エピローグ
ハヤト君が死んでから、今日で、三日後くらいになるな。
俺様たちは、いよいよ王都を出るための準備をしていた。
いやぁ、あれは焦ったぜ。まさか、ハヤト君が死んじゃうとはなぁ。しかも、深夜にスラム街に遊びに出かけて、スラムのならず者達からリンチされて死ぬとか……。
勇者とは、一体なんだったのかってくらい情けなさ過ぎる……失笑しちまったよ思わず。
だけどさぁ、両手足を切断した上で、胸部を数えきれないくらいに滅多刺しって…えげつねぇわ。
なんなん、その手口……マフィア?マフィアなん? この世界に異世界転生してきたマフィアでもいんのか?
とりあえず殺しの手口からして、絶対、頭おかしい奴って事だけは分かるわ。
俺様のような慈愛に満ちた献身の聖女でも、流石にそんな殺し方するような、やべぇ奴らとは関わり合いになりたくねぇし。
そんなことを思ってる内に、荷物も纏め終わり、後は出発するだけとなったわけだが。
なんか、宿の入り口で……俺様たちを塞ぐように一人の女が立ってるんだが?
見覚え、あるんだよなぁ。
「お姉ちゃん? どうしたの?」
リノが俺様に話しかけるが、今それどころじゃねぇんだよ! イベント発生してんだっつーの! あいつが此処に居るって事は、王城で起きた騒ぎもホントらしいな。
隣にいる、アレフを見ると、やっぱ険しい顔してんな。そらそうだべな、いきなり宿屋でエンカウントするって誰も思わねぇって! ハヤト君が死んでから俺様驚きっぱなしだぜ!
「リノ、ちょっと待っていて頂けますか?あそこにいる人は、私の(玩具です)」
「……わかった。じゃあ、待ってるね」
「ありがとう、リノ。すぐ呼びますからね(何で少し不満そうなのこのガキ?待つと死ぬ病なんか?)」
リノの糞みたいな態度を海のような広い度量で我慢した俺様は、リノの頭を機械的に撫でた後に、宿の入り口を塞いで立っている、迷惑極まりない女の元に近づく。
俺様が近づくと、女は驚愕の表情で俺様を見た後に、何故か泣き出す。頭大丈夫かこいつ?
「――……クリス……ホントに……生きてたんだねっ……!良かった……良かったよぉ……」
そう叫ぶと、俺様に抱き付いてきた。
なん、だと……? 俺様より、胸がデカい……? 死ねよこのクズ。その汚いデカパイを俺様の胸に擦り付けるんじゃねぇよ。形は多分、俺様の圧勝だろう。はい俺様の勝ちー!
勝利を確信したからちょっと冷静になれたわ。そろそろ聖女モードで挨拶してやるか。
涙腺スイッチを入れて、俺様も熱い涙を流して、抱き締め返す。感動の演出をしてやった所為か、女が更に泣き出す。
「クリス……。クリスぅ……あたしと会って、泣いてくれるの? クリスを探しもせずに、最低な事ばかりした、あたしなんかのために……」
さてと、これから忙しくなりそうだな。
言うなれば、ここから第三部開幕だっ! とりあえず、何でこの場所に……しかも、こいつ一人でいるのか聞かねぇとな? アレフにはちょいと悪いが。
「当たり前じゃないですか……。だって、私たちは、たった二人の姉妹なのですから。そうでしょう?(神そのものに等しい俺様と、モルモット未満の価値しかないお前じゃ立場が違うがな)」
俺様はそう言って、女の目を見つめる。相手も、俺様の銀河を束ねるがごとき美しい瞳を見る。
ケケケッ! 俺様の名声を上げるために、悲劇のダンスを踊ってくれよ?
……なあ?
「―――アリア、姉さん」
二章はこれで終了です。