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第064話:Bランクダンジョン攻略

明けましておめでとうございます。

昨年より、出版のお話を頂いておりました。本年中頃には、本作品が書籍化されると思います。

その際は改めて、活動報告にてお報せ致します。

本年も拙作「ダンジョン・バスターズ」を宜しくお願い申し上げます。

【新宿ダンジョン 江副和彦】

第四層へと進んだ俺たちは、再び「ゲームの魔物」と遭遇した。2メートルほどの大きな牛で、鋭い角が2本生えている。俺たちを見つけると、床を足で蹴って身構えた。


「アレもEFの魔物だね。エビルホーンだったかな?」


「よく覚えているな。朱音、アイツの名は知ってるか?」


「そのままの名前、エビルホーンですわ。弱点らしい弱点はない猪突猛進の魔物です」


 ドドドッと牛が突っ込んでくる。なるほど、猪突猛進だ。朱音がピシュッと苦無を投げた。眉間にスコーンと命中し、音を立てて崩れる。


「Cランク魔物ですが、一直線に突っ込んでくるため、迎え撃つのは比較的容易です。ただ力はそれなりにありますので、突進を止めようとすれば思わぬ怪我を負うかもしれません」


「よし。何体か倒してどうということがなければ、次の層に行くぞ」


 槍で突く。魔法で吹き飛ばすなどの戦い方で、どの程度の強さかをそれぞれが確認する。強化因子による肉体増強だけが強さではない。様々な魔物と戦うことで、経験を蓄積し、戦法に幅を持たせる。経験値もまた、目に見えない強さである。それぞれ10体ずつ倒したところで、第四層へと入った。


「Cランク魔物ですわね。名前は……」


「言わなくてもわかる。ゴーレムだろ?」


 テレビゲームをしない俺でも、ファンタジー的な映画を見たことは幾度もある。石のブロックが積み上がったような大きな身体を持つ魔物として有名だ。


「これはどっちにも出てくる魔物だね。兄貴も知ってるくらいに有名だ」


「映画で観たことがある。硬い石なのにどうやって関節を駆動させているのか疑問だった。あと石と石をどのように接着しているのかもな。なにより、ただの石材の塊がどうして動くのか、筋肉や神経はどうなっているのか。医学的生物学的見地から考えると興味深いだろ?」


「……そんな視点でファンタジー映画観るのは兄貴だけだよ」


 呆れたように言いながら、彰はゴーレムに向けて駆け出した。石でできた巨体が、意外な速度で動く。ブンッと風切音を立てて拳が振り下ろされてきた。彰は左腕を使って、それを払うように受け流した。バキバキという音とともに、ゴーレムの上半身がネジ曲がる。拳の勢いに払いの勢いが加わり、腰の部分から石が砕けたのだ。


「なるほど。表面はやはり石材だな。人間の皮膚のような柔軟性はない。ゲームキャラが現実化すると、こうした弱点が浮き彫りになるということか」


「いや、カズさん。そんな冷静に分析しなくても…… 俺、DQのファンだったんだけどなぁ」


 寿人が苦笑している。DQがなんなのかは知らないが、冷静に考えれば「石造りの生命体」だの「鋼鉄の肌を持つ騎士」だの、現実世界でまともに動けるはずがない。


「たとえダンジョンという非科学世界(ファンタジー)であろうとも『ゴムのような石』などは生み出せない。金属生命体などが出てきたら、おそらく流体金属でできているのだろうな。未来からやってきた殺人マシンのほうが現実的だ」


「いや、そういう魔物もいたような……」


 その予感は、第五層で的中した。ガシャン、ガシャンという機械的な音が聞こえてくると、四本足のロボットのような魔物が出てきたのだ。一本道の向こう側に出現すると、いきなりジェット噴射をして滑るように急接近してきた。


「キリング・マシン! Bランク魔物ですわっ!」


「ウッシッ!」


 正義が盾を構えるが、キリング・マシンは驚くほどの速さで水平に移動し、盾を避けると手にしていたサーベルを振り下ろした。ギィンッという音が響く。寿人が剣を弾き返していた。凛子が壁を蹴ってすかさず回り込み、首の隙間に杖を突き入れる。バチバチと電気的な音がして、キリング・マシンは止まり、そして煙となった。俺はなんとも言えない表情を浮かべて、彰に確認した。


「……コレ、ロボットだよな?」


「DQの魔物だね。キリング・マシンって名前じゃなかったけど……」


「いや、どう見てもロボットだろ。なんでター◯ネーターがファンタジーに出てくるんだよ! 自律判断するAIプログラムは誰が組んだんだ? 魔王城の地下には半導体製造工場でもあんのかよ!」


 久々にツッコミを入れた気がする。案の定、朱音が窘めてきた。


「和彦様、ここはダンジョンですから……」


 解っている、解っているさ。だがな。どう考えても可怪しいだろ。ダンジョンが、こんな精密機器を生み出せるのか? マシンが止まった時、「補助パワー起動」とかいって動き出すかと思ったぞ。


「いずれにしても、このロボットは興味深い。間違いなく、現代科学を超えたテクノロジーが使われている。カードを集めるぞ。地上で顕現させて解体すれば、新技術や素材が手に入るかもしれない」


「カズさん。解体すれば、ただ消えるだけだと思いますけど?」


 凛子が冷静にツッコミを入れてくれた。ありがとう。





【新宿ダンジョン 日下部凛子】

 この数週間、カズさんの様子が可怪しかったのは、私も気づいていた。ただでさえ、魔物大氾濫の期限があるというのに、突然のダンジョン起動や南米の反社会勢力、さらには日本国内でもダンジョン冒険者に無理解な人が一定数いるのだ。カズさんは想像を絶するストレスを感じていたに違いない。


「とりあえず第五層でターミ◯ーターと戦いまくるぞ。いずれ最新機種のT-1000型とかが出てくるかもしれないからな。ロボットと戦うのに慣れておこう」


 映画じゃあるまいし、そんなのがいるとは思えない。無論、カズさんも冗談で言っているのだが、そんな冗談すら、この数週間は聞こえなかった。療養期間中に、なにか思うところがあったのだろうか。いまのカズさんは、以前よりもずっと余裕があるように見える。


「朱音。確認しておくが、流体金属でできた魔物なんて、いないよな?」


「います。上位スライムの『シルバーメタルスライム』ですわ。Aランク魔物で、物理攻撃はほぼ効きません。魔法も大部分が無効です。冷やして粉々にしても、液体になれば元に戻ってしまいます」


「マジかよ…… どうやって倒すんだ?」


「毒攻撃がもっとも有効かと…… キリング・マシン二体、来ますわ」


 カズさんと朱音さんのやり取りを聞いていると、本当に出てきそうな気がする。けれど今は、目の前の魔物に集中しよう。二体が出てきた。相手が剣を持つ以上、こちらも刀で対抗すべきだろう。私は日本刀のカードを取り出した。


「フッ!」


 キリング・マシンが振り回す湾曲した剣「タルワール」を斬り飛ばす。SR武器ならば、Bランク魔物にも有効だ。だが相手は金属の肉体を持っている。下手に突きなどだせば、刀が負けるかもしれない。


「四本脚ということは、一本を斬れば動けない!」


 左前足を太腿部分?から斬った。キリング・マシンがガクンと前のめりに倒れる。そこに天音さんが鞭をふるってきた。SR武器「茨の鉄鞭」だ。有刺鉄線のような硬い棘がキリング・マシンの首に巻き付く。そして鞭が引き絞られる。ズザザザッという痛々しい音がする。無数の棘がキリング・マシンの首をズタズタにしたのだ。


「フンッ! しょせん機械だから、悲鳴もあげないわね。効いているかどうか判らないわ」


 なぜだろう。天音さんが鞭を持つと、物凄く似合う。普段は明るく優しい天音さんは、他の冒険者(彼女のパーティーを除く)からは好かれている。けれど、戦いの場面では酷薄な笑みを浮かべながら、パシーンと鞭を振るう。「そのギャップがイイ」と、天音さんのパーティーに加わった元神奈川県警の人が言っていた。私には理解できない感覚だ。

 そう思っていると、私の視線に気づいたようだ。天音さんは朗らかに笑みを浮かべて私に鞭を差し出した。


「あら、凛子も使ってみる? 鞭で屈服させる感覚はたまらないわよ?」


「い、いえ。私は結構です」


 強い相手と戦うことには充実はするが、別に屈服などさせたいとは思わない。私はまだ男を知らないが、そうした性癖を持つ男がいることは知っている。だが少なくとも、私が心惹かれるとするならば、そのような男ではないだろう。そう思い、チラリと宍戸彰を見る。


(強さだけならば申し分ないのだけれど、どうも軽いところがあるわね。兄さんが「飄々」というならば、宍戸彰は「軽薄」というところかしら。なかなか、うまくいかないものね……)


 ドカンッという音で、私は我に返った。正義がシールドバッシュでキリング・マシンを弾き飛ばしたのだ。すかさずカズさんが斬りかかる。私もいくとしよう。





【新宿ダンジョン 霧原天音】

 男とは、一皮むけば「ヤること」しか考えていない生き物…… そう思っていたけれど、ダンジョン・バスターズに入って少し考えが変わったわ。欲望に関しては単純でも、それ以外に追いかけるモノがあるとき、男は輝いて見える。


「フゥアッ!」


 振り下ろされる剣をギリギリで躱して、寿人が魔法剣でキリング・マシンを両断したわ。剣が負けるかと思ったけれど、どうやら魔法で高速微振動させて、切れ味を高めているみたい。彰が口笛を吹いて、寿人の頭を撫でている。彼らはサラリーマンではない。それぞれに追いかけるモノがあって、そのためにダンジョンで命を懸けている。私がいた警察組織には、見かけかなかった男たちだ。もしかしたら、私が気づかなかっただけなのかもしれない。


(イイ男って、案外多いのかもしれないわね)


 第六層に進むと、背中に黒い翼を生やした二足歩行の魔物が出てきたわ。二本の黒い角が頭から伸びている。「オニ」じゃないわね。まるで悪魔……


「レッサーデーモン! 魔法攻撃が来ます!」


 和彦さんのパートナーである朱音さんが叫ぶ。瞬間、五〇センチくらいの大きさの火の玉が複数、襲いかかってきた。正義が大盾で防いでくれたけれど、チリチリとした熱が襲いかかってくる。


「兄貴、ちょっと試してもいい?」


 彰が和彦さんになにか相談している。一瞬、驚いた顔をして、和彦さんは頷いた。すると彰さんは、いきなり正義の盾の前に飛び出した。なにを考えているの? それじゃぁ、魔法の的になるだけじゃない!


「ヒョォォォッ!」


 彰が両手を前に構えて、なにか呼吸をしている。レッサーデーモンの火炎魔法が襲ってきた。すると、両手で弧を描くように、魔法を逸していく。ウソッ! なんで爆発したり燃えたりしないの?


「回し受けが魔法に有効なのは、確認済みだからね。そして……」


 すべての魔法を受けきった瞬間、彰はレッサーデーモンに襲いかかっていた。人体の中心にある急所をほぼ同時に攻撃する必殺技「正中線六連撃」。しかもBランカーの本気の攻撃を受ければ、悪魔だって倒せるわ。


「魔法を撃ち終わった瞬間、大抵の魔物は一瞬の硬直状態がある。気づいていないかもしれないけれど、エミリちゃんや寿人にもそれが見られるよ。魔法の欠点かもしれないね」


 そう。私たちが同ランクの魔物を相手に戦えるのは、魔物が持っていないものを駆使しているから。魔物は「戦闘技術」を持っていない。ゲームのように、ステータスの差で力押しする戦い方など、現実のダンジョンでは通用しない。一戦ごとに経験を積み重ね、次の戦闘での駆け引きに使う。数字やABCでは決して表現できない蓄積された経験知こそ重要なのよ。

 さて、次の魔物が来たわ。今度は私の番ね。ウフッ。悪魔を調教してあげるわ!





【新宿ダンジョン 江副和彦】

 まるでゲームに出てくるような魔物たちを倒し続けている。レッサーデーモンの次は上顎から鋭い牙を二本生やした魔物が出てきた。どう見ても絶滅した剣歯虎「サーベルタイガー」だ。体長は2メートルほどあり、しなやかでかなり素早そうだ。


「キラータイガーですわ。Bランクの上位です。彼らの特徴は……」


「カズさん!」


 背後から凛子が声を掛けてきた。言われるまでもなく気づいている。いつの間にか前後で挟まれていた。どうやら「狩り」においては、人間並みの知恵を持っているらしい。


「なるほど…… これがBランクか。ンギーエは前方、正義は後方でガーディアンを果たせ。寿人は火炎魔法で後方を遮断しろ。倒す必要はない。まずは前から片付ける!」


 挟み撃ちを受けた場合、戦力分散は下策である。一方を食い止めつつ、もう一方を早急に片付ける。現在のパーティー戦力ならそれが可能だ。寿人が炎の壁を形成し、そこを掻い潜ってきたキラータイガーを正義がシールドバッシュで弾き飛ばす。その間に、前方から襲ってきた猛獣を一頭ずつ屠っていく。


「確かに素早いし力も強いけど、対処できないわけじゃない」


 彰は、飛び掛かってきたキラータイガーの顎を掌底で打ち上げ、晒された腹部に抜き手を打ち込む。正確に心臓を捉えたらしく、その一撃でキラータイガーは煙となった。天音は酷薄な笑みを浮かべながら、猛獣を調教すべく鞭を奮っている。獣の本能なのか、天音が放つ「パシーン」という音に、怯えているようにも見えた。


「よし、Bランク上位の魔物でも余裕で戦える。おそらく次がラストだろう。もう少しキラータイガーを経験してから、一気に討伐してしまうぞ」


 それから丸一日、キラータイガーと戦い続けた。





「兄貴、この絵は……」


「あぁ、ダンジョンを生み出しているようだな」


 最下層に着いた俺たちは、天井画を確認していた。老人が、球体に光を当てている。その球体にはポツポツと斑点がついていた。ダンジョンは超常的な存在によって生み出されたと思っていたが、どうやら天井画の老人が、その存在らしい。あの球体は恐らく「惑星」だろう。そう考えると、ダンジョンは全宇宙の中で地球にしか出現していないのではないか?


「仮説はいくつも考えられる。だがいまは、このダンジョンの討伐を優先させよう」


 天井画の録画や写真撮影を終え、俺たちは一本道を更に進んだ。この扉の向こう側に、ダンジョン・コアを護るガーディアンがいる。Bランク上位、あるいはAランクだろう。俺は両手で、扉を押し広げた。

 部屋の中には、銀色に輝く身体を持った、泥状の生き物がいた。


「……朱音の言葉がフラグだったか? ゲームをしない俺でも理解できたぞ。アレが、シルバーメタルスライムだろ?」


 幅一メートル、高さ五〇センチほどの平べったい液状のスライムだ。何故か、彰たちが苦笑している。


「アレ、どうみても『は○れメタル』だよ。DQの魔物で、経験値が大量に入るんだけど、すぐに逃げ出すんだよね」


「逃げる? どこに? まぁいい。朱音、毒攻撃が有効だと言っていたな?」


「はい、ですが簡単にはいきません。なぜなら……」


 その時、ンギーエが飛び出して盾を構えた。液状の身体を生かして、まるで針のように細い棘を無数に放ってきたのだ。カンカンと盾に命中する。だが全ては防ぎきれなかった。


「ツウッ!」


 見ると、天音が足を押さえている。細い銀色の針が突き刺さっていた。それはドロリと液体に変わり、そして天音の体内へと侵入した。天音の顔色がみるみる青く変わり、ガクガクと身体が震え、口から泡を吐き出す。


「いけません! すぐにエクストラ・ポーションを!」


 正義とンギーエに盾を構えさせながら、天音を横にしてエクストラ・ポーションを口移しで飲ませる。どうやら猛毒の肉体のようだ。天音の左目から、銀色の雫が流れ落ちると、スルスルと床を這っていった。母体に戻るつもりなのだろう。下手に踏み潰そうとすれば、猛毒を受けるかもしれない。そのまま放っておくしかなかった。


「物理攻撃は無効、魔法攻撃も効かず、しかも細かく分裂して攻撃し、その一つ一つが猛毒。これがAランク魔物か」


 もとに戻った液体スライムはプルプルと震え、そしてゆっくり地面を這い始めた。こちらの隙を窺っているのだろう。


「兄貴、どうする?」


「一撃で倒すのは不可能だ。だから段階を踏む。ステップ1、まずヤツの動きを止める。エミリ、冷却魔法で奴を凍らせろ」


「了解! いくわよっ! 合図と同時に、盾をどけて頂戴!」


 エミリの瞳が輝くと、一気に室温が下がった。右手が白銀色に輝き始めている。


「今よっ! 喰らえ、ニブルヘイム!」


 盾が割れた瞬間、極低温の攻撃がシルバーメタルスライムを襲った。だがAランク魔物は簡単ではなかった。冷却魔法を感じたのか、先程の針攻撃の要領で細かく分裂して飛び散った。極低温で凍ったのは半分以下だろう。


「連発だ。とにかく、凍らせろ」


「わかってるわよっ!」


 エミリが連続して冷却魔法を放つ。盾の向こう側は、マイナス二〇〇度に達しているかもしれない。こちら側まで凍りつきそうだ。前面に立つンギーエと正義は、寿人が火炎魔法を応用して暖めている。そうしなければ、盾ごと凍りついてしまうからだ。

 やがて、細かく分裂したスライムは全て固まった。俺は白い息を吐きながら、ステップ2へと進んだ。


「分裂したスライムを全て一箇所に集める。コレを使うぞ」


 安全地帯を利用した後にいつも使っている「箒」を取り出した。全員が首を傾げた。彰が何かを思いついたようで、ポンッと手を叩いた。


「兄貴、まさかと思うけど…… 捨てるつもり?」


 ステップ3、Rカード「異空間廃棄場」を取り出す。ビニールや鉄片など、ダンジョンが吸収しないゴミを処理するために使っている「ゴミ箱」だ。顕現すると、普通のゴミ箱が出現する。一度廃棄したら、二度と取り出すことはできない。


「よし、集めたスライムの欠片を捨てるぞ。コレで討伐完了だ」


「いやいや! 倒してないでしょ!」


 彰のツッコミに、俺は真顔で返した。


「今の俺たちでは、このAランク魔物と戦うのは厳しい。だから倒すのではなく排除(・・)する。間違えるなよ? 俺たちの目的はダンジョン討伐だ。Bランクダンジョン討伐で称号の変化を確認することだ。危険を冒してまでAランク魔物と戦う必要はない」


 全員が呆れた表情を浮かべているが、俺の指示通り、チリトリに集めたスライムの破片を異空間廃棄場に処分していく。一欠片たりとも残すわけにはいかない。念のため、エミリに再度冷却してもらい、徹底的な「掃除」を行う。

俺自身、このやり方は有効ではあっても使いたくはない方法だった。相手が「ガーディアン」でなければ、このやり方は通用しない。この魔物が普通の階層で複数出てきたら、今の俺たちでは逃げるしかないだろう。


「このやり方は、カードや魔石が得られない。強化因子も無い。今回限りの作戦だ。次は、マトモに倒してやる……」


 一片残らず処分し終えると、ダンジョン・コアが出現した。


=============

ダンジョンNo.527

ランク:B

所有者:なし

階層数:008

供給DE:2309

出現物:魔晶石

大氾濫:On


〈管理権限を取得しますか? Y/N〉

〈当ダンジョンを消去しますか? Y/N〉

=============


「よし…… 大氾濫をオフにし、管理権限を取得するぞ」


 すると、予想通りダンジョン・システムの声が響いた。


〈Bランクダンジョン討伐を確認しました。討伐者には「Bランク討伐者」の称号が贈られ、強化上限がAランクに引き上げられます。また、初のBランクダンジョン討伐報酬としてレジェンド・レアカード「慇懃なる猫精霊(ケットシー) セニャス」が贈呈されます〉


 そして目の前に、五枚目のレジェンド・レアカードが出現した。


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― 新着の感想 ―
強すぎるモンスターは異空間へポイーーッ
[一言] 正義は後方でガーディアンを果たせ。  →正義は後方でガーディアンを務めろ。
[一言] 見かけかなかった男たちだ。  →見かけ無かった男達だ。
感想一覧
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