

最近疲れ気味なんで、続きは土日くらいになるかも。

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