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第026話:ハワード・ドクトリンと各国の情勢

 お待たせしました。本話より、第2章がスタートします。

 第2章は毎週「日曜日」「水曜日」「金曜日」の昼12時過ぎに投稿致します。

 7500文字を毎日書くのは難しく、週3話投稿でお許し下さいませ。

 世界一の経済力と軍事力を持つ大国「ガメリカ合衆国」の大統領は、これまでは自国のみならず世界全体の平和と発展を考える立場と考えられていた。だが歴史的視点に立つと、ガメリカがそうした「世界のリーダー国」として振る舞った期間はそれほど長くはない。20世紀中頃の第二次世界大戦から21世紀初頭までである。

ガメリカは、伝統的に「モンロー主義」と呼ばれる孤立主義政策を取っており、他国間の問題には不関与の姿勢であった。東西冷戦時代と呼ばれた20世紀後半こそ、西側のリーダーとして多国間協調の姿勢を取っていたが、冷戦時代が終わり、シェールガス発掘技術の確立に伴い、グローバル・リーダーシップを徐々に弱めていく。

そして2017年、モンロー主義への回帰を掲げて大統領となったのが、不動産王と呼ばれた「ロナルド・ハワード大統領」である。


「我が親愛なる合衆国の国民諸君、明けましておめでとう。私はいま、年末年始の休暇を取り消してホワイトハウスにいる。昨年下旬から始まった、一連の『ダンジョン群発現象』に備えてのものだ」


 1月1日、年始早々というのにホワイトハウスには、大勢の報道陣が詰めかけていた。昨年末、ハワード大統領が重大な声明を発表するとSNSで告知し、その後正式に合衆国政府から各マスメディアに伝わったからである。


「およそ2年前、私は国民にこう約束した。『Make Gamerica Great Again!(偉大なるガメリカを再び!)』、そしてこの2年間、私は国内外の様々な敵対勢力と戦い、その尽くに勝利してきた。フェイクニュースを流す『自称ジャーナリスト』は顔を真っ青にして逃げ出した。治安を脅かす不法移民を追い出し、その汚染源であるメヒカノスとの国境に壁を建設した。デフレを輸出し、他国の雇用を奪い取る大亜共産国には、ガメリカの強さを思い知らせた。そしてガメリカはいま、再び偉大なる国へと変わった。だが……」


 ロナルド・ハワードの演説は、自画自賛から始まるのが常である。そして拍手を受けて、再び言葉を続けるのがハワードのスタイルだ。だがこの時は、すぐに逆説の接続詞を続けた。


「だがガメリカは現在、建国史上最大の危機に瀕している。ダンジョンと呼ばれる未知の洞窟が次々と出現し、それを食い止める手は今のところ発見されていない。調査するために合衆国の精兵を送り込んだが、残念ながら先へと進めていないのが現状だ。ガメリカはいま、未知の勢力から侵略を受けている。ある者は神罰と言い、ある者は魔王の仕業と言う。私はここに宣言する。神だろうが魔王だろうが、合衆国を脅かす(やから)は容赦なく叩き潰すと!」


右手の人差指を下向きにし、机を二度、三度と叩きながら、ハワードは強い口調で宣言した。


「合衆国の国民の中には、この年始を不安な気持ちで迎えた人も多いはずだ。また悲しみの中で迎えた人もいる。トマス・クランシー上等兵は、ロス・アンジェルスに出現したダンジョンを調査し、味方の撤退を支えるため、襲いかかってきた魔物に素手で立ち向かい、命を落とした。彼の勇敢な活躍がなければ、より多くの命が失われただろう。ダニエル・チャン一等兵はシカゴのダンジョンで勇敢に戦い、魔物2体を屠りながらも重傷を負い、昨年末に亡くなった。合衆国の陸・海・空全ての兵士たちが、この危機に立ち向かおうとしている。我々は勝つ。相手が魔王だろうと、必ず勝つ! だがそのためには、より多くの勇敢な兵士が必要だ」


 ここで言葉を区切り、ハワードは水を口に含んだ。やがて意を決したように再びカメラに向かう。


「現在、合衆国は全世界に20万人近くの兵士を派遣している。ライヒや日本には、それぞれ5万人以上のガメリカ軍がいる。世界の平和維持に貢献してきた名誉ある兵士たちだ。だがいま、合衆国は未曾有の危機に直面している。無論、同盟国である日本をはじめ、世界中にダンジョンが出現していることは承知している。だが合衆国は、昨年の7月末から実に14ものダンジョンが出現し、その現象は今後も続くと思われる。合衆国軍の第一は、ガメリカ合衆国国民を護ることだ。大変遺憾ではあるが、我が国はこれ以上、他国の状況に構っていられないのだ」


 そしてハワードは、右手の人差し指を掲げた。


「ガメリカ・ファースト! ガメリカの防衛を第一とする。そこで今後半年間で、全世界に展開するガメリカ軍のうち、陸軍および空軍、そして海軍からは海兵隊を全て撤退させる。具体的には、日本からは陸軍2千名、空軍1万2千名、海兵隊2万名を撤退させる。ライヒからは陸軍2万名、空軍1万2千名、海兵隊1千2百名。ウリィ共和国からは陸軍1万6千名、空軍8千名となる。いま挙げた国々以外からも、陸軍、空軍、海兵隊を順次撤退させ、合衆国国土の防衛に当たらせる。自分の国は、自分たちの力で護る。この『当たり前』に戻るのだ」


 後に「ハワード・ドクトリン」と呼ばれたこの演説は、ガメリカがモンロー主義に戻った瞬間であり、世界史の転換点になったとされている。ライヒ共和国は、欧州連合のリーダー国として隣国とも友好関係を築いているため、ハワード・ドクトリンの影響は小さかった。また日本においても、周囲を海で囲まれていることやガメリカ海軍2万人が残ること、6年という長期政権を担い続けている浦部内閣が、予め自衛隊増強を図っていたこともあり、影響は限定的であった。ハワード・ドクトリンの影響を最も強く受けたのが、ウリィ共和国であった。





 ウリィ共和国(漢字表記では「内国」)第19代大統領のパク・ジェアンは、内心の昂ぶりを抑えつつ、新年早々の国家安全保障会議に臨んだ。ハワード・ドクトリンは、事実上の内米(ないべい)安保破棄に等しい。何しろ在内米軍の大半が撤退するからである。このままでは、残るのは海軍250名だけとなってしまうのだ。国防部のチョン長官が深刻な表情で指導者の判断を仰ぐ。


「大統領、ハワード大統領の宣言により、我が国は安全保障上の重大な危機に直面しています。ダンジョンこそ国内に2箇所しかありませんが、再び出現する可能性は否定できません。また大姜王国がずっと静かなことも気になります。彼の国にもダンジョンは出現しているようですが、38度線の軍は退いておらず、もし米軍撤退となれば第二次姜半島戦争の可能性もあります。ここはトップ会談によって、在内米軍の撤退を止めるべきではありませんか?」


 パク大統領はゆっくりと頷いたが内心では違う。ウリィ共和国最大の積弊は、在内米軍である。これまでは主敵である大姜王国に備えるために安全保障条約を結んでいたが、ガメリカが撤退するのであればむしろ好機である。そのへんをこの国防部長は理解していない。


「ガメリカが撤退するというのであれば、我が国は新たな安全保障体制を模索する必要があるだろう。大姜王国との休戦協定をさらに進め、講和条約の締結と南北の緩やかな連邦制の形成。すなわち『大姜民主連邦共和国』を目指すべきだ」


統一部長官が、我が意を得たりとばかりに、意気込んで起立した。


「大統領の仰る通り、内米安保はもはや消滅したと考えるべきでしょう。僅か200名程度の米国海軍など居ても意味がありません。ここは正式に安保条約を破棄し、大姜王国との講和を進めるべきです。金総書記は、外交と軍事を一体にした『一国二制度』の導入。そして米軍撤退を条件としていました。前者は我々も望むところであり、後者は米国側が勝手にやってくれます。与党内は賛同するでしょうし、進歩正義党も支持するはずです。議会は問題ありません」


「お待ちください。性急過ぎではありませんか? 内米安保を破棄したとなれば、対日外交も大きな影響を受けます。サムシク電子やCKエレクトロニクスなどは、半導体製造で日本から素材を輸入しています。それが途絶えれば、経済的に大きな打撃を受けます」


 パク政権唯一の知日家である国務総理が反論する。だが姜民族統一という夢がすぐそこまで来ているという状況では、論理よりも感情が優先されてしまう。


「対日外交については、後で考えれば良いでしょう。日本からも米軍が撤退するのですし、南北統一を果たせば国力においても軍事力においても、日本をすぐに圧倒するはずです。核保有国となった共和国は、かつて存在した『檀君王国』を超える、高貴にして麗しい国になるでしょう」


 パク大統領は満足気に頷いた。理性と論理よりも、情緒的な民族主義思想が先行していることに気づいているのは、ごく一握りであった。





 大東亜人民共産国は、14億人の人口と960万平方キロメートル以上の国土面積を持ち、世界第2位の経済大国でもある。その政治体制は人民共産党の一党独裁体制であり、「人民民主主義独裁の社会主義国家」と憲法第1条で明記している。第二次世界大戦後、蒙沢民(もうたくみん)が率いる人民解放軍は、民主主義と市場経済を導入しようとしていた東亜民国を打ち破り、共産社会主義国家を建国した。その後の文化革命や安天門事件などがあったが、経済成長により人民を豊かにし、日本を仮想敵国として対外的な緊張関係を形成することで国家をまとめることに成功した。俗に言う「パンとサーカスを与える」政策により、現在もなお、一党独裁体制が続いている。


「周大人、ガメリカがモンロー主義に入りました。これでようやく、南シナ海を我が国の支配下に置くことができます」


「これを好機と捉え、東亜民国および日本の釣魚、沖縄諸島に進出しましょう」


 人民共産党の最高指導者であり第7代国家主席の周浩然(シュウハオラン)は、巨大党内の派閥抗争に打ち勝ち、敵対勢力を粛清することで蒙沢民以来の強権を手にしていた。圧倒的な独裁者が生まれれば、周囲はそれを(おもね)るようになる。だが、それで調子に乗るような三流では、億の党人の中から国家のトップに上り詰めることはできない。周浩然は眼鏡を外すと首を振った。


「ガメリカのモンロー主義回帰が世界にどのような影響を与えるのか、それを見極めてからでも遅くはない。それに、今は国内の不安を鎮めることが重要だ。我が国は世界で最も多くのダンジョンを抱えている。これは危機でもあるが好機でもある。ダンジョンは『黒石』の他に様々なモノを生み出す。我が国は世界一の資源大国になれるかもしれんのだ。まずはとにかく、ダンジョンを徹底的に調査することが先だろう」


 国家主席の言葉に、一同が頷く。ダンジョンの登場により社会不安が広がっている。過去の歴史を振り返ると、こういう場合は得てして、新興宗教が生まれ瞬く間に人民に火を付けていく。昨年から情報統制を徹底し、ネット上にダンジョンについて書き込みができないようにしていた。


「既に軍は動いています。北京、上海、重慶、成都など主要都市に出現したダンジョン50箇所に、それぞれ3千人ずつ兵をつけました。北京のダンジョンでは既に第三層にまで辿り着いており、このままいけばダンジョンの攻略も遠くはないかと思われます」


「我が国は、現在55箇所のダンジョンを確認していますが、発見されていない未知のダンジョンもあるかもしれません。各省には、継続的な調査を義務付けています」


「問題は内モンゴル、ウイグル、チベットのダンジョンです。特に、ウルムチに出現したダンジョンにはウイグル人たちも入ることを希望しており、暴動まで起きています」


「それは徹底的に抑え込め。ダンジョンは漢民族のモノだ。ウイグル人がダンジョンに入って力を持てば、厄介なことになりかねん。抑えるためならば、多少荒っぽいやり方であっても、止むを得ないだろう。それと、黒石を使った発電の研究だが……」


「水素発電は、やはり日本が先行しています。ですがガメリカとの安保が揺らいでいる今、多少脅せば技術を渡すかもしれません。釣魚島奪還の姿勢を見せ、彼らをテーブルに誘い出してはいかがでしょうか?」


 国家主席は少し考えたが、頷くことはなかった。それどころか、彼らが思いもかけない言葉を口にした。


「水素発電技術の協力を得る代わりに、釣魚島の日本領有を認める……という案もあるな」


大人(ダーレン)、それは……」


「ダンジョンは全世界に出現している。つまり魔石という新エネルギーによって、世界のエネルギー不均衡問題が解消されると考えることもできる。釣魚島の海底ガス田開発などしなくても、魔石があればより安定的にエネルギー確保ができるではないか。これまでは資源確保を国是としていた。だが今後は、魔石利用の技術開発が優先されるだろう」


「ならば、今こそ日本を攻めて……」


「日本を甘く見るな!」


 眉間を険しくした周主席の鋭い眼光に、一同が緊張する。


「ダンジョン出現という危機で、各国のナショナリズムが強まっている。そして、危機を眼の前にしての日本人の団結力は、我々の想像を遥かに超える。忘れるな。平和ボケなどと言われているが、日本人は二千年に渡って自然災害と戦い続けてきた民族だ。あの国を追い詰めれば、こちらも傷を負うことになる。むしろ、ダンジョンの制圧と新エネルギー確保のために、日本を利用するのだ」


 年末に日本人冒険者がインタビューで言っていた「ダンジョン・システム論」は、大亜共産国でも大きな注目を受けていた。世界一のダンジョン保有国である大亜共産国にとって、魔物が溢れ出てくる可能性は無視できるものではない。魔石を利用した水素発電の技術を得れば、エネルギー問題や大気汚染問題は一気に解決する。周国家主席の脳裏には、対日外交の新たな方針が浮かびつつあった。





「国民の皆さん。明けましておめでとうございます」


 日本国内閣総理大臣の浦部誠一郎は、本来であれば1月4日からの仕事始めを繰り上げ、1月2日から仕事を始めていた。国内外に向けてのメッセージを放つのが今年最初の仕事である。


「昨日、ガメリカのハワード大統領は大きな宣言をしました。世界に展開しているガメリカ軍を撤退させ、ガメリカ本土の防衛に当たると。実はこの流れは、急なことではありません。近年、在日米軍は少しずつ、数を減らしてきました。その分、日本は自衛隊を増強し、自分の国を自分で護るようになることを目指してきました。ハワード大統領の言葉は、決して驚くべきものではありません。考えてみれば当たり前のことです。自分たちの国を自分たちの手で護る。人類が国家を形成して以来、数千年に渡って普遍的に続けてきた当たり前の体制。戦後70年以上を経た日本は、ようやくこの『当たり前の体制』に戻る時が来たのです」


 浦部総理が言葉を区切る。歴代の日本国総理大臣の多くが夢見て、そして叶わなかった国の姿が、ようやく見え始めてきたのだ。


「昨年の7月末以降、世界は危機に直面しています。ダンジョンという未知の空間が世界中に出現しました。ダンジョンの中には、(わたくし)たちに襲いかかる未知の生物が繁殖しています。今でこそ、ダンジョンの外には出てきていませんが、これからずっとそうだという確証はありません。(わたくし)は、国民の生命と財産を護る責任者として、ダンジョンを放っておくわけにはいきません。万一の事態に備えて臨時予算を策定し、陸・海・空の自衛隊の増強を図ります。


また、昨年末から始まった民間人ダンジョン冒険者の登用も進めます。確かに、私たちは危機に直面しています。ですがこれは、好機でもあるのです。ダンジョンが生み出す『魔石』と呼ばれる新素材によって、エネルギーの自給率を100%にまで引き上げることも夢ではなくなりました。ポーションといった薬品以外にも、まるで魔法のような効果を持つ道具も確認されています。この危機を乗り越えた時、人類はさらなる繁栄に至ると、私は確信しています」


 パシャパシャとシャッター音が鳴る。浦部の演説が続く。


「本年の6月までに、在日ガメリカ軍の半分以上が日本から撤収していきます。戦後70年以上続いた安保体制が大きく変わるとなれば、不安に思われるかもしれません。ですが、その大半は陸軍および海兵隊です。米国海軍2万人は我が国に留まり、尖閣諸島をはじめとする近海の防衛に協力してくれます。勿論、我が国もさらなる自主防衛体制の強化に努めてまいります。『自分の国を自分たちの手で護る』、この当たり前の国の姿になるために、今年の夏に予定されている参議院議員選挙では、憲法改正の是非を国民の皆様にお尋ねしたいと考えております。


 もちろん、反対の意見もあるでしょう。ですが、我が国は既に侵略を受けています。ダンジョンという侵略です。確かに、民間人冒険者の制度は整いつつあります。ですが、国防を担うのはやはり自衛隊員なのです。彼らはどのような心づもりで、ダンジョンの魔物と戦えば良いのでしょうか。憲法で認められていないが、貴方たちはダンジョンに入って、命がけで戦ってください。そう言えるのでしょうか。ダンジョンは今後も増加すると見込まれます。私たちはこの未知の脅威に対して、敢然と立ち向かわなければなりません。そのためには、憲法を改正し、自衛隊をきちんと憲法上に位置づけなければならないのです。

 

 今月からの通常国会において、ダンジョン冒険者法制の改正案を出します。昨年の臨時国会では、緊急の状況に対応するために、急ぎ制定しました。その後、有識者や民間人冒険者からの意見を踏まえての改正案です。国会で真剣に議論して頂き、より良い法制案となることを期待しています。


今年は、人類史に残る激動の1年になるかもしれません。ダンジョンの正体は不明であり、この先、何が起きるか見通しも立ちません。人類が直面した、有史以来最大の危機です。ですが私たちは負けません。瑞穂(みずほ)の国土と命育むこの星を、子や孫たちに残すために、今こそ人類は一丸となって危機に立ち向かわなければならないのです。私は信じています。人類の英知を、理性を、平和を願う心を、そして愛する者を護るために立ち上がる勇気を、私は信じています」


 浦部総理はそこで言葉を区切り、一礼した。シャッター音が鳴り止み、やがて拍手が起こった。





 1月4日は、普通の会社員であれば仕事始めの日である。俺は彰と睦夫を連れて、北海道札幌市に来ていた。ちなみに茉莉は、週明けから学校があるため来ていない。俺たちは早速、札幌市の繁華街「すすきの」に来ていた。


「うんまっ!」


 「薄野 金寿し」という店に入った俺たちは、店の魚を食い尽くさんばかりに食べまくっていた。金寿しは10席も無いカウンターだけの鮨屋だが、すすきのでは有名な店だ。今夜はそこを貸し切りにしている。大将が粋な人物で、貸し切りを許可してもらえたのだ。明日の朝からダンジョンに入るため、今夜は美味いものを腹一杯に食っておきたかった。


「今日は札幌を満喫するぞ。ココは色々と楽しめるからな」


「んじゃ、この後は僕のお奨めの店を案内するよ。可愛い子がたくさんいるよ?」


「ぼ、僕、あまりそういうところ入ったこと無いから……でも行ってみたい!」


「よし、男三人だからな。今夜は遊びまくるぞ!」


 どれほど準備をしようとも、ダンジョン内はやはりストレスが懸る。こうやって思いっきり遊ぶのも、必要だろう。今夜だけは、ダンジョンのことは忘れたい。


「ニシンの寿司なんて初めて食べたよぉ。ウマウマー」


 金寿しでは1貫ずつしか出さないが、俺たちの喰う量を見て、大将は2貫ずつ出すようにしてくれた。だがそれでもカウンターに置かれた瞬間に無くなってしまう。


「ダンジョンが出現したって言っても、漁師たちは海に出ますし、大半の人にとっては、関係ないことですよ。真たちの軍艦、お待ちっ」


 俺たちの喰いっぷりに、大将も機嫌が良さそうだ。うん、日本は平和だな。


 評価や感想を下さった方、ブックマーク登録をして下さった方、全ての読者様に御礼申し上げます。ブックマークやご評価をいただけると、創作活動の励みになります。これからも頑張って書いていきます。

 頂いた感想はすべて拝読しております。本当にありがとうございます。


 今後も応援の程、何卒、宜しくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
国際政治とか外交とか描写がしっかりしてて読んでて心地よい あとダンジョンからのエネルギー資源の産出から『魚釣島イラネ』ということに気付く漢民族の国の政治のリーダーの対応の早さがカッコイイ!!
[一言] 浦部総理暗殺気を付けて……
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