第030話:大氾濫の可能性
申し訳ありません。会議で遅れました。
「速報です。札幌大通公園に出現した通称、札幌ダンジョンですが、先程、民間人冒険者3名によって討伐されたとの情報が入りました。それにつきまして、本日18時30分より防衛省にて緊急の記者会見を開くとのことです」
小岩駅南口から昭和通りを進んだところにある昔ながらの洋菓子店「シエル」は、私たちのような女子高生にとってはケーキを食べながらお喋りするのにうってつけの店なのです。ストロベリーケーキ250円、ザッハトルテ300円、飲み物がつくケーキセットが500円と高校生のお小遣いの範囲で美味しい手作りケーキを食べることができます。500円なんて、ちょっと前までの私にとっては物凄く高く感じていたのに、ゴブリン一匹分と考えると、大した金額に感じなくなってしまいました。月のお小遣いをゴブリン100匹分、5万円も貰っているので友達とこうして遊ぶこともできるようになったのです。(ちなみに私のお給料ですが、高校生が持っていい金額じゃないからと、和さんは全額をお母さんに手渡ししてしまうのです!)
「茉莉、これって茉莉の伯父さんのことじゃない?」
「うん。札幌に行くって言っていたから、きっと和さんたちのことだと思う」
「世界初でしょ? 凄いじゃない! ダンジョン・バスターズに入りたいっていう男子たちが、また茉莉のところに押しかけるよ?」
そう。私の叔父(違うけど)が、ダンジョン・バスターズのリーダー「江副和彦」だということは、学校内で知られてしまっています。去年、ガラの悪い人たちに絡まれて和さんが助けてくれたときに、一緒にいたクラスメイトたちに「叔父」ということで話したら、翌日には噂になってしまったのです。男子生徒たちから紹介してくれと言われ、その場で和さんに電話したら「まず冒険者登録してこい」って返されて、男子たちはガッカリしていました。高校生は冒険者になれないんです。
「茉莉も、卒業したらダンジョン冒険者になるの?」
「どうかなぁ。お母さんは好きにしなさいって言ってるけど、和さん……叔父さんは、大学に行けって反対してる。大学で勉強しながらでも冒険者はできるからって」
「茉莉の場合、アイドルとかでも売れそうだもんね。あーん、二物も三物も与えるなんて、天は差別主義者だわ」
皆でキャッキャと騒ぐ。この後はカラオケだ。駅北口の「歌遊園」なら、学割適用でドリンクバー付き30分125円。こういう時間って良いなぁ。
1月4日18時30分過ぎ、防衛省内にある防衛記者会会見室において、石原ダンジョン冒険者運営局長による「ダンジョン討伐成功」を伝える記者会見が始まった。俺たちは食事をしながらワンセグでそれを観ていた。
「ウンマッ! ジンギスカンってこんなに美味いんだ!」
煉瓦館にある「ビアケラー 札幌開拓物語」で、北海道名物ジンギスカンを食べていた。最初に、盛り合わせ10人前を持ってきてもらう。ビアホールであるため、他のメニューも充実している。カニのサラダにアイスバイン、粗挽きソーセージも10本ほど注文した。無論、クラフトビールも忘れない。特製ジョッキで注文する。
札幌にはジンギスカンの名店が幾つかあるが、有名店の多くがカウンターしか無いため、VIPルームのあるこの店を選んだ。顔が知られているというよりも、テレビを見たいからだ。
「ちょっとムッチー、野菜も食べなよ。ソレは僕が置いた肉だ!」
「Eランクになったから、タンパク質が不足してるんだよぉ。早いもの勝ちってことで……」
「お前ら……足りなかったらもっと頼めばいいだろ。取り敢えず追加10人前だな」
二人はテレビよりも肉に集中している。睦夫は相変わらずの健啖家だ。このままだと来年には元に戻っているかも知れない。まぁダンジョンで絞れば問題ないだろう。俺も肉や野菜が盛られたジンギスカンプレートに箸を伸ばした。
〈……民間人ダンジョン冒険者の江副和彦氏、宍戸彰氏、田中睦夫氏の三人です。彼らは「ダンジョン・バスターズ」というチームを組み、調査目的で札幌ダンジョンに入りました。その際、冒険者運営局からは「討伐可能なら討伐してほしい」と依頼を受けています。そして本日午後、彼らは札幌ダンジョンの最下層、第七層に入り、ダンジョン・コアと呼ばれる物体と接触、ダンジョンの管理権限を得たとのことです〉
タブレットPCの端末をテーブルの端に置き、3人で視聴する。画面では石原局長が概要を説明している。だが詳しいところまでは話していない。例えばキャラクターカードなどは一切出てこない。あくまでも「討伐した」というだけだ。
〈討伐されたのが本日ということもあり、詳しい情報はまだ精査中の段階です。ですが多くの国民、そして世界中の人たちが関心を持っているであろう点について、この場でお伝えします〉
記者たちに配布された資料が捲られる。画面にも映像が写った。ダンジョン・コアの写真であった。
〈これは札幌ダンジョン第七層で発見された物体です。仮の名前として、ダンジョン・コアと呼んでいます。このダンジョン・コアに触れると、次のような画面が表示されました〉
記者たちのざわめきが大きくなる。世界で初めて、ダンジョンのステータス情報が公開されたからだ。
〈これによると、札幌ダンジョンは『No.103』という名称のようです。ランクはDとあります。以前より、出没する魔物の強さがダンジョン毎に違うと言われていました。ダンジョンに入った人間と同様、ダンジョン自体にもランクがあるのだと思われます。そして、問題はその下にある『大氾濫』という単語です。まだ情報精査中ですので明言はできませんが、魔物大氾濫発生説を裏付ける証拠と考えられます〉
「なるほど、まず危機感を持たせようというのか。情報精査期間中に、政府として今後の対応を考えるつもりだな」
画面の石原は、他の情報についてはまだ精査中で発表できる段階ではないこと。冒険者運営局は今後もダンジョン討伐に力を入れることなどを伝え、質疑応答に入った。だが殆どの質問に対しては「精査中」、「答えられない」としか応じていない。あまり良い答弁ではない。その中で、経産新聞社の記者の質問に石原が応じた。
〈現在、国際連合では「ダンジョン冒険者本部準備委員会」が設置されていますが、今回の情報も、国連、そして世界に共有されるつもりでしょうか?〉
〈当然、共有します。これは日本国単独の問題ではありません。ダンジョンは全世界に散らばっており、そのどれもが大氾濫の可能性を持っているのです。全世界が一丸となって、この危機に立ち向かうべきだと考えます〉
〈ですが、日本国は民間人冒険者制度に多額の税金を投入しています。そこから得られた成果を無償共有するというのは、国民の納得が得られるのでしょうか?〉
確かに短期的な視点で考えるなら、日本の「一方的な持ち出し」に見えるだろう。世界は何もせず、このまま日本だけが一方的に情報を取られて終わり……そう危惧する人がいても不思議ではない。何しろガメリカでは、ダンジョンの民間所有まで認める、などという話まで出ているらしい。そうなれば、情報共有は絶望的だろう。
〈……確かに、日本が一方的に情報を取られているように感じるかも知れません。ですがそれは、政府が世界に先駆けて、民間人冒険者の登用を始めたからです。各国はこれから導入が進むでしょうが、グローバルの枠組みを形成するうえで、我が国の経験と貢献が高く評価されるはずです。今回討伐に成功した「ダンジョン・バスターズ」は殆ど無償で、札幌ダンジョンを調査してくれました。そして、管理権限を無条件で日本国政府に移管すると明言しています。命を懸けてダンジョンに入った彼らでさえ、そう言ってくれているのです。人類の危機を前にして、近視眼的な自己利益に囚われるべきではないと考えます〉
「ヤバイね。兄貴、英雄にされちゃってるよ。この後すすきので遊ぶけど、どうする?」
「女の子侍らせて豪遊しているところなんてフォトシェアーに載せられたら、バスターズの評価はナイアガラになっちゃう?」
「……知るか。俺たちは戦いに疲れてるんだ。戦士が休息を求めて何が悪い? メシ喰い終わったらすすきの行くぞ。二晩連続豪遊だ!」
「兄貴、開き直ったね。ま、気にしても仕方ないか」
「IYH!」
画面では石原の会見がまだ続いている。それを切って、俺は肉に集中した。
〈……それで、クラブで豪遊してお持ち帰りまでしたってわけね? まったく、貴方たちは有名人なのよ? なに考えてるの?〉
「知るか。俺たちは冒険者だぞ? 芸能人のような人気商売じゃない。プロ野球選手のようにファンを大事にする必要もない。他人の目なんて気にするか」
翌日、札幌ダンジョンがある大通公園に設置された陸上自衛隊の施設内で、石原局長から嫌味を聞かされていた。「ジンギスカンを喰いながら記者会見を見ていた」と伝えたら一瞬、凄い表情を浮かべやがった。彰と睦夫が画面から消えている理由がわかる。
〈今後のことだけれど、陸上自衛隊の研究班などを加えたチームを用意するわ。ダンジョンの最深部への案内をお願い。人選や準備もあるから、2~3週間は掛かるわ。一旦、東京に戻って頂戴。今後について、貴方の意見も聞きたいわ〉
「他の民間人冒険者への影響は?」
〈現在、登録されている29名に連絡を取っているところよ。まだ返事がないのが数件あるけれど、返事があった人については問題ないわ。あらかじめ、大氾濫の可能性も考えていたみたい〉
「冒険者の目的は『魔石採取』だからな。それはそれで重要な仕事だ。発電所の方は?」
〈三葉日達パワーシステムズが、逆火を抑えて水素100%で発電可能な「水素専焼ガスタービン」の開発に成功しているわ。同時に筑波の試験結果を活かして、100万キロワット級の発電所を千葉県に建設予定よ。完成は今年の10月。タービンさえ完成させてしまえば、原発と違って短期間で建設可能で、しかも二酸化炭素も放射性廃棄物もゼロ。夢のエネルギーの完成まであと少しだわ〉
「それなんだがな。ダンジョンに潜っていたときにふと思いついたんだが、ダンジョンって放射性廃棄物の最終処分場として使えないか?」
〈……思い切った案ね。でもそれは私の権限を超えている。そうね。確かにダンジョン問題は、イチ部局の手に余り始めているわね〉
「そうだ。ガメリカでは国防総省内に冒険者運営局を設置するそうだが、俺はそれでは回らないと思う。日本政府は早急に『ダンジョン省』を設置して、ダンジョン回りの全権限を集約すべきだろう」
〈「約束の会談」は、いま日程調整中よ。そこで貴方自身が直談判して頂戴。もちろん、私も根回しはするけれど、例の人は官邸主導で決めるから、直接言うのが一番だわ〉
俺は頷いた。「行政の長」との直接対面の日程は、来週前半には決まるそうだ。画面を切って建物から出ると、凄い騒ぎになっていた。日本中からマスコミが押しかけてきたらしい。いや、隣国のウリィ共和国や大亜共産国の新聞記者もいるそうだ。大通公園のこの区画は自衛隊が封鎖しており、出入り口は一箇所しか無い。このままではマスコミにグルリと取り囲まれ、どうでも良い質問を延々とされることになる。
「……二人共、荷物は持っているな? 転移して逃げるぞ」
「江副氏ぃ、このあと『えびそば』食べに行くんじゃ……」
「ムッチー、それは新千歳でも食べられるよ。いや、空港も無理かな?」
俺たちは隠れるように建物内に入った。
東京に戻ってきてからも、俺のもとには取材依頼だの単独インタビュー申し込みだの、マスコミからの連絡が山ほど来た。ダンジョン・バスターズの広報担当を置かないと、とても対応しきれない。「組織が固まるまで取材等はすべてお断り」と載せて、あとは全部断っている。本社が完成するまであと2ヶ月と少しだ。それまでに人材も集めなければならない。バックスタッフ部門だけでも、IT担当、総務担当、広報担当、冒険者管理担当の4部門は必要だ。
更に製薬企業からはポーション供給を条件としたスポンサー契約の話まで来ている。ポーション1本が10万円、ハイ・ポーションが100万円、エクストラ・ポーションは5千万円を出すと言っている。こうした話を纏める法務部門も必要だ。とても俺一人では捌き切れない。
「大変なようね? 顔色が悪いわよ?」
札幌ダンジョンを討伐した翌週の1月11日、俺は市ヶ谷の防衛省内にいた。屋外の喫煙所で石原局長と一服している。現在の防衛大臣は愛煙家らしく、吹き曝しの屋外喫煙所では省員が可哀想だと屋根を設けたらしい。まぁこれくらいの税金使用は認めるべきだろう。フゥと煙を吐き出して頷いた。
「ダンジョン・バスターズへの問い合わせが多すぎる。いや、冒険者からの問い合わせならまだいい。防衛省からの質問にも答える。だが大半がマスコミや一市民からの取材依頼、激励、そして抗議なんだ。相手にしていたら何もできん」
「抗議? どんな抗議なの?」
「曰く、ダンジョン・バスターズは弱い動物を不当に虐殺し、資源を乱獲している。曰く、ダンジョン・バスターズは破滅的な妄想を流布し、社会を混乱させようとしている……こんなところさ」
「貴方のところにまで来ていたの。呆れたわね……」
「ってことは、ソッチもか?」
「まぁね。もちろん、激励や賛同の声も多いのよ? でも数的には賛否両論ってところね。世界に先駆けて民間人冒険者制度を導入し、少なからず成果を出している。国防総省や欧州防衛機関からも正式に協力依頼が来たわ。この数日で内閣支持率は5%の上昇。『NO!浦部』って人たちにとっては、面白くないでしょうね」
「政治には関わりたくない。俺には右も左も無い。浦部内閣の対ダンジョン政策が一番マトモに思えるから、冒険者運営局に協力しているだけだ。もしダンジョン討伐禁止法なんて出たら、俺は即座にNO!浦部になるぞ」
「その点は大丈夫よ。総理は『現実的保守主義者』よ。恐らく常会冒頭の施政方針演説では、ダンジョン討伐を基本政策の柱にするはずだわ。さぁ、もう行きましょう。そろそろ皆、集まっている頃だわ」
俺たちはタバコを消して、庁舎内へと戻った。ダンジョン・バスターズ以外の29名の民間人冒険者たちに、俺たちが見たものを説明するためだ。
私の名は「日下部凛子」、清心女学館大学薙刀部の主将であり、日下部流古武術の師範代だ。私は現在、共に民間人冒険者の免許を取得した道場の子弟3人と一緒に、市ヶ谷にある防衛省内の会議室にいる。昨年末のブートキャンプに参加した私たち4人は、出現したウサギ型魔物を次々と屠り、その場で冒険者の免許を取得した。教官が言うには、これほど積極的に戦ったのは、バスターズの江副氏、宍戸氏だけだとのことだ。
ダンジョン・バスターズ
世界初の民間人ダンジョン冒険者にして、世界初のダンジョン討伐者、そして世界最強の冒険者パーティーだ。私が冒険者試験を受ける気になったきっかけでもある。彼らが行なった「ブートキャンプ」の動画を見た時、私の心は震えた。肥えた中年男性が瞬く間に痩せていき、逞しい肉体が出来上がっていく。道場で行う「身体造り」とは比較にならない。
何より、魔物を屠る二人の動きが人間のモノではなかった。特に江副氏がスコップを振った場面を見て、私は鳥肌が立った。片手で振っていたのだが、その速度は人間の限界を超えている。プロ野球選手のスラッガーは、150キロほどのヘッドスピードでバットを振るそうだが、江副氏のスコップは、時速200キロは出ていただろう。それも片手でだ。
「師範! 古流武術は、ただの見世物ではない。魔物と戦い、その力を示すべきです」
私は父に対して詰めよった。動画を見た父も思うところがあったのか、好きにせよと許してくれたので、道場内でも指折りの強者3人を連れて、私はブートキャンプに参加し、冒険者となった。年が明け、これから横浜ダンジョンに入るのだと気負っていた矢先に、札幌ダンジョン討伐の報せと、全冒険者への招集が掛けられた。どうやらダンジョンについて何か解ったらしい。私は「討伐」にはあまり興味がないが、国からの招集とあれば参加しないわけにもいかない。そして私は、きっかけとなった男たちに出会った。
昨年12月から始まったダンジョン・ブートキャンプで、冒険者促成コースを卒業した29名の冒険者たちが一堂に集まっている。会議室に入る前に、携帯電話を預けなければならない。また他の電子機器も持っていないか、金属探知機で入念に確認される。防衛省内は情報セキュリティに厳しく、建物入り口と会議室とでダブルチェックを受けた。
ようやく確認が終わり、俺、彰、睦夫の三人が部屋に入った瞬間、29人の視線が一斉に集まる。
「中々、壮観だな」
「へぇ……結構、強い人もいるじゃん」
「彩波系無口キャラとか、合法ロリとかはいなそうだね」
注目の中、空いていた椅子に座ろうとすると、女が歩み寄ってきた。後ろには男三人が従っている。背中まである黒髪を後ろで束ね、化粧は全くしていない。それでいて、自然に美しいのか10代にも見える凛とした美人だ。
「江副和彦氏ですね? 私は日下部凛子、日下部流古武術の師範代で、昨年末にダンジョン冒険者になりました。後ろの三人は、我が道場でも指折りの強者たちです。世界最強冒険者である貴方にお会いできて、光栄です」
フム、古武術と言われてもド素人の俺には全く判らん。彰が面白そうに笑みを浮かべているし、睦夫はブツブツとなにか呟いている。
(異世界モノのお決まり、凛系女騎士キャラだよ。きっと、オークに捕まってクッコロって……)
うん、聞かなかったことにしよう。俺は意識を目の前の女性に戻した。
「冒険者パーティー『ダンジョン・バスターズ』の江副和彦です。メンバーは、宍戸彰と田中睦夫です。こちらこそ他の冒険者に会うことができて嬉しく思いますが、一点だけ訂正を。私は世界最強ではありません。札幌ダンジョンで、宍戸に抜かされました。武術とは縁のない生活を送ってきた、普通の中年男です」
「御冗談を……いえ、そうなのかも知れませんが、それでも私たちよりずっと強いでしょう? 私など、未だにEランクですから……」
「それは経験の違いだけです。すぐにDランク、Cランクになるでしょう」
「そうなることを願っています。ではまた……」
ダンジョン冒険者運営局の石原局長や課長たちが入ってきたため、日下部という女性は自分の席に戻った。俺たちも椅子に座る。石原は会議室内を見渡して一礼した。
「皆さん、新年早々にお集まりいただき、ありがとうございます。私は防衛省ダンジョン冒険者運営局長の石原由紀恵と申します。どうぞ、宜しくお願いします。さて、本日こうしてお集まりいただいたのは、ダンジョンについての新情報の共有と、冒険者の皆様へのお願いがあってのことです。内容の性質上、電話やメールでお伝えするわけにはいかないため、こうしてご足労を頂きました。交通費につきましては、後ほど精算させていただきます」
まず石原は、ダンジョン冒険者運営局の各課長を紹介した。冒険者運営局は「ダンジョン政策課」「国際政策課」「人事管理課」「運用調整課」「研究政策課」の5つがある。ダンジョン政策課は、対ダンジョン政策および民間人冒険者制度の運営について企画設計などを行う部署だ。
国際政策課は、各国とのダンジョン情報についての共有や国連の冒険者本部準備委員会への人員派遣などを行なっている。人事管理課は、ダンジョン・ブートキャンプの受付や、民間人冒険者の管理を行なっている。
運用調整課は、局内では最も大きな部署で、防衛省内部部局内での調整を行い、出現したダンジョンを管理するための設備建設や自衛隊員配置などを担当している。課員の多くが、整備計画局や地方協力局から派遣されている。
研究政策課は、魔石や魔物カード、ガチャで得たカードの研究について、その計画を企画する部署だ。実際の研究は、防衛省の下部組織である「防衛装備庁」に新設された「ダンジョン装備研究所」で行われている。
「さて、皆様も既にご存知のことと思いますが……」
課長の紹介を終えた石原が前置きを置いて、そして断言した。
「このままでは、人類は遠からず滅びます。それを食い止められるのは、皆様たちダンジョン冒険者だけです」
ピリッとした緊張感が、会議室内に漂っていた。
第2章は毎週「日曜日」「水曜日」「金曜日」の昼12時過ぎに投稿致します。7500文字を毎日書くのは難しく、週3話投稿でお許し下さいませ。
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