第047話:日亜共同宣言
大変お待たせをしました。遅くなりまして、申し訳ありません。
【クルセイダーズ ロルフ・シュナーベル】
俺がクルセイダーズの話を聞いたのは、大学卒業が迫っていた時のことだった。大学のあるシュトゥットガルトから、隣州のミュンヘンに向かう。親父は、ミュンヘンの市議会議員だ。とはいっても、ライヒでは自治体議員は「名誉職」であり無報酬が基本だ。父は工作機械会社を経営しており、大学卒業後は俺もその会社で働くつもりだった。
その父から「バチカン教国からお前に話が来ている」と電話があった。父はミュンヘンではそれなりに有名であり、ライヒ騎士団という社交界の幹部でもある。俺も二度ほど、社交界に参加したことがある。俺は熱心なカソリックというわけではないが、部活の試合前や今のガールフレンドに告白する前などに教会に祈りに行くほどには信仰心もある。
「ネルトリンゲンで昼にするか」
シュトゥットガルトを東に200キロ進むと、ネルトリンゲンという街がある。TTクワトロを運転しながら、俺は12時過ぎにその街に入った。ネルトリンゲンは城壁に囲まれた旧市街と、その周囲に広がる新市街がある。旧市街は一周ぐるりと城壁に取り囲まれ、中の建物は煉瓦色をした鋭角の屋根で統一されている。巨人がでてくる日本の人気アニメのモデルともいわれている。確かに、ダニエル塔からマルクト広場を見下ろすと、どこか非現実的なアニメの世界を思わせなくもない。
そのダニエル塔近くのカフェでレバーケーゼとビールで昼食を取る。ライヒにも飲酒運転を禁止する法律があるがアルコールの血中濃度基準が緩く、ビール1杯までなら暗黙で認められている。
昼食を終えて、ネルトリンゲンから高速に乗りミュンヘンへと向かう。年始に実家に戻ったばかりなので懐かしさはないが、母の得意料理である「シュヴァイネハクセ」を食べれると思えば移動も苦ではない。
「先日、教皇猊下の勅命が下った。ダンジョンの討伐を目的とする十字軍を結成せよと。そこで、ライヒ騎士団を含めたヨーロッパ三大騎士団は、それぞれ2名ずつ子女を推薦することとなった。私は、お前を推薦しようと思う」
十字軍? 今は21世紀だぞ。前時代的な名称には閉口するが、ローマ教皇の意図は理解できる。たしかに、ダンジョンという超常現象を前にカソリックの総本山がなにもしなければ、それはカソリック教の存在意義そのものが問われるだろう。だがなぜ俺なのだ? 中等教育の頃からラグビーを続けているため体力には自信がある。だが同世代には、俺よりも熱心なカソリック信徒もいる。
そのことを問うと、父は頷いて説明してくれた。
「今回の十字軍遠征はイベリア半島のような局地ではなく、全世界が対象となる。つまりカソリックとは異なる宗教が根付いている土地にも征くことになる。そこで推薦には、スポーツを経験し、心身ともに健康であること。そして他宗教への柔軟性が条件とされた。父親の目から見ても、お前は責任感が強く、友人や仲間を大切にする義侠心がある。キャプテンとしてチームを纏め、引っ張ってきた経験もある。お前ならば、十字軍を率いることができる」
褒めてくれるのは嬉しいが、それが父の本音だとは思えなかった。父はカソリック信徒だがライヒ人らしい合理的な判断ができる。騎士団から「息子を十字軍に出せ」と言われて、素直に了承するほどにお人好しではない。なにか考えがあるのだろう。
「父さん、俺は卒業後に父さんの会社で働くことが決まっていた。それを覆してまで十字軍に入る意味はあるのか? 父さんの本音を聞かせてほしい」
すると父は、少し黙った後に一枚の紙を取り出した。三重冠に金銀の鍵、ローマ教皇の徽章が刻印された紙だ。丁寧に英語で書かれている。どうやら十字軍に与えられる報奨のようだ。
「簡単に言えば、ダンジョンの利権だ。ライヒ、イタリー、フランツェの三カ国のダンジョンをクルセイダーズが討伐した場合、ダンジョン所有権はクルセイダーズに与えられる。水素発電技術は、いずれ世界に広まる。そうなればダンジョンは途方も無い価値を持つようになるだろう」
「つまり、カネのためにクルセイダーズに入れ、と言いたいのか?」
「父さんがお前を推薦した理由はそうだ。だがお前自身が、父さんと同じ理由である必要はない。お前自身の意志を尊重するつもりだ。もし、十字軍に入るのが嫌ならば、この話は無かったことにしよう」
ダンジョンに興味が無いといえば嘘になる。学内でもチーム内でも、ダンジョンの話題で持ち切りだったからだ。だが「神の尖兵」としてダンジョンを討伐することには違和感がある。中世において北方十字軍がバルト海沿岸域に進出したが「教化」を掲げた侵略に過ぎないからだ。
だが、ダンジョンの危険性は無視できない。「大氾濫」についてはテレビでも連日特集され、EU全加盟国が対策に当たるべきだという意見が大半を占めている。放っておけば、母国であるライヒ共和国が崩壊し、愛する家族や友人たちも死の危険に晒されるだろう。なにより、結婚まで考えはじめているガールフレンドのベルティーナを守るためだ。
「正直に言う。俺はダンジョンの利権なんてどうでもいい。だが大氾濫の可能性は見過ごせない。ベルティーナとは、卒業後に結婚の約束までしたんだ。十字軍に入ることで彼女を守れるのならば、俺はこの話を受けたいと思う」
一代で今の会社を創りあげた父のことは尊敬している。だが俺には俺の動機がある。俺は決めた。父には悪いが、ダンジョンは確実に潰させてもらうと。
「来るぞっ! 俺が2体を引き受ける。アルベルタ、マルコ、フランカは一体ずつ相手しろ。クロエは後方から魔法攻撃、レオは回復だ!」
日本語の勉強を終えてから2週間、俺たちは横浜ダンジョンの第四層でカンガルーと戦い続けている。すでにDランクに上がっているが、そこで頭打ちがきた。正確には、これまでのような成長の仕方とは違う感覚がある。変化しようとする力と、今のままで留まろうとする力がせめぎ合っているような感覚だ。一枚の扉を挟んで、相反する力が押し合いをしているような気がする。
「Cランクは人間の限界を超える必要がある。これまでのような『休み休み』では、絶対にCランクには上がらん。継続だ。気が狂うほどの数の魔物と戦い続けた果てに、Cランクへの扉が開かれる。ひたすら戦い続けるぞ。劉師父、これまで同様、魔物をおびき寄せてくれ。コイツらが死なない限り、止める必要はない」
俺は忘れていた。理性、論理、几帳面、真面目……日本人とは共有する価値観が多いと思っていたが、彼らには理解不能な精神構造があることを忘れていた。この国は小さな島国なのに、かつて全世界を相手に全面戦争した国なのだ。そう、彼らの持つカミカゼの精神を忘れていた。
【元赤坂 迎賓館】
十字軍が狂気の訓練に入った頃、日本政府も国家の命運を懸けた会談に臨もうとしていた。大東亜人民共産国(亜国)、周浩然第7代国家主席と日本国、浦部誠一郎第98代内閣総理大臣による日亜首脳会談である。この会談は国外からも注目されていた。ガメリカが自国に籠もる方針を発表して以来、日本が対ダンジョン政策のグローバル・リーダーシップを握っていた。
一方で、極東情勢は決して平穏ではなく、ミサイル実験を繰り返す大姜王国とウリィ共和国との接近、ガメリカと亜国との関税戦争など、ダンジョン発生前から火種が燻っていた。
この状況で行われた日亜首脳会談は、今後の極東アジア情勢を左右する重要な合意がなされると期待されており、迎賓館のプレスルームには20を超える国々から報道陣が押し寄せていた。
「既に総理もご承知でしょうが、我が大東亜人民共産国は多数のダンジョンが出現しています。なんとか討伐しようと陸軍も頑張っていますが、遅々として進みません。このままでは、大氾濫の不安によって、国内の混乱が広がるでしょう。そこで日本の協力をいただきたいのです」
通常、首脳会談では国家間の大まかな方針や方向性が話し合われ、次官以下の官僚たちによって詳細が詰められる。だが今回の会談においては、2ヶ月以上前から水面下で話し合いが続いており、かなり踏み込んだ部分まで話し合われる予定だ。
「周主席、ダンジョンは人類共通の敵です。ですので協力することは吝かではありません。ですが貴国と我が国には、歴史認識や領土問題、著作権などの知財取り扱いなどで摩擦が生まれており、我が国の中には後ろ向きの意見も少なくありません。そうした摩擦を解消しない限り、全面的な協力は難しいと思います。その辺りを、貴国はどのようにお考えですか?」
来日目的や話し合いの内容などは事務方の事前打ち合わせでハッキリとしている。日本政府としては、簡単には応じられないことも伝えてある。それに対する返答がこの会談であった。
「浦部総理もご承知と思いますが、我が国は建国当初から日本を敵視していたわけではない。いや、率直に言えば現在においても、感情的には日本を敵視してはいないのです。戦後の歴史の中で『国家政策』によって貴国への外交姿勢を変えてきた。貴国にとっては迷惑かもしれないが、我が国には必要な政策だったのです」
浦部は内心で驚きながらも苦笑するしかなかった。こうもハッキリと「反日は国策」「共産党一党独裁のために必要だった」と断言されれば、喧嘩を売っているのかと怒鳴るか、苦笑するしかない。ここで肝心なことは、国家主席がそれを口にしたということだ。
「我が国の中にも、そうだろうと思う人はいるでしょう。受け入れるわけにはいきませんが、貴国には貴国の事情があったという点は了解しています。それで、今後もその政策を続けるのですか? であれば、我が国としては協力することは極めて難しいと思います」
「国策であれば、変えることができる。私は外に敵を作り、敵愾心を煽ることで人民の不満の目を逸らせようという政策を終わらせるべきだと思っています。具体的に言えば、尖閣諸島の領有権主張を放棄し、南京記念館などの反日プロパガンダ施設の取り潰し、反日映画の制作および放送の禁止です」
浦部は黙って2度ほど頷いた。譲歩してくると思っていたが、ここまで大きな転換とは思っていなかった。だが同時に、日本の「直接的利益」が少ないことにも気づいていた。言い方は悪いが、アンタらが勝手にやった反日政策を変えるから協力しろ、嫌わないでいてやるから助けろ、ということだ。
「貴国がこれからの日亜関係に真摯に取り組もうとされている誠意は感じます。それで、貴国が我が国に求める協力とは、具体的にはどのようなものでしょうか?」
「民間人冒険者制度および育成のノウハウ、そして水素発電技術です」
浦部は俯いて、フゥと小さく息を吐いた。とてもではないが割りに合わない。日亜関係の改善は外交的には大きなプラスだ。6月の衆参同時選挙で勝利するためにも、ここで大きく成果を出しておきたい。だが国益を損ねてまで成果を急ぐ必要はない。今でも十分に、選挙には勝てるだろう。
「周主席、我が国にとってそれはあまりにも割に合いません。もう少し、話し合いが必要だと思います」
周浩然も頷いた。これで簡単に合意できたら、それこそ驚きである。だが未来に向けて互いに歩み寄ろうとしていることは共有できた。そのための具体的な話を詰めていく。ここからが外交の正念場、その場の誰もがそう思い、顔を引き締めた。
外務省アジア大洋州局では、初日の首脳会談を受けて深夜まで話し合いが続いていた。周浩然国家主席の滞在期間は5日間を予定している。その間になんとしても合意形成をしなければならない。この思いは、日亜両国ともに持っていた。
「反日政策の全面転換は歓迎するし、尖閣諸島の領土主張を取り下げるのも有り難い。公海上の漁獲量取り決めや知財関係でもかなりの譲歩をしてくれている。だがこれだけでは国民は納得しないだろう」
「大姜王国への経済制裁については後ろ向きのようだし、東亜民国の独立国認定など絶対にないだろう。人権問題についても内政干渉と言うだろうしな」
魔石を利用した水素発電技術は、世界経済の地図を大きく変えるものである。その価値は数百兆円にもなるだろう。それを考えれば、いまやっている嫌がらせを止める程度では、とても割に合わない。
「だがあまり望みすぎるのもどうかと思う。万一にも、大姜王国とウリィ共和国が連邦国家になろうものなら、それこそ核武装した反日国家がすぐ隣にできるのだ。そのリスクを考えれば、大亜共産国との友好関係は必要だ」
「我が国の利益としては、例えば亜国内に建設する水素発電所を日本企業が請け負うなど、公共事業での優先権を獲得することで、ある程度は見込めるだろう。また反射利益もある。具体的には、産業財の切り替えだ。ウリィ共和国から日本に産業材輸入を切り替えるのなら、我が国にとっても利益になる」
「だがどこまで信頼できる? たとえば高速鉄道技術も、日本の技術支援を受けた後には『我が国独自開発』とか言って輸出を始めたではないか。水素発電技術も同じになるのではないか?」
両者にまたがる溝は深い。40年に亘る反日政策によって、日本国内には亜国への不信感があった。結局のところ、外交とは信頼関係なのである。大亜共産国は、その信頼関係を損ねてきた。そのツケを支払うときが来たのである。議論の末、誰かがポツリとこぼした
「周主席に覚悟を示してもらうしかないだろう」
「覚悟とは?」
「これまでの反日政策をすべて捨て、日本との関係をやり直す。その覚悟を示してもらうしかない」
「だがどうやって? 共同宣言や条約締結では、これまでと同じになってしまうが?」
「いや、一つだけ方法があるぞ。日本にはあるではないか。亜国が反日政策の一環として文句を言い続けている『施設』が……」
互いに顔を見合わせ、実現可能性について議論が始まった。
元赤坂から半蔵門を通り、千鳥ヶ淵を右手に九段下方面に向かう。周浩然は窓の様子を見ながら、時代の変革を感じていた。帰国次第、党内の締め上げを強めなければならない。40年続いた反日政策の大転換を行うには、メディアを通じた過剰なプロパガンダが必要になる。蒙沢民と田村覚英との逸話や日本のODA支援などはこれまで隠されてきた。そうした「日亜友好の歴史」を全面に押し出すことで、過去を水に流し未来志向の関係を醸成する風潮を生み出すことができるだろう。そして自分は、その象徴となる姿を見せなければならない。
「周大人、本当に宜しいのですか? 『あそこ』に行くということは……」
「日本も、抗日戦争記念館に現役の総理が2人、訪問しているではないか。私が参拝することで、はじめて対等になる。70年以上前の『ただ聞いただけの出来事』に縛られて、明日に向けて歩み出せないというのは愚かしいことではないか」
やがて到着し、周浩然は車を降りた。3月の陽気で少しずつ桜が芽吹き始めている。大きく息を吸って吐いた。史上初の「亜国国家主席の靖国神社参拝」が始まった。
「いま、人類は未曾有の脅威に晒されています。いつまでも過去に縛られるのではなく、現実の脅威に、そして未来に、立ち向かわなければなりません。周主席が靖国神社を参拝してくださったことで、日亜関係は大きく変わりました。私たち日本人の意識も、変わらなければなりません。我が国は建国以来、中華文明の影響を受けてきました。良好な関係を続けてきたのです。今日を機に、新しい信頼関係を築くべきです」
靖国神社神門の前で、日本国首相と大東亜人民共産国主席による共同宣言が発表され、同時に新・日亜平和友好条約が締結された。領土問題や歴史認識問題などを包括的に解決すると同時に、大亜共産国内に建設される水素発電所の公共事業を日本企業が一括して請け負うことなど、経済協力関係の強化も条約に盛り込まれている。また半島情勢においては日亜共同の宣言として、ダンジョン討伐に積極的に乗り出し、IDAOへの加盟を希望する旨が発表された。
【横浜ダンジョン 江副 和彦】
「大東亜人民共産国は本気よ。正直、周主席がこれほどの覚悟を持っているとは思わなかったわ」
「そのようだな。ダンジョン討伐後の世界は、アジア主導の世界になるかもな」
横浜ダンジョンの様子を見に来ていた石原局長と食事をしながら日亜首脳会談の結果について話し合う。個人的に驚いたのが、東亜民国に討伐申請をしても文句は言わないという点だ。
「正直、それどころではないのよ。亜国内のダンジョン数は80を超えているわ。最終的には120近くのダンジョンを抱えることになるでしょう。その殆どが大都市圏なのよ。幹線道路の封鎖や工場閉鎖などの被害も出ているし、陸軍を貼り付けるだけでも莫大な費用が掛かるわ。さらに民間人登用にも課題アリよ? 一つのダンジョンで5百人の民間人冒険者だとしても6万人。彼らが一人あたり年間で1億円分の魔石を採掘したとしたら、6兆円になるわね。下手したらその2倍、3倍になるかもしれない。水素発電所の稼働と民間人冒険者登用制度のタイミングを合わせないと、経済破綻を起こすわ」
「その点、日本は大丈夫だな。今月中に金沢も討伐する予定だ。そうすれば札幌くらいは改造できるだろう。いずれ国内すべてのダンジョンを『最適な魔石鉱山』に変えてやるよ」
300グラムのステーキがあっという間に無くなり、追加の注文をする。石原は呆れながらコーヒーを啜った。そして思い出したように聞いてくる。
「そういえば、クルセイダーズの育成はどう? 成長しているかしら?」
「まだCランクには届いていない。クルセイダーズには悪いが、実験に付き合ってもらっている。Cランク……種族限界突破の方法を探っている。単純に魔物を倒した数なのか、それとも継続して戦い続けた時間なのか、あるいはウェイトなどの負荷なのか……より精緻なデータが欲しい。いずれノウハウ化し、最短でCランク冒険者を育て上げる方法を確立するつもりだ」
「できれば自衛隊にも欲しいけれど……公表はしないほうが良いわね」
「……民間人冒険者の犯罪者が出たのか?」
「日本ではまだよ。でもガメリカではDランク兵士による暴力事件が何件か発生しているし、南米ではマフィアがダンジョンを独占して悪さしているみたい。中東でもそうよ。いよいよ、きな臭くなってきたわ」
「Cランク冒険者の身体能力はDランクとは比較にならん。武器など持たずとも、テロを起こせるだろう。ランク判定の道具などがあれば良いんだが、ガチャアイテムでは見つかっていないからな」
「ダンジョン研究では、日本が最先端を走っているわ。その分、他国の諜報やテロ標的の危険がある。警察と公安が対策に乗り出しているけれど、もし相手がCランクなら対処できるのは同じ冒険者だけね」
ダンジョン以上に危険なのが、ダンジョンで強化された人間のほうだ。強化因子については未知の部分があり、人格にも影響があると考えられている。俺も、ラットを使った実験で強化因子による凶暴化の可能性を目の当たりにしている。俺自身は変わっている気はしないが、ひょっとしたら影響が出ているのかも知れない。
(もし、俺が理性を無くしてただの凶暴な動物となったら……)
そう考えて首を振った。考えても仕方のないことだ。切り分けた肉に、フォークを突き立てた。
Q.作中に出てくる「国名」がわかりづらい。実在の国名ではダメなのか?
A.これについてはかなり迷いっています。いずれ、196カ国の対比表を載せたいと思いますが、やはり実在の国名のほうがわかりやすいですよね。作品のテーマ上、どうしても国家間関係や宗教、歴史に触れざるを得ず、その設定があまりに非現実的だと違和感を持つと思うのです。
その一方、現実的すぎると多様な主義主張の方々から意見を言われそうで、それも困るなと思うのです。本作あくまでも「フィクション」であり、それを何度もお伝えしてきたと思うのですが、それを明確にするためにも、やはり国名まで「架空」にしてしまったほうが良いと考えております。
読者の方にはご不便をお掛けしますが、ご理解の程、宜しくお願い申し上げます。




