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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第五章 聖騎士と平和で歪んだ日常
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返して貰います

 

 アリアを探して、俺様は王都の街中を歩き回る。

 すぐにあの馬鹿は見つかったんだが。何か男と話しとる。はよ終われ。


 ヒートアップして来たのか、男にアリアが何か叫んでるが、どうでもいいんだよ! 俺様を待たせるんじゃねぇよ。もうこっちから行ってやろうか? 「私は聖女です! そこのビッチ、来なさい」とか言ってな。……冗談だぞ。


 ほれ、解散しろ解散! あっ男が差し出した手をアリアが掴んだと思ったら、二人でどっか歩き出しやがった。ふざけんなよ!! お前は俺様の身代わりにアレフと結婚するんだから浮気すんなカス。


 男の方も……どっかで見た気がするわ。確か、王城で会った奴だな。

 早速、俺様のパーティメンバーに手を出すとは、とんだヤリチン野郎だ。


 しかし、あのヤリチン。アリアが手を取るか悩んで、俯いてる時にしてたあの邪悪な笑み……。ありゃ何か企んでんな。ハヤト君と同じ臭いがしたぜ。面白そうだが、今アリアを失うわけにはいかねぇんだよ。


 へっ、なんだかキナ臭い香りがしてきたぜ。

 こりゃ久々に、俺様の見せ場かもしれねぇな。アリアに恩も売れるかも知れん。



 探偵ムーブで早速、俺様は奴らを追跡する。……が、もう疲れてきた。




 ***




 アリアは、ネイトルの手を取った。様々な葛藤があったのだろう。アレフの為を想い、苦しみながら手を取ったのかもしれない。……ともかく、彼女は他の男と行為に及ぶことを決意したのだ。


 自身を蝕む、疼きを取り除くために……大事な気持ちを奥にしまって。


 歩いた先は、スラム街の寂れた狭い道にある、小さな建物の一室だった。

 明らかに誰も来なさそうな、兵士も巡回しないような場所の部屋。


 ここは、ネイトルが毎回女性を連れ込むための所謂、ヤリ部屋というものだ。連れて来た女性をここで頂く。行為だけの為にある部屋。そんな部屋を持っているネイトルは、果たして紳士的等と言える男なのだろうか……?


「それじゃ、入って。アリアちゃん、そんな緊張しなくてもいいよ」

「う、うん……。お邪魔、します」


 ネイトルが気楽に、と言ってもアリアの顔は暗い。当然だ、彼女も本意でネイトルと身体を重ねたいわけではないのだ。耐え難い身体の疼きと、ネイトルの強い説得で、ここまで付いて来てしまったに過ぎない。


 アリアは未だに迷っている。

 疼きと、理性と、他者への迷惑、アレフへの想いが混ざり合い、再び悩んでいたのだ。


「アリアちゃん、シャワー浴びてからにする? それとも、このままヤっちゃう?」

「あ、あたし……」


 一度はネイトルの手を取ってしまったにも関わらず、アリアが口にした言葉は。


「やっぱり、帰る。こんなの、ダメだよ……」


 拒絶だった。アレフへの想いはそれだけ強かったのか。あるいは、このままだと自分が変わってしまいそうだと思ったのかはわからない。


 だが、アリアは他の男の部屋に入るという意味を、理解していなかった。


「……あのさ、ここまで来て今更、そんな言葉は……通じねぇんだよッ!」

「!? ネイトルさん……? なんか、怖い、よ?」


 いきなり、豹変した態度のネイトルに驚くアリア。

 だが驚いている場合ではない。……危機は、すぐ訪れることとなる。


「まあ、いいや。ここまで来たら、もうアリアちゃんさ、逃げられねぇから」

「ネイトルさん、いきなりどうし――」

拘束呪文(レスト・レイント)!」

「――あぎっ! な、か、身体が……うごかな」

「じっとしててねぇ? アリアちゃん」


 仰向けに倒れ、動けなくなったアリア。

 それを見て、下卑た笑みを浮かべたネイトルが、アリアの服を脱がし始めた。

 服の上からでも分かった大きな乳房が、剥き出しとなってネイトルの前に晒される。


「予想通りデケェわ。こんな身体の女が近くに居たのに手を出さなかったアレフ君はヘタレだねぇ。勇者に相応しい勇気が足りてないんじゃないのかな」

「アレフは、誠実なだけ……! あんたみたいな奴と、一緒にしないで」


 似非紳士の皮が剥がれたケダモノ。アリアはもうネイトルに対する好意など全て消え去っていた。侮蔑の表情をネイトルに向けるも、涼しい顔で返されるだけだ。


「長時間、身体が疼いてた所為で抵抗力も落ちてたんだろうねぇ。本来なら、この拘束呪文はかなりの格下にしか効果が無いんだよ」

「……。あたしは、また、騙されたのね」


 ネイトルがアリアに起こった出来事を解説するも、アリアは悔しそうに呟き、自身の愚かさを後悔するばかりだ。そんなアリアを見て、ネイトルは更に醜悪な笑みを深めた。


「身体の疼きが無ければ、ねぇ? 悔しいよね、アリアちゃん」

「……勇者(クズ)に、こんな身体にされてなきゃ、あんたなんかに」

「勇者、ねぇ? 本当に勇者に調教されたから、身体が疼いてたと?」

「それしか、考えられないでしょ……」


 仰向けのまま、拘束されたアリアは泣き顔を隠すことも出来ずに、ネイトルに見られながら悔しさの滲み出た声で呟く。そんなアリアに、何故か呆れたように問いかけるネイトル。


「はぁ……。そもそも、身体が疼いたのは何時頃だと思う?」

「それは……。魔都から王都に戻って、王城に行って……」

「王都に戻ってた頃から疼いてたのかい?」

「……違う。王城に行ってからだ。多分、勇者との行為をしてた部屋を見て――」

「残念、違うなぁ。だって、アリアちゃんの身体が疼き始めたのは、王様の紹介で()()()()()()()()なんだからさ」

「…………えっ」


 そう言い放つネイトル。アリアでさえ、何時頃から疼いたのか分からないのに、何故彼が詳しく知っているのか……。考えるまでもなかった。


 アリアは、ようやく気付いた。自分を苦しめて来た元凶が、目の前にいることに。


「え、じゃ、じゃあ……この疼きは……あんた、が?」

「自己紹介の時に、ね。救世のパーティを初めて見た時には驚いたよ。美少女が三人も居たんだからさ。まあ、一人は若干幼かったけど。オレは守備範囲が広いから全員イケる感じだったな」

「な、何の魔法なのこれ? 身体が疼く魔法なんて聞いたこと」

「淫魔法って言ってな。一般的には伝わってない魔法だよ。オレも習得出来たのはひとつだけだった」

「……それを、掛けたの? 魔王討伐を一緒にする……仲間のあたしに?」

「頭弱いなアリアちゃんは。掛けたからそんなにムラムラしてるんでしょ?」

「なんで……酷い」

「ハハッ。他の二人にも掛けたんだけど、効いたのがアリアちゃんだけでさ」


 悪びれもせずネイトルが衝撃の事実を伝える。アリアはただ、驚きと、目の前の男に対する憎悪と、恐怖を感じている。もうすぐ、魔王討伐に一緒に行く仲間にこんな事をするなんて、まともではない。


「い、今すぐ解いてよ! 剣聖にこんなことして、タダで済むと」

「心配しなくても、アリアちゃんをたっぷりと犯したら戻してあげるよ」

「なにいってんの……? 自分が何してるかわかってないでしょ!」

「オレは聖騎士だよ? 全部理解してるに決まってるだろ。君みたいに頭緩い子とは違うんだからさ」

「あたしは、頭緩くなんか……」

「実は、この部屋には魔道映像記録器が一杯設置してあるんだ。もし君が、誰かにしゃべったら、アレフ君にオレと君が繋がってる映像を送ってあげる」


 アリアの顔が真っ青になる。そんな醜悪なものを送られたら、せっかく少し信頼されたアレフとの関係が完全に壊されてしまうと分かったのだ。


「だからさ、大人しくしてなよ。その拘束魔法は二時間程で解ける。その間、我慢してればいいだけだ。アリアちゃんはただ、気持ちよくなってれば良いんだよ。……分かったね?」


 動けない以上、アリアに選択の余地はない。

 それならこの一回だけ耐えればと、アリアは考えている。


 だが、ひたすらに甘い。情事の映像が記録されているという事は、弱みが形に残るという事である。つまり、ネイトルがこの映像をネタにアリアに何度も身体を重ねることを脅して要求する事も十分に……いや、確実に訪れる未来だと言えよう。


「……うっうう……早く、終わらせて……」


 涙を流し、悲痛に嘆くアリア。その姿は、クズに好き勝手に貪るだけ貪られ、骨までしゃぶりつくされる獲物にしか見えなかった。

 それを満足そうに見たネイトルは、アリアのスカートを捲り、足を広げ、ショーツに指をかけようとする。……これを脱がされると、アリアを守る物は何も無くなってしまう。


 予定調和の、蹂躙が始まってしまう。


「ククッ。アリアちゃん、準備は良いかな? それじゃあ、ご開帳~♪」


 ショーツに指を掛けたネイトルが、ニタニタと笑顔でショーツをズリ降ろそうとした。


 ――だが。


「――――そう言う事だったのですね」


 突然、部屋に聞こえる第三者の声に、ズリ降ろそうとしていた指が止まった。


「だ、誰だ!?」


 慌てたネイトルは、アリアからすぐに離れ、ヤリ部屋を見渡す。

 流石は聖騎士と言うべきか。エロモードから既に警戒モードへと移行していた。

 しかし、声の主はどこにも見えない。


「姿を見せろッ!!」


 ネイトルが怒鳴ると、ヤリ部屋入り口の扉が音を立てて開き始める。


(馬鹿な、魔法で施錠しておいたはずだ……)


 誰も来ないように、誰かが来ても入れない様に、しっかりと施錠魔法をしておいたのだ。

 開いた扉から、一人の女性がヤリ部屋へと入って来た。


 美しい金髪は腰まで伸び、服の間から見える肌は白磁のように白く、清潔で無垢な肌。意思が宿った碧眼の瞳を持ち、着ている修道服は、その人物の心の清らかさを証明するような純白である。


 ネイトルは、この少女の事を知っていた。救世の英雄……その片割れの名前。献身に満ち溢れ、慈愛と人々の平和を何よりも愛すると言われる、希望の象徴。平和の使者。


 "献身の聖女 クリスティーナ"その人であった。


「な、なぜ貴女がここに……」


 現れた聖女の登場に、先ほどの下卑た顔は微塵も残っていない。欲情した感情が一瞬消えてしまう程……それほどまでに、目の前の聖女は神聖な存在に見えたのだ。


「お話は、全て聞かせて頂きました」


 ネイトルの問いには答えず、罪を断罪するかのような凛とした声を発するクリス。


 そして、アリアの方に顔を向け、一瞬だけ笑顔になったクリスは、再び真剣な顔をネイトルへと向ける。強い意志を感じさせる、澄んだ瞳がネイトルに突き刺さる。


「なぜ、此処にと、そう仰りましたね?」


 見つめていたクリスが、先ほどのネイトルの質問に答えるような言葉を出した。

 それを聞いたネイトルが、クリスへ何か言う前に、クリスは続きの言葉を言い放った。


「返して頂くためです。私の大事な人を」


 あの、何時もニコニコと誰に対しても穏やかだったクリスが、怒っている声であった。怒りを向けている相手は、アリアを蹂躙しつくそうとしていた男に向けられている。


「聖騎士ネイトルさん……いえ、ネイトル。私の大事な仲間の剣聖を……」


 剣聖と言ったクリスは軽く首を横に振り、真意を込めた言い方に変えた。




「私の姉さんを……返して貰います!」



 この言葉で、ネイトルは全てを察した。





 ――聖女(クリス)は、心から大事な肉親(アリア)を取り返しに来たのだと。

早めに部屋まで来たものの。

実は息を整えてた所為で時間が掛かってたクリス……。

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