第040話:極東外交情勢の変化
遅くなりまして、大変申し訳ありません。
【木乃内茉莉】
和さんのところでアルバイトを始めてから半年が経ちました。最初は戸惑っていたけれど、今では魔物と戦うことにも随分と慣れました。エミリちゃんやミューちゃん、プリンちゃんが一緒なので、寂しくはありません。この日も神聖魔法で浄化しながら、スケルトンナイトと戦っていました。
「キュイッ キュイッ!」
プリンちゃんが、火の玉を30発ほど浮かべながら天井近くを飛んでいます。ガシャガシャとスケルトンたちがやってきました。火の玉が一斉に襲いかかり、スケルトンたちは消えていきます。
「ミュッ!」
後ろからやってきたスケルトンは、ミューちゃんが戦っています。壁や天井を使って、すごい速度で跳ね回り、スケルトンたちをポコポコと殴っています。これもあっという間に倒しちゃいました。
「茉莉も随分と慣れたわね。ミューもプリンもCランクになってるし、そろそろ第四層に行ってみる?」
エミリちゃんが第四層に行こうと誘ってきました。
「え、でも和さんからは止められてるよ? 高校生のうちは、第三層までだって……」
「平気よ。エミリもミューもプリンもCランクなのよ? 第四層はゴブリンソルジャーだけど、囲まれないようにしながら戦えば大丈夫だわ」
「んー……でも」
「茉莉だって、そろそろ退屈になってきたでしょ? 少しくらい刺激ほしくない?」
エミリちゃんにそう言われると、たしかにちょっと退屈してます。ずっと代わり映えしない光景で、延々と戦い続けています。少しくらいなら、いいかな。
「そうだね。ちょっとだけ、行ってみようか」
そして私たちは、第四層へと入りました。その結果は……
「ミューちゃん!」
「ミ゛ユゥッ!」
ゴブリンソルジャーはこれまでとはまるで違う相手でした。プリンちゃんが上から火の玉で攻撃すると、6体が一つになって盾を構えて防ぎます。ミューちゃんが壁を飛び跳ねながら攻撃しましたが、斬撃を受けて軽く怪我をしました。
「このぉっ!」
エミリちゃんの手がバチバチと音を立て、そしてビシャンッという雷のような音がしました。ゴブリンソルジャーたちが電撃を受けて、ガクガクと痺れています。そこにプリンちゃんとミューちゃんの攻撃が入り、なんとか撃退しました。
「エミリちゃん、やっぱり帰ろうよぉ。ミューちゃんも怪我してるし、私たちだけじゃ無理だよぉ」
「んー……まだ早かったかしら? でももう少し……」
エミリちゃんがそう言って一歩足を踏み出すと、先にあるT字路からゴブリンソルジャーたちが一斉に出てきました。10匹以上います。
「ヤバッ! 茉莉、目を閉じて! 閃光ッ!」
エミリちゃんが眩い光を放ち、ゴブリンソルジャーたちの足止めをしました。そうして私たちは、急いで第三層へと戻りました。
「何か、変わったことはあったか?」
ダンジョンアイテム「怠け者の荷物入れ」から、ゴブリンソルジャーのカード1枚と5千円札を抜き取り、あとは和さんに渡しています。ミューちゃんの怪我もポーションで回復させたし、問題ないはず。
「お疲れ様。これから暫く、俺と彰は金沢のダンジョンに入る。茉莉も来月は期末試験だろうから、少しアルバイトはお休みだ。エミリとミュー、プリンも連れていくぞ」
「はい、大丈夫です。気をつけてくださいね」
「茉莉、強くなって戻ってくるからね。ゴブリンソルジャーなんてぶっ飛ばしてやるわ!」
その言葉に、和さんの手が一瞬止まりました。でもエミリちゃんは気づいていないようです。何事もなかったかのように、和さんは普通にアルバイト代を手に持ち、私を家まで送ってくれました。和さんはこれから、金沢へと戻るそうです。でもその前に、チクリと言われてしまいました。
「第三層ばかりで退屈だったんだろ? 今度、茉莉も金沢に連れていってやる」
あ、バレてる。
【江副和彦】
「さて、エミリ。正直に言わなければ問答無用でお尻ペンペンだ。俺に無断で、茉莉を第四層に連れていったな?」
「う……だ、だってずっと同じ敵ばかりで退屈そうだったから。それにエミリもミューもプリンもCランクなのよ? 第四層でも戦えるわよ!」
「それで、結果はどうだった?」
「……ミューがちょっと怪我したわ」
エミリはそう言って顔を伏せたが、俺は頷いただけだった。エミリ自身も退屈だったのだろう。部下に飽きさせないことも、管理職の仕事だ。
「このAランクダンジョンの第四層は、他のダンジョンとは違う。知性のあるゴブリンがチームワークを発揮して攻めてくる。他のCランク魔物とは次元が違う。エミリも既に気づいているだろうが、プリンが火炎魔法で足止めしようとしても無理だ。物理的な力、つまり盾役が必要になる。いずれ茉莉にもダンジョン・バスターズのチームを率いてもらうが、お前以外にも盾役を用意してやる必要があるな」
「……怒ってないの?」
エミリが恐る恐る聞いてくる。俺の言いつけを守らなかったのはエミリが悪い。だが、言いつけを破りたくなるような環境にしてしまったのは俺の責任だ。
「今回だけは許してやる。退屈させたのは俺の責任でもあるからな。今後は金沢ダンジョンも使うぞ。横浜は、まぁ避けたほうがいいな」
そして俺たちはいま、金沢ダンジョンの第四層で戦っている。オーク1体が出現し、戦い終わるまでの所要時間は平均して4分、1時間で15体だ。つまり7時間で100体となる。
「出現してから戦い終わるまで、3分を切りたい。そうすれば1時間で20体、12時間で240体になる。俺と彰が交互に戦ったとしても、ダンジョン時間で80日あれば、俺と彰それぞれが1万体に達するはずだ。シャワーなどを含めて、地上時間で3日ってところか。必要ならウエイト増加や複数同時相手もやるぞ」
「フォッフォッ……狂っておるのぉ」
劉師父は顎髭を撫でながらボソリと呟いた。彰も朱音もエミリも、果てはミューやプリンまで頷いている。そんなに可怪しいだろうか? ダンジョン討伐に必要だからやっているだけだ。サラリーマンだって「朝、会社行きたくない」と言って休むようなお気楽な奴は、年間目標の達成など無理だろう。期末評価でDを付けられるはずだ。それと同じである。
「エルダー・オークのカード出現率は3%弱ってところか。1万体で300枚になる。ガチャ検証も可能だな。よし、10回ずつ交代で戦い、都度の検証を行うぞ。劉師父は戦いぶりをみて、後で改善点などの助言をお願いする」
こうしてエルダー・オークを相手にした「実行⇒検証⇒改善」が始まった。当たり前だが、彰より俺のほうに多くの課題がある。また意識しても中々、その改善ができない。このへんが才能の違いなのだろう。
そして、第一日目が終わった時点で、朱音のランクがBに上がった。
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【名 前】 朱音
【称 号】 妖艶なるくノ一
【ランク】 B
【レア度】 Legend Rare
【スキル】 忍術Lv1
索敵Lv8
性技Lv8
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「苦無術から忍術に変わってるぞ。これは?」
「火遁、分身といった忍術全般のスキルですわ。苦無術の上位とお考えください」
「なるほど。各レベルは『9』が上限か。その上は上位スキルが発現する……劉師父、これは人間の場合はどうなんだ?」
「モノによるのぉ。またレベルの上がり方にもよる。たとえば、シールドバッシュだけをやり続ければ、たしかにレベルは上がるじゃろ。じゃが壁役はそれだけができれば良いというものではない。先頭を進む中で危険を察知したり、隙を見て自ら剣で攻撃したりできねばならん。書かれていない『スキル周辺の力』をどこまで磨いたか。これで変わってくる」
「了解した。これはバスターズの『育成体制』にも関わることだ。要するに、豊富で多様な経験を積めってことだな。ビジネスマンの成長と同じだ。よし、今日はここまでにしよう。ホテルを取ってあるから、今夜だけは地上で一泊し、明日から3日間、ここでBランクを目指すぞ」
こうして俺たちは初日を切り上げた。
金沢市片町は北陸三県の中でも最大規模の繁華街である。香林坊から犀川方面に進むと、片町の中心であるスクランブル交差点がある。その交差点からほど近い場所にあるのが、個人的には金沢イチと評価している「おでん居酒屋 美雪」だ。かつては地元の常連客で賑わっていたこの店も、口コミサイトと新幹線開通によって観光客が押し寄せるようになった。予約必須になるというのは、昔からの常連客にとっては寂しく感じるものだろう。
「これ美味いね。おでんってこんなに美味しくなるんだ」
氷見産のブリの刺身と照り焼き、加賀野菜を使ったおでんに石川県産の日本酒が合う。カウンターとテーブル席、そして畳敷きの上がり席があるが、俺たちは予約をしていたため、上がり席の奥へと座っていた。既に何人かの客が俺たちに気づいているが、声を掛けてくる様子はない。店主もごく普通に接してくれる。そのへんが有り難いところだ。
「横浜の第三層はフェネックみたいな奴だったよ。石礫での遠距離魔法攻撃をしてくるDランクで、四人にはちょうど良かったと思うよ」
おでんを食べながら、彰から横浜ダンジョンの報告を受ける。俺は札幌と仙台の情報を共有した。仙台ダンジョンが横浜以上の難度だと伝えると、彰も興味を持ったようだ。
「横浜の後はこの金沢、そして船橋を討伐する。だがそれでもAランクには届かないだろう。そういう意味で、仙台は使えるな」
周囲にも人がいるため、軽はずみな発言はできない。必然的に、他国の話になったりする。
「僕のところにウリィ共和国の知り合いからメールが来てたよ。テコンドーの選手なんだけど、ダンジョン冒険者になるらしい。それで、僕に指導役として来てくれないか、だって」
「いや、それは無理だろ。ガメリカと内国、そして北姜国はIDAOに加盟していないはずだ。内国では他国の冒険者がダンジョンに入ることはできないし、冒険者の権利も保護されていない。そもそも今の日内関係で、運営局が渡航許可を出すとは思えん」
「だよねぇ。僕も運営局を通じて言ってくれって伝えたんだけど、兄貴には報告しておこうかなって思ってね」
「わかった。俺も局長に伝えておく。あの国は、国内が色々と複雑なことになっているからな。1月30日に、3つ目のダンジョンが釜山に出現したそうだが、全体としてどこまで攻略が進んでいるか……」
日内関係は、歴史認識問題や領土問題などで複雑な関係だ。特に今のパク・ジェアン大統領は「親北派」とみなされており、現在の日内関係は過去最悪になっている。国家間関係は政治家に任せるが、冒険者という立場から考えても、優先順位は低い。同じIDAO未加盟国に行くのなら、東亜民国の方が先だ。
「ところで兄貴、この後どうするの?」
「片町にも色々と楽しめる店があるが、希望はあるか?」
「んー……金沢は初めてだから、兄貴に任せるよ」
頷いた俺は、スクランブル交差点近くの「オーラビル」の店に連絡した。
【川口 淳一】
ウリィ共和国(内国)が、米国との安全保障条約を破棄し、休戦中の北姜国(大姜王国)との終戦および友好条約締結に向けて動いている。日本国外務大臣の川口淳一は、その報告を受けて目眩を覚えた。ガメリカがダンジョン対策で日内に駐留している軍を引き上げ始めている。ならばせめて安全保障関係だけでも、日内でしっかりと手を繋ぐべきであろう。だが親北派のパク・ジェアン大統領は、これを機に一気に大姜半島の平和を実現しようと考えたらしい。
「一国二制度体制による連邦国家。そんなものが本当に実現できると思っているのかね。あの大統領は……」
国家が維持、存続するためには2つのものが必要だ。「権威」と「権力」である。「権威」とは、その土地に住む人々を「私はこの国の国民だ」と意識づけるものであり、国民として束ねる力である。一方の権力は、国家の枠組みと統治機構を具体的に設計する力であり、近代国家では「法を有効にする力」と考えてよい。
権威は、時代や国によって様々だ。英国のような「王室」の場合もあれば、中東諸国のような「宗教」の場合もある。旧ソ連では「共産主義の理念」を権威にしようとしたが、宗教ほどには浸透せず、結果として恐怖政治になってしまった。権威と権力を兼ね備えた、いわゆる「皇帝」という存在もいるが、そうした国家はいずれ必ず滅亡する。これは歴史が証明している。日本が「世界最古の国」でいられる理由は、建国以来、権威と権力を分けてきたからだ。
そして今、ウリィ共和国は「2つの権威」による半島の統一を考えている。一方は金氏一族の血統、もう一方は、権威と権力を持つ大統領だ。まだ三代しか続いていないため、金氏一族の権威も弱いものだ。だから北姜国は外敵を作り、プロパガンダを通じて国民を束ねようとしている。
だがそれ以上に「大統領の権威」はあまりにも弱い。フランツェのような歴史と伝統を持つ国ならともかく、ガメリカでさえも「大統領の権威」というのは国民を束ねるには不足するのだ。だからそうした国は「外敵」を作ることで、国民を束ねようとする。
「共通しているのは日本を敵と見做すことだが、北と南とでは求心力が違いすぎる。このままでは本当に、半島は大姜王国で統一されてしまうぞ」
その場合、日本は安全保障上に重大なリスクを抱えることになる。人口減少時代で自衛隊を増強するにも限界がある。となれば、やはり他国との関係を強化することで、リスクを下げるしかない。
「ガメリカに匹敵する力を持つ国。この極東では、大東亜共産国しかない。だが、どこまで信頼できるだろうか。周主席の訪日で、なんとか糸口を掴みたいところだが……」
ダンジョンの出現によって、国際関係のパワー構造が大きく変わろうとしている。外務省の役割は重大であった。事務次官を呼び出すため、内線電話を手に取った。
【大東亜人民共産国 周浩然】
大東亜人民共産国の歴史は古い。4千年前に最初の王朝である「夏王朝」が出現して以来、アジアの歴史に大きな影響を与えてきた「中華」である。だがその歴史は「王朝建国⇒腐敗⇒滅亡」という、易姓革命の繰り返しだ。2千年以上に渡って一系の「皇室」を権威としている日本の万世一系とは違う。
そしていま中華は、同じ歴史を辿るかどうかの瀬戸際に立たされている。大戦後の内戦で、東亜民国に勝利した蒙沢民は、自身を権威の象徴とした「共産主義型皇帝」であった。文化大革命の失敗と混乱、そして蒙沢民の死去に伴い、大亜共産国は国の束ね方を変える必要があった。そこで行われたのが、陶昌文の改革開放政策である。だがそれだけでは、この広大な中華を束ねるには不足であった。そこで「反日政策」が始まった。市場経済導入による経済成長と反日政策による不満の捌け口の創出。正に「パンとサーカスを与える政治」である。
だが、一党独裁体制と市場経済という歪な構造は、人民の中に澱のような不満を生み出していった。民主主義国家ならば、経済成長による公害問題などは「平等な一票」によって解決が促される。だが一党独裁体制では民主主義の浄化作用が機能しない。その結果、途方もなく公害が広がっていく。
更に、インターネットの普及によって不満が増幅されるようになった。本来、大亜共産国ではデモは禁止されている。反日デモなどは全て「官製」のものだ。だが新世紀以降、人民に溜まった不満は至るところで爆発し始めた。法に反したデモ、つまり暴動が頻発している。その数は年間で数十万に達する。後漢の滅亡を招いた「黄巾の乱」、清王朝の滅亡を招いた「白蓮教徒の乱」と同じ道を辿りつつある。
そんな中で第七代国家主席となった周浩然はその就任にあたって、宋時代末期に国を立て直そうと奔走した一人の政治家を思い描き、胸に決意を秘めた。
「私は『王安石』になる」
まずは権威の再構築が必要であった。そのため周浩然は建国の父である蒙沢民に己をなぞらえ、憲法にも自分の名前を記載させるなど、国家の求心力たろうと振る舞った。その一方で行なったのが、徹底した政治改革である。腐敗撲滅運動から始まる汚職官僚の一掃は、宋時代の王安石の失敗から学び、静かに緩やかに、しかし止まること無く現在でも続いている。
「一方的な締め付けではダメだ。人民に中華最盛期を示さねば……」
いわゆる「覇権国家思想」である。南沙、西沙諸島や東シナ海などの海洋進出など、中華の拡大を図る。さらには強い経済を持つことで、ガメリカとも対等に渡り合い、ゆくゆくはアジアの覇者となる。この未来像を人民に示すことで、自らの権威を高めようとした。
だが、全てが計画通りと思っていた周浩然に、思わぬ落とし穴が待ち構えていた。それが「ダンジョンの出現」である。
「それで、新しいダンジョンの出現場所は?」
「北京、香港、マカオ、大連など、合計12カ所です。新たに報告があったダンジョンなども含めると、国内のダンジョン数は65カ所になります。ダンジョン出現の報告者に報奨金を出すようにしてから、報告数が増えました」
報告に頷いた周浩然は、今後の方針を改めて確認した。
「冒険者は全て、共産党員でなければならない。また当面は人民解放軍陸軍に設置した下部組織が、ダンジョン攻略を担当する。そして攻略情報は逐次開示するように。特に『大氾濫』についての情報は厳重に統制しろ。『破滅の希望』を人民に与えてはならん。人民共産党のみが、唯一無二の希望なのだ」
「周大人、IDAOの協定に基づき、今後は他国からも冒険者が来ると思いますが……」
「いずれは来るだろうが、当面は無いだろう。日本でさえ、国内のダンジョンを全て攻略しきれていないのだからな。それよりも今は、日本との友好関係の回復だ。ダンジョンこそ人民の、そして中華の敵なのだ。これを倒すことで、我々はより豊かになる」
「ですが、日本はダンジョン攻略でも水素発電でも進んでいます。ガメリカ海軍も沖縄に留まっていることから、簡単に譲歩はしないでしょう」
「私もそう思います。我々が欲しいのは、水素発電技術とダンジョン冒険者育成のノウハウです。一方の日本が欲しいのは、極東アジアの安定、特に大姜王国とウリィ共和国の押さえでしょう。最も有効なのは、新共日友好条約および安全保障条約の締結でしょうが、日本は東亜民国とも友好関係にあり、友好条約はともかく安保については簡単にはいかないはずです。こちら側も、なんらかの手土産が必要です」
「友好条約も簡単ではあるまい。南京記念館の閉鎖、反日的ドラマや映画の放送禁止、釣魚島をはじめとする東シナ海の領土問題の放棄……これぐらいは求めてくるはずだ。さらにそれに何かを加えるとなると、今度は人民が黙っていまい」
税制優遇措置なども考えられるが、ガメリカとの通商摩擦から、大亜共産国の経済は決して順調とはいえない。シャドーバンキング問題なども表面化し始めている。見た目以上にギリギリの状態なのだ。
「著作権や肖像権、商標、特許などの知財関係の問題についてならどうだ? 元々、日本やEUからも指摘されていたことだし、これを機に制度を整備し、徹底した取り締まりを行なっては?」
閣僚たちの話し合いを聞きながら、周浩然は内心で溜息をついた。中華は広く、膨大な人が住んでいる。この国の近代化など、あと百年はかかるのではないか。相手に何かを与えるのではなく、これまでやっていた「嫌がらせ」や「悪事」を止める。これを譲歩として交渉するなど、本来であれば恥だろう。だがそれでも、一方的な要求よりは交渉になるはずだ。
「浦部誠一郎にどこまで通じるか、だな……」
閣僚たちに聞こえないくらいの大きさで、周浩然は呟いた。
作中の「おでん居酒屋」も実在します。金沢旅行の際は是非、足を運んでみてください。ただし、予約必須です。
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