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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第五章 聖騎士と平和で歪んだ日常
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揺れる心

 

 よおおおし! 朝になった! アリアの奴をアレフにぶつける作戦開始だ。

 俺様の貞操が懸かってんだからな。絶対に失敗は出来ねぇんだよ。


 張り切って俺様はアリアの部屋を目指す。まずは軽く挨拶して、なんとかアレフと接触させねば。


 アリアの部屋の扉をノックし、返事があったんで早速開けて中へと入った。


「おはようございます、姉さん……って、酷いクマですけど何かあったんですか?(ブサ過ぎる。こんなんじゃアレフが勃たねぇよ)」

「あ、ああ、クリス……。おはよう。なんだか、ちょっと眠れなくてさ、あはは」

「だ、大丈夫ですか? どこか具合が悪いんじゃ(目がイってんぞ。こんな様で使い物になるんか?)」

「うん……大丈夫。ちょっと色々あってさ……」


 なんとなく、沈黙しちまう俺様たち。なんかしゃべれや。

 つまんねぇ女だなマジで。いつも何かくだらん事悩みすぎだろこのブスって。

 さっさと、アレフに会わせて宜しくしてもらおっと。


「姉さん、たまにはアレフさんと一緒に――(ホテルでも行ってガキ仕込んで来い)」

「やめてッ! あたしなんか誘わず、二人で行けばいいじゃん!」

「えっ……? 姉、さん?(何キレてんだ? 頭大丈夫かこいつ)」

「そんな、お情けみたいな態度……取らないでよ、クリス」

「あの、姉さんは何を言って(ちゃんと意味が分かるように話せよ)」

「クリスは、アレフと……結婚するんでしょ? 魔王を倒したら」

「ッ!? な、なんでそれ……(は? 何で知ってんだよこのブス!)」


 やべぇんだけど。昨日の会話、聞かれてたっぽいぞ。

 これじゃ、俺様の計画は成り立たん! 開始一日で頓挫とかどうなってんだ……?


 ……いやだ、アレフの嫁コースだけは、絶対に嫌だ。

 なんで俺様が男と交わらなきゃならねぇんだよ。やだ、やだぞ。


「姉さん……。そのお話を(アリア! てめぇが身代わりになれえええ)」

「なにを話すっていうのよ。あたしは……別に何も聞きたくない」

「アレフとは、その(何で馬鹿って人の話を聞かねぇんだろうな)」

「聞きたくないって言ったでしょ! ノロケなら他所行ってよ!」


 そう叫んで、自室を飛び出していった馬鹿。

 いや、話聞けよ……。一体朝からどんだけ疲れさせる気なんだよ。

 つか、お前が他所行くのかよ!


 アリアの説得を考えると、頭が痛くて仕方がねぇわ。


 とりあえず、宿の外に飛び出していった馬鹿(アリア)を追いかけるとするか……。




 ***




 クリスがアレフの名前を口にする度に、昨日の会話を思い出したあたしは、クリスに怒鳴って宿から飛び出してしまった。


 なにやってんだろ……。盗み聞きしたあたしが悪いのに。そもそも、贖罪のチャンスをくれたクリスに対して怒鳴るなんて、何様だというの。


 そして、こんな時でも身体が疼くなんて……最低だ。


「お、もしかして君、剣聖のアリアちゃんかい?」


 息を荒くしながら王都の街中を歩いていると、突然声を掛けられた。


「え、はい? そうですけど、あなたは……?」

「あれ? 覚えてないかな? ほら、君たちと一緒に魔王討伐行く事になった聖騎士の」


 そういえば、王様から聖騎士と騎士団のメンバーを、王城で紹介して貰った時に見た気がする。


「ごめんなさい。その……実はあの時、よく聞いてなくて」

「ハハハ、確かに騎士団のメンバーも数が多かったからね。無理もないよ」


 爽やかな笑顔で笑う聖騎士さんは、あたしから見ると大人の余裕が感じられる。

 なんだか、会ったばかりなのに安心できるというか……。


「ああ、それじゃ改めて自己紹介を。オレは聖騎士のネイトルだ。宜しくね、アリアちゃん」

「宜しくお願いします、ネイトルさん。ごめんなさい、魔王を共に討伐する人の名前を憶えていないなんて……」


 彼はちゃんとあたしの名前を憶えていてくれたのに、それに比べてあたしは……。真摯な態度のネイトルさんに対して、自分の愚かさが恥ずかしくなった。


「アリアちゃんはまだ若いんだから、気にする事ないさ。しかし、剣聖がこんなに若くて可愛い子だったなんてびっくりしたよ。ずっと噂だけは勇者パーティの頃から聞いていたけどね」

「そう、ですね。勇者パーティの頃は、王城の一室から殆ど出ませんでしたので……」


 あの頃の事は、正直思い出すのも苦痛だから、これ以上話したくない。


「……そうかい。まあ、そんなことより、今聞くべきことは違うけどね」

「何かあたしに用事でしたか?」


 真剣な顔に変わったネイトルさんに、あたしも真面目な態度を改めた。


「アリアちゃん、何か悩んでるんじゃないのかい?」

「ど、どうしてそれを?」

「伊達に君より長く生きてないからね。経験上、顔を見れば分かるよ」

「そんな、顔に出てますか……」

「……オレで良かったら、話を聞くよ」

「会ったばかりで、こんな話をされても困るかもしれないんですけど。実は……」


 あたしは、ネイトルさんに自分の状態と、葛藤してる事を全て話していた。

 良く知りもしない人に、ベラベラとパーティメンバーの情報をしゃべるなんて、どうかしてると思う。

 でも、一緒に魔王討伐に行く人だし、良いのかな。


 それに、あたし自身もうどうしたらいいか、わかんなくて……。この紳士的で大人のネイトルさんなら、ひょっとして良い解決策をくれるんじゃないか、なんて事を考えちゃったのかも。


「身体が疼く……。それに、好きな勇者様が聖女様を、ね。なるほど、アリアちゃん……辛かっただろうね」


 話を聞いてくれたネイトルさんが、あたしの頭を撫でてくれた。

 ちょっと照れたあたしは、顔を赤くして俯いてしまう。


「こ、子供扱いしないでください……」

「いや、よく頑張ったと思うよ。好きな想い人が別の子にプロポーズする所を聞いちゃうなんてさ」

「うん……。確かに、ショックでした」

「それに、身体の疼きって。つまり、アリアちゃんは欲求不満ってことだろ?」

「よっきゅ!? いえ、そんなこと、ない、はずだけど」

「いや、欲求不満だよ。今も息は荒いし、何か雰囲気でわかるんだよなぁ」


 欲求不満。ネイトルさんの言う通りだった。あの勇者に散々厭らしい事をさせられた所為で、やっぱりあたしの身体はおかしくなっちゃったんだ……。


「そう、なのかも……」

「アリアちゃん、もし良かったらなんだけどさ」

「? なんですか、ネイトルさん」

「その、欲求不満の解消……オレに手伝わせてくれないか?」

「……へっ? え、な、何言ってるんですか! ダメですよ」


 とんでもない事を言い出したネイトルさんに、流石にあたしは怒った。

 だって、今さっきアレフが好きだって話したはずなのに……。


「じゃあ、どうする気なんだい? アレフ君は、君を抱いてくれないよ」

「そ、それは……。一人で、したり、とか」

「無理だね」

「な、なんでそんな事! 大丈夫ですから」

「オレ、結構色んな女性と付き合ってきたからさ。アリアちゃんのその感じは、一人でどうこうして治まるもんじゃないよ」


 言い切るネイトルさんに、段々と押されて行ってしまう。だって、ネイトルさんは明らかに大人で、紳士的で、あたしより経験豊富な感じで……。あたしの方が間違ってる気がしてくるんだ。


「だ、だけど! 好きでもない人とそんな事……やっぱり出来ません」

「アレフ君を好きでも、結局彼とは結ばれないのを分かってるのか?」

「わかってるけど、良いんです。あたしが勝手に好きなだけで十分なんです……」

「何故、そこまで一途に彼を想う?」

「ちょっと前に、アレフを裏切って酷い事を一杯しちゃったんです。だから、あたしは嫌われて当然。……でも、それでもあたしはアレフが好きなんです。この気持ちだけは、裏切りたくないから!」


 身体は汚されても、好きだという気持ちまでは失いたくない。

 ……正気に戻った状態で、他の男の人と関係を持つのは嫌。


「でも、そんな欲求不満な状態じゃあ、アレフ君と魔王討伐に行くときに迷惑掛かるだろ?」

「だから、その……」

「オレたちも一緒に行くんだよ? 集中できない剣聖がいたら、皆不安になる」

「……あ、えと、それは、そうだと思うけど」

「じゃあさ、考え方を変えてみようよ」

「え? 変える?」


 ネイトルさんが何を言いたいのかさっぱり分からない。今も身体が疼いて、集中力が乱れてる所為なのかな。疼いて疼いて、嫌になる……。


「オレと一緒に欲求不満を解消するのは、アレフ君のためなんだってさ」

「いや、そんなこと……」

「魔王とアレフ君がギリギリの戦いの時、もし君の身体が疼いたら?」

「…………」

「その時に死ぬのはアレフ君だ。もし君が本当にアレフ君が好きならさ、確実に解消しとくべきなんだよ。確実にね。大丈夫! こんなのただの身体のメンテナンスみたいなもんだからさ」

「メンテナンス……?」

「そう、アリアちゃんを正常に戻すための、ね。もちろん、この事は秘密だ。オレは聖騎士。口は堅いし約束は必ず守るよ」

「でも、やっぱりアレフへの気持ちを裏切るのは……」

「身体を重ねたくらいで裏切るなんてありえないって。オレを心から求め始めたら別だけど、そんな深刻に考えること無いんだよ」


 そう、なのかな。確かに、こんな疼いた状態は早く治さないとダメだけど。

 それに、アレフはクリスと結婚するんだから、あたしを見てくれることは多分、もうないと思う。


「さあ、アリアちゃん。もし良かったならオレの手を取ってくれ。誰にも見つからないような場所に部屋を持ってるんだ。そこへ行こう」


 そう言って、ネイトルさんはあたしに手を差し出す。

 この手を取ったら、この疼きは解消されるかもしれない。


 だけど……。


「やっぱり、あたし」

「決めるのは君だ。だけど、覚えておいて? そのまま魔王討伐に行ったら、君は多くの人に迷惑をかけることになる。そして、アレフ君は君の所為で死ぬかもしれないってこともね」

「そ、そんな言い方……」

「キツイ言い方だけど、戦場で集中できないような人間を連れて行ったら悲惨な事になるんだ。オレはそれを身を持って体験してるからね。それでも良いなら、自分勝手な気持ちに従えばいいよ」


 みんなに迷惑が掛かる。アレフに迷惑が、掛かる。それは嫌だ。

 でもあたしは、あたしはっ!


 アレフ。あたしは、どうしたらいいの……。

新キャラ、だが……この気配は。

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[一言] こいつのどこが聖騎士やねん
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