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第076話:ハワード大統領の危機

小説版「ダンジョン・バスターズ」第一巻、オーバーラップノベルス様より好評発売中です。

皆様、ぜひぜひ宜しくお願いいたします!

【ガメリカ合衆国 NNNチャンネル】

 ガメリカ合衆国大統領選挙の性質は「祭り」である。四年に一度開かれるこの祭典は、数十億円の資金が動き、全米中のメディアが駆け回る。二〇二〇年十一月三日の投票日に向けて、共和党と民主党の候補者が全米各地で演説を行う。その会場には大勢の支持者が詰めかけ、寄付金集めのグッズ販売は無論、出店なども出る。まさに祭りそのものであった。


 もう一つの祭りが、テレビで放送される討論会である。二人の候補者が向かい合って互いの政策、キャリア、人物について言葉を交わし合う。勝てば世界最大最強国家の統治者となり、負ければ数十億円を失って路頭を彷徨うことになる。言葉を武器にした命がけの戦いは、現代のコロッセオといえるだろう。四〇%近い視聴率になるのも当然であった。

 そしていま、共和党候補であり現大統領のロナルド・ハワードと、民主党候補であるピーター・ウォズニアックが激しい議論を行っていた。


「貴方はダンジョン攻略をアウトソーシングして、ガメリカ軍を世界各地に戻すと言っているが、南米に出現したテロリスト対策をどうするつもりなのだ? 今でこそガメリカ軍は本国に集まり、鉄壁の防御を構えているが、各地に送り出せばそれだけ本土防衛が弱くなる。貴男はガメリカ人がどうなってもいいと言うのか?」


「貴方こそ勘違いをしていないか? 世界が滅びようともガメリカ一国が残ればそれで良いとでも? ダンジョン、そしてジョーカーというテロリストへの対応には国際協調が不可欠だ。ガメリカが自国中心主義で殻に閉じ籠もったため、大東亜人民共産国は日本と手を結び、EUとアジアではダンジョン資源を生かした新経済(ニューエコノミー)が誕生しようとしている。世界が、ガメリカを見捨てようとしているのだ。このままでは時代の流れに、ガメリカは乗り遅れてしまう」


 七月の民主党党大会で勝利したのは、若干三八歳のピーター・ウォズニアックであった。経験の少なさを指摘されていた彼だが、自身のダンジョン政策を修正し、対立候補のジョナサン・バイロンを副大統領候補に指名した。バイロンは元々、民主党政権時代に副大統領を経験し、豊富な政治経験を持っている。外交と議会対策を期待されての副大統領候補指名であったが、本人はウォズニアックの説得が一番効いたと苦笑している。


《ガメリカだけ良ければいいなどという時代ではない。世界の危機なのです。貴方の、半世紀に渡る政治家人生の集大成として、一緒に人類の危機に立ち向かって下さい!》


 若者が持つ眩いばかりのビジョンと情熱を見たときに、バイロンは身を退くことを決めた。平時であれば問題ないが、ダンジョン、そして魔王出現という人類史上最大の危機に、七八歳の自分では立ち向かえないと思ったのだ。そして、同じ七〇代の現大統領に、身を退くように勧告した。


《今なら世界を守るための名誉ある勇退として評価される。冷戦時代を生きた我々の出番ではない。若き希望を育てるための肥やしとなるべきだ》


 無論、ハワードは一笑に付した。自分は枯れた老人とは違う。今でもハンバーガーとフライドチキンを食らう現役バリバリの益荒男(マッチョ)だと言い放ったのであった。


「世界はダンジョンという危機に直面している。だからこそ『強いリーダー』が必要なのだ。ガメリカはガメリカの手によって守る。建国以来続いたこの姿勢を守らずに、ダンジョンに勝てるはずがない。貴方のように協調だの話し合いだのを優先するような弱腰に、この国を纏められるはずがない!」


 一部の支持者から拍手が鳴る。だがウォズニアックは冷静であった。首を振って溜息を吐くと、静かな言葉で語りかけた。


「ミスター・ハワード。マッチョイズムは人間相手にしか通じないんですよ。ダンジョンに入ったことのない貴方には理解できないかもしれないが、どんなに威勢のよい言葉を吐いたところで、魔物には通じません。老いも若きも、男も女も、貴方も私も、魔物から見ればみんな等しく『餌』にすぎないのです。この国に必要なのは、強い姿勢を見せるマッチョな大統領ではない。ダンジョンに対する正しい認識と、現実的な解決策を導き出すクールな大統領が必要なんです。貴方が大統領になれば、犠牲者が増えるだけです」


「貴方にはガメリカ人としての誇りはないのか! 世界最強のガメリカ軍が総力を挙げてダンジョンに挑んでいるのだ! 負けるはずがない!」


「その認識が間違っているんです! 相手は国家でもテロリストでもない。ダンジョンという異常な世界で、無限の魔物を相手に果てしない戦いを続けなければならない。兵士に命令して送り出せば勝てると思ってるんですか? あそこは、そんなに甘くないんですよ!」


 議論は平行線を辿った。その原因は、二人の「現状認識の違い」にあった。片方は既存の軍隊で勝てると考え、もう片方は命令で動く軍隊では不可能だと言う。この認識の違いは、南米のテロリストに対しても浮き彫りになった。


「ガメリカはテロリストとは交渉しない。だがジョーカーという男には、彼なりの言い分があるだろう。交渉はしないが、話を聞くだけならば応じたいと思う」


 ピーター・ウォズニアックの言葉に、ドナルド・ハワードは眉間を険しくして机を叩いた。


「馬鹿げている! 奴がやろうとしていることは、ガメリカから富を奪ってそれをバラ撒くことだ。つまりガメリカ人に貧しくなれと言っているのだ。そんなことは断じて許容できない。奴との話し合いなど論外だ!」


「しかし、現実にジョーカーは、魔物という『軍事力』を背景に、南米に勢力を広げている。物理的力の質と量、そして主義主張まで、中東のムスラン・ステーツとは次元が違う。合衆国は南米諸国との関係も強い。このまま放置するわけにはいかないだろう」


「当然だ。だから私が解決する。ミスター・ウォズニアックは話し合いなどという寝言を仰るが、私は違う。現在、ブレージルとの極秘共同作戦を進行させている。近日中に、皆さんには朗報をお伝えできるだろう。そして、誰がガメリカの大統領に相応しいか、ご理解いただけるはずだ」


 自信満々の表情で、ハワードはそう言い切った。この討論会は様々な機関、専門家が採点したが、殆どは五〇対五〇フィフティーフィフティーであった。

 そして数日後、ハワード大統領の言葉は結果として示された。本人が望んだ形とは違ったが……





【ブレージル 国道一七四号線】

 国道一七四号線をひた走る。途中にある「インクラ村」で一休みしたジョーカー一行は、道沿いに延々と南下を続けていた。国道一七四号線を進み続ければ、やがて赤道に出る。そこで記念撮影をしてガメリカに見せつけてやろう、などと考えていたジョーカーに、部下の一人が声を掛けた。


「ボス……」


「車を止めろ!」


 トラック三台が国道の中央で止まる。北緯〇度八五分、西経六〇度四三分であった。一斉にトラックから降り、東側に並ぶ。ジョーカーは紙巻たばこを取り出して、火を付けた。


「……来ます。あと二〇秒」


「ジョバンニ、頼むぞ」


 まだ二〇歳過ぎと思われる若い男が歩みだし、茂みに入っていく。ジョーカーたちは黙って東の空を見ていた。そしてそれは姿を表した。





 一九九一年の湾岸戦争で知られるようになった「トマホーク・ミサイル」は、その後アップデートを続け、現在はブロック・フォーと呼ばれる第四世代となっている。その性能は驚くべきものだ。

弾頭の種類にもよるが、最大射程は三千キロメートル、着弾誤差は僅か数メートルである。マッハ〇.七五の速度で飛びながら、人工衛星とのデータリンクにより、移動物体を補足し続けて自律的に軌道修正を行う。弾頭には赤外線探知カメラを搭載しており、たとえ濃霧の中だろうが夜間であろうが関係なく、ターゲットを正確に爆撃する。地上一〇メートルを飛ぶためレーダーにも補足されず、戦闘機による迎撃も困難だ。つまり、遥か彼方から撃たれる絶対必中の矢であった。


「ミサイル、順調に飛行中……」


 ミサイル駆逐艦「マーフィー」から放たれた二〇発のトマホーク・ミサイルは、木々や建物を自律的に回避しながら遙か一千キロ彼方のターゲットを目指して飛行し続けていた。通常のミサイルと比べて半分程度の速度しか出ないが、射程距離と正確性は世界一である。マーフィー艦長のターナーをはじめ、全員が必中を確信していた。

 そしてそれは、ホワイトハウスでも同じであった。ハワードはフライドチキンを齧り、ダイエットコークを飲みながら、人工衛星から送られてくる、憎たらしい敵の姿が木っ端微塵になる光景を期待していた。


「ターゲット、ロック! 着弾まで一五秒……一〇、九、八、七……」


 トマホーク・ミサイルの弾頭は、ジョーカーの姿を正確に捉えていた。二〇発のミサイルが、亜音速で一人に襲いかかる。


「二、一、着弾!」


 二〇発のトマホークが一斉に爆発する。衛星画像は爆炎に包まれた。爆撃成功に、駆逐艦マーフィーの艦橋内が沸き返る。それはホワイトハウスでも同じであった。衛星からの画像は真っ白なままだが、命中したことは間違いない。特別補佐官以下、全員が拍手をする。一本三千ドルはする高級シャンパンが運ばれてくる。アルコールを飲まないハワードだが、こういうときくらいは乾杯に付き合う。

 マーフィー艦内も同じであった。ターナーは副長や航海長と握手を交わし、喜びを分かち合う。


「最終確認をして作戦本部に報告後、全乗員で派手にパーティーをやるぞ。無論、飲酒も許可する」


「イエーイ!」


 笑い声が響く中、衛星通信システムの担当者が送られてきたデータを訝しみ、そして叫んだ。


「……ちょっと待ってください。ターゲット……破壊できていません!」


「なに! 衛星画像を出せ!」


 白い煙が風に流されて消えていく。そしてターナーたちが見たのは、ズボンに手を入れて悠然とタバコを吸っているジョーカーの姿であった。彼らの前には、長さ五〇メートル近くある巨大な壁ができていた。煙を吐き出したジョーカーは真上を見上げ、そして中指を立てた。


《アイム・ソォリィィィ~(残念でした)》


 口元がそう動いたのが見えた。





「ガッデェェェッムッ!」


 シャンパングラスを床に叩きつけたロナルド・ハワード大統領は、泡を飛ばして怒り狂った。完全な作戦と思われていた「超長距離攻撃ウルトラロングレンジアタック」は、完全に失敗した。その分析は後で行うとして、いまはハワード大統領を落ち着けるほうが先である。


「クソッタレが! こうなったら核攻撃だ! ブレージルに大陸間弾道ミサイル(ICBM)を打ち込め!」


「大統領、落ち着いてください! ブレージルとは通常弾頭の使用を約束しています。いま核を使えば、たとえジョーカーを殺したとしても、ブレージルとは永遠に断絶してしまいます!」


「やかましいっ! 俺がコケにされたんだぞ! 核を使ってブッ殺……」


 その時、ハワード大統領に異変が起きた。白眼を向いてガクンッと崩れ落ちてしまった。いわゆる「卒中」である。ハワードは体重一〇七キロ、体脂肪率三〇%の巨漢である。年齢が七四歳ということを考えると、健康上のリスクが無いはずがなかった。国民に対しては「非常に健康」とアピールしているが、その裏では高血圧と高脂血症を抱えていたのである。


ロナルド・ハワード大統領、緊急入院


 このニュースはたちまち、全世界に広がった。





 一方、トマホーク・ミサイルの爆撃を寸前で回避したジョーカーは、その場に留まって部下たちの確認を行う。目の前には巨大な土壁がそびえ立っているが、これはジョバンニの「土魔法」によって生み出されたものだ。魔力を一気に放出したためか、ジョバンニの顔色は悪い。ダンジョンアイテム「マギ・ポーション」を飲ませる。


「よくやった、ジョバンニ。土魔法はやはり有効だな。もっとも、こうした使い方じゃなく、農業で使えるようになるといいんだがな」


「はい、ボス……」


 ベニスエラの地方都市出身のジョバンニは、もともとは農家の息子である。極左政権によって生活が不安定になり、やむなく首都カラカスに仕事を探して出たのだ。結局、仕事は見つからず、貧民街でその日暮らしをしていたところ、ジョーカーに拾われたのだ。それ以来、ジョーカーを父親のように慕っている。


「チコもよくやった。お前の探知力がなければ、俺たちは全滅していただろう」


 チコと呼ばれたのは、顔に入れ墨をした巨漢である。身長は二メートル以上あり、アメリカン・フットボール選手のような分厚い胸板と太い腕、そして顔の入れ墨から荒くれ者と思われている。だが実際は気の小さい男で、入れ墨をしたのも貧民街で虐められないようにするためであった。


「索敵距離をもう少し広げることはできそうか?」


「すんません。今回は東から来るってわかってたので、ずっと集中していたから気づきましたが、これ以上は……」


「そっか。まぁ気にすんな。お前はよくやった。これからも期待してるぞ。よし、じゃぁ出発するぞ!」


 再び車中の人となったジョーカーは、時速八〇キロで進むトラックの中で、考え事をしていた。部下たちには余裕の表情を見せて一人ずつ労ったが、実際にはギリギリであった。速度の遅いトマホーク・ミサイルだから迎撃準備ができたが、これがマッハ二以上で飛んでくるようなミサイルなら、迎撃のしようがない。一七四号線を通っているのも、内陸にあるため射程の短い超音速ミサイルでは狙えないからだ。


(たとえ種族限界を突破しても、近代兵器に打ち勝つにはまだまだ力が足りない。Aランクダンジョンを攻略してSランクになる。神話級の魔物であれば、ガトリング式重機関銃にも対抗できるだろう……)


 「強さ」とは、自分の言い分を相手に認めさせる力のことだ。この世界は、強さを競い合っている。国家間で、企業間で、個人間で競い合う。それが生きるということだ。そして勝ち得たものを奪われないために更に強くなろうとし、いつしか「貧富の秩序」が生まれる。この秩序を破壊するには、富める者以上の強さを手に入れるしかない。


(ガメリカよ、そして持てる者たちよ。お前たちよりも「強い力」がこの世に存在することを教えてやる……)


 いつしか、ジョーカーは瞼を閉じていた。





【日本国ダンジョン省 石原由紀恵】

(ガメリカ合衆国大統領選挙の最中に、ジョーカー率いる魔王軍がブレージルに侵攻。ブレージル軍の抵抗虚しく、国境は突破され、魔王軍の南下がはじまった。ガメリカはブレージルに協力し、大西洋からトマホーク・ミサイルによる攻撃を企図するが、作戦は失敗。ロナルド・ハワード大統領は怒りのあまり卒中となり、現在も意識不明である……)


 ガメリカ大統領不予の報せは、たちまち世界中を駆け回った。ダンジョン省では急遽、局長級会議が開かれ、ガメリカ大統領選挙への影響、ダンジョン政策転換の可能性について議論されていた。


「ハワード大統領は意識不明とのことですが、年齢を考えても大統領職を続けることは難しいでしょう。マイケル・ベイツ副大統領が臨時の合衆国大統領となりますが、投票日まであと三週間です。共和党が新たな候補者を立てることは難しいかと……」


「つまり共和党は、今回の大統領選挙を諦めざるを得ないというわけね? こうした場合、マイケル・ベイツ副大統領が、そのまま大統領候補になるんじゃないの?」


「いえ、ベイツ副大統領は党大会で指名されましたが、予備選挙を戦ってきたわけではありません。それに、ハワード大統領は亡くなったわけではありませんから、副大統領や家族が選挙活動を続けるでしょう。そして回復の見込みがない場合は、予備選挙の『次点』が繰り上がりとなります」


「次点って……」


「実業家のロック・デ・ラ・バンデラス氏です。彼は毎回のように党大会に出馬しては、常に負け続けている人物ですが、現役大統領がいる共和党大会ということもあり、彼以外は全員が当大会前に撤退しており、ハワード大統領が九九%票を集め、バンデラス氏が一%となりました。ですがそれでも、次点である以上は繰り上がりです」


「呆れたわね。確か日本にもそういう実業家がいたわよね。ハッピーセッ党とかいう政党つくって……」


「次官、その政党名はネット掲示板の揶揄ですよ。それはともかく、ハワード大統領が回復しない場合、原理的には共和党候補者はバンデラス氏になります。ですが正直申し上げてマトモな選挙になるとは思えません。バンデラス氏自身、撤退を表明しています。あと三週間で投票日を迎えることを考えれば、共和党の候補者は不在のままとなる可能性が高いでしょう。そうなれば次の大統領は……」


 ハワード大統領が倒れたため、選挙情勢は一気に民主党に傾いた。たとえ回復したとしても、健康不安説を裏付けることになってしまったため、選挙情勢は厳しくなるだろう。セオドア・ルーズベルトよりもさらに若い、合衆国建国史上最年少の大統領が誕生するかもしれない。


「おそらく次の大統領は民主党のピーター・ウォズニアック氏よ。ガメリカの外交政策は大転換するわね。彼のダンジョン政策をもう一度精査しましょう」


 民主党候補であり、おそらく次の大統領に就任するであろう「ピーター・ウォズニアック」の公約を紐解く。ウォズニアックのダンジョン政策は、非常に簡単に言えば「日本からのコンサルティングの受け入れとアウトソーシング」ということになる。要約すると以下の通りだ。


1.合衆国内三一箇所のダンジョン討伐を最大の目標とし、ダンジョン・クルセイダーズおよびダンジョン・バスターズに討伐依頼を行う。

2.同時に、国際ダンジョン冒険者機構(IDAO)に加盟し、民間人ダンジョン冒険者制度を策定、合衆国内での運用を開始する。

3.ダンジョン冒険者制度および犯罪冒険者対策は、日本の制度をベースとしつつ、多民族国家である合衆国特有の事情を勘案して、一年をかけて策定する。

4.対ジョーカー対策は、硬軟両面の姿勢で臨む。ベニスエラをはじめとする貧困国への支援に力を入れると同時に、ジョーカーをはじめとする犯罪冒険者対策のため、インターポール内に国際的な犯罪冒険者を取り締まる機関を設置する。

5.冒険者および魔物カードを「軍事力」としないよう、国連安保理および国連総会にて全加盟国で決議を行う。


「一方的に米軍を撤退させて安保を破棄しているのに、どうして日本が協力してくれるって思うのかしら? この辺の認識は、理想家らしいところね。もっとも条件次第では引き受けてもいいかしら。例えば、最新鋭の戦闘機つきで原子力空母一隻貰うとか?」


「外務省や防衛省とも連携して検討する必要があるでしょう。気になるのはジョーカー対策です。彼らはすでに、アマゾナス州都であるマナウス近郊に迫っているはずです。ブレージル軍との激突が予想されます」


 石原はフゥと溜息をついた。ダンジョン省の仕事は、国内のダンジョン対策だけではない。IDAOでの情報共有やバチカン内部にある十字軍事務局とのやり取り、アジア各国からの冒険者派遣の陳情や制度上の相談など、幅広く引き受けている。事務次官として組織の頂点に座っているが、とても安楽椅子とはいえない。ほとんど拷問椅子であった。


(事務次官は二年くらいで天下りする場合が多いけれど、それくらい激務ってことなのよね。ストレス溜まってるわ。エステにでも行こうかしら……)


 声を掛けられて意識を戻す。ウリィ共和国の外交部長官が、ベニスエラへと出発したそうだ。なんでも来月のG20にむけての話し合いだそうだ。なんとも脳天気な話だと呆れ、再び溜息を漏らしてしまった。



オーバーラップノベルス様より、ダンジョン・バスターズ第一巻、発売中です。

コミカライズの計画も進んでいます。皆様、宜しくお願いいたします。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
アメリカ軍 敗北!!
ちょっとガメリアのダンジョン攻略の進まなさ具合が不自然かなぁ 本職の軍人が日本がCランクまでの道筋を公開している中、ほとんど進めていないというのは考えにくい気がしました
[一言] わりとジョーカー敗北の危機だった気がする 現時点でだいぶアレだったけど更にもう少し大統領が愚かだったらラスボス?途中退場もありえましたねw
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