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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第二章 聖女と救世の英雄
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愛が憎しみに勝る時

 

 やべぇ! やべぇ! やべぇ!! ヤバすぎて俺様は焦りに焦っていた。

 ハヤトの洗脳が、解けた。


 それも何百年に一回しか出てこないとか言う、糞レアスキルをリノが引いたからとか……どういうこった!?


 えっ、なんでだ? 何でこうなるんだ? 俺様が、祝福授けたのがダメだったのかよ。聖女って、良いスキル与える力とか隠し能力でもあんのかな……。


 いやいやいや、そんな事考えてる場合じゃねぇ。


 リノの奴が正気に戻る前に、さっさと教会の外に出て、ハヤトの野郎に話を付けちまえば……何とかなるだろっ!


 俺様は、リノが洗脳されてるなんて知らなかった! そう知らなかったんだよ!

 これも全て、ハヤトって奴の仕業なんだッ!


 まるで! 全然! 全く! えっ? むしろ、洗脳されてたのあいつ? 俺様気づかなかったわー! だから、俺様はリノから家族じゃない認定された哀れな聖女っつーことで……ひとつ。どうよ?


 リノの為に、リノが大好きなハヤトに話を付けに行く俺様ってば、まさに聖女。

 聖女のやる事はただ一つ、相手の幸せを考えて行動することです!まだだ、まだ終わらんぞ。


(そうと決まれば、善は急げだな。早く外に……)


 俺様は出口に再び、歩こうとしたが。


 ガシッと、背後から、俺様の腰に両手を回して掴みかかる、奴がいて。


(あっ……あっ……まさか、早すぎるだろ……もう、再起動しやがったのか)


 バックドロップを仕掛けんばかりに俺様に抱き付いてくる……リノがいた。

 どうやら、俺様は逃げ遅れたようだ。こいつ(リノガキ)からは、逃げられないとでもいうのだろうか?


「……リ、リノ、ちゃん……?(いやだあああああ!はなせえええええ!)」

「おねえちゃん、待って、行っちゃ、やだよ……」


 ああ……っ! ぎゃあああっ!! この流れは何となく予想出来てしまう。聖女モードで俺様は対応せざるを得ないんだから、もう分かる。この後の状況がそれこそ、手に取る様に!


 このガキから、多分もう――――


 俺 様 は 逃 げ ら れ な い




 ***




 わたしは、女神様の祝福でスキルを手に入れた瞬間、心の中に巣くっていた、黒くて、穢くて、ドロドロしたものが消えていくのを感じました。


 それと同時に、さっきまで、心を占めていたハヤトという、今では、どうでもいい存在になった人を好きだった感情も完全に消えて。代わりに、狂おしいほどのお姉ちゃんへの気持ちが戻ってきたんです……。


 記憶は、残っています……。自分が何を言ったのか、恐ろしいほど鮮明に覚えているのです。あれは、間違いなく、わたしが言った……言ってしまったのだと。


『あんたなんか、わたしの家族じゃないッ!!』


 なんてことを、言ったんだろう……。


 言われた、お姉ちゃんは……どれほど哀しかったの?


 想像も付かない……。そんな酷い事を、わたしが言ったんです。


 ああ……最低な自分。

 お姉ちゃんの気持ちを、ゴミのように踏みにじった最低の(リノ)


 死にたくなる。自分がこんなこと言われたら傷つく癖に、助けてくれたお姉ちゃんに平気で、こんな事を投げかけた最低の屑なんて、死ねばいい……。


 だけど、そう思う反面。わたしはお姉ちゃんと、もう一度前みたいにお話ししたくて。どうしようもない……わたし、自分で捨てた癖に……お姉ちゃんを、捨てた癖に。


 ――それでも、求めるだなんて、なんて自分勝手なんだろう。


「お姉ちゃんは……? お姉ちゃんは?」


 わたしは教会の中央で蹲っていた身体を起き上がらせ、辺りを見回す。


 お姉ちゃんは、教会の入り口から外に向かう様子だった。後ろ姿は寂しく見えて、今どんな表情をしているのか、想像もしたくない。


 お姉ちゃんは、わたしと決別するために、どれほどの覚悟をしたのだろう。わたしには、絶対にそんな覚悟は出来ない。


 でも止めないと……。お姉ちゃんが外に出たら、多分もう、わたしたちは戻れなくなる。そんな予感がわたしにはしたから……だから。


 わたしはお姉ちゃんの腰に、思い切りしがみ付いた。


 あんなことを言った人間からこんなことされたら、普通の人なら怒るかも知れない。殴るかも知れない。今更なんだと、軽蔑されても仕方ない。


 でも、わたしは嫌だった。お姉ちゃんと別れるなんて、絶対に。


 お姉ちゃんが許してくれるまで何度も謝りたい。土下座して謝りたい。謝罪を受け入れてくれるまで何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも謝りたい。


 もう一度、チャンスをくださいって。


「……リ、リノ、ちゃん……?」


 お姉ちゃんは、いきなり抱き付いてきたわたしに困惑しているようだった。当然だ、さっきまで、触るなと怒鳴り散らしていた(リノ)が自分からベタベタとくっ付いてきたんだから…。


 傷ついたよね……。わたしも、いまお姉ちゃんからそんな事言われたら……凄く悲しいもん。ごめんなさい。ごめんなさい……。


「おねえちゃん、待って、行っちゃ、やだよ……」


 勝手な事言って、ごめんなさい。行っちゃやだなんて、自分からお姉ちゃんを切り捨てた癖に、何を言ってるんだろうと、思う……どれだけ、勝手なのって……。


 でもね、でも! どれだけ自己嫌悪しても、お姉ちゃんと離れたくないの。お姉ちゃんと別れたくなんてない!


 わたし、お姉ちゃんともう一度、家族に……なりたいの。


「リノちゃん……私に触られるの、嫌じゃありませんか?」

「そんなこと!? そんなこと絶対にないです! あるわけないです! わたし、お姉ちゃんから触ってもらえるのが、とても好きなんです! 嫌だなんて、嫌だなんて……もう、二度と、言わない……から……お姉ちゃん、ごめんなさい。酷い事、言って、ごめんなさい。怒鳴って、ごめんなさい、手を払いのけて、ごめんなさい……家族、じゃない……なんて、言って……ごめ゛ん……な、さ」


 もう、耐えられなかった。自分のしたことに。言わなきゃいけない懺悔ですら、わたしは最後まで出来なかった。恩を仇でしか返せない、醜いわたしがそこに居た。


 こんな様じゃ、お姉ちゃんもわたしを見捨てる。見捨てられて当然だ。(リノ)に居場所などないんだから……。


「……良かった。リノに嫌われたわけじゃなかったのですね」

「えっ、お姉ちゃん……?」

「……もう一度、やり直せますか? 私は、リノと……もう一度、家族になっても良いのでしょうか?」

「―――っ!!」


 わたしから言わなきゃいけない言葉だったのに……。何度も何度も何度も謝って、お姉ちゃんが許してくれたら……。


 わたしから、言わなきゃいけない……。そうじゃないと、言われるはずのない言葉だったのに。


 酷い事を言われた、お姉ちゃんの方から、なんで……? わたしのこと、恨んでないの……? 憎いって思われても仕方のない事、わたし、言ったんだよ……? なんでそんなに、優しいの?


「……やっぱり、ダメでしょうか。もう一度、私と家族になるなんて、リノは望んで――」

「なる」

「え、リノ……?」

「なる! なります! ならせてください! お願いならせて! おねえちゃんと家族! なりたいなりたいなりたい! おねえちゃんがチャンスをくれるなら! わたし! わたし! わたし!!……もう一度、お姉ちゃんと、家族になりたいッ!!」


 お姉ちゃんが……クリス様が、チャンスをくれるなら、また家族になれるなら、わたしは、なんでもする! なんでもしたい!


 そしてもう、二度と間違えない。絶対にお姉ちゃんを裏切らない。お姉ちゃんを裏切るような人をわたしは許さない……。わたしは、わたしを許さない。


「リノ……もう一度、私の妹になってくれて、ありがとう」

「……ひぐっ、お姉ちゃん……! わたし、わたしっ」


 お姉ちゃんは少し涙を浮かべていた。

 色々と思う所は、あるんだと思う。


 でも、そういうのを全て飲み込んで、わたしを再び受け入れてくれて、わたしの頭を優しく撫でながら。


「……おかえりなさい」


 お姉ちゃんは、そう言ってわたしを迎え入れてくれて。





 ――そして、わたしとお姉ちゃんは……もう一度、家族になった。


とりあえず、元鞘(なんか違う)

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