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感動の再会

お待たせ。

 

 メイドさんに、教えてもらった宿屋の前に着いたあたしは、深呼吸して気持ちを落ち着ける。


 仮に、全然違う人だったら……。その時は、どうしようとか余計な考えがぐるぐると頭の中で回る。だが、いつまでもここに突っ立ってるわけにもいかない。


 意を決して、あたしは宿屋に入っていく。人が結構多くて、目的の人物がどこにいるのかわからない。


 キョロキョロと、入り口前であたしが献身の聖女を探していると、こちらに近づいてくる女性が目に入る……その姿を視界に入れた時――


 驚愕した顔を彼女に向けていたと思う。でも仕方ないじゃない。だって近づいてきた彼女は……あたしの。


 ……あたしの知っている女性(ひと)だったんだから。そして、おそらく献身の聖女は彼女であると確信した。


 そう、目の前に居たのは。一年前に見た時よりも大人びて、綺麗になった……。


 死んだと思っていたあたしの妹、クリスティーナだった。


 クリスの姿を確認した途端、あたしは止まらない程の勢いで涙を流し、喜びで身体を震わせた。


「――……クリス……ホントに……生きてたんだねっ……!良かった……良かったよぉ……」


 そう叫ぶと、あたしはクリスに抱き付いていた。感情が制御できず、ただクリスが生きている実感が欲しかった。クリスの身体は……とても暖かかった。


 あたしがクリスに抱き付くと、いきなり抱き付かれたクリスは固まっていた。


 当然だよね。崖から落ちたクリスを、探す素振りすら見せなかった薄情な姉が、今更なにをって思っているんだろう。拒絶される覚悟をしたあたしだったが……。


 クリスは、優しくあたしを抱き締め返してきた。ゆっくりと慈しむように……。


 まるで……そう、まるで。


 ――あたしの事を許してくれてるかのように。


 しばらく抱き合ったあたし達が少し離れると、クリスはその瞳から涙を零して泣いていた。


 こんな、最低な姉の為に……泣いてくれていたのだ。


「クリス……。クリスぅ……あたしと会って、泣いてくれるの……? クリスを探しもせずに、最低な事ばかりした、あたしなんかのために……」


 その姿を見たあたしは、罪の意識に耐えられずクリスにそう聞いてしまった。こんな質問されたって、困るだけだろうに……あたしは本当にずるい女だ。


 そんな質問に、クリスは涙を携えたまま笑顔を作り、あたしに優しく告げた。


「当たり前じゃないですか……だって、私たちは、たった二人の姉妹なのですから。そうでしょう? アリア姉さん」


 あたしの事を、まだお姉ちゃんと呼んでくれるんだねクリス……。

 ああ、クリス……。ありがとね、クリス。


 拒絶しないでくれて、ありがとう。

 抱き締めてくれて、ありがとう。


 ひたすら優しい微笑みを向けてくれるクリスを見て、あたしはまた泣いた。


 でもこれは、悲しい涙じゃなくて……。久しぶりの、嬉しい涙だった。


 リリィちゃんや、フィーネさんに起こったことを、ちゃんと話さなきゃ。

 二人はあたしと同じで勇者に洗脳されて、最低な事を一杯して来たけど。


 クリスなら、クリスならきっと!


 二人の事を、悲しんでくれると思うから……。




 ***




 というようなことが、アリアにあったらしい。

 話なげーよボケ。どうでもええわ。


 つーかリリィ死んだんだって?

 マジでウケるなそれ。しかもアレフに会いに逝ったとかギャグかな?


 アレフ此処にいんのにな? 馬鹿は死んでも馬鹿なのが良く分かったわ。

 あの世でも勇者に魅了されてたら、マジであいつの存在って俺様を笑わせるためのもんになっちまうだろ。


 一応、悲しい顔をポーズで張り付けて話を聞いていた俺様だが、有益な情報が何一つなくぶち切れそうだわ。


 お前、自分の事ばっかりじゃねーか!! 俺様みたいに人の役に立つために生まれてきたような聖女を見習えよクソボケビッチがよ。


 勇者に魅了スキルがあったことを特に執拗なほど俺様に話してきたけどさ、知ってっから!? あの面見た瞬間から知ってましたー! お前情報古すぎんだよ。


 まあ、そこは俺様。表情筋を駆使していかにも、今真実を知ったような顔を作り出しこう言ってやった。


「勇者様が……そんな危険な、スキルを? 信じられません……それじゃあ姉さん達は今まで?(ハヤト君専用の穴になってましたね。見てて楽しかったぞ)」

「そう……。そうなのクリス。あたし達は勇者にスキルを掛けられて……。アレフに、アレフに散々あんなことを……ううう、うっうああああ……」

「姉さん……(顔がブサイクになってますよ!)」


 うっへぇ、ひっでぇ顔してんなこいつ。涙と鼻水汚ぇ……その顔で近づくなよ? 俺様が穢れるわ。


 クソブスに相応しい顔になったアリアを見て上機嫌になる。やはり、俺様以外の女なんぞこれくらいが丁度いいわ。


 全宇宙で一番美しい俺様と血がつながってるだけの分際で、俺様と似た顔立ちとか言われるのがクソ腹立たしかったからな。俺様の方が那由他(なゆた)倍可愛いわ。


 さて、そろそろ頃合いかな?


 こいつに、アレフ君を紹介してやるとするか。クックック。

ブレないクリス(クズ)

ようやくここまで戻ってこれた。

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