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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第五章 聖騎士と平和で歪んだ日常
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応援者

短い

 あたしは、まだスラム街をウロウロとしていた……。

 完全に道に迷っちゃった。クリス達より、王都には長くいたのに、道すら分からない馬鹿だなんて……。


 あれから結構な時が経ってしまっている。おそらく、クリスはもう。


「うっううう……! あたしは、なんで肝心な時に何時もこうなの? 妹のために、助けを呼びに行く事も出来ないなんて」


 情けなくて涙が出る。道に迷った所為で助けに来てくれた妹を見殺しにしてしまうなど、馬鹿を通り越して愚か者だよ。あたしを、救うためにクリスは来てくれたのに、あたしは。


「結局あたし、何も出来なかった。役立たずのお姉ちゃんでごめんね……」


 妹を助けることも出来ず、助けを呼びに行く事さえしくじった愚かなあたしは、スラム街の街中でただひたすら、泣くことしか出来なかった。……もう動こうにも、身体強化の使い過ぎで、身体が重くて動かない。


「姉さん」


 なんだか、クリスの幻聴まで聞こえて来た。

 見殺しにした罪の意識が、こんな声を聞かせるのだろうか。


「あの、姉さん……こんな所で、何をしてるんですか?」


 また、聞こえた。え、これ、幻聴じゃ、ない? 涙で濡れた顔を上げる。目の前には、心配そうな顔をした――――クリスがいた。


「あ、あ、あ……あああああ……」

「姉さん? 本当に大丈夫で――」


 気付いた時には、クリスに抱き付いていた。……感触が伝わってくる。これは夢じゃない、嘘でもない、幻覚でもない。確かに、此処に居るんだ。


 スラムの街中で、大声でいきなり抱き付いたまま泣き出したあたしに、クリスは困ったような態度を取ってたと思う。当たり前だよね。でも、少し経った頃に宥めるような声でこう囁いた。


「もう、姉さんは最近泣き過ぎですよ?」


 そして、笑顔で優しく頭を撫でてくれる。

 これじゃ、どっちがお姉ちゃんなのかわからないや。


 頭を撫でられ、段々と落ち着いてきたあたしは、そのまま手を引かれながら宿屋への方向に向かって行く。クリスの方が、やっぱりしっかりしてるね。


 ……クリスなら、アレフを安心して任せられる。

 こんなに、優しくて人の事を考えられる子なら。

 それなら、あたしがやるべき事は……。


 うん、決めた! ずっと意地になってたけど、疼きから解放された今なら心から言える。あたしは、クリスとアレフの仲を応援しようと思う! アレフの事は大好きだけど、同じくらいクリスの事も大好きなんだもん。


 だったら、大好きな二人が幸せに結ばれるように協力してあげなくちゃ! 魔王討伐まであと少しだけど……せめて短い間だけでも、出来るだけ二人が恋人同士の甘い時間を過ごせるようにサポートしよう。今回は、余計な事ばかりして来たあたしだけど、今度こそ……!


 クリス、安心して! お姉ちゃん、頑張ってサポートするから!




姉が、妹に牙を向く。

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