第028話:浦部誠一郎という男
話は少しだけ遡る。日本国第98代内閣総理大臣の浦部誠一郎の年末年始は、ゆっくりすると言っても結局は、なんらかの仕事が入る。1月2日は茅ヶ崎のゴルフ場で経団連会長らとゴルフを共にし、報道各社のインタビューに応じた後、静養先である六本木のホテルに入って年始の挨拶を行なっている。翌日の1月3日は完全なオフで、夫人と共にホテル周辺を散歩したり、ホテルの部屋で読書をしたりして過ごしている。これが「首相動静」の全てだ。常に報道記者たちに囲まれ、分単位で動静が伝えられるため、総理大臣にプライバシーは無い。
だが実際は、空白の時間がある。午前中にホテル周辺を散歩し、昼前に部屋に戻ってから富ヶ谷の自宅に向けてホテルを発つまでのおよそ5時間。首相動静には昼食としか書かれていないが浦部はその間に、ある人物と会っていた。ホテル周辺を散策し、記者たちがゾロゾロと付き添っている間に、首相が泊まっているプレジデンシャル・スイートに入った女性がいた。無論、これは秘書官を通じて既に根回し済みのことである。
「防衛省ダンジョン冒険者運営局長、石原由紀恵です。お休みのところ、お時間を頂きまして誠にありがとうございます」
290平米あるスイートルームには、来客用のミーティング・ルームまである。その部屋で待っていたのは、冒険者運営局長の石原であった。年末に江副の話を聞いた石原は、その翌日には総理秘書官に連絡を取り、緊急かつ極秘の情報があると伝えた。ダンジョンに関わることだと聞いた浦部はすぐに決断し、空白の時間を作ったのだ。
総理大臣にオフを割かせてまで伝える情報である。これで陳腐な情報と思われたら、自分の首など簡単に飛ぶだろう。石原は緊張しながら席についた。浦部はチノパンに黒いタートルネックというラフな格好で椅子に座る。柔和な表情だが目は笑っていない。
「防衛省としては初の女性、そして霞が関では初の40代の局長。噂は聞いています。ダンジョン群発現象という危機には、貴方のような若い力が必要でしょう。それで、私に話とは?」
「これからお話しすることは、なんの証拠も無いお話です。ですが私がこの目で見たこと、聞いたことをありのままにお話しします。そのうえで、総理にご判断を頂きたいのです」
浦部は黙って頷き、アラサーにしか見えない女性局長の話を聞き始めた。
「魔物大氾濫……ですか」
「江副和彦氏はこの事実を知ったからこそ、民間人冒険者になりダンジョン・バスターズを立ち上げたと言っています。同時に、これまで隠してきたのは事の重大性からだとも……」
「その是非についてですが、話を聞く限り、少なくとも彼には『脱税』の罪はありそうです。内閣総理大臣として、またイチ日本国民として、犯罪行為に目を瞑るというわけにはいきませんね」
「ですが総理!」
浦部は手を挙げ、石原を止めた。
「私も、貴女も、聞かなかったのです。ダンジョンには案内されたが、何をドロップするかは説明を受けなかった。だから『黒い石』が出るものと思い込んでいたのです」
「浦部総理、貴方は……」
「そのうえで、江戸川区のダンジョンは討伐され、魔石を生み出す普通のダンジョンに変わる。発見したのは偶然、江戸川区に住んでいた江副氏で、住宅街だったから混乱が起きないよう、極秘に討伐した。魔物大氾濫を食い止め終わった後、あるいは彼でなくても止められるという目処が立ったとき、彼の犯罪行為は露見し、法の裁きを受ける……」
石原は目を剥いた。憲政史上最長の任期と期待される浦部誠一郎は、粘り強いリーダーシップと物腰の柔らかさ、クリーンさから保守系から無党派層まで、50%前後の安定した支持率を得ている。だが、ただ誠実でクリーンなだけの人間が、一国の総理になどなれるはずがない。清濁を併せ飲む、ある種のずる賢さ、腹黒さが無ければ、権力者にはなれないのだ。
「利用するだけ利用して、捨てるおつもりですか?」
「貴女の話を聞く限り、彼もそれを覚悟していると思いますよ? それに脱税の時効は7年です。それまでに彼がどれだけ活躍し、どれだけ人類に貢献するか。それによって、彼のその後も決まるでしょう」
「彼は決して、私利私欲で行動しているわけでは……」
「私の手元にあるのは、貴女から聞いた『彼の像』です。私が直接会ったわけではありません。また直接会ったとしても、完全には信用できません。石原局長、私は1億2千万人の国民に対して責任を負っているのです。これほど重大なことを、そう簡単に信じるわけにはいきません」
石原は数瞬沈黙して頷いた。確かに自分が総理の立場なら、やはり信じないだろう。こんな話を安易に信じるような「花畑脳」ではこの先困る。
「江副氏は、江戸川区鹿骨町にあるダンジョンに、総理をお招きしたいと言っています。ダンジョンですので、地上の30秒が72分になります。ダンジョン・システムに組み込まれているというキャラクター・カードから話を聞けば、総理もご納得頂けるでしょうか」
「常会前ですが、それくらいなら取れるでしょう。極端な話、官邸に招いてそこから……『転移』ですか? それを使っても良いと思います。もっとも、招く理由が必要ですが」
「ダンジョン・バスターズは明日、札幌ダンジョンを調査します。札幌は魔物が弱く、彼らなら討伐が可能かもしれません。もし、ダンジョン・バスターズが札幌ダンジョンを討伐したら、あるいは最下層でなんらかの証拠を見つけたら、いかがでしょうか」
「理由としては十分ですね。首相官邸に呼んで表彰し、そのうえで江副氏から『ダンジョンについて重大な話がある』と言われたら、人払いをせざるを得ないでしょう。さらに、納得のいく証拠が出れば、魔物大氾濫の可能性を政府として認めます。断定してしまったら、それこそ大混乱になるでしょうからね」
「わかりました。彼には明日、札幌ダンジョン討伐の依頼を出します。本日はお時間をお取らせし、申し訳ありませんでした」
取り敢えずは「会う」という言質を取ったのだ。これ以上は無理だろう。石原は引き時と判断し、話を切り上げた。浦部は夫人と共に食事へと出る。記者たちが離れると、石原は別のドアから外に出た。
札幌ダンジョンの第5層で、俺たちはついにDランク魔物と接触した。高さ50センチ、幅1メートル程度で、スカイブルーのプルプルした物体がズリズリと寄ってくる。青い半透明な身体には、15センチほどの大きさの丸い玉が浮かんでいた。
「スライムだね。どれ……」
彰は第二層と同じく、サッカーボールのように蹴り上げた。だがプルプルの身体にめり込んだ脚が弾き返される。
「うおっ!」
弾かれた衝撃を流すため、慌てて後ろに飛び退く。スライムはプルンッと元に戻った。どうやらスライムは物理もしくは打撃耐性を持っているらしい。だがいくら耐性があると言っても、完全無効化などできるはずがない。耐性を上回る破壊力で叩き潰す。俺はスコップを手にして前に出ようとした。
「兄貴、コレを試させてもらうよ」
だがその前に、彰が腰からカードを取り出した。Un Commonカードの「鋼鉄槍」である。ド素人の俺ではロクに使い熟せなかったが、彰は使い方を知っているらしく、万一のために渡しておいたカードだ。ポンッと顕現した槍を掴むと、頭上でグルグルと回し、そして両手で構えた。
「ハッ!」
腕が動いたと思った時には、槍はスライムに突き刺さっていた。槍先にはスライムの内部に見えていた球体が突き刺さっている。
「高校生の時、大亜共産国に短期留学していた時に教えてもらった槍術さ。久々に使ったけど、忘れてなかったみたいだね」
彰は事もなげにそう言うが、10年以上も使っていなかった技をアッサリと実戦投入するなど、常人では無理だろう。
「やはり彰は天才だな。同じCランクになったら、俺よりもずっと強くなるだろう」
俺は所詮、元コンサルタントに過ぎない。身体能力に任せて戦っているが、本当の意味で「技術」は身に付けていないのだ。そう遠からず、自分の強さには限界が来る。それは覚悟していた。
「魔物と戦う強さだけならね。でも俺は、兄貴のような強さは持てないよ」
彰はそう言って笑った。ダンジョンで戦えないのなら、戦える奴を集めれば良い。そう思わなくもないが、そのためにはやはり、目に見える力が必要だとも思った。
「俺も、拳法を習ってみようかな」
「江副氏はクラン長なんだから、そこまで強くなる必要は無いと思うけど……」
カメラを構えながら睦夫が呟く。後ろからスライムがやってきた。スコップを内部の核目掛けて突き刺す。煙となって消えたスライムは、カードと共に魔石4グラムを落とした。
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【名 前】 ブルー・スライム
【称 号】 なし
【ランク】 D
【レア度】 Un Common
【スキル】 打撃耐性Lv1
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「斬撃耐性は無いか……試してみるか?」
スコップをカードに戻し、俺は「彗星・斬鉄剣」を取り出した。刀身が冷たく輝く。「この世に斬れぬモノ無し」と謂われるSuper Rareの武器で、プルプルに斬り掛かる。刀身が青い身体に入る。それに合わせて形状が変化し、そして……
プルンッ
「……ここまで同じかよ」
予想通り、斬鉄剣でスライムを斬ることはできませんでした!
「札幌ダンジョンは第三層から魔石が出現すると……なるほどね」
画面の女性は目を細めて頷いた。なるほど、確かに見方によっては葉巻を咥えて男を顎で使う「ロシアン・マフィア」の大幹部に見えなくもない。
「……何? 私の顔に、何か付いているかしら?」
「いや、なんでも無い。それで、どうする? 現在、第五層まで進んでいる。このまま進めば、遠からず最下層に着くだろう。討伐してしまって良いのか?」
「貴方はどう思う? ダンジョン・バスターにして、世界一ダンジョンに詳しい貴方なら、いいアイディアがありそうだけれど?」
質問に対して質問で返された。全く、この女はやり難い相手だ。
「俺の意見としては、最下層次第で判断すべきだと思う。最下層に達した段階で一旦撤退し、録画内容を見てもらう必要があるだろう。冒険者運営局の今後にも関わるはずだ」
「そうね、そうするわ。でも気をつけなさい。貴方でさえ、ダンジョンの『討伐の仕方』は知らないはずよ? 最下層がどうなっているのか、何があるのか判らないわ。無理だと思ったら、すぐに撤退すること。いいわね?」
「忠告、有り難く受け取っておくよ。元よりそのつもりだ。俺が嫌いなのは、無理、無茶、無駄の『三無』だからな」
映像が切れると、俺は彰と睦夫に顔を向けた。
「取り敢えず、ダンジョン内で一休みだ。明日、札幌ダンジョン最下層まで行くぞ」
二人は顔を引き締めて頷いた。
第六層は大きなコウモリが群れで襲ってきた。彰は槍を収納し、再びメリケンサックを填めると、高速のジャブを打ち出す。
「ムッチーッ! 頭下げてて!」
俺たちの間に入っていた睦夫は、カメラを回し続けながらしゃがんだ。それを俺たちが前後で囲み、襲いかかる数百のコウモリを迎撃する。俺も斬鉄剣を振り回す。殆ど手応えがないが、次々と煙になっていく。
「飛翔する魔物は厄介だが、パワーと速度が不足してるな。やはりDといったところか」
「だね。群れってのが厄介だけど、別に怖い相手じゃない……うん、ひょっとして今なら……」
彰はそう言うと、中腰になって拳を構えた。そして襲ってくるコウモリに向け、拳を突き出す。
「正拳同時四連突ッ!」
パァンッという音とともに、コウモリ4体が同時に弾ける。彰は口角を上げていた。
「僕もついに辿り着いたよ。超人の領域に……」
「やったな! だがステータス確認は後だ。いまはコイツらを片付けるぞ!」
それから暫く、俺たちはコウモリを相手に戦い続けた。
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【名 前】 宍戸 彰
【称 号】 種族限界突破者
【ランク】 C
【保有数】 10/25
【スキル】 カードガチャ
打撃 Lv5
身体強化Lv4
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第六層の探索途中で安全地帯を見つけたため、そこに入って一休みする。彰のステータスを確認すると、確かにCランクとなり、称号も加わっていた。
「鹿骨、横浜、そして札幌と戦い続けて、やっとCランクだよ。どれだけ魔物倒したことか……」
「ランクアップには同ランクの魔物と戦い続ける必要がある。つまり、BランクになるにはCランク魔物との戦いが必要だ。それも数十万という数がな」
「気が遠くなるね。でもこれで『深淵』も先にすすめるかな?」
「え、江副氏ぃ……僕もEになってるよ」
「なに?」
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【名 前】 田中 睦夫
【称 号】 なし
【ランク】 E
【保有数】 15/28
【スキル】 カードガチャ
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「確かに、Eになってるな。だがスキルが発現していない……」
「や、やっぱりあまり戦ってないからかな?」
「姉御に聞いてみたら? 何か知ってるかもよ?」
朱音のカードを取り出して顕現する。睦夫のステータスを見た朱音は、当たり前のように頷いた。
「ランクアップと同時にスキルを発現することもありますが、通常はスキルオーブを使って習得したり、あるいは長年の経験から発現したりするものです。和彦様は例外としても、彰さんは格闘家としての経験から、スキルを発現したのでしょう」
「だが、それなら茉莉はどうなる? 神聖魔法なんて経験してないだろ?」
「茉莉さんの場合は、恐らく適性でしょう。魔法スキルは、経験以上に『本人の適性』が要求されます。彼女は偶々、神聖魔法の素質に優れていた……というだけでしょう」
「じゃ、じゃぁ僕の場合は?」
「睦夫さんの場合は、あまり戦いをご経験されていませんし、魔法適性も高くないのでしょう。それ故、ランクアップでもスキルが発現しなかったのだと思われます」
「orzだよぉ~」
睦夫は床に手をついて、あからさまに落ち込んだ。朱音は優雅に一礼して、再びカードに戻る。それをケースに収めながら、俺は考えた。この「スキル」というのは、いったい、何を基準にしているんだ? 打撃だの魔法だの、戦闘スキルがあると思えば、転移などの超常スキルもある。朱音に至っては「性技」なんてスキルを持っている。だが明らかに、スキルの数が少なすぎる。
「スキルというのは『技能』と言い換えても良い。そして現代社会における技能の数は、それこそ無限に近くあるだろう。睦夫だってプログラミングの技能や、3Dプリンタでフィギュアを作る技能を持っている。経験でスキルが発現するのなら、なぜ『プログラミング』などが出ないんだ?」
「いや、でも兄貴。それって無茶じゃないか?」
「無茶なものか。これは現実世界の話なんだ。むしろ『この世界の技能』が出現するのが当然なんだ。それなのに、なぜスキルの種類が限られている? 一方は『経験』で、もう一方は『素質』だと? なぜ発現条件を統一しない? なんらかの意図を感じるな。ダンジョン・システムの設計者は『プログラミング』という言葉の意味を理解できなかったのか? いや、それなら『ガチャ』があるのも可怪しいか……」
ブツブツと一人の世界に入って考え込んでしまった。彰は、orzの睦夫の肩に手を置いて慰めている。
「まぁ、いずれにせよ飯にしよう。睦夫、そう落ち込むな。プログラミングやフィギュア作りをしていたら『器用』とか『工作』とか出るかも知れないぞ?」
「どうせなら『ハッキング』とか『モデリング』とかが欲しいよ」
「いや、ファンタジーなダンジョンで得たスキルが『ハッキング』って、可怪しいでしょ!」
「冗談だよぉ」
睦夫のボケに彰がツッコミを入れて二人で笑う。俺はフゥと息を吐き、そして食事の支度を始めた。
第七層に達した時、俺たちは最下層に着いたのだと確信した。これまでとは明らかに構造が違うからだ。
「二人とも、気をつけろ。前後で挟まれたら厄介だ」
第七層は、幅2メートルほどの一本道がずっと奥まで続いていた。ゆっくり、慎重に進んでいく。中ほどまで進んだ時、睦夫が立ち止まった。
「江副氏、上みて!」
カメラを上に向けている。俺たちも天井を見上げた。そこには、奇妙なレリーフが彫られていた。
「薄暗くてよく見えん。確か、懐中電灯を持っていたはずだ……」
魔法の収納袋から懐中電灯を取り出して、天井を照らす。ビリヤードの玉のようなものを持った手が、それを机に置くような光景が描かれていた。
「なんだ? このレリーフには、なんの意味があるんだ?」
「江副氏ぃ、コレって神様が宇宙を創造している場面なんじゃないの? あの玉が僕らの宇宙で、机に置いたら宇宙爆誕ってことなんじゃ?」
「え、神様も手足があるの? いやいや、それ以前に、なんでそんなレリーフがここにあるのよ!」
彰の言う通りだ。レリーフの意味も重要だが、それ以前に「ダンジョンの最下層に曰く有りげなレリーフがある」ということの意味だ。ダンジョン・システムは自然現象ではない。何かしらの存在によって、意図して生み出されたものだ。つまり、このレリーフがここにあることにも意味がある。
「睦夫、念のため、静止画も何枚か撮っておいてくれ」
「おっけー」
ハンディカメラを切り替えて、静止画を取り始める。俺と彰は前後を確認した。どうやら最下層には魔物はいないらしい。
「兄貴、どうする? 一旦戻るかい?」
「そうだな。まずこの先まで行ってから、そこで判断しよう。どうやら扉らしきモノが見えるしな」
そうして俺たちは、第七層の最奥にある扉の前に立った。第一層の扉と全く同じである。アレが入り口なら、コッチは出口といったところだろう。
「二人共、カメラを切れ」
ヘルメットのカメラやハンディカメラの電源を切る。俺は今後について、自分の考えを二人に話した。
「取り敢えず、地上に戻るぞ。だがその前に、朱音とエミリを召喚する。二人なら、レリーフについて何か知っているかもしれん」
カードを取り出して、二人を顕現化させた。
「「………」」
「どうだ? 何か知らないか?」
朱音とエミリは食い入るように天井を見上げていた。二人共、顔色が悪い。こんな様子は初めて見た。俺の問い掛けにも応えないので、暫く黙ることにする。たっぷり1分以上は待っただろうか。ようやく二人は見上げていた顔を戻した。
「申し訳ありません。和彦様、判らないとしか言えません」
「エミリもよ。なんだろう。何かが引っ掛かるのよ。でも出てこない。もどかしいわ」
ど忘れして出てこないというものではなく、記憶にはない。だが心がざわつく。そんな気持ちらしい。
「恐らく、私もエミリもこれと同様のモノを過去に見ています。そしてダンジョン・システムによって記憶が消されたのだと思います。内心のざわつきは、これが重要なものであり、忘れてはならないものだと、強く刻み込もうとしたからではないでしょうか」
「エミリも同感。この絵なのよ! この絵が重要なはずなのに、何にどう重要なのかが出てこない!」
「なら、他のダンジョンも調べれば良いじゃん。まだ10年以上も時間があるんだし、じっくり考えていこうよ」
「そうだよぉ。朱音氏とエミリ氏だけでなく、これから加わるキャラたちにも確認すれば、何か出てくるかも知れないし」
「そうだな。それに二人の反応だけで、ヒントになった。朱音、エミリというLegend Rare一〇八柱のうちの二人が、そこまで重要だと言うのだ。となれば可能性は限られる。ダンジョン・システムの消し方か、あるいはシステム設計者の正体に繋がるものだろうな」
「……ダメ。解らないわ」
「……申し訳ありません」
「気にするな。ご苦労だったな。基本的に、ダンジョンは消滅させないほうが良さそうだ。それが判っただけでも収穫だろう。一旦、地上に戻るぞ。局長に画像を見せる」
二人をカードに戻し、俺たちは第一層の安全地帯へと転移した。
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