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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第四章 魔都アクエリラス
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憤怒の少女

 

 最悪な状況……。そうですね、普通の人はそう言うかもしれないです。

 だけど、わたしはそうは思わないよ?


 わたしたちは、外で全裸になってる変な男の人達に追いかけられて、酒場に追い詰められていた。

 アレフさんは偵察ということですぐに外に出ちゃった。


 この絶望的な状況を利用してわたしは、外の男達を名目に……お姉ちゃんの柔らかく温かい身体をたっぷりと堪能していた。


 わたしにしてみれば、お姉ちゃんに遠慮なく甘えさせてくれるこの状況は天国にも等しいですよ。たっぷりと優しく頭を撫でてくれて……怖くて震えるふりをすると、ギュって抱き締めてくれる。


 お姉ちゃんが、わたしを心配して、わたしだけを想ってくれている。

 わたしだけを……わたしだけわたしだけわたしだけ。


 ああ……なんて素晴らしいんでしょう。外のケダモノさん達には感謝したいほどなのです。


 だけど、至福の時は、扉を無粋に叩く音によって崩壊した。その際に、お姉ちゃんの胸に思いっきり顔を埋めて、匂いを吸い込みました。

 少し服に付いてた血の臭いもしたけど、些細な問題です。


 いくらわたしが女の子で、小さくても、普段は中々ここまで出来ませんからね。

 この機会にやっておかないと、損でしょ……?


 扉が壊れた音がして、わたしは名残惜しそうにお姉ちゃんの胸から顔を離し、お姉ちゃんの表情を見ました。


 お姉ちゃんは、わたしを抱き締めながら真っ青な顔をして……震えていました。

 こういうお姉ちゃんも可愛い……。わたしが、護ってあげたくなります♪


 アリアさんが、無我夢中で戦ってます。

 ケダモノの腹を斬ったりして、血と臓物に塗れながら必死な顔をして。とても汚いです。


 けど、まあ……お姉ちゃんを護るために、あんなに必死になってるなら、少しは認めても良いかな。


 わたしはお姉ちゃんの胸に再び顔を埋めながら、そんなことを考えた。




 ***




 アリアの奴が、まさに滅茶苦茶な戦い方で全裸のおっさん共を斬りまくってる。


 いいぞ! そこだ! はよ皆殺しにしろ!! 俺様を護るんだアリア!

 見事切り抜けたら、偉大な俺様の姉として少しは褒めてやる!


 こちとら、お前に全てが懸かってんだから……絶対にこっちに来させるんじゃねぇぞ!


 リノの野郎は、俺様の胸に顔を埋めて震えてるだけの役立たずだし。


 俺様?……俺様は良いんだよ。か弱い聖女枠なんだから。

 護られ系女子ってやつ? 俺様、マジヒロインだな……!


 血と臓物が付着しまくって、もうアリアが真っ赤な物体にしか見えなくなってきた頃に……俺様たちの方に一人の全裸おっさんが近づいてくる。


 いやいや、こっちくんなよ!?


「ひっ……!(俺様とリノじゃ、二人がかりでもこのおっさんとの戦力差は絶望的や!!)」


 もう、演技で怯えてるのか、本当に怯えてるのか俺様自身でも分かってねぇが、護られ系ムーブならとりあえず怯えておこうと思った。


 俺様は恐怖に囚われた短い悲鳴を上げつつ、対抗策を考える。俺様の前世で培った絶大な知識と優秀なこの頭脳がありゃ乗り切れないことなんて…………―――――


 ……ダメだ。なんも思いつかねぇ! 推定IQ 300であろう、この悪魔の頭脳でも万事休すとはな。アリアを呼ぶが、あっちも必死に戦ってる所為か声が届いてねぇ……。


「うぃひひいぃひげひひひひひおんなぁあああおかすぅ」


 おっさんがキモイ奇声を上げながら、俺様たちにどんどん迫って来る。


 全世紀一の美貌と才能を併せ持つ聖女の俺様が、こんなキモ親父に襲われて幕を閉じるなんてあっちゃいけねぇだろ……!


 宇宙規模の損失だぞ!? 良いのか宇宙!? 良くないだろ? なら助けろよ!


 応えてくれないくっそ情けない宇宙を見限って、俺様は行動に出ることにする。

 周りにあるもので……何か出来ねぇか?


 お、丁度いい所に酒瓶が……これを俺様は装備、出来ねぇ。リノで手がふさがって持てねぇよ。


 というか、俺様のような清くて清楚な聖女が酒瓶を片手に持って全裸男に殴りかかるのって、どうなんだ?

 これは聖女としてアリなのかナシなのか……それが問題だ。


「うぃひひひひひひひ」


 あ……変な事考えてたら……おっさんが目の前にいた。


「あ……ああ……来ないで、ください……(終わったんじゃねこれ?)」


 何かやけに冷静に分析しつつも、護られ系ムーブだけはしっかり発動してる俺様って凄くね? あーあ、聖女伝説を成し遂げる前に、こんなしょぼい結末になるとは……泣きそうだわ。


 俺様はもう覚悟を決めた。

 おっさんに背を向け、自分を盾にリノだけでも護ろうとする献身の聖女ムーブに移行する。


 その際に、胸に顔を埋めているリノに「私が襲われてる間に、リノだけでも……逃げてください」とホラー映画の、中盤辺りで死にそうな良い奴っぽいセリフを言った。


 一回は言ってみたいよなこういうのって。献身ポイント高そうだし。


 そして、俺様はリノを胸から引き離し、おっさんの方を向く。

 全く……完璧な聖女ムーブだったぜ!……はぁ。


 涎を垂らしたおっさんの汚い両手が俺様に襲い掛かる。

 か弱い俺様じゃどうしようもねぇな。


 祈りのポーズを取り、目を瞑る。狂人じゃなきゃ俺様の、この美しい姿で改心するはずなのになぁ。ちくしょう! 何故こんな俺様を誰も助けん……酷すぎる。


 ……まだか? 何故そこでタメる? この清いポーズで終わりたいんだが。


「ぐげっ……がああ……げえ……ごぼ」


 何か苦しそうなおっさんの声が聞こえたので、俺様は祈りポーズはそのままに目だけ開ける。



 ―――憤怒に燃えた顔をしたリノが、ナイフをおっさんの首に容赦なく突き立てていた。



 リノさん……ビューティフォー……。

クリスよりつよい(確信)

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