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第036話:日米決裂?

 ブローイング社のC-32Aは、ガメリカ合衆国軍の要人輸送機として、大統領専用機(エアフォースワン)にも使われている。この日、合衆国に6機存在するC-32Aのうちの一機が、メリーランド州アンドルーズ空軍基地を離陸した。


「なんで軍用機なんて使うかな? 普通に旅券取ってハネダに着いたほうが早いじゃん? ヨコスカからイチガヤって、結構あるんだよ?」


「ギルド長は外部招聘ではありますが、合衆国陸軍の少将待遇です。公務である以上、軍用機を使っていただかねば困ります。それに軍用機であれば、機密情報が漏れる心配もありません」


 合衆国ダンジョン軍(USDC)の参謀長であるアイザック・ローライトは、秘書官の説得を受け銀髪の頭をガシガシ掻いて、仕方無さそうに資料を手にした。


「今回の訪日の目的は、カズヒコ・エゾエから情報を引き出すことだ。僕の推理では、彼はダンジョン群発現象に深く関わっている。ダンジョン群発現象は日本時間で7月30日に発生したと言われているけど、恐らくその前に、日本にはダンジョンが存在していた。彼はその第一発見者なのだと思う」


「私には、些か強引な推理のように思えます。確かに、エゾエの行動と責任意識には疑問を感じますが、それだけで判断できるでしょうか?」


「違ったら違ったで良いんだよ。彼は世界初のダンジョン討伐者だ。その彼に会って話を聞くだけでも、十分に価値はあると思う。このままでは、彼が合衆国に来るのは最短でも1年後だ。その間に、日米間は取り返しがつかないくらいに差が広がるよ」


 アイザックの言葉に、秘書官のレベッカも頷いた。日本は世界で最もダンジョン対策が進んだ国であり、情報公開にも積極的だ。にもかかわらず、ガメリカは自ら扉を閉ざし、自国のみでダンジョンをどうにかしようと考えている。大統領の方針には逆らえないが、対ダンジョンの最前線に立つ者としてはやるせない思いがあった。


「しかし、日本とて無料(タダ)で情報を渡すとは思えません。エゾエに会ったとしても、彼が素直に、自分が第一発見者だと認めるでしょうか?」


「認めないだろうね。第一発見者については、ただのボールに過ぎないよ。僕の予想だけど、日本政府はまだ隠している情報がある。Legend Rareカードだのダンジョン・コアだの、本来なら隠しても可怪しくないような重要な情報を公開した理由は、それ以上に重要な情報を隠すためさ。それを引き出す」


「ですが、どうやって引き出すのでしょう? こちらも交渉のためのカードを切る必要がありますが?」


 レベッカの疑問に、アイザックは笑みを浮かべた。


「彼が一番、欲しいであろうものを渡すのさ」


 その内容を知った時、レベッカの表情は青ざめた。アイザックが渡そうとしているものは、合衆国の重要機密情報だったからだ。




【江副和彦】

 1月29日、俺は市ヶ谷の防衛省内でUSDC参謀長についての情報を読んでいた。本来は英語の資料らしいが、防衛省の事務方が訳してくれた。石原局長が足を組んで向かいに座っている。


「USDCの参謀長ということは、私と同じようなポジションになるわね。合衆国内の対ダンジョン政策を考える事務方よ。プロフィールで判る通り、相当に変わった経歴ね」


「一言でいうならば『天才』なんだろうな。学者としては、という限定付きだが……」


「あら、貴方の中では評価が低いみたいね」


「経営学の教授が実際に起業して成功した、という例は殆どない。学者というのは実務には向かない。恐らく彼もそうだろう。相手を説得する『寝技』が使えるとは思えない。俺なら『始祖のダンジョンについて』など、わざわざメッセージに入れない。助言が欲しいと言われれば、それだけで俺は時間を割いただろう。その辺を見越すことができない。つまり『ヒトに慣れていない』のだろうな」


「でも頭は切れるわ。論理思考力も推理力も並外れているわよ? 油断はできないわ」


「コンピューターで言うなら、ハードの性能は高いんだろうな。だがOSがダメだ。コミュニケーションというのはOSの『互換性』なんだよ。天才のOSというのは、得てしてこの互換性に欠ける。まぁ実は楽しみでもあるんだ。これほどの天才に会うのは初めてだからな」


 実際、頭は良いけど残念な奴というのはそれなりに多い。言っていることは正しいけど言い方が気に入らないという理由で、他者から敬遠される奴などだ。良い上司や先輩に恵まれ、かつ自分自身で気づきを得て変わる努力をしない限り、そういう奴は一生涯そのままだ。なぜ言い切れるか。俺自身がそうだったからだ。




 防衛省内の応接室で、俺はアイザック・ローライト参謀長と対面した。思った以上に若い。20代半ばらしいが、一見するとティーン・エイジャーにさえ見える。非公式とはいえ国家間会談なのに、ネクタイすらしていない。ジャケットを着ていれば良いという感覚なのかも知れない。


「はじめまして。ダンジョン・バスターズの江副和彦です」


「日本語のままで構いませんよ。USDCのアイザック・ローライトです。有名なダンジョン・バスターズの江副さんに会うことができて、大変嬉しく思います」


 通訳を介して自己紹介すると、驚いたことにアイザック・ローライトは日本語で返してきた。しかもかなり流暢だ。レポートには数ヶ国語を操ると書かれていたが、まさか日本語ができるとは思わなかった。


「日本語がお上手ですね。以前、日本に在住されていたのですか?」


「いえ、日本のラノベで勉強しました。『現代にモンスターが出た』とか『ダンジョンのある世界』とか『自宅にダンジョンが出来た』とか、まぁ現代ダンジョン系だけで100冊は読みました」


「なるほど。それで、参考になりましたか?」


「日本語の勉強にはなりましたが、ダンジョン政策という意味では、あまり参考になりませんでしたね。そもそも前提としてレベルアップとかいう設定があったり、世界中にダンジョンが出現しているのに何故か先進国の話しか出ていなかったり、超常現象が発生したことに対する各宗教の反応が無かったりと、非現実的過ぎです。だいたいハイ・スクールの学生が、なんでダンジョンに入るんですかね? 黒い石(ブラックストーン)を集めて買い取ってもらう? 普通は親が止めるでしょう」


「いや、だってラノベですから。そんなに現実を突き詰めたら面白くないでしょう? 緩く現実っぽく書くからエンタメになるわけで。まぁラノベの話は横に置いて、それだけ日本語が堪能ならば、私も日本語で進めさせていただきます。そちらの女性の方は……」


「僕の秘書官です。彼女は気にしないでください。あとで録音テープを自分で翻訳してもらいますから」


 俺は頷いた。なるほど、確かに天才の特徴『マシンガントーク』を持っている。これまでも、自分が話したいことを話したいように話してきたのだろう。少なくとも日本企業では生きられないタイプだ。


「さて、では本題に入りましょう。僕が日本に来たのは、江副さんと取引がしたかったからです」


「取引?」


「そう。USDCが持っている情報と、防衛省ダンジョン冒険者運営局が持っている情報の交換です」


「……それであれば、私が同席する必要は無いのではありませんか?」


「そうはいかないでしょう。何しろ『個人情報』に関わることですから。江副さん。僕の推理では、このダンジョン群発現象の原因は貴方にある。恐らく日本のどこかに『最初のダンジョン』が発生し、貴方はそれに入った。不可抗力だったのかもしれませんが、それでダンジョン・システムが起動してしまった。そしてその時、貴方には使命が与えられた。それは、ダンジョンを討伐すること。そして同時に、ダンジョンについて幾つかの情報を手に入れた。僕はそう考えています」


「面白い推理ですね。ですが、仮にそれが正しかったとして、私が素直に認めると思いますか? 他国の人間である貴方に対して」


「認めないでしょうね。それに認める、認めないはどうでも良いのです。言ったでしょう。取引だって…… こちらが持つ情報を示せば、貴方は必ず取引に応じます」


「へぇ……ちなみに、何が知りたいんですか?」


「日本政府が世界に隠しているであろう3つの情報。即ち、1.ダンジョン群発現象はいつまで続くか 2.ダンジョンは最終的に幾つ出現するか 3.魔物大氾濫モンスタースタンピードが発生する時期はいつか…… 貴方、そして日本政府はこの3つを知っている。私はそう確信しています」


「ハッハッハッ……そこまで確信できる理由はなんですか?」


「貴方の行動速度です。7月30日に、世界にダンジョンが出現してから僅か半年間で、貴方はどれだけのことを成し遂げたか理解していますか? ガメリカやEUでは、民間人冒険者制度すら試験段階だというのに、日本はもう軌道に乗せて討伐までしてしまった。その要因は、貴方の圧倒的な行動力です。組織を結成し、仲間が集まる仕組みを作り、魔物大氾濫の可能性を示し、ダンジョンが討伐可能であることを証明した。今の日本は、他国の数年先を行っていると言えるでしょう。貴方がそこまで急ぐのは『期限が決められているから』です。対象となる数と討伐までの期限が明確でなければ、急ぐ理由が説明できません」


「………」


 俺は黙って、隣に座る石原局長に視線を向けた。石原は頷き、目の前の「お喋りな天才」に問い掛けた。


「仮に、日本政府がその情報を持っているとして、それを知ってガメリカはどうなさるお積もりですか? 全世界に公表されるのですか?」


「まさか! 自己顕示欲が旺盛な大統領でも、そこまでアホではありませんよ。それに、その情報はUSDCで当分は隠すつもりです。ただ、その情報が有る無しでは、ダンジョン政策が大きく変わってきます。特に3番めの『スタンピードの期限』です。これが100年先とかなら良いのですが、江副さんの行動を見る限り、そう遠くはないように思えます。20年、いや10年後かもしれません。合衆国民を守るためにも、知っておかねばならないのです」


「そのような情報がなくても、ガメリカは十分に自国を守れるのではありませんか? 何しろ日米安保を弱めてまで、在日米軍を撤退させるのですから……」


 石原が皮肉を言うが、アイザックはただ肩を竦めただけだった。そして、石原の皮肉を無視して俺に顔を向ける。


「USDCが日本に提供する情報ですが、恐らく貴方が喉から手が出るほどに欲しい情報です」


「ほう、なんですか?」


 するとアイザックは秘書に命じて書類を取り出した。何やら英語で色々と書かれている。


「簡単に言ってしまえば、全世界に存在するダンジョンの位置情報です。これは極秘情報ですが、ダンジョンは出現する際に、微量な電磁波と重力の歪みを発生させます。ガメリカの偵察衛星は世界規模でそれを探知し、正確な場所を特定しています。もしダンジョン群発現象の期限を教えてくださるのなら、その期限まで出現した全てのダンジョンの位置情報を提供しましょう」


 正直に言う。俺はこの時点で白旗を揚げていた。ダンジョンの位置情報は、万金を積んででも欲しい情報だ。それが手に入るのであれば、こちらの情報を提供しても良いと思った。石原もそう考えたらしく、笑みを浮かべて頷いた。


「なるほど。こちらは討伐対象の位置を知ることができ、そちらはダンジョン政策に必要な情報が得られる。相互にとってWin-Win、だから交換しようというわけですね?」


 その言葉に、場の空気が一瞬和む。だが隣に座る女王様は交渉成立かと思った次の瞬間、いきなり足を組んで英語で傲然と言い返した。表情も声色も態度も、さっきとはまるで違う。


「でも断るわ。舐めないでもらいたいわね。これまで日本が、どれだけ世界に対して無償で情報提供してきたと思います? 命を懸けること無く、偵察衛星で知れるダンジョンの位置情報と、日本人が命懸けでダンジョンを討伐してようやく知り得た情報が等価だとでも? ダンジョンの位置なんて、無償で国連に提供して当然の情報だわ」


 英語だったため、俺には何を言っているのか判らない。だがいきなり豹変した女王様の態度に、アイザックはポカンとした表情を浮かべていた。




【アイザック・ローライト】

 僕のネゴシエーションは完璧だったはずだ。日本人に馴染みのあるラノベの話をし、こちらの推測をぶつけて相手を揺らしたうえで、合理的に考えて損のない取引を持ち掛けた。事実、エゾエは交渉に応じても良いと思っていたはずだ。だが横に座る30歳くらいのジャパニーズ・レディが、いきなり豹変した。僕を見下すように、アンタの商品に価値はないと言い切られてしまったのだ。


「ミスター・エゾエ、彼女は……」


「ソーリー、アイキャントスピークイングリッシュ」


 エゾエはそう言って肩を竦めた。知的で合理的なエゾエは撤退し、この非合理的な女性を説得しなければならない。彼女が言いたいのはとどのつまり、ガメリカも身を切れということか……


「無論、国連に提供することは吝かではありません。しかし……」


「シカシもカカシも無いわ。我が国はダンジョン対策における国際協調を重視し、様々な情報を提供してきた。その我が国に対して交渉を持ち掛けるのならば、ガメリカも国際協調を重視し、世界に情報を提供しなさい。今のガメリカは自国利益優先、正直、貴方のことも信用できない。今日のこの取引をハワード大統領や国防省長官は知っているのですか?」


「うっ……」


 知った情報はUSDCで極秘扱いにすると言ってるんだぞ。知るわけないだろ。ダンジョンの位置情報は重要機密情報だ。それを提供するなんて言ったと知られたら、僕の首は飛ぶ。それは構わないけど、ダンジョンの研究ができなくなるのは困る。


「こちらからの条件は2つ、一つはダンジョンの位置情報。もう一つは、国連で議論されている『冒険者本部構想』に賛成すること。ガメリカが賛成し、冒険者本部が設置された段階で、こちらも情報を渡すわ。言っておくけど、総理に働きかけても無意味よ。日米安保が事実上消滅している状況では、日本はガメリカの言うことを聞く必要はないわ」


 いや、ハワード大統領がOKするはずないだろ。あの大統領は「お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ」って人なんだから。今年の大統領選挙次第だけれど、国際協調派の民主党大統領にならない限り、あと5年はハワード体制が続く。そうなれば、ダンジョン対策は大きく遅れてしまうかも知れない。


「確かに位置情報は欲しいけれど、それは今すぐで無くても構わないわ。ASEANやEUとは情報交換しているし、日本だってそれなりにダンジョン位置を把握しています。現時点では交渉にはなりません。ガメリカはガメリカで、頑張ってください。貴国の政策が変わったら、またお会いしましょう」


 そう言って、目の前のタフ・レディは会談を打ち切った。僕は初めて「敗北感」って奴を知ったよ。


「参ったな。まさか、あんなタフ・レディがいるとは…… エゾエがキーパーソンと思っていたけど違ったな。ことダンジョン政策においては彼女、ユキエ・イシハラこそキーパーソンだ」


 防衛省から横須賀まで車で移動する。その車中で、僕は愚痴を溢した。会談を振り返ると、やはりイシハラの言っていることは非合理的で情緒的だ。ダンジョン討伐を第一とするなら、交渉に応じるべきだろうに。


「日本の官僚は優秀ですが、これまではガメリカの意向を重視していました。やはり年頭の大統領の演説が効いているのでしょうね。日本は、安全保障政策においてはガメリカと袂を分かつつもりかも知れません」


「こっちとしては、それに対して文句は言えないよねぇ。何しろこちらから安保破棄したんだから。はぁ、困ったもんだよ、あの大統領には…… ガメリカ・ファーストは良いんだけど、もうちょっと考えてモノを言ってほしいね」


「巨大市場ガメリカでビジネスがしたかったら、俺様の言うことを聞け。これがハワード大統領の考え方ですからね。魔石によって世界のエネルギー不均衡問題が解消したら、世界はガメリカではなく日本をリーダーとするかも知れません」


「もう、そうなりつつあるよ。困ったなぁ。まぁ取り敢えず、エゾエの反応からスタンピードまで有期であることは判った。そのつもりで政策を考えるとしよう」


 20年、いや10年と仮定しておくか。ガメリカ国内には、現在17箇所にダンジョンが出現している。これが倍になったとしたら34箇所、これを10年で討伐するという仮定で計画を立ててみようか。長官への報告? それはレベッカに任せるよ。




【江副和彦】

 途中から英語になったため、どのような話し合いをしたのかは解らなかった。だが結果は「決裂」なのだろう。ダンジョンの位置情報は手に入らず、向こうも情報を得られなかった。ゲーム理論における「囚人のジレンマ」の状況だ。


「決裂、か。随分と思い切ったな」


 そう声を掛けると、石原はフンッと鼻で笑った。


「最初っから気に入らなかったのよ、やり口が。自分たちはお前らの秘密を知っているぞ的な物言いとか、ラノベで日本語勉強した凄いだろ的な話とか…… ガキの分際で生意気だわ。私と交渉しようなんて10年早いのよ」


「だが、位置情報というのは重要だと思うが……」


「平気よ。そのうちガメリカの方が折れるわ。貴方が国際協調派の国を回り、次々とダンジョンを攻略していく。その後は、日本企業が進出して水素発電事業で合弁会社を設立し、エネルギー問題を解決する。世界70億のうち、66億が日本の味方になる。10年後には、ガメリカは世界のリーダーから陥落し、ただの先進国になっているわ」


「……ガメリカが、嫌いなのか?」


 石原の物言いには、どことなく個人的な感情があるように思えた。だから聞いてみた。石原は口元を歪めると、部屋の窓に向かって文句を口にし始めた。


「防衛省のキャリアとしては口に憚ることだけれど…… ムカつくのよ、あの国は! 毎年毎年、バカ高い戦闘機を押し付けてくるし、休暇の3ヶ月間ずっとエアコンを付けっぱなしにするような、コスト意識の欠片もない米軍兵ばかりなのに駐留費負担を求めてくるし、東京大空襲や原爆投下のような非人道的な国際法違反、戦争犯罪しまくっていたくせに『正義の国』なんて(ツラ)で世界中に軍隊を派遣し、メチャクチャにしたうえで責任も取らずに撤退するし…… ガメリカ国内だけと限定するなら、むしろスタンピードが起きてほしいくらいだわ!」


「お、おう……」


 石原の剣幕に俺は思わず「Yes,ma'am!」と言いそうだった。相当に溜まっているのだろう。それとも更年期障害のヒスだろうか? ひとしきり、窓に向かってガメリカを罵倒しまくった石原は、思い出したように口を閉ざし、フゥと息を吐いた。振り向いてニコリと笑う。


「……とまぁ、言いたいことは沢山あるけれど、ガメリカは日本の大事な同盟国。経済においても安全保障においても重要なパートナーです。私たち防衛省は、日米関係を重要視しています」


 いや、誰に向かって言ってんだよ?




 翌日の1月30日未明、世界に再びダンジョンが出現した。日本国内でも出現したが、大都市圏という俺の予想に反して、意外な場所に出現した。


「本日未明、またしてもダンジョンが出現しました。場所は石川県金沢市、香林坊にある北星銀行本社の駐車場です。テレビ金沢の重田リポーターが現地にいます。重田さーん……」


 そこで俺はテレビを切った。金沢市というのは意外であった。人口40万人の小京都だ。今でこそ新幹線が開通して駅前は栄えているが、以前は小松空港からバスで1時間も掛かっていた。現在でも独自の経済圏を形成し、歴史のある名店も多い。俺も幾度か、この街には行ったことがある。


「横浜の後は金沢にするか? 片町でも遊びたいし『第八餃子の店』も久々に行ってみたいしな」


 昼に行って、まずは「第八餃子の店」でギョーザ大を食べ、夜はおでんの名店「美雪」、「オーラビル」のラウンジで遊び、アフターでカラオケに行った後は、お茶漬け専門「信濃」で店主にヤフーと言われながら出汁茶漬けを食べる。悪くない計画だ。


「……まぁ目的は、あくまでもダンジョン討伐だ」


 なんとなく自分に言い訳をしながら、俺は手帳を捲った。


 毎週「日曜日」「水曜日」「金曜日」の昼12時過ぎに投稿致します。7500文字(最近は8千文字以上が多いです)を毎日書くのは難しく、週3話投稿でお許し下さいませ。


 評価や感想を下さった方、ブックマーク登録をして下さった方、全ての読者様に御礼申し上げます。ブックマークやご評価をいただけると、創作活動の励みになります。これからも頑張って書いていきます。

 頂いた感想はすべて拝読しております。本当にありがとうございます。


 今後も応援の程、何卒、宜しくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
天才ギルマス少将キタ!!
大統領に日本が情報を秘匿して世界の覇権を狙ってると素直に報告したら、簡単に宣戦布告してきそう 日本はその対応に追われてダンジョンどころではなくバッドエンド 、、、という結末もありえたでしょうね 1人…
[気になる点] 軍用機利用ということであれば、横須賀ではなく横田では? 空母の艦載機にしても、厚木で離着陸ですし。
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