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第031話:他の冒険者たちの思惑

 俺の名は「鮫島健介」、大手製薬メーカー「大日本製薬工業」の社員だ。元々は営業(MR)だったが、今は違う。ダンジョン冒険者となり防衛省の会議室にいる。

 営業(MR)だった俺が、なぜダンジョン冒険者として防衛省なんかにいるか? それは俺の数字が悪かったからだ。いや、本当にあるんだよ。何をやっても売れない。何故か自分だけ売れない。MRなんて言っているけど、所詮は数字に追われる営業マンなんだ。目標未達が続けば、会社にも居づらくなる。去年のある日、そんな「売れない営業たち」が集められた。そして言われたんだ。「ダンジョン冒険者になってポーションを集めろ」ってさ。


 俺の仕事は、横浜ダンジョンに潜って魔物を倒し、魔物カードでガチャをやってポーションを集めることだ。魔石を納品したら、その額は一旦、会社のほうに振り込まれる。俺たちはポーション納品数で評価され、魔石納品の金額から減価償却や所得税など諸々が引かれ、さらにポーション納品本数に応じたボーナスが加わって給与となる。別の人事制度、評価体系となるため、昨年末に新会社が立ち上げられ、俺たちはそこに転籍となった。ブートキャンプに参加して冒険者資格を取得し、今年から「チームDPM(Dainippon Pharmaceutical Manufacturers)」という名前で、男5人の冒険者チームで活動を始めた。


 1月4日に試験的な勤務が始まったが、ダンジョン内は楽でいい。第一層のウサギを5人がかりでボコボコにして、3グラムの石ころを拾う。そんな作業を8時間やったら地上に戻り、社内SNSで報告して終わりだ。1時間あたり30匹、8時間で240匹を倒すと、カードが7枚ほど出る。1日720グラムの魔石を納品すると、7万2千円。一人あたり1万4400円だ。それにカードが1日7枚、3日でガチャ2回分となる。特に楽なのは、ダンジョンでの8時間勤務が、地上ではほんの数分だってことだ。納品が終わり次第報告して、その日の残りはオフになる。ダンジョン内で適当に身体を使うだけの、楽な仕事だ。


「このままでは人類は滅亡する」


 石原局長から説明を受けても、俺たちはピンと来なかった。理屈は理解できる。昨年末に、ダンジョン・バスターズの江副和彦が「モンスター・スタンピード」とかいう仮説を唱えたのは知っているし、今回の初討伐でその仮説を裏付けるような証拠が見つかったという話も解った。だが現実味が無い。俺たちはサラリーマンで、会社の仕事としてダンジョンに入っている。ダンジョンを討伐して世界を救うのは、俺たちの仕事じゃない。俺たちの仕事は魔物カードを使ってガチャをして、ポーションを集めることだ。だから素で質問してしまった。


「それ、俺たちの仕事なんでしょうか?」


 アラサーらしき局長が、鋭い目で俺を見つめる。いや、なに睨んでんだよ? ダンジョン討伐なんて、ソッチの勝手な都合じゃん? サラリーマンの俺は気楽に働いてノンビリ暮らせれば良いんだよ。ダンジョン討伐は誰かがするでしょ。


「これはお願いだから、強制ではないわ。魔石を集めて納品してお金を手に入れる。それだけを希望する人もいるでしょう。でも、このままでは魔物大氾濫モンスタースタンピードで人類が滅びるわ」


「いや、そうとも限らないでしょ。大氾濫(スタンピード)っていつ起きるのよ? その規模は? 地上に出てくるんなら、それこそ自衛隊が戦えば良いじゃん?」


 他の奴もそんな声をあげる。そうそう。世界滅亡とか重い話持ってくるなよ。そんなの自衛隊やバスターズたちに任せれば良いんだよ。俺らはノホホンと気楽に稼がせてもらうわ。





 「10年=454億4294万4千秒」という情報は、政府の方針として国民には隠すことが決まっている。日本単独ではなく、国連において世界同時に発表すべきというのが、浦部内閣の方針だ。だからこの場でも、具体的な「期限」を明かすことはできない。その中で、どうやって皆に危機感を持ってもらうか。悩んだ私は、スタンピードの伝え方について江副氏に相談してみた。すると彼は言った。

 真実を知ったとしても、全員が賛同するとは限らない。人類滅亡なんて想像できない。やれる人に任せればいい。自分以外の誰かがやるだろ。自分なんかが頑張ったところで、なんになるの?

 日本人の半分はそう考えるだろうと江副氏は言った。そんなことは無いだろうと私が反論すると、投票率を考えてみろと言われてしまった。彼らが悪いわけではない。それが普通だと江副氏は言う。


「それ、俺たちの仕事なんでしょうか?」


 その言葉に、私は思わず感情的になりそうだった。事前に彼から言われていなければ、きっと大声を出してしまったに違いない。将来のことなんて知らない。その日その日を気楽に暮らせればいい。それでは犬猫と同じではないか。こんな人間を相手にするのは時間の無駄だ。無視して話を進めよう。そう切り替えようと思ったら、江副氏が手を挙げた。


「いつになるかは解らない。だがダンジョン・コアに『大氾濫』という項目がある以上は、捨て置くわけにはいかない。俺はそう考えるが、そうでない奴もいるだろう。誰かがダンジョンを討伐してくれる。自分はそこまで頑張りたくない。短時間で数万円を稼いで後は気楽に生きたい。それもまた一つの選択だし、そうした生き方にも幸福はある。局長、いっそのこと冒険者を分けませんか? 魔石確保(マイニング)を役割とする『採掘者(マイナーズ)』と、ダンジョンの調査と討伐を目的とする『討伐者(バスターズ)』に……」


 江副氏の意見に、他の冒険者たちがザワついた。先程、私に対して「自分の仕事か?」と言った男は、どこか居心地悪そうにしている。唐突な意見だが、面白そうではある。私は話を促した。


「もう少し詳しく聞かせてくれないかしら? 貴方はこの部屋にいる誰よりも長くダンジョンに潜り、誰よりも多くの魔物を屠ってきた。実績からも貢献からも、ダンジョン冒険者制度に対する発言権は十分にあるわ」


「ダンジョン冒険者運営局の目的は2つ。1つは魔石およびポーションなどのダンジョン技術やアイテムの確保、もう1つは国内に散らばるダンジョンを討伐し、その管理権限を手中にすること。目的が2つあるのなら、冒険者も2つに分けるべきです。例えば、1つ目の目的を『採掘者(マイナーズ)』が担うとしたら、魔石やカードの月間納品量で評価を行い、ランキングする。上位者は買取額を上乗せするなど、ボーナスが与えられる。ダンジョンの討伐を主務としない以上、強さは評価基準にしない」


「なるほどね。2つの目的がある以上、それぞれに応じたマネジメントを行うべき。そう言いたいわけね。それで2つ目は?」


「『討伐者(バスターズ)』の場合は、目的はダンジョンの調査と討伐です。これには時間が掛かるし、採掘者と比べて危険度も跳ね上がります。インセンティブが必要でしょう」


「具体的には?」


「ダンジョンを討伐すると、討伐者はそのダンジョンの管理権限を得られます。所有権は国に渡すとしても、利権を残してはどうでしょう。そのダンジョンで魔石採掘をする者は、得た魔石の10%を、管理権限を有している討伐者もしくはパーティーに納入すること……これでどうです?」


 他の冒険者たちが顔を見合わせている。そんな中、宍戸彰はスマホを弄っているし、田中睦夫は何やら絵を描いている。彼ら二人は、予め聞かされていたのだろう。


「非常に興味深い提案だわ。運営局として検討します。それでは次の話ですが……」


「ちょっとぉ! そんなのアリかよっ!」


 先程の男が、声を荒らげていた。どうやら10%納品というのが腹ただしいらしい。呆れたものだ。人類のために命懸けで戦おうとしている者と、それを傍観しているだけの者、同じ土俵で論じるということ自体がナンセンスなのに。


「別に決定したわけじゃないし、買取額を減らすという話でもないわ。そのダンジョンの利用料(・・・)として、討伐者に10%を収めるという話よ? それが嫌なら、冒険者を辞めるか、あるいは自分も討伐者になれば良いだけだわ。自分は頑張りたくない。誰かがなんとかしてくれるのを待っていたい。でも権利は主張したい。そんなことが許されるわけ無いでしょう?」


 男は苦虫を噛んだ表情で押し黙ってしまった。これで良い。別に魔石採掘を主務とする「採掘者(マイナーズ)」を軽んじるつもりはない。彼らも重要な存在だ。だが「討伐者(バスターズ)」の足を引っ張ることは許さない。自ら進んで「意思を持たない蟻」となるならば、文句を言わず唯々諾々と働けば良いのだ。その生き方を選択したのは、他ならぬ本人自身なのだから……





 日下部流古武術は、戦国時代でこそ殺法として使われていたが、江戸時代以降は護身術となり、今では「自分と、大切な誰かを護るための武術」として警察署でも教えている。私が冒険者になったのは、魔物という魑魅魍魎の存在が現実となったからだ。大阪では、警察官が魔物と戦い、命を落としている。魔物との戦い方を学ばねばならない。そう考え、私は冒険者となるべくブートキャンプを受けた。


 そして今、私はダンジョン・バスターズが成し遂げた「世界初の討伐」の動画を観ている。その戦いぶりは凄まじいの一言だが、それ以外にも気になる点が幾つもある。最下層の天井にあったレリーフ、Legend Rareカードとよばれる「キャラクター」の存在、そしてダンジョン・コアに表示された意味ありげな言葉…… いずれも無視できるものでは無かった。


(戈を止めると書いて「武」……人々のためにも、今こそ武の力を示すべきだ)


 ダンジョン冒険者運営局長の話では無いが、魔物の氾濫を食い止めるために力を貸せと言うのなら、喜んで我が刀を貸そう。だが実際にはどうやって食い止めれば良いのだろうか? 残念ながら、今の私の力ではダンジョンを討伐できない。我が道場の強者たちが一緒でも無理だろう。ならば強くなるしか無い。強くなるための方法なら解る。ちょうどスクリーンに映っているではないか。腕を失いながらも、青き巨獣を片手で屠った強者が……





 自分の名は「墨田 義正」と申します。去年まで、大相撲の十両でした。身長は193センチ、体重150キロとガタイには恵まれた自分ですが、膝と腰に怪我をして、土俵に上がれぬ身体になり、去年の10月場所で引退しました。引退した力士なんて、ただデカイだけの大飯喰らいです。どうやって生きていくかを悩んでいたときに、親方が「ダンジョン冒険者」を勧めてくれたんです。強化因子によって近眼が治ったのなら、膝や腰も治るかも知れない。モノは試しと、年末のブートキャンプに参加しました。


 それはとても辛い経験でした。ダンジョン内は良いのですが、階段の上り下りが辛かったんです。ですが歯を食いしばって頑張っていたところ、不思議なことが起きました。強化因子という奴のおかげか、それともポーションの効果なのかは判りませんが、痛みが徐々に退いていったんです。ダンジョン時間で2週間もすると、体重は100キロを切り、膝も腰も全く痛くなくなりました。


 こんな自分ですが、石川県珠洲市に住んでいる家族や、部屋まで応援に来てくれたファンの人もいます。大食らいの自分を育ててくれた両親に対して、そして序の口から応援してくれたファンの皆に対しての恩返しは、ダンジョン冒険者となって立派に活躍しているところを見せることです。そう考え、自分はダンジョン冒険者になりました。


「魔物大氾濫」


 それを聞いた時に思い浮かべたのは、両親や弟、妹の顔です。そして親方や女将さん、短い間だったけど付き人として背中を支えてくれた後輩たち。応援幕を持って国技館に来てくれたファンの人たちでした。あの人たちが苦しむ姿は見たくない。自分の財産は、このデカイ身体だけです。ですが、それが役に立つかも知れない。恩人たちが安心して暮らしていけるために、自分は魔物と戦います!





 私の名は「向井 純平」、45歳になる。つい先日まで、銀行員として働いていた。愛する妻と二人の娘のために、理不尽な命令や単身赴任にも耐えながら、22年間にわたって大手都市銀行に勤めていた。だが昨年に大きなリストラが行われた。「Robotic(R) Process(P) Automation(A)」の大々的な導入で、私は職を失った。これからはコンピュータが自動的に処理してくれる。マニュアルワークしかできない行員は不要…… そう言われたように感じた。


 私は嗤った。嗤うことしかできなかった。20年以上前、入社した頃の銀行は酷いものだった。90年代、大量の不良債権を抱えた銀行は、公的資金の導入でなんとか立ち直ったが、世間の目は冷たいものだった。2000年からは合併を繰り返し、ようやく立ち直ったかと思ったら、サブプライムだのネットバンク台頭だの競争環境が激しくなった。

 それでも銀行の体質は変わらない。ドラマ「倍返し」で銀行が取り上げられたが、殆どあの通りだ。無能な上司のご機嫌取り、意思決定をしない馴れ合い組織と出身銀行派閥、そして失敗は下のものに責任を押し付ける体質…… 「自分らしく生きるキャリアカウンセリング」の案内を受けた時、私は銀行に辞表を叩きつけた。もう、やっていられなかった。


 だが、私には家族がいる。上の娘は大学受験を控え、下の娘も中学受験がある。一家の大黒柱として、なんとか収入を得なければならない。そんな時だった。私と同年代の江副和彦氏のプレゼンテーションを見て、コレだ!と思った。ダンジョン冒険者となり、億という金を手に入れる。豪邸を建て、高級車を乗り回し、娘たちを海外留学させる。そして、去っていく私の背中を笑っていた同期たちを見返してやる。そう決意し、ブートキャンプを受けた。


「魔物大氾濫」


 その可能性を知らされた時、私は天を呪った。ようやく冒険者となったのに、今度はその未来を閉ざそうというのか。神はどこまで、私に試練を与えようというのか! 一家の大黒柱として、私は死ぬわけにはいかない。討伐のような命懸けの戦いは避けるべきだ。だがダンジョンをこのままにしておけば、いずれ私も、家族たちも危険に晒されるだろう。私は、どうしたら良いのだろうか……





 彰と睦夫と俺の3人は、会議室の後方に座っていた。それには理由がある。「魔物大氾濫モンスタースタンピード」の話を聞いた他の冒険者たちが、どのような反応をするか興味があったからだ。そして、その結果は殆ど予想通りだった。すなわち「パレートの法則」が成り立っている。


 パレートの法則とは、イタリアの経済学者が統計分析に基づいて提唱した「社会経験則」の一つである。2割の富裕層に、社会全体の8割の富が集中し、残り2割の富が8割の低所得者に配分されるというものだ。別名「2・8の法則」と呼ばれるこの経験則は、社会の様々なところで見受けられる。例えば企業で言えば、「2割の人間が全体の8割の付加価値を生み出している」「プログラムの処理にかかる時間の80%はコード全体の20%の部分が占める」などだ。信じられないかも知れないが、これは確かに存在している。


 そしてこの亜流が「働きアリの法則(2・6・2法則)」だ。働き蟻のうち、よく働く蟻が全体の2割、普通に働く蟻が6割、サボっている蟻が2割というものだ。不思議なことに、よく働く蟻だけを集めると、その中からサボる蟻が出現する。これは現在でも研究が続けられており、一生働かないフリーライダーを食わせるために、過労死する働き蟻が存在することも確認されている。


 このフリーライダーは、組織にとって有害な存在であるため排除しなければならない。なぜならフリーライダーは「感染」するからだ。実際、フリーライダーが増えた蟻の巣は、コミュニティが維持できずに崩壊してしまう。だが一方で、全員を上位2割にすることも不可能だ。なぜなら全員がよく働けば、全員が同時に休んでしまうからだ。フリーライダーを排除しつつ、新陳代謝を行い、全体の生産性を高めていく。この考え方を「人的資源管理」と言う。


 そして、ダンジョン・バスターズは「よく働く蟻の集団」でなければならない。つまりこの部屋の中にいる「上位2割+6割の中でマシな奴」が、バスターズメンバーの候補になるだろう。先程のノホホン野郎は、社会に一定数存在する下位2割だ。どんな状況であっても「本気になれない人間」というのは、確実に存在する。転職しようと、独立しようと、魔物大氾濫が起きようと、そういう奴は死ぬまで本気にならない。バスターズには、そんな「サボリ蟻」はいらん。


「ダンジョン・バスターズの江副和彦です。冒険者同士、情報交換ができたらと思います。宜しくお願いします」


 休憩時間に入った。後ろから反応を見ていて、これはと思う冒険者たちに声を掛け、名刺を渡していく。彼らの中から、ダンジョン・バスターズに入ろうとする人もいるだろう。そう思っていたら早速、二人がやってきた。


「自分は、墨田正義です。元力士ッス。江副さんと一緒に、ダンジョンを討伐したいッス」


「私もです。一人の武術家として、ダンジョンの問題は無視できません」


 墨田正義という元力士は、彰以上の巨躯であった。それでいて締まっている。即戦力になるだろう。そして、会議前に声を掛けてきた日下部凛子については、彰が推薦している。後ろの3人も相当に強いらしい。その二人が、真剣な眼差しで詰め寄ってくる。表情からは「誰かのために」という熱意を感じる。


「現在、ダンジョン・バスターズの拠点を建設中です。ですがお二人共、すぐにでも始めたいでしょう。時間を改めて、お互いの自己紹介をするとともに、ダンジョン・バスターズについて詳しくお話しさせていただきたく思います」


 連絡先を交換し、できるだけ早く場を設けると約束する。それ以外にも、何人かに名刺を渡した。元銀行員という人がいた。これも良い。経理業務全般を任せられるかも知れない。その話をすると、喜色を浮かべて頷いてくれた。どうやら冒険者であることには、それほど拘ってはいないようだ。先程のやる気の無い連中はどうしたか? 知らん。俺の記憶からとうに消えている。





 1月11日18時30分、首相官邸において春日官房長官が記者会見を行い、ダンジョンについての追加情報が公表された。ダンジョン・システムに組み込まれているという人格を持った「Legend Rareカード」の存在が発表されると、記者全員が実際に会って取材したいと思った。だが、地上でそのカードを顕現できるのはダンジョン討伐者のみであり、現在は江副和彦だけだと発表されると、同じく記者全員が落胆した。断られることが目に見えているからだ。


「残念ながら、この『DE』という項目については現在のところ解っていません。そして『大氾濫』の項目ですが、札幌ダンジョンでは現在は「Off」になっています。ダンジョン・コアについては、2週間後に陸上自衛隊研究班が第七層に潜り、より詳しく調べる予定です」


 質疑応答に入ると、殆どの記者が手を挙げた。「Legend Rareカード」「カード顕現能力」「大氾濫」についての質問が相次ぐ。


「画面に出現した老人にヒアリングはされたのでしょうか? また、人権の観点からカードの個人所有は認められるのでしょうか?」


〈出現した老人との面談およびLegend Rareカードの調査を行うべく、ダンジョン・バスターズに協力を要請しています〉


「地上でカードを使えるようになるということは、魔物を地上に呼び出せるということです。危険ではありませんか?」


〈現在、カード顕現化の能力は江副和彦氏しか持っておらず、もし地上に魔物が出てきたら、彼が真っ先に疑われます。そのような状況で、魔物を出して社会を混乱させるようなマネをするとは思えません〉


魔物大氾濫モンスタースタンピードが発生する可能性があるというだけで、各国は軍拡に動きかねません。自衛隊も防衛予算を増やされるのでしょうか?」


〈魔物大氾濫の有無に関わらず、自衛隊の増強は持続的に図っていきます。在日米軍の多くが撤退することが決まっており、我が国の安全保障環境は厳しさを増しています。自衛隊の増強が必要であることは、国民の理解が得られると考えています〉


 春日官房長官は、一つ一つの質問に粘り強く応答した。それをテレビで見ながら、俺は溜息をついた。取材お断りと言っているのに、山のようにメールが来ている。3月末まで待てないかもしれない。今すぐに、ダンジョン・バスターズの拠点が必要だろう。


「取り敢えず、机なんかの諸々を置いて、会議なんかもできる空間……倉庫か?」


 知り合いの不動産屋に相談すべく、俺はスマホを手にした。




※2019/08/10:感想より「ッス」の言葉遣いについてアドバイスを頂きましたので、修正しました。


 第2章は毎週「日曜日」「水曜日」「金曜日」の昼12時過ぎに投稿致します。7500文字を毎日書くのは難しく、週3話投稿でお許し下さいませ。


 評価や感想を下さった方、ブックマーク登録をして下さった方、全ての読者様に御礼申し上げます。ブックマークやご評価をいただけると、創作活動の励みになります。これからも頑張って書いていきます。

 頂いた感想はすべて拝読しております。本当にありがとうございます。


 今後も応援の程、何卒、宜しくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
お薬が売れないとダンジョンに潜らされてポーション取ってこさせられるわけか 大変だ(笑)
[気になる点] 正義なのか、義正が正しいのか? [一言] 固有名詞は間違えないようにしましょう
[気になる点] 金属探知機つかってまで携帯電話とか持ち込めないようにしていたはずなのに、スマホいじっている人が居るのはなんでだろう?
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