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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第四章 魔都アクエリラス
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籠城の失敗

 

 街中で、おかしくなってしまった男達に追われたクリスらは、近くにある酒場に籠城していた。


 追いかけて来た男達は、全員全裸で涎を垂らし、目を血走らせ、狂犬のように襲い掛かって来る。特に、女性を優先して。

 捕まればどうなるのかは、何となく皆分かっていた。


 この、水の都アクエリラスで一体、何があったのか。

 綺麗な水はどぶ川のように濁り、街中から腐った臭いと甘い匂いに性臭をブレンドしたような気持ちの悪い臭いを発していた。


 何らかの要因でこの街では魔法が使えないので、アレフが勇者になった際に覚えた転移魔法や、クリスの防御魔法なども使用できない。


 それでも、アレフの方は戦闘力に差し障りがないからまだ良い。

 問題はクリスの方である。力の大半が魔法頼りだったクリスは、今の状況では役に立たないどころか、足を引っ張るだけになってしまっている。


 酒場の扉は、今は中にあったテーブルや椅子などで防いでいるが、大量に奴らが押し寄せて来たら、こんなもの足止めにもならないだろう。


 アレフはクリスを護ろうと常に傍に居ようとしたが、最大戦力であるアレフが動かない以上、じり貧にしかならない。


 だから、仕方なくクリスをアリアとリノに任せて、この事態を起こしている四天王を探りに酒場を出て行った。


 残されたのは三人の少女たちだけだ。

 この中で一番の戦力のアリアだが、剣の腕自体は一年間訓練もしてなかったので心もとない。


 無論、剣聖のスキルで並の剣士よりは遥かに強かったが、だれかを護りながらとなると話が変わってくる。


 まして、残りの二人は魔法が使えない、そこらの村娘より身体能力が低い聖女と、まだ子供のリノである。とても役に立ちそうではなかった。


「アリア姉さん、足手まといになってしまい……ごめんなさい」


 酒場の片隅で、リノと共に座っていたクリスが申し訳なさそうな表情でアリアに詫びる。


「ううん、そんなことないよ。魔法が使えるようになれば、クリスは凄いんだから。だから、それまでクリスとリノちゃんは、あたしが絶対に護るから」


 元々、ハヤトの洗脳から目覚めたときに死んだような命なら、クリス達の為に使うことなど惜しくないと考えているアリア。


「ありがとう、姉さん……だけど、危なくなったら私に構わず逃げてください」

「……そんな事言わないでよクリス。あたしは、絶対にクリスを見捨てないんだから」

「姉さん……」


 こんな事態でも、自分より他人の心配をする聖女(クリス)に、アリアは自分がどうなったとしても、彼女達を必ず護るという決意を固める。


「お姉ちゃん……わたし、怖い」


 リノが、クリスにゆっくりと縋る様に近づく。

 その様子は、まるで怯えた小動物のようだ。


 それを見たクリスは、リノを自分の胸の中に抱き寄せて、頭を優しく撫でながら耳元で囁いた。


「リノ、大丈夫ですよ。大丈夫……。だから、気持ちを落ち着けてください」


 状況はけして、大丈夫などではなかったが、小さなリノを不安にさせないために言っていることはアリアも、言われているリノも理解していた。


 クリスの優しさと温もりに、安心感を覚えたリノはクリスの胸の中で眠ってしまう。魔都に来てから体験した恐怖の数々で、ずっと保っていた緊張の糸が切れてしまったのであろう。


「リノ、可哀想に。幼いリノにあんな光景は……さぞかし怖かったでしょうね……」


 眠っているリノの頭を、優しく撫でながら一人呟くクリス。それを聞いたアリアも頷いた。


「子供に……あんな、大人の醜悪な欲望と悪意を全部詰め込んだような視線は、耐え難いはずよ」


 全裸の男達が舐め回すように見つめ、更に追いかけて来る。女性として純粋な恐怖を感じてしまう光景だろう。

 そして、子供のリノにすら悍ましいソレが向けられていたのだ……。


「このまま、じっとやり過ごして……アレフが無事に四天王を見つけてくれたらいいんだけど」


 アリアは希望的観測を込めて呟いてみたが、そう上手く行くとは到底思えない。


 ――ドンドン! と酒場の扉を叩く音がした。


 音に飛び起きたリノを抱き締めたクリスが、酒場のカウンターの奥まで避難する。


 アリアはバリケードで塞がれている扉の前で、迎撃の準備に入っていた。


「ああぁぁぁ……めすぅ? おんなだぁ……おんなぁのにおいするうううう」


 人外となった声が外から聞こえる。何かの匂いを嗅ぎつけたのか、酒場に向かってくる足音が多くなる。


「お姉ちゃん……」

「姉さん……」


 リノはクリスに頼る様に囁き、まるで枕代わりのように、クリスの胸の中に顔を埋めて震えている。

 クリスは、アリアに心配の入り混じった声で呼びかけ、リノをしっかりと抱き締めていた。


「大丈夫、あたしが……絶対に」


 そう言って、アリアは扉の方をしっかりと見据え、剣を構えた。


 外から扉を叩く音が段々と激しくなっていき、そして。


「ぐがああああああああああああああああ」


 ――バァン! と雄たけびと共に大きな衝撃音がして、塞いでいたバリケードごと扉が破壊された。


 理性を失くした、ケダモノ共が少女(えもの)三人を求めて襲い掛かって来た。


「二人には、指一本、触れさせない! 来てみろケダモノ共!! あたしが相手だ!」


 剣聖のスキルを発動したアリアは、そのままケダモノの群れに突っ込んでいった。




 ***




 酒場にクリス達を残し偵察に出た俺は、身体強化(極)を使い街中を散策する。


 街は、酷い有様だった。


 ある路上では、全裸の男たちが延々と全裸にされた女性を犯していた。女性の方はピクピク痙攣していたが、動く様子はなく……。

 狂った男たちは、そんな様子に構うことなくひたすら欲望を満たしていた。


 おそらく、あんな光景が街中で起こっているのだろう。早く何とかしなければクリス達もあんな。


 最悪な想像を振り払い、俺は怪しそうな場所を片っ端から調べていく。


 そして、街の中心部に巨大な建物があった。見るからに怪しく。扉の前には警備代わりなのか魔物が立っていた。


 おそらく、ここに四天王がいるに違いない。


 待っていろクリス、すぐに終わらせて……この状況から救ってやるからな。

 焦る気持ちを抑えながら、入り口前の魔物を一撃で片付ける。


 そして、俺は建物の中に入って行っていく。

良い匂いでバレます。

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