表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第二章 聖女と救世の英雄
29/82

俺の名は。

感動の再開(二回目)

あと短い。

 

 ――ブゥン! と振り下ろされた英雄の剣が、リノに降りかかる。


 この一撃はリノの命を確実に刈り取り、それと同時にハヤトのスキルの秘密を知る、唯一の人物が消える。そして、今いる場所は夜中のスラム街にある行き止まりの裏道。


 リノの死体が発見されても、ならず者の仕業として処理される事だろう。ここに、ハヤトの完全犯罪は成った。


 ハヤトは後は素知らぬ顔をして、リノを失い更に精神が弱ったクリスを頂けば良い。それで、ハヤトの望みは完全に成就する。


 ハヤトは、完全勝利した!


 ……はずだった。だが、現実は違う。ハヤトの振り下ろした英雄の剣は、何者かが投げて来た硬質の物体にぶつけられ、その衝撃で両手から弾き飛ばされていた。


 弾き飛ばされた、英雄の剣が少し離れた地面へと刺さる。その傍には、英雄の剣より立派な、輝く剣も共に刺さっていた……。ハヤトの剣を弾いたのは、投げられてきたのは、聖剣アロンダイトだった。


 驚愕の表情をしている、ハヤトの後方……行き止まりの通路の入り口側から足音が聞こえて来た。


 カツーン、カツーンと鳴り響く足音、やけに、音が響く。前にも、この場所で、こういった事があったことを、知る者は少ない。


 闇の中から、一人の男が姿を現す。白銀の鎧に身を包み、冷徹な眼差しをハヤトに向けた、美しき美丈夫。


 ――救世の英雄、様々な街で魔王軍の脅威を悉く殲滅していった益荒男が、そこにいた。


「こんばんわ、勇者様。こんな夜更けに、こんな場所で、俺のパーティメンバーに何をしているのでしょうか?」


 救世の英雄はニッコリと微笑んだまま……しかし、冷徹な眼差しはそのままに、ハヤトへと問う。


「きゅ、救世の英雄……これは……」


 言葉に詰まるハヤト。目の前には顔を腫らし、鼻血を大量に出しているリノ。言い訳が何も思いつかなかった。だが、ハヤトの言葉など必要ないかのように英雄は話し出す。


「ああ、大丈夫です。分かってますから。相変わらず、お前は、変わってないんだなって……再確認できただけですから。勇者様」

「……? 救世の英雄。一体、何を言って……?」


 いきなり変わった英雄の態度に、困惑の色を隠せないハヤト。宿屋で挨拶したきり、彼とは面識がなかったと認識していたので、言っている意味がさっぱり分からなかったのだ。


「しかし……そういうことだったんだな。あの時の、三人の豹変した態度も、リノの不可解な行動も……そして、クリスが部屋で言っていた独り言も。全て、繋がったよ。勇者様……いや、ハヤト」

「え、英雄? 君は何を言ってるんだ? さっきから何の話をしているのか僕には」

「わからないとでも、言うのか? 俺の、全てを奪ったお前が……俺に向かって、分からないとでも言うつもりなのか……?」

「な、何の事だよ! 意味わかんないんだよさっきから! お前とは宿で会っただけの初対面だろうが! さっきから聞いてれば、僕の事を知ったように、ベラベラとさ。何なんだよお前!」

「そうか、まだわからないんだな。ははは……ははははは……くっははははッ!!」

「何笑って……頭おかしいんじゃないのかお前! 英雄なんて呼ばれてるが、こんな人格破綻者だったなんてな。人々が希望としてるお前のそんな姿を知ったら嘆くだろうな!」


 壊れたように嗤う英雄と、そんな英雄を恐れと侮蔑の感情で責める勇者。真に責められる者がどちらなのか、未だに分かっていないのだ。だが、それも、もう……。


「ははっ……すまない。俺も大概壊れていてな。感情を上手く制御できないんだ。久しぶりに会ったのに悪かったよ」

「だから! お前とは、宿で会った時が初対面だろうが! いきなり、馴れ馴れしくなって……気持ち悪いんだよ、てめぇ!」

「悲しい事、言うなよ。半年間……一緒に旅をして来た仲だろ?」

「……は? なに、いって」


 ハヤトの混乱はいよいよもって、最高潮へと達する。こんな男と旅をした覚えなどないのだ……。


「お前と初めて旅をしてさ。俺は勇者のお前や、幼馴染達と仲良く旅を出来ると思ってたんだぜ?」

「なっ……」

「だけど突然、幼馴染は俺に酷い扱いするようになって。仲良くしたいと思ってた勇者には――大切な婚約者だった女性を奪われたりさ」


 こんな男と、旅など……。


「最後には、好きだった女に、崖から突き落とされた惨めな男……。お前とは、それっきりだった、よな?」

「あっあ……ああああ……おまっ、おまえっおまっ……まさか! まさか……! ありえない!」

「クリスが生きてたのにさ、何故、俺が死んだと……そんなおめでたいことを、思えたんだ?」

「あ、あっ……!」


 この男を、ハヤトは知っている……いや、ようやく、思い出した。

 自分が全てを奪った男。目の前で散々、好きな女を抱き、好きな女達から嫌われるようにした男。ただの、負け犬だった筈の男。


「思い出してくれたみたいだな。じゃあ改めて挨拶しようか、ハヤト。どうも、救世の英雄と呼ばれています、名前は――」


 英雄は、再び笑顔を向けてハヤトに自身の名を……隠していた名を名乗った。


「俺の名は、アレフと言います。久しぶりだなハヤト……心の底から、会いたかったよ」


タイトルやりたかっただけだろ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] よっしゃなぶり殺してミンチにしたれ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ