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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第四章 魔都アクエリラス
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もう一人の強敵

 

 俊敏な獣のように、勢いを付け、カルマへと襲い掛かったアレフだったが、怒りに任せた攻撃は単調そのものであり、アッサリと避けられてしまう。


「ダメダメ。そんな分かり易い攻撃してちゃ、ボクには届かないって」


 アレフに言い聞かせるように……。

 その優しく諭す口調に、余計にいら立ちを覚えるアレフ。


「黙れ! お前みたいなイカれ野郎を、クリスの元へは絶対に行かせない!」


 決意を口にし、ありったけの怒りを込め、再び聖剣をカルマへと向け、迫る。

 斬る、突く、更には身体強化で強化された拳なども混ぜ、攻めていく。


 だが……届かない。時に躱され、時に受け流され、まるで手応えのない感覚。


『アレフ! いい加減にしろ。このままでは……死ぬぞ!』


 アレフの不甲斐ない攻撃に怒るシェフス。

 シェフスの一言で、僅かに冷静さを取り戻すアレフ。


「確かに、このままだと不味いな……。怒り任せで勝てるような相手ではないらしい」

『当たり前だ。奴は腐った性根の持ち主だが、四天王の一人。魔王軍の最高戦力の一人だぞ』


 相手の事が、良く分かっている聖剣の意思の言葉に、徐々に普段の自分に戻るアレフ。

 それを見たカルマは、先ほどと違い。余裕を持って受け流すのも限界だと感じる。


「呑気に、そんな話してて良いの?大事な聖女様を滅茶苦茶に犯しちゃうよ……?」

「……もう、その手には乗らん。考えてみれば、ここでお前を殺せば、そんな事態あり得ないんだからな」

「へぇ~? 随分な事言うね。ボクがここから離れることは考えないんだ?」

「俺がお前を逃すとでも思ってるのか? それに、俺を止められる者などお前の部下にいないだろう」


 四天王クラスの実力を持たない限り、アレフを時間稼ぎで留めておくことすら難しいのだ。

 アレフは、この男がクリス達の元へと向かう事は、不可能だと確信していた。


「なるほど、ね。確かに一理ある意見だよね」

「そうだろ? なら、さっさと終わらせようじゃねぇか」

「この場にいるのが、()()()()()()()だったらの話だけどね」


 不穏な言葉を発するカルマに、アレフの顔が崩れる。


「なに……? お前、それはどういう――」


 アレフが、疑問を口にしている最中、部屋の入り口側から豪速で槍が飛んできた。


『アレフ! 後ろだ!』

「ちいッ!!」


 シェフスの言葉と同時に振り向いたアレフは、異常な速度で飛んで来た槍を聖剣で弾いた。重い衝撃が、アレフを襲う。弾いた槍から爆炎が上がり、衝撃で吹き飛んでしまう。


『一体、なんだ?槍が爆発しただと』

「カルマ、我の存在をあっさりと敵にバラすとは……お前はアホなのか?」


 シェフスが独り言を呟くと同時に、槍を飛ばした人物が、カルマへと非難の言葉を浴びせた。


「ごめんごめん、つい口に出ちゃった。ボクの悪い癖なんだよね。許して?」

「ふん、だからお前と組むのは嫌なのだ。こんなのが、我と同じ四天王とは信じられんな」


 軽い口調で言い合う、二人。

 新たに表れた体格の良い男はアレフの事を見向きもしてない。


 二メートルを超える巨躯。髪は燃えるように赤く、まるでライオンのたてがみの様に逆立ってる髪。

 一見すると、カルマと同じく人間に見える。だが、人間とは違う存在感があった……。


「いきなり不意打ちとはな……デカい癖に、ショボい事してくれるじゃねぇか」


 アレフが、乱入してきた赤髪の男を罵倒するも、男は涼しい顔でアレフを見ている。


「ふん、戦場で後ろを見せるアホが悪い。我が何故、敵に配慮してやらねばならんのだ?」

「そもそも、君もボクに不意打ちしてきたじゃん……」


 見下すような表情をした赤髪の男と、呆れた顔で便乗して来るカルマ。

 余裕のあるあちらに対して、アレフには余裕がなかった。先ほどの攻撃を見るに、赤髪の方も相当な強敵だと分かったからだ。


『せめてそちらの男も名くらい名乗ったらどうなのだ!不意打ちはともかく、命を懸けて戦う相手なら名前くらいは知っておきたい』

「ほう、聖剣の意思とやらは中々に好漢溢れる性格のようだ。いいだろう、我も自己紹介といこう」


 そう言うと、男はカルマを下がらせ、目立つようにアレフの前に出る。


「我は、魔王四天王の一人、エグゾス。貴様の命を奪う男の名だ。覚えておけ」

『やはり、四天王か! まさか一か所に、二人もいるとは!』


 予想はしてたシェフスだが、状況は最悪だ。

 一対一でも勝てるか怪しい奴が二人…勝率は限りなくゼロに近い。


「二人も四天王がやられてんのにさ、ノコノコ一人で待ってるわけないでしょう? ボクたちだって馬鹿じゃないんだからさ」

「くっ……」


 気楽に話すカルマと、絶体絶命な状況に苦悶の表情を浮かべるアレフ。

 ここで、二人一斉に掛かられたら運命は決まったであろう。


 ところが。


「それじゃ、エグゾス。後は頼んだね。ボクは聖女ちゃんとデートしなきゃならないから、さ」

「我に命令するな。帰って来た時には、お前の出番など無いと知れ」

「えええ……。せめて、虫の息でもいいから生かしといてよ? 聖女ちゃんの厭らしく変わり果てた姿を、アレフには見せ付けないといけないんだからね」

「……お前の趣味だけは、我も未だに理解できん。まあ、気が向いたら生かしておこう」


 そんな会話をして、さっさと外に出ようとするカルマ。

 一対二が一対一に戻る、普通ならば絶好の機会と思うはずだが、アレフにとって絶好でも何でもない。


 カルマの発言は、絶望そのものだった。


「ま、待てッ! 俺と戦えカルマ! お前の相手は俺の筈だろ!?」

「ボクの相手は聖女ちゃんだから、君じゃないよ? もっとも……()()()()()は君とは違うけどね? フフフ……」


 微笑みを浮かべながら、部屋を去っていくカルマ。これからあの男が何をしようとしてるのか嫌でも分かる。


 なんせ、アレフは一度、勇者という者から似たようなことをされているのだから。


「待てって言ってんだろうがあああああああああッ!!!」


 再び冷静さを失い、部屋から去ったカルマを追いかけようとするアレフだったが。


「我を目前にして、そのような余裕を見せるとは……舐められたものだな?」


 目の前を、四天王エグゾスが塞ぎ、怒り状態のアレフを右手に持っていた大剣の風圧だけで吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたアレフは、部屋の奥の壁に叩きつけられ、苦しそうにせき込んだ。


「さあ、邪魔者は入らぬ。今度は、正々堂々と……殺し合おうか、救世の英雄?」

「こんな、こと、してる場合じゃ、ねぇのに……糞が」

『アレフ、まずはエグゾスを何とかしなければ聖女どころの話ではない。浮ついた心で倒せるほど、甘い相手ではないぞ、目の前の敵は』


 クリスの事で頭が一杯なアレフを、なんとかしようと声を掛けるシェフス。

 アレフにとっては世界などよりクリスが大事なので、シェフスの言葉など届かない。


「あの野郎……俺のクリスに、何かしやがったら、ぶっ殺してやる! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」

「おい、聖剣……そいつは大丈夫なのか?」

『敵に心配してもらう必要など……。アレフは少し、聖女が心配なだけのはずだ……』

「……まあいい。我を楽しませてくれれば、多少は壊れていようが何でもな」

「ああああああああああ! クリスうううううううううう!!!」


 狂乱の叫びを上げ、距離を一瞬で詰め、聖剣技をエグゾスに向けて放つアレフ。

 それを合図に……闘争の幕が開けた。

クソザコの貞操が危ない。

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