エピローグ
カルマが死んだことで、魔都を覆っていた、巨大な壁が無くなる。
それと同時に、魔法も使えるようになっていた。
どうやら、カルマ自身が魔封じの原因だったようだ。
クリスは、重症のアレフの治療をした後に、全員に全体清潔魔法の魔法を掛ける。血や、臓物などで付いていた、悪臭や気持ち悪い感触も、すべて消えた。
「今回は、お役に立てず……ご迷惑をお掛けしました。アレフや、リノや、姉さんがいなければ今頃は……。本当に、ありがとうございます」
涙を滲ませたクリスが、仲間たちに謝る。
「いや、クリス……お前が居たからこそ、俺はここまで頑張れたんだ。愛する者がいたからこそな」
「クリスは……役に立ってたよ。だって、あたしが操られた時、確かに声が聞こえたんだ。クリスの、優しい声が……」
「お姉ちゃんは、わたしの全てです。だから、お姉ちゃんが謝る必要なんてないんだよ?」
三人共から、温かい言葉を貰ったクリスは、再び頭を下げて感謝する。
その後、アレフの転移魔法で王都まで戻ったクリス達は、国王に一連の事態を報告した。
四天王が倒されたことを聞いた王は、水の都を取り戻すべく、すぐに騎士団を水の都へと送り込む。
カルマから脳を壊されていたのは、水の都に住む、ほぼ全員だった。
全裸で襲い掛かって来る彼らを、騎士たちは次々と殺戮していった……。
その凄惨さは、吐き出す騎士たちが何人も出て来るほどだったという。
数日後、水の都を取り戻せはしたものの……。
綺麗な水は汚染され、街は様々なものが混ざり合った、腐敗臭で凄まじく…かつて水の都と呼ばれた、アクエリラスは誰も住むことが出来ない街となった。
魔都となり果てた、水の都……復興の目途は、今の所、立っていないそうだ。
顛末を聞いた、聖女は嘆き悲しみ、死んだ者達が、無事に天国へと行けるようにと……三日三晩、教会で聖なる祈りを捧げ続けた。
その姿は、王都の高官たちや、貴族、王族も目にしたが、聖女のあまりの高潔さに声も掛けれなかったそうだ。
そして、クリスが祈りを捧げ終わり、アレフ達も魔都での戦いの疲労が大分取れた頃に。
王宮魔術師が、慌てた様子で部屋に駆け込み、クリス達にこう伝えた。
「ま、魔王がいるとされる魔城が……出現しましたッ!!」
魔術師の言葉に顔を引き締める四人の英雄たち。
今、最後の戦いが始まろうとしていた。
まだ、始まりません。