表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第四章 魔都アクエリラス
44/82

始まりから窮地

 

 俺様の名前はクリスティーナ。宇宙で一番美しく、偉大で清楚で可愛くて……とにかく全部すげー聖女様だ。


 救世の旅を再開して今、魔都と呼ばれるアクエリラスに到着したところだ。


 したところ……なんだが。


(なんだよこの臭い……腐ってるような……甘いような……あとちょっと、何かアレのような臭いがすげぇんだが……)


 最悪だ、来る場所を間違えた感が半端じゃねぇ。水が綺麗とか言われてたらしいが、ドブみたいに濁ってる噴水が目の前にある。


 臭いも最悪なんだが、もっとやべぇのは。


「へっ……へっ……ふぅ……ふぅ……お、おんなだぁああ」


 街の人間らしき野郎どもが、全裸でこっちに近づいてるって事だ。一体どうなってんだこりゃ? こんな狂人ばかりの街じゃ聖女さまを宣伝しようキャンペーンが出来ないだろ……。


「い、一体何なのこいつら! それ以上、あたし達に近寄らないで! 斬るわよ!?」


 アリアが威嚇してるが、瞳孔が開いて、涎を垂らし、発情してアリアを見てるあいつらの顔を見る限り……素直に聞いてくれそうにはねぇな。


「クリス、下がっていてくれ。あんな奴らの穢れた部分をお前に見せたくはない」


 アレフはそう言って、アロンダイトを構えて野郎どもを牽制してる。早く斬っちまえば良いのに。


 アレフが俺様に気を使って言ってくれるが、ぶら下がってるあんなモノ見たって何ともないんだが……。だって、前世でアレついてたしさ。俺様以外のモノは相変わらずショボいと思ってしまうが。


 アレフに言われて俺様は、リノの手を引いて邪魔にならない所まで下がる。耳を澄ませば、何だかあちこちで女の嬌声が聞こえてくるんだが。


 ひょっとして、ここってかなりやべー所なんじゃね……?

 いや、別の意味でやべー所だったわ。


「ぐひひひひひほ。おんなだぁ♪」


 ゲッ! 後ろにもいんじゃねぇかよ。まあ、ここは俺様の演技で対話する振りをして、だけど話が通じなくて嘆き悲しむ聖女を演出するのも悪くねぇな。


 そう決めると、俺様は全裸のモブ男に向かい歩いていく。リノが俺様を止めるが、俺様は慈愛フェイスを張り付けた顔でリノに向かってこう言った。


「大丈夫ですよ、リノ。心を込めて話せば、きっと……あの人も正気に戻ってくれるはずですから(全裸のやべーやつに対して、心の底からこんなこと言えるアホいんのかな?)」


 まあ、顔を見る限り戻る可能性はゼロだけどな。アホな位に純粋でお人好しな聖女を演出するのも楽じゃねーわ。

 俺様以外がこんな事言ってたらマジで頭おかしい女だぞ。


「お姉ちゃん……お姉ちゃんは、人の心を信じすぎなんだよ……」


 リノはそんな事言いながらも、俺様から手を放す。見せる相手が俺様のパーティメンバーだけってのが少し悲しいが、聖女ポイント稼ぎだと思えば悪くはねぇな。


 さてと、粗末なモノをぶら下げた……モブ男に俺様は悲しそうな、それでいて真剣な顔を作って近寄り、話しかける。


「正気に、戻ってください……! あなたは……あなただって、本当はそのような事をしたくないのでしょう?(しかし、ちいせぇな……男として情けなくねーか……)」

「ぐひひひひひひ、白い肌……デカいおっぱいひひひひひぎゃひひひ」


 ……これ、話すだけ無駄じゃね? もうちょっと、人間っぽく頼むよモブ君。めげそうになるが、対話を続ける。

 一体、俺様は何をしてんだろうな? 自分でもよくわかんねーや。


「お話は……出来ませんか? お願いします、正気に――(戻れんわな、もう無理だろこの――)」

「げひゃひゃひゃひゃ……犯す犯す犯す犯す犯す犯す犯す犯す!」


 話の途中で突っ込んできやがった……演出全部ぶち壊しやがって糞野郎が。


 まあ、俺様には防御魔法(プロテクション)Ⅴがあるからな。こんな雑魚の体当たりなんぞ、俺様の清らかで美しい身体には指一本触れることはかなわな――


 そう思った俺様を、衝撃が襲った。


 全裸モブ男が俺様の防御魔法を通り抜けて、俺様にぶつかって来たからだ。

 ……は? なんで?


 勢い良くぶつかられ、押し倒される俺様。のしかかった全裸モブ男は、俺様の尊い胸を……黄金以上の価値のある胸を……鷲掴みにする。


 ……その光景に、ただ困惑した。


 何故だ? 俺様の防御魔法(プロテクション)は、ドラゴンの攻撃でも無傷で跳ね返すくらい強固なんだぞ? こんなクソザコナメクジの全裸男の体当たりが……なぜ防げない?


 俺様がこんな思考に囚われてる間にも、全裸モブ男は俺様の服を脱がそうと乱暴に引き裂こうとする。おいやめろ、これ一着しかねーんだぞ!?


 身体を激しく動かして抵抗しようとしたが、全裸モブ男が上に覆い被さり、ガッシリと押さえ付けている所為で、俺様の身体はビクともしない。


「は、離してください!? やめて……! た、助けてッ!(ひいいいい! 誰か! はよ助けろ無能共!!)」


 限りなく建前と本音が初めて合致したような思いで俺様は必死にアレフとアリアを呼ぶ……いやこの際リノでもいいからなんとかしろっ!!


「クリスッ!? クリスから……この、離れろ!!!」


 即座に気づいたアレフが一瞬でのしかかっていたモブ男の首を刎ねる。首を刎ねられた身体がまだビクビクしてたので、俺様は急いでそこから退く。


 アレフが首を刎ねた際に、大量の血が俺様の服に付着した。

 見た目的に良くねぇんだけど、今は気にしてる場合じゃねぇ……。


「大丈夫かクリスッ!?」

「ハァハァ……ア、アレフ……ありがとう。助かりました……(ちくしょう……助けるのおせーんだよクソヤロウ!)」


 鷲掴みにされてた胸がまだ痛ぇよ……もし跡が残ってたら。

 ああああ! もしも俺様の清き尊き素晴らしき肉体に傷が付いてたら……ヒールかけとくか。


癒しの光(ヒーリング)!」


 俺様は自分の痛む胸に向かって回復呪文を掛けた……が、何も起こらない。


「えっ? な、何故でしょう……回復が使えません(回復禁止とか縛りプレイかな?)」

「クリス……俺の魔法も使えないんだ。どうやらこの魔都では……」


 え、え……なんそれ……。俺様って身体能力ゴミやぞ。

 聖女が身体能力高かったらイメージ崩れるって事で、そこらの村娘にも負けるくらいのレベルなんだが……。


 ええええ……。マジで? マジでこんなの有りなん?


「ア、アレフ……まさか(うそだろ? ふざけんな)」

「ああ、ここでは……魔法が使えない」


 魔法禁止とか詰んでるだろ!? くっそ有能な魔法が使えなくなると、リノより役に立たんぞ俺様。自慢じゃねーけど!


 あっ! 俺様このままじゃ死んじまう。いや、死ぬ前に犯される。


 もう、撤退するか……?


「アレフ、姉さん、リノ……一度退いて態勢を立て直して」

「それは、無理だ。クリス、周りを見てみろ」


 アレフに言われて周りを見ると、いつの間にか入って来た入り口や魔都の周りが巨大な壁で覆われていた。え、いつこんなの建ったんだ?


 誘いこまれたのか……?

 くっ、俺様の有能な、気配察知能力を持ってしても気づかせないとは。魔王軍も中々に賢い奴が居やがるぜ。俺様ほどじゃねぇがな。


 いやいや、そんな事言ってる場合じゃねぇぞ!?

 とにかく俺様の護衛として、アリアとリノは付けて……いざとなったらアリアを飢えた男たちに差し出せばいいだろ!

 相手がロリ〇ンならリノで!


 アリアとかどうせ何回もヤってるし!? 俺様の純潔の価値には敵わんだろ!

 つーか、俺様が救ってやったんだから身体を張る位して当然だよな!


「逃げられないということですね、アレフ(どうしよ、これ……やべぇじゃん)」

「クリス、お前の事は俺が絶対に護る……だから」


 今回ばかりは……聖女ムーブとかしてる場合ではないのでは?

 いや、ダメだ! こういう時に泣き叫ぶとか俺様が求める聖女にふさわしくねぇ。


「それなら、道は一つです。魔王四天王を倒し……この街を救済しましょう! みなさん……私に力を貸してください!(死んでも体面は守ってやる!俺様の偉大さはどんな状況でも崩れてはならねぇんだよ)」


 正直泣きそうだが、俺様の無様を晒すくらいなら死んだ方がマシだ。もう、成る様になれや!


「わかったわクリス! あたしの命、クリスに預けるから」

「お姉ちゃん、わたしも力を貸すよ!!」

「クリスがそう言うなら……俺が、全力でそれを成すだけだ」


 三人の下僕のやる気を引き出したところで、とりあえずどっかに隠れなきゃならん。はぁ、魔法さえ使えりゃなぁ……。


 魔都アクエリラス。ホント、とんでもねぇ所に来ちまったみてぇだな……。

クソザコ主人公と化したクリス。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ