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第029話:初討伐

 1月4日の仕事初めと聞くと、民間企業では「休み明けのリハビリ」のような空気もあると聞く。だが霞が関にはそんな余裕は無い。特に、防衛省は正月返上でピリピリした空気が漂っていた。年明け早々に、ガメリカの暴言王が「日米安保を見直す」とかSNSで書き込んだせいで、防衛政策局はテンテコマイの状態だ。外務省もかなり混乱しているだろう。東アジアからガメリカの影響力が無くなれば、間違いなく大亜共産国が東シナ海に進出してくる。ダンジョン対策も重要だが、魔物は外には出てこない。大亜共産国や大姜王国のような「目に見える脅威」を優先させるのは当然だろう。


「本当に困ったわね。ただでさえ、自衛隊は人手不足だというのに、西部方面隊に人手を回さないといけないわ。かと言って、ルーシー連邦にも備えないといけない。こんな中で、さらにダンジョンが次々と出現してくる。人員確保が急務ね。いっそ、民間にアウトソースしたいくらいだわ」


 思わず愚痴を言ってしまう。昨年に設立されたばかりの「冒険者運営局」には、次長が存在しない。前身である「ダンジョン特別対策課」は、整備計画局、人事教育局、地方協力局からそれぞれ人員を集めた横串型の組織だった。ダンジョンが出現したら、周辺環境の整備や施設の管理が必要になるし、自衛隊を置く場合の給与も、ダンジョン時間を考慮する必要がある。ダンジョンに充てる陸上自衛隊員は、通常の扱いをするわけにはいかない。彼らは異世界の時間軸で、異世界の敵と戦っているからだ。

設立時のこうした背景から、冒険者運営局もまた、内部部局内の調整が主な仕事となっている。


「石原局長、休みの間に随分と若返ったねぇ」


 西田健一防衛事務次官以下集まった局長級会議では、私一人が浮いている。他は全員、60代にさえ見える初老男たちばかりだ。その中で、私だけアラサー(20代後半よ!)なのだ。次官の言葉は、ともするとセクハラになりかねないが、悪気があって言っているわけではないため、許せてしまう。


「恐れ入ります、西田次官。年始に横浜ダンジョンの視察を致しました。その際に、私自身がブートキャンプを体験する必要があると思い、参加した次第です」


「うんうん。正月三が日だっていうのに、ご苦労さまだったねぇ。でもそれだけ若返るのならば、今度、僕も参加してみようかなぁ。カミさんと一緒に……」


 西田健一は、昨年に事務次官に就任した。官公庁の慣例では事務次官の任期は1年、長くて2年であるが、ダンジョン群発現象に対応するためにも、防衛事務次官の交代が見送られた。かつて「防衛省の天皇」と呼ばれ、4年間に渡って事務次官の椅子に座った「森山勝」以来の長期在官になるかもしれない。もっとも、タイプはまるで異なるが……


「ご希望でしたら、いつでも手配致します」


「有難うね。カミさんに相談してみるよ。ところで、例のバスターズさんたち、札幌にいるんだって? どんな様子?」


「彼らには、ダンジョンの調査、そして可能ならば『討伐』を依頼しています。現在、彼ら以上の対ダンジョンスペシャリストはいません。何かしらの成果を持ち帰るかと思います」


 不祥事の責任を押し付けてライバルを蹴落として出世した「森山勝」とは違い、西田は周囲、特に元部下たちから望まれて事務次官に就いた。気さくで偉ぶらず、口が固いうえに聞き上手であるため、今でも課長級が次長や局長を飛び越えて相談することがあるらしい。


「今年は色々と大変になると思うけれど、何かあったら相談に来てね。皆もそうだよ。ハワードさんが困ったこと言っちゃったせいで、忙しくなるとは思うけれど、こんな時こそお互いに協力し合わないとね。他省への根回しとか説得とか、僕にできることがあったら、遠慮なく声掛けてね」


 それが事実上の、会議開始の挨拶だった。防衛大臣の年頭挨拶は、土日を挟んで来週の月曜日になる。だがその前に、官僚たちが地均しをしておく必要があるのだ。現時点の不安要素や発生しうるであろう課題について、各局長が報告していく。会議は午前中いっぱいまで続いた。

 会議から戻ると早速、秘書官から報告を受けた。


「局長。午前中ですが、民間人冒険者の江副和彦氏から報告があると連絡が入りました。会議中と伝えたところ、地上にいるから戻ったら連絡が欲しいとのことです」


「地上に? 討伐が終わったのかしら?」


 だとすると予想以上に早い。私は期待半分、疑問半分で執務椅子に座り、パソコンを立ち上げた。





「結論から言うと、札幌を含めダンジョンは潰さないほうが良い。少なくとも現時点ではな……」


画面の男は、開口一番にそう言い切った。私がこの男を評価する点の一つは、無駄な報告がないことだ。「重大な発見」だの「思いがけないことが起きた」だの余計な修飾語がなく、こちらが関心のある点について、結論を端的に報告してくる。後は、私が納得するまでその理由を聞けば良い。

 画面には、江副の顔以外にデジタル写真が映し出される。どこかのレリーフだろうか。


「ダンジョン最下層の天井にあったレリーフだ。これが何を意味しているのかは解らん。だが、他のダンジョンも同じ様に、最下層にレリーフがあるのか確認する必要がある」


「そうね。これまでダンジョン内ではこうした『文明の形跡』は発見されていないわ。最下層にあるということは、何か意味がありそうね。貴方のパートナー(・・・・・)二人の意見は?」


 聞きたいのはダンジョン・システムに組み込まれている存在で、江副にダンジョンについて説明したという二人の女性の意見だ。パートナーという言い方をすれば、この男なら判るはずだ。


「かつて見ている。非常に重要なはずだ。だがなぜ重要かは解らない。そう言っていた」


 こちらの意図を正確に汲み取り、返してくれた。今の言葉だけで十分だ。重要なレリーフが存在する。討伐したとしても消すべきではないだろう。


「討伐はお願いするわ。でも、消去ではなくオーナー権の確保でお願い」


 彼は頷き、画面を切った。さて、これから局内の会議がある。戻ってくる頃には、討伐の報せを聞けるだろう。立ち上がり、課長たちが待つ会議室へと向かった。





「この扉の向こう側に、ガーディアンがいます。それを倒せば、ダンジョン・コアが出現します。そのコアに最初に触れた人間が、ダンジョンを消すか、管理権限を持つかを選択することができます」


主人(マスター)、気をつけてね。ガーディアンは一体とは限らないし、そもそもこの世界のダンジョンは、私たちの知識から逸脱しているところがあるわ。何があるか分からないわよ?」


「大丈夫だ。いざとなったら、カメラが回っていようとお前たちを召喚する。彰、睦夫、準備は良いな?」


「オッケ!」


「いいよー」


 朱音とエミリをカードに戻し、カメラの電源を入れる。すべての準備が整ったことを口に出して確認し、俺は扉の柄を掴んだ。第一層と同じ様に、扉が左右に開いていく。薄暗い部屋の中に踏み込むと、背後の扉が閉じた。明かりが広がると、戦斧(バトルアックス)に手をかけて青い肌をした牛のような顔をした巨体の魔物が鎮座していた。


「兄貴…… あれ、ホントにCランクなの?」


「あ、あの姿って…… ミ、ミノタウロスじゃないかな。僕が描いた同人誌のキャラにソックリだよ」


「武器を変える。彗星・斬鉄剣……睦夫は扉ギリギリまで下がって録画しろ。彰、いくぞ!」


「ゴアァァァッ!」


 一歩踏み出すと、青い魔物が咆哮して、立ち上がった。3メートル近くある巨獣の咆哮で、空気がビリビリと震える。彰の口元に笑みが浮かんだ。恐らく俺も、嗤っているだろう。駆け出した俺たちを薙ぐように、左腕一本で、戦斧を振ってきた。掻い潜るようにそれを躱すと、再び斧が戻ってくる。


「武器を斬り飛ばす!」


 斬鉄剣で斧を斬ろうと迎え撃つ。だがギインッという金属音が響き、踏ん張った脚がズルズルと床を滑る。左腕一本だけで、俺の両腕以上の力だった。だが武器を止めた隙、彰がミノタウロスの懐に入った。両腕を腰に構えて、シィッと気を吐くと跳躍する。


「神明館奥義、正中線六連撃!」


 眉間、鼻面、喉笛、鳩尾、丹田、股間と人体の中央にある急所6箇所に、ほぼ同時に正拳突きを打ち込む。だが打ち終えた瞬間、彰の身体が吹き飛ばされた。右拳の裏拳を喰らったのだ。10メートル近く吹き飛び、床に倒れる。


「宍戸氏ぃっ!」


 睦夫が叫ぶと、彰は跳ね起きた。口内を切ったのか、口端から血が滴っている。


「大丈夫、なんとか肩でガードしたから。でも僕の奥義を受けてダメージ無しなんて、自信なくすな」


「いや、そうでもなさそうだぞ?」


 表情からは判らないが、動きが鈍っているように感じる。その証拠に、左手に持った戦斧を振り回していない。俺は再び、斬鉄剣を構えてミノタウロスの前に立った。彰もフラフラと立ち上がる。


「兄貴、姉御たちを……」


「いや、俺が倒す。コイツ程度を倒せなければ、先に進めないからな」


 ギリギリと歯を噛み締めた。自分でも興奮しているのが判る。コイツは恐らくCランクだ。ただ、俺たちとは違いBに近いCランクなのだろう。だから斬鉄剣と同等のSR武器を使っている。ここで苦戦するようでは、BどころかCランクのダンジョンすら討伐できない。俺は腹を括った。無傷(・・)では倒せないと。


「ゴォォォッ!」


 ミノタウロスが両手で戦斧を掴み、振り上げた。俺は構うこと無く、真っ直ぐに駆ける。(まさかり)が一気に振り下ろされた。だが俺は止まらない。ギリギリのところを躱す。左肩に焼けるような熱を感じた。だが斧を振り下ろしたミノタウロスは、前屈みになっている。最大の好機だ。


「オァァァァッ!」


 斬鉄剣を両手で掴んだ。そしてミノタウロスの頭部目掛けて真っ直ぐに下ろす。刀身が額に食い込み、そして鼻、喉、胴体へと入っていく。


「アァァァッ!」


 股まで真っ二つに斬り裂いた。ミノタウロスは最後まで俺を見つめていた。煙の中で、俺は深く息を吐いた。なんとか乗り越えたが、まだまだ先は長い。戻ったらすぐに、深淵でBランクを目指そう。


「ムッチー! エクストラ・ポーションッ!」


「江副氏ぃっ! 無茶しすぎだよぉっ!」


 二人が駆け寄ってくる。俺は肩で息をしていた。何を慌てているのだ? Rareポーションを使うほどに酷い傷は負っていないはずだが…… そして俺は気づいた。両手で持っていると思っていた斬鉄剣だが、右手しか見えない。顔を左に向けると、左肩から先が無かった。ドクドクと血が噴き出している。ようやく俺は、痛みに気づいた。





 斬り飛ばされた腕を傷口に当てて、そこにエクストラ・ポーションを掛ける。言葉にすると簡単だが、その痛みは想像を絶する。傷口が再生する間、およそ数分間に渡って激痛が続く。


「兄貴、耐えてくれよ……」


 猿ぐつわを噛み、床に仰向けに寝た俺は、額に脂汗を浮かべ目を怒らせて頷いた。エクストラ・ポーションが傷口に掛けられると、まるで麻酔なしに歯をドリルで削るような痛みに耐える。


「フグンンンッ!!」


激痛で暴れようとする俺の両肩を彰が押さえ、睦夫がポーションを掛け続ける。痛みに暴れながら思った。冒険者事務局に根回しして、早急に麻酔薬を手に入れよう。

永遠とも思える数分が過ぎ、ようやく痛みが薄れてくる。彰を退けて、猿ぐつわを外す。まだ痛みは残っているが、耐えられないほどではない。フラつきながら立ち上がる。すると彰に胸ぐらを掴まれた。


「兄貴、無茶しすぎだぜ? 僕やムッチーの代わりは他にもいるけど、兄貴の代わりはいないんだ。二度と、こんな無茶しないでくれ」


「……スマン」


「江副氏! 宍戸氏! 見てっ」


 睦夫が指差す方向に俺たちは顔を向けた。部屋の中央に、正八面体の黒い物体が浮かんでいる。まるで何かの結晶のようであった。


「きっと、コレがダンジョン・コアだよ! やったよ! 討伐成功だ!」


 睦夫が興奮して叫ぶ。俺たち三人は、ゆっくりと横に回転するダンジョン・コアの前に立った。


「じゃぁ、いいな?」


 二人が頷くのを確認し、俺はダンジョン・コアに触れた。目の前に、ステータス画面のような黒いウィンドウが広がった。





=============

ダンジョンNo.103

ランク:D

所有者:なし

階層数:007

供給DE:717

出現物:魔晶石

大氾濫:On


〈管理権限を取得しますか? Y/N〉

〈当ダンジョンを消去しますか? Y/N〉

=============


「いろいろと疑問があるが、まずやるべきは管理権限だろう。当然、YESだ」


 「Y」を押すと、ダンジョン内に声が響いた。彰や睦夫もキョロキョロしていることから、俺以外にもきこえているらしい。


〈ダンジョンNo.103が討伐されました。討伐者「江副和彦」が管理権限を取得します。ダンジョン討伐者専用の能力「カード顕現化」を取得します。また、第一討伐者(ファーストバスター)特典として、キャラクターカード「拳皇 劉峰光」が贈呈されます〉


 そして、目の前に3枚目のLegend Rareカードが浮かび上がった。それを手にして、裏を見る。



==================

【名 前】 (リュウ)峰光(フォングァン)

【称 号】 拳皇

【ランク】 F

【レア度】 Legend Rare

【スキル】 徒手格闘術Lv1

      武器格闘術Lv1

      子弟育成Lv1

==================


「あらゆる格闘術を極めた武の化身。若かりし頃は、戦いの高揚に身を委ねていたが、後に後進育成に力を入れるようになった。年齢……103歳? ジジイじゃねぇかよ!」


「フォッフォッフォッ……誰がジジイじゃ?」


 キャラクターカードが輝き、やがて一人の老人の姿へと変わっていった。彰よりも更に大きい。身長は2メートル近くあり、100歳を超えた老人とは思えないほどに逞しい肉体をしている。


「儂の名は(リュウ)峰光(フォングァン)、確かにジジイじゃが、ヌシのような童に侮られるほど、落ちぶれてはおらぬぞ?」


 そう言って、俺に手を伸ばそうとしてくる。Legend Rareといっても、今はまだFランクだ。俺に手を出そうものなら封印してやる。そう思っていたら、間に彰が入ってリュウが伸ばした手を回し受けで弾いた。


「兄貴、謝ったほうが良い。コイツはヤバイよ」


「……そうか。いや、失礼した。この通り、お詫びする」


 こと戦いにおいては、彰は俺よりも遥かに専門家だ。その彰が真剣な表情になっている。目の前の老人が只者ではないということだろう。門外漢の俺は、その判断に従うべきだ。俺は姿勢を正して頭を下げた。


「フム……なるほど。己をよく知り、部下を信頼する。過ちがあればすぐに正す。良き(おさ)じゃな。謝罪を受け入れよう。ヌシ等も名乗るが良い」


「俺の名は江副和彦、Cランクのダンジョン冒険者だ」


「僕は宍戸彰、同じくCランクの冒険者にして、格闘家だよ」


「た、田中睦夫です。Eランクだけど、冒険者というよりIT管理者かな」


 リュウは俺たち一人ずつを観察し、そして彰に目を止めた。


「Cランクともなれば、それなりに身体はできている。じゃが『術』は違う。儂の見たところ、戦う(すべ)を知る者はヌシぐらいじゃのぉ」


 どうやら彰は、目の前の老人に何かしらの衝撃を受けたらしく、直立不動で姿勢を正している。だが話を続けるわけにはいかない。まだやることが残っているのだ。


「拳皇 劉峰光よ。悪いがまだ、このダンジョンの討伐が終わっていない。詳しい話は後にするとして、カードに戻ってもらえないか? もし、俺を『主人(マスター)』とすることを受け入れるならだが……」


「儂は誰にも仕えぬ。誰も主君と仰がぬ。じゃが、手は貸してやろう。儂の力が必要なときに呼ぶが良い」


 そう言って、劉峰光はカードへと戻った。フゥと息を吐き、二人に顔を向ける。


「討伐を終わらせるぞ。『大氾濫(スタンピード)』をオフにする」





『討伐を終わらせるぞ。大氾濫(スタンピード)をオフにする』


 画面の男はそう言って、再びダンジョン・コアの操作を始めた。管理権限を得た男は「大氾濫」という項目を指で押す。すると画面が切り替わり、大氾濫までの時間が表示された。「454億4294万4千秒」で固定されている。


「これは、どういうことかしら?」


 動画を止めて顔を上げた私は、画面に映っている男に話しかけた。江副和彦は肩を竦めて返答する。


魔物大氾濫モンスタースタンピードまでの残り時間だろ。1年が3155万7600秒だ。計算すると1440年で止まっている。ダンジョン時間の1440年、つまり10年だ」


「止まっている理由は……まだダンジョンが全て出現していないからね?」


「間違いないだろうな。どうだ? これは、魔物大氾濫モンスタースタンピードが起きるという証拠にならないか?」


「可能性を示唆するには十分な証拠ね。でも、札幌ダンジョンだけで判断はできないわ。他のダンジョンも調べてみないと……」


「だろうな。それにキャラクターカードの存在もこれで知られることになる。動画公開の仕方は考えないとマズイな」


「ダンジョン討伐者は、ダンジョン内で得たカードを地上でも顕現させることができる。下手したらテロに使われかねないわね。正直、イチ部局の手に余る問題よ。西田事務次官とも相談し、政府の判断を仰ぐ必要があるわ」


「中東あたりの過激な連中が喜びそうな能力だからな。いずれにしても、ダンジョン討伐は成功だ。あとは局長に任せるよ」


 私は溜息をついて肩を落とした。まったく、目の前の男は気楽でいい。年始早々から重大な問題を次々に持ち込まれたコッチの身にもなってほしい。


「まったく。次から次と問題が発生するわね。今更ながら、ダン対課長に手を挙げたのを後悔しているわ」


「聞かなかったことにするよ。アンタがいなければ、俺たちは札幌に潜ることすらできなかっただろう。強い冒険者以上に、それを管理する事務方のほうが重要な存在だ。今度、インタビューでもそう言ってやる」


「嬉しいわね、アリガト。取り敢えず、依頼は達成したのだし、今日はゆっくり休んで頂戴。詳しい話は、東京に戻ってからにしましょう。じゃぁ、お疲れ様」


 画面を切った私は、椅子の背もたれに寄り掛かり、天井を見上げて深く息を吐いた。江副和彦の話は正しかった。このままいけば、魔物大氾濫によって人類は滅びる。それを止めるためには、一つずつダンジョンを潰していくしか無い。


「これが神の御業だというのなら、その神はきっと邪神ね。人様の世界に対して、なんてことしてくれるのかしら……」


 いずれにしても動画を全て確認し、報告用に纏めなければならない。だが仕事を始めるには気分転換が必要だ。防衛省内にあった76箇所の屋内喫煙室は、すべて廃止されてしまい、屋外12箇所のみが残されている。面倒だが仕方がない。机の引き出しから、細巻きのタバコを取り出した。


 第2章は毎週「日曜日」「水曜日」「金曜日」の昼12時過ぎに投稿致します。7500文字を毎日書くのは難しく、週3話投稿でお許し下さいませ。


 評価や感想を下さった方、ブックマーク登録をして下さった方、全ての読者様に御礼申し上げます。ブックマークやご評価をいただけると、創作活動の励みになります。これからも頑張って書いていきます。

 頂いた感想はすべて拝読しております。本当にありがとうございます。


 今後も応援の程、何卒、宜しくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
地上の10年はダンジョン内では1440年ですか 鎌倉幕府ができてから現在までの時間より長い 真面目にダンジョン攻略を続けていればタイムアップの心配はなさそう
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