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勇者に4人の幼馴染が寝取られ……あれ1人様子が?  作者: 鶴沢仁
第二章 聖女と救世の英雄
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堕ちた勇者の始動

みんな大好き勇者ハヤト(好きすぎて、死を望む声が多い)

 

 救世の英雄と献身の聖女が、王都に来てから三日目が経っていた。王城に入る日である。昼過ぎに二人が城に来ると、城の中は騒ぎになっていた。さて、そんな中、ここは王城にある、ある一室。


 部屋の中は、全裸の女性が十人以上も転がっていた。配置されたベッドはとても大きく、複数の女性と一緒に寝ても、十分余裕のある広さだ。その中心に男がいた。


 彼の名はハヤト。一年前に魔王討伐の旅に出ていたが、王都に帰還して約一年、こうして白昼堂々と女たちと日々、爛れた生活を送っていることから、人々に堕落の勇者と蔑まれている、かつての英雄だ。


「……ちっ、最近はどいつもこいつもすっかり締りが悪くなりやがって、気分も萎えてしまう」


 旅の頃にしていた、見かけだけの物腰が丁寧な口調もすっかり破棄し、つまらなさそうに吐き捨てる勇者。彼がこうなってしまった原因は、一年前の火竜の洞窟で依頼人に騙されたハヤト達が王都に帰還した後だった。


 騙した魔術師の、無様な処刑姿を満足そうに見た後に、本来なら旅を再開する予定だったのだが、彼ら四人は欲望のままに貪り合い、それに耽る内に、誰も出発を促せる人間が居なくなってしまった。


 そうこうしてる内に、三人の少女では満足できなくなったハヤトは、王都の女性達を次々と洗脳し、餌食としていった。


 特に、相思相愛のカップルの女性や、王都でも仲睦まじいと噂される人妻などを好んで奪い、旦那や彼氏が奮起して城に来れば、買収した衛兵に連行させ、いたぶらせるのが快感だった。


(この一年で、一番面白かったのは、夫婦の妻を寝取ったときに、女が身籠っていたことだな。旦那は俺と妻には既に愛の結晶が!とか僕に言い始めたけど、フィーネの堕胎魔法で愛の結晶とやらを壊してやったときの男の絶望した間抜け面は今でも笑えるよ)


 くつくつと笑うハヤト。その顔は醜悪に歪み、欲望と悪意を詰めたような顔だった。


(相思相愛のカップルの時は、男には僕と彼女が愛し合って僕の種で妊娠させたことを伝えたりもしたな。伝えた途端、彼は発狂して走り去っていったけど、まだ生きてるのかねぇ)


 過ごした一年を、まるでロクなことに使ってない回想をする勇者ハヤトだが、今の彼は満たされない心境にあった。それは、民衆の彼の急落下した名声と、現在の彼の姿にある。


 一年前に引き締まっていた腹筋はだらしなく伸び、無精ひげを生やし、まるで生気のない顔。唯一、下半身のモノだけは一年前と変わらず立派にそそり立っている。


 女を侍らせ、目に付いた好きな女をどんどん味わうハヤトだが、その姿はまさに負け犬だった。そして、そのことをハヤト自身もうっすらとだが自覚していたので、なおさら心に満たされない空虚な想いがあったのだ。


 ハヤトとて、勇者と呼ばれた男。それなりの自尊心はあった。本当なら身体を再び鍛え、美しい肉体を取り戻し、英雄への道を再開したい。その思いは今でもある。


 それでも動けないのは、洗脳した女たちが事あるごとに自分の身体に触れ、欲望を刺激させて来るので、ハヤト自身も、すぐに抑えが聞かなくなり、結果、爛れた生活へと舞い戻ってしまう悪循環にあった。


 どうにかしたいのにできない歯がゆさが、ハヤトの心を蝕んでいた。


 そんな中、今民衆の間で話題になっている、救世の英雄と献身の聖女にはハヤト自身興味があった。一年前に、自分が旅をしていたころにはそんな名前など全く聞かなかった。


 ハヤトが堕落した辺りの時期から、この二人は頭角を現し、風の丘で暗躍していた魔王四天王の一人、風神ガルフや、同じく終末の村に居た、氷魔人ネリエフと言った強敵を、たった二人で討ち倒し、周辺の人々を救済していったのだ。


 その話は王の耳にも入り、歓喜した王は二人をこの王城に呼んだのだ。


 自分を差し置いて、獅子奮迅の活躍をする二人を妬ましい気持ちはある。しかし、ハヤトにしては珍しく、それ以上に、そこまでの活躍をした英雄二人を純粋に見てみたいという気持が湧き上がっていた。


 彼らの姿を見れば、自分ももう一度立ち上がり、英雄の仲間に入れるのではないか?という期待をハヤトは持っていたのだ。同じ志を持つ人間となら、切磋琢磨で再び立ち上がれる、と。


 だが、自尊心の高い彼は今の自分の姿を二人の英雄に晒すことは耐えられなかった。本当なら会って話をしたいが、今回は、離れた場所から二人を見るに留める決意をする。


 ――そして、その時が来た。


 城の中の騒ぎはピークとなり、ガヤガヤと王の間に貴族達が集まる中、噂の中心である二人の男女が王の間に入って来た。ハヤトは双眼鏡のような魔道具で王の間の二階から二人の姿を見た。


 一人は、白銀の鎧を着た美しい男だった。ハヤトも自身のルックスには多少の自信があったが、その男に何一つ勝てるものがないと、一目見た時に悟ってしまう。


 激しい嫉妬を感じるが、頭の冷静な部分では、あそこまで差のある男に最早嫉妬するのも馬鹿らしいのでは?と語りかける自分もいた。


 鎧の上からでも分かるほど身体は引き締まっており、腰に差してある剣も遠くから見ても分かるほど、強力な武器だと戦闘経験もそこそこあるハヤトには分かった。


 救世の英雄と呼ばれる男の方にもびっくりしたが、ハヤトが献身の聖女に双眼鏡を合わせた瞬間、男とは違う意味での驚愕をハヤトは味わう事になる。


(――なっ!? 馬鹿な!馬鹿な!僕は夢でも見てるのかっ……! だって、彼女は……)


 余りの事に双眼鏡をつい落としてしまう。落としたレンズごしに、あり得ないものを見てしまった男の顔が映る。献身の聖女は自分が知っている人物だったからだ。


 一年前より、大人びていた。

 一年前より、更に美しくなっていた。

 一年前から、強い意志を感じた輝きが増していた。


 そして、一年前に、唯一、自身の手から零れ落ちた、穢れなき、聖女。


 献身の聖女の正体とは、かつて自身のパーティに居たアリアの妹……クリスティーナだった。


「……ふっ……くふっ……くく……ふはは……」


 ハヤトの口から笑いが零れる。それは歓喜の声、それは、嫉妬の声。英雄二人を見てハヤトがおもったことは。


 ――愚かにも、かつて、味わい逃した少女を再び見つけられたことに対する情欲であった。


 結局、ハヤトは変わることは出来なかったのだ。英雄二人を見て切磋琢磨しようなどと思う気持はとうに失せている。だが、ただの情欲ではない。


 逃した獲物(クリス)を再び捕まえるためなら、彼は目先の欲望など振り捨てて、頑張れる男だ。欲望のために欲望に勝つ、まるでケダモノみたいだが、それがハヤトという男だ。


 ハヤトは王の間を後にする。今から身体を徹底的に鍛え直し、かつての肉体となって献身の聖女と再会するために。久しぶりに顔を合わせるのに、このだらしない身体を見せるわけにはいかない。そんなことでは、聖女を堕とせないのだから。


「ああ……この気持ち、忘れていたなぁ……。やっぱりクリスは、僕の女になるために戻って来たんだね。嬉しいよ……。腐りそうになっていた僕をやる気にさせるために、わざわざこんな大規模な演出までして、僕の為に会いに来てくれたんだから……」


 イカれ男の歪んだ妄想は続く。こうなってしまったこの男はもう、誰にも止めることはできない。


 ハヤトは一か月みっちりと鍛えるために、王に英雄二人を一か月王都に留めるようにお願いをする。引き留める理由など、自分の外見的な事情でしかなく、王も難色を示した。


 が、この王もまた愚王と呼ばれる類の人物だったため。王都に英雄二人がいれば、王としての威厳も増しますなどと、都合の良い言葉を言われただけであっさりと了承してしまった。


 こうして、クリスとアレフは救世の旅を一か月も中断されることとなってしまった。人類にとっては大損害この上ないことではあるが、ハヤトにとってそんなことは関係ない。


 身体を鍛え始めた数日は、洗脳した人妻たちや、王都の娘、アリア達などもハヤトとまぐわう為に鍛えている最中などでも構わず、過剰なスキンシップをしていたのだが。


 再び、クリスを堕とすために鋼の精神を纏ったハヤトには目先の誘惑などは最早通用せず、一度も彼女たちの方に身体を預ける事は無かった。


 身体の疼きがハヤトによって開発され、我慢できなくなった彼女たちは、一人寂しく慰めて一か月を過ごしたという。


 そうして、刻一刻と、勇者ハヤトの魔の手はクリスへと忍び寄りつつあった……。

努力型クズ。努力しようがクズはクズなのって良いよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] はよ死ね
[一言] ハヤトはただのクズだから嫌い クズが苦しむのは好き
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