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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第四章 魔都アクエリラス
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戻る心、現れし狂人

 

 アリアの馬鹿が、魅了されやがった!

 くっそおおおおおおおお! 絶体絶命じゃねぇか!!


「ねぇ、カルマぁ……キスして? あたし、カルマといっぱいキスしたいのぉ♡」


 俺様にとっては、あっちの方が見慣れてる態度で、クソ姉がカルマにキスを強請ってやがる。ああなったら、おしまいだな……。


「う~ん、ボクとキスしたいならさ。ちょっとお願いがあるんだよねアリア」

「いいよぉ! カルマのためだったら、あたし……何でもするよ?」


 情婦のように、カルマの頼みを媚びた声で受け入れるアリア。

 そんなアリアに頼みごとをしたカルマが、すぐに俺様の方を見やがった……。


 非常に、ひっじょーに、嫌な予感がするんだが。


「それじゃ、君の妹をボクの所まで連れて来てくれないかい? ボクさ、クリスに興味あるんだよね」

「クリスを連れて来てほしいの? もう、カルマったら……あたしがいるのに他の子に興味があるとか言うなんて、酷いよぉ」

「妬いてるのかい? 大丈夫さ、アリアも一緒に可愛がってあげるから、ね?」

「カルマ……そんな事言われたらあたし、濡れて。……わかったわ! すぐに連れて来るから待っててね♪」


 俺様の受け渡しを取り決めた、糞野郎共の話が付いたのか、犬性となったアリアがこちらに来やがった。


「ク~リ~スぅ、ねぇ、こっち来てよ?」

「……姉さん、正気に戻ってください(なんだよ、その喋り方……笑っちゃったじゃねぇか)」


 最近のアリアから想像も付かない口調で、こんな状況なのに吹いてしまった。

 こんなことしてる場合じゃねぇのに……いや! 精神攻撃なのかこれも……?


「は? 早く来てよ。あんたを連れて行かないと……カルマと愛し合えないんだから」

「ダメです! 姉さん、思い出してください! 姉さんは……後悔してるから、私たちの旅に来たのではないのですか!?(俺様の神聖な言葉で魅了を解いてやる! 出来る……出来ないか?)」


 悪あがきで、とにかく耳障りの良い言葉を選び、説得を試みる俺様。

 座して死を待つよりは、行動を示して、活路を見出さん!


「うるさいなぁ! あたしの言う事聞きなさいよ。それともあんたって愚妹なの? カルマが呼んでるんだから……あんま逆らうと、いくら妹でも痛い目に合わせるよ……?」


 そう言って、アリアは剣を抜き、柄部分を俺様に向けて来る。

 うおぉぉい!? あんなんで叩かれたら、骨折れちゃうわ……。

 俺様は、か弱い美少女だって何回も言ってんだろ糞ヤリマン!


「姉さん……リリィちゃんと、フィーネさんの意思を、穢すのですか? 姉さんの、覚悟は、決意は、悲しみは、そんな魔法一つで……簡単に覆されるのですか? 本当に良いのですか、それで!! 姉さん!(やめろおおお叩くんじゃねええええええ)」

「なに言って……あぐっ……あ、頭がッ!いたいいいいい!ああああ!なんで……あたしはカルマがすき、で」


 柄が迫る恐怖で、内心叫びつつも、外面は心を守ろうとする聖女ムーブで説得してると、急にアリアが苦しんだ。


 えっ!? 俺様の言葉効いてんぞ? マジ……? めっちゃラッキー。

 やっぱチョロいわこいつ。この機会を逃さずに、ケリを付けてやる。


「姉さん! 負けないでください! 姉さんは……私の自慢の姉さんは、そのように卑劣な存在(カルマ)に負けるような、弱い女性(ひと)じゃないはずです!!(ふつーに負けてたけどな。良いんだよ、耳障りの良い言葉重視なんだから)」

「あ……ああああ……ク、クリス? あ、あたし、あたしは……」

「だから、優しくて、穏やかな、私の姉さんに……戻ってください(よし! 九十点演技!)」


 涙腺操作で、大粒の涙を流しアリアに抱き付く!

 完璧だ……これで戻らなかったら、そいつは人間じゃない。


「……あっ、クリス……あたし」

「姉さん?(もどった?もどったなら戻ったって言えよゴミ)」

「……ごめんね、クリス。あたし、また」

「姉さん、おかえりなさい(ここでニコッと愛想笑いも忘れずにしねーとな)」

「あ、ああああああ……! ごめん、ごめんねクリスぅ!!」

「いいんです。戻ってきて、くれたのですから……(こいつ、いっつも後悔してんな)」


 茶番も終了。ここまでして、ようやく雑魚戦力の剣聖を取り戻しただけという。


 どうすんだこれ、詰んでね? どうやって倒せばいいんだ、あんなバケモン。

 俺様とアリアが感動の抱擁をしていると、パチパチと拍手する音が聞こえる。


「いやいや! 凄いね! 麗しの姉妹愛! まさか、魅了の魔法を解いてしまう程だとは思わなかったよ!」


 興奮状態にあるカルマが、凄い勢いでこちらに熱を向けて来る。

 俺様の演技は魅了などという、小手先の技じゃ止められねぇんだよ。


「素晴らしいよ、聖女ちゃん。君は、人の心の闇を本当に浄化できる子なんだね! 感動だよボク! 感動した! そこまで心が清らかな人間なんて見たこと無いからね!!」


 しゃべる勢いが止まらねぇんだが……。

 何でこういう奴に好かれやすいんだよ俺様は。


「そんな、そんな聖女ちゃんの脳を壊して……穢れに満ちた、色狂いに出来たなら……! あああああああ! 興奮するううううううううううううう!! 想像しただけで、イきそうになるよ」


 ギョロリ、と血走った目を向けて来るカルマ、もとい、変態。

 そろそろ帰りてぇんだが……。脳を壊すってなんだよ。


「脳を、壊すとは……私に何をするつもりなんですか?(まさか、本当に壊すん?)」


 割とマジで気になった俺様は、狂った変態に聞いてみた。


「あ? ああ。脳を弄るんだよ。ボクはそういう能力があってね。脳を弄って、性欲と攻撃性しか残らない様にしちゃうんだ! 凄いでしょう!」


 なんだよ、その都合の良いエロ系能力。確かにすげーけど……。


「脳を壊された人は、元に戻るんですか?(路上の全裸とか、全部ソレされてんだろうな)」

「ん? 戻るわけないじゃん。脳弄ってるんだよ? ボクを倒したとしても、みんなずっと、あのまんまだよ」

「なっ! そんな……(はい。水の都はもう終了だな!)」

「まさか、ボクを倒せば、みんな元通りだとでも? そんな都合の良い話、あるわけないじゃん」

「……貴方という人は(伝説の邪魔ばかりしやがって)」

「怒ってる顔も、興奮するねぇ?」


 どうやら脳を壊されると、性に狂ったケダモノにされて、一生戻らないらしい。

 最悪だ……街の奴らから、感謝されないの確定じゃねぇか!

 聖女伝説を伝えられねぇ……。


「それじゃ、お話はこのくらいでいいかな? そろそろ、聖女ちゃんを性女ちゃんに変えないと、ね?」

「姉さん、下がっていてください。彼の狙いは私です(こうなったら、脳を壊される前に死のう。盛大に、聖女っぽく死んでやる!)」

「クリス!? だめ、ダメだよ!やめて……」

「……姉さん達は生きて、必ずここを出てください(無理だけどな、お前もどうせ死ぬ)」


 性女になるなんて、伝説に泥を塗るどころの話じゃねぇ。

 これは、死を選ぶ一択だろ。


 泣き叫び、ウザく縋り付くアリアを振りほどき、前に出る。


 気高く、美しく、清らかな聖女のまま逝くわ。

 伝説には成れなかったが、文句は言えねぇ。


 あいつが、俺様の頭に触れた瞬間。

 教会から、オシャレアイテムとして貰った、この聖なるダガーで心臓を刺し、美しく散ってやる。

 それはそうと、正式な用途は何なんだこれ?教えてくれ。


 聖なるダガーをこっそり手に隠し持ち、準備を完了する。


(美しきものは若くして散ると言うが……俺様にピッタリな言葉だな)


 フルパワー聖女ムーブで、凛とした態度でカルマを見る俺様。


「覚悟を決めたみたいだね? 自己犠牲まで出来るなんて……本当に、素晴らしい聖女ちゃんだ」

「たとえ、私が死んでも……私の意思はけして、砕ける事はありません! 人々を想う心がある限り……けして!(無念だが仕方ねぇ! おつかれ俺様!! 良い演技だったよ俺様! ありがとう俺様!)」

「うんうん、良い事言うね。脳を壊したら、君はボクの一番のお気に入りにするよ。何度も何度も犯して、穢して……その意思を必ず砕いてあげるからね」


 俺様が自分で自分を労ってるってのに、台無しにするようなこと言ってんなよ。


 カルマの右手が、俺様の頭に添えられようとする。阿呆が!やらせるかよ!

 俺様は隠し持っていた、聖なるダガーを自分の胸に刺すため、ダガーを持つ右手を胸に向け、そして突き立てる。

 こうして俺様は、悲劇の聖女としてここに帰す。


 ――はずだったが、ダガーを持っていた手をカルマの左手に掴まれていた。


「……えっ?(は?……ふざけんな)」

「ぷっくくっ! まさかバレてないとでも思ったの? めちゃ見えてたよソレ」

「あっ、ああ……そんな(これ性女コースなのか? 嘘だろ)」

「これから、たっぷり可愛がってあげるのに、楽にするわけないでしょ」

「殺して……殺してください!(ちくしょおおおおお! 何もかも上手く行かねぇじゃねぇか!)」

「ダ~メ♪ さあ、頭おかしくなろうね、聖女ちゃん!」


 俺様の明晰な頭脳を破壊すべく、奴の右手が頭に触れそうになる。


(か、か、かみさまあああ! 俺様をたすけろおおおおおおおおお)


 まさかの神頼みまで堕ちちまったが、この際、俺様を助けてくれるならなんだっていい。何でもいいから、誰かなんとかしろ。

 だけど、どうせ助けなんて……くるわけがねぇ。


 ―――俺様はもう、諦めた。




 ***




 クリスは、全てを諦めようとしていた。


 だが……その時、カルマが閉めていた入り口側の扉が、光の光線(レーザー)の様なものでブチ破れ、そのままカルマを襲う。


 クリスに触れそうだった右手に光線が当たった瞬間。カルマの右手が消滅した。


「がああああああ!? な、なんだっ……! これは一体……!」


 激しい痛みに混乱しているカルマ。

 すると、壊れた扉の方から歩いてくる男が居た。


 歩いてきた男は、左腕が激しい火傷で爛れており、身体中傷だらけだった。

 しかし、その眼は……その瞳だけは、怪我など気にもしない程、燃えていた。


 怒りと、憎悪に燃えた瞳をしていた。


「どうやら、間に合ったようだなぁ? ほら、土産だよカルマ」


 男がそう言い放つと、何かをカルマへと投げつけた。

 無くなった右手の付け根を押さえているカルマは、投げつけられたものを取れず、地面へとソレは転がる。


 転がった()()を確認したカルマは絶句する。

 ソレは……同じ四天王の、自信に満ち溢れ、強大な強さを持っていたはずの。


 切断された、エグゾスの頭だった。


「さあ、カルマぁ! 俺のクリスに手を出そうとした……罰を、受けてもらおうか」


 酷い火傷で左腕が上がらないのか、右腕だけで剣を取りカルマへと向ける男。

 その顔は……嗤っているようだった。

 大事な聖女に手を出そうとした男を……ようやく殺せる歓喜の顔。


 英雄と呼ばれ、聖女(クリス)に狂った男……アレフが其処に居た。

何時の間にか、一人死んでた四天王(噛ませ)

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― 新着の感想 ―
[一言] 野望のために潔すぎやろ
[一言] はぁ~~~、つっかえ、もうちょっと粘れよ糞が(・д・)チッ
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