第003話:ゴブカードを集めろ
カード化されているときでも、なんとなくですが周囲の状況は判ります。私の主人である和彦様は、物事に集中されると周りが見えなくなる方のようです。手洗いと食事以外は、とにかく第一層で戦うことに時間を使われていました。
「ふーん。これが『ゴブリンカード』か。いらないんだけどなぁ~」
魔物を倒すと一定の確率で倒した魔物がカードになります。およそ2%程度の確率でしょうか。和彦様が10枚目のカードを拾われた時、ステータス画面が勝手に表示されました。
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【名 前】 江副 和彦
【称 号】 第一接触者
【ランク】 F
【保有数】 10/∞
【スキル】 カードガチャ(1)
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「ん? カードガチャのところに「(1)」って表示されたぞ? つまり、カード10枚で1回分のガチャができるってわけか? 仮に朱音をガチャに使ったらどうなるんだ?」
なんてことを仰るのでしょう。ダンジョン・システム全カードの中でも最高峰に位置する一〇八柱の一柱である私を、ゴブリンなどと同じに扱われるなんて! 赦しませんわ。返答次第によっては、不能になるまで搾り取って差し上げますわ!
「和彦様……よもやこの私を、得体の知れないスキルの犠牲になど、なさいませんわよね?」
「あー、スマン。誤解される言い方をした俺が悪かった。安心しろ。朱音は絶対に手放さん。俺が死ぬか、ダンジョンを全て攻略するまでな。それで、10枚目のドロップで表示されたということは、つまりカードから召喚中はカウントされないってことか?」
「死が分かつまで一緒……ウフフッ」
和彦様の思いもよらぬお言葉を聞き、私の胸は熱くなりました。殿方の軽薄な言葉だけで心動かされるほど、私は子供ではありませんわ。ですがダンジョン時間で数日間は、寝食を共にして戦ったのです。情が移らないわけがありませんわ。
和彦様の見た目も、少し変わられました。出ていたお腹も少し引っ込み、タプタプとしていた顎下の肉も減っています。少しお痩せになっただけですが、悪くない見た目になられました。このまま戦い続ければ、大人の渋みを持つ魅力的な殿方になられるでしょう。
あら、いけませんわ。和彦様が何かを出現させました。アレは、なんでしょう?
ステータス画面のスキル枠に変化が出た。カードガチャという名前から、オンラインゲームで言うところのガチャなのだろうという想像はついた。だが何を「課金」すればガチャを回せるのかが解らなかった。最初はゴブリンが落とした500円硬貨かと思ったが、全く反応しなかった。最初のドロップカードの時もそうだった。だがようやくわかった。ドロップカード10枚で、ガチャ1回分だ。
「ドロップ率は体感で2%から3%か? 10枚集めるのにゴブリン500匹かよ。コスパはあまり良くないな。で、どうすれば良いんだ? この10枚を画面に押し当てれば良いのか?」
ゴブリンカード10枚を黒い部分に当ててみると、カードが泡のように消えた。そして画面が変化する。ガチャガチャの機械が4台、表示されていた。それぞれの上部に「キャラクターガチャ」「武器ガチャ」「防具ガチャ」「アイテムガチャ」とある。キャラクターというのは、恐らくはゴブリンなどのような「召喚して戦わせる戦力」のことだろう。武器と防具、アイテムはその名の通りだと思う。
「朱音、これを見てくれ」
朱音が近づき、左腕に胸をムニュッと押し付けてくる。まぁそれは良い。それよりも確認しておく必要がある。
「確認だ。ダンジョンで手に入れた武器や防具、道具類は地上でも使えるのか?」
「使えますわ。ただし、地上に持ち出すためにはダンジョン内で具現化しなければなりません。カードに戻す時も同じでございます」
そう言いながらも、ムニュムニュと豊かな胸を主張させる。思わず理性が溶けそうになる。無関心を粧っているが、俺だって男だ。それも結構、性欲は強い。唾を飲み込み、俺はアイテムガチャを指で押した。本体の右側に備え付けられたレバーが周り、ウィーンとカードが出てくる。そして画面からカードが浮き上がり、リアルに出現した。
「……無駄に凝ってるな」
呟きながらも、出現したカードを手にする。表面には、赤い液体が入った薬瓶のようなものが描かれている。それだけで、これがなんなのか、予想できた。
「ポーション、ですわね。飲めば風邪薬になりますし、切り傷や打撲程度ならすぐに治ります。ですが内臓に至るほどの重傷や骨折には効きません」
一応、裏面を見てみる。
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【名 称】 ポーション
【レア度】 Common
【説 明】
無味無臭の一般的なポーション。
飲めば風邪薬、掛ければ傷薬として有用。
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「Commonってことは『C』、つまり 『一般』って意味だろうな。となるとその上はUC、R、SR、UR、LRって感じになるのか? 本当に、ガチャそのものだな」
「和彦様、気落ちされませぬよう…… ポーションなど使わずとも、私が傷口を舐めて差し上げますわ」
そう言って、朱音は俺にしなだれ掛かり、両腕を首に回してきた。ヤバイ。我慢しきれなくなりそうだ。
「先ほど、和彦様の欲望を感じましたわ。そのように我慢せず、私のカラダを隅々まで貪って、猛々しい牡の欲望を思うままに吐き出してくださいませ」
「………」
細く括れた腰に手を当て、潤んだ瞳で見つめてくる妖艶な美女を引き剥がした。危ない危ない。
「まだランクはFのままだ。戦いも素手のままだしな。俺が強くなるまでは、御預けにしておくよ」
「では、せめて予約だけ……」
唇に柔らかいものが触れた。
数日間といっても、全てをダンジョンで過ごしたわけではない。食事も必要だし風呂や睡眠のために地上に戻る。ダンジョンでの時間は、せいぜい1週間と言ったところだ。その間で、ゴブリンを500匹以上倒した。その分、500円硬貨が大量にある。
「この数日で500円が553枚か。27万6500円。問題はこれを所得とした場合、税金をどうするかってことなんだよなぁ。銀行で両替したうえで、タンス預金にするか?」
仕事柄、クライアントに会わないわけにはいかない。少なくとも1年間は、今の仕事を続けなければならない。オフィスワークはダンジョン内でやれば良いが、訪問してのコンサルティングなどはどうしても時間が取られる。
「まぁ仕事量をこれ以上は増やさず、ダンジョン攻略を優先させよう。それにしても、この3日で痩せたな。ベルトやシャツの首周りが緩いぞ?」
体重計に載ると、5キロ近く落ちていた。強化因子によって筋力などもついているだろうから、体脂肪はもっと落ちているはずだ。
「参ったな。この体型を維持するためにも、人一倍食べなきゃいけないんだが……」
自分を卑下する冗談を口にしつつ、俺は上機嫌でネクタイを締めた。
「カズちゃん、痩せたんじゃないか?」
「まぁね。ちょっと運動を始めたんだよ」
幼馴染の岩本は、千葉県にパチンコ店やビジネスホテルなどをチェーン展開する中堅チェーンのオーナー社長だ。元々は在日姜国人だが、気にしたことは無い。年に一度くらいは酒を飲む関係を続けていたが、俺が独立したときに、最初にクライアントになってくれた大事なお得意様だ。
「研修計画とキャリア助成金の申請書一式だ。ここまで用意すれば、ほぼ間違いなく助成は下りる。それと、採用1ヶ月後のアルバイト店員たちのインタビューもまとめてある。岩ちゃんの言っていた通り、タバコの煙が気になるという意見が多いな。やはりそろそろ、店内分煙を考えたほうが良いだろう」
「早いな。1週間でここまで整えてくれたのか。さすがカズちゃんだ。分煙はなぁ~ 確かに店長からもそういった声が出てるんだけど、完全分煙しようとすると費用が結構掛かるんだよなぁ」
「国と県からの補助金を得たらどうだ? 分煙助成金というのがある。東京都の条例によって、都内では飲食店舗などの分煙が進んで、国や地方自治体も助成金制度を整え始めた。これが、俺が調べた資料だ。おおよその見積もりと、予想される助成額をグラフにしてある」
パラパラと資料を捲った岩本は、顔色を変えた。およそ一人の人間が、1週間でできる仕事量ではない。
「凄いな。なぁカズちゃん、やっぱウチの役員にならないか? カズちゃんなら安心して経営を任せられるよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、勘弁してくれ。俺はフリーランスが良いんだ。依頼は受けるが、命令は受けない。一匹狼でいたいのさ」
その後は、完全分煙化に向けての計画策定や、不動産関連の事業についてなどを話し合った。
クライアント周りを終えて家に戻った俺は、まずはシャワーを浴びてリラックスできる服装に着替えた。ノートパソコンや書籍をカバンに入れ、ダンジョンへと向かう。今日の面談内容の入力や、依頼された分析業務などを終えるためだ。それもようやく終わり、ダンジョン探索の記録を付ける。ストップウォッチを使って、百匹殺すのに費やした時間などを記録していく。経験値がない現実世界では、こうした記録によって、ランクアップの仕組みを解いていくしかない。
「やはりベッドも置くべきか? フレームベッドならそれなりに保つだろう。だが布団をどうするかが問題だな。いちいち運び入れるのも面倒だし、ラノベに出てくるアイテムボックスや魔法の収容袋とかがあれば良いんだがなぁ」
「ありますわよ?」
「うわぁっ!」
背後からいきなり声を掛けられ、俺は飛び上がってしまった。いつの間にか、朱音が顕現していたのだ。
「そうやって驚く和彦様も素敵ですわ」
革張りの椅子に腰掛ける俺の前に立つと、両腿を跨ぐように俺の足に座ってくる。よく発達した白い太腿が付け根近くまで見えてしまっている。
「あのなぁ……そんなに誘うなら、本当にヤッちまうぞ?」
「あら、嬉しいですわ。和彦様のお情けが欲しくて、ずっと疼いてますの……」
グリグリと下半身を押し付けてくる。呆れたように溜め息を吐き、ポンッと太腿を叩いた。
「降りろ。仕事も一段落したし、今日はここまでだ」
朱音は俺に跨ったまま、カードに戻った。
「ネット小説とかによると、ガチャってのは10回分で11回引けるらしい。このスキルではどうかは知らないが、取り敢えず10回分までゴブカードを貯めるぞ」
「カード100枚ということは、5千匹のゴブリンを殺さなければなりませんが?」
「ここのところ、ゴブ100匹を殺した最短時間は2時間だ。つまり5千匹だと100時間だ。地上時間で1時間も掛からない。4時間ごとに30分の休憩をし、それを4回、18時間ごとに8時間の睡眠を入れる。戦っている時間は16時間だから、それを6回やる。26時間×5回プラス18時間…… ダンジョン時間で148時間、途中でシャワーを浴びたりバッテリー交換をしたりしても、地上時間で4時間もあればいけるはずだ」
「ずっとゴブリンを殺し続けると?」
朱音が不安そうな、あるいは呆れたような表情を浮かべていたが、それは無視する。ダンジョン部屋には食料や水、身体を拭くためのタオルなど必要なものは全部運び入れた。空気で膨らむエアーマットも用意してある。
「では、行くか……」
朱音を連れて、俺はダンジョン内へと入った。
和彦様はよく、「効率」や「生産性」という言葉をお使いになられます。決められた時間の中で、もっとも楽に、もっとも多く魔物を倒すにはどうしたら良いか。和彦様の関心はそこにあります。碁盤目状の第一層を小走りに駆けながら、出現したゴブリンに攻撃を加えていく。持久力の強化を兼ねた鍛錬とお考えなのかもしれません。
「走りながら蹴りを加え、そして殴る。これが最短の倒し方か? 取り敢えずこれで4セットやってみて、検証しよう」
和彦様は「俺のやり方はPDCAだ」とおっしゃいます。目指す目標を設定し、それを実現するための具体的な計画を立て、実行と検証、そして改善を行う。私は呆れました。ここまで理論的にダンジョンにアプローチした人は、和彦様が初めてだと思います。
「100匹殺すのにおよそ110分……若干、改善されたな。ドロップは2枚、ランクは変わらずか。ランクアップするには、あとどれくらい殺せば良いんだ?」
懐に入れている紙に時間を記録し、再び走り始めます。ゴブリンは二撃を加えれば倒せることが判明しております。そのため和彦様が先頭を走り、私は500円硬貨を拾いつつ背後を護るというのが、今回の「カード集め兼鍛錬」と基本です。偶にですが、後ろからもゴブリンが襲ってきます。苦無の一撃で済みますので私は楽なのですが、和彦様はお辛いはずです。強化因子で身体に変化が生じるはずですので、後でマッサージをして差し上げましょう。
地震国家の日本は、サバイバル・フーズが充実している。前回のゴブリン狩りで得た500円硬貨たちは、全てサバイバル・フーズに消えた。ネットで注文した「非常食カレー」だの「パンの缶詰」だのが2週間分積んである。水は一人あたり、一日4リットルを用意した。大小便は、ダンジョン内ですれば勝手に吸収してくれるらしい。実にエコだ。
「これは良いですわね。まさかダンジョン内でこんな豪華な食事ができるなんて……」
ハヤシライスを食べた朱音が相好を崩している。発熱剤入りなので、火を使わずに温かい食事ができる。日本メーカーの開発力は偉大だ。4時間ごとの休憩で食事を取りに第一層のセーフティーゾーンに戻る。拾った500円硬貨やゴブリンカードも荷物になるため部屋に保管する。こうした部屋があるのは実に助かる。
だが不満も無くはない。プラスチックやビニールなどのゴミは、ダンジョン外に出さなければならない。また、この部屋にはシャワールームがない。電気もバッテリーを使うしかない。結局のところ、ずっとこの部屋に居続けるわけにはいかないのだ。
「和彦様がダンジョンを討伐されれば、問題は解決するかもしれません」
「ん? どういうことだ?」
朱音に肩を揉ませながら不満をこぼすと、思わぬ回答を得た。
「ダンジョンを討伐した際、討伐者は二つの選択肢を得ます。一つはダンジョンを完全に潰してしまうという選択肢、もう一つはダンジョンマスターとしてダンジョンを自分の私有物にする選択肢ですわ」
「私有物? このダンジョンが俺のモノになるってことか?」
「一般的な場合、潰す選択が多いですわ。その理由は、ダンジョン討伐には多くの人間が参加しているからです。誰か一人の所有物にするなど、他の参加者が認めないのです。ですが、このダンジョンに入るのは和彦様お一人…… ならばダンジョンを所有することも可能かと存じます」
「所有物にしたら、好きなだけドロップアイテムを増やせるのか?」
それができれば素晴らしいことである。諭吉氏を大量に出そう。あとポーションなどの異世界物品も手に入れられるだろう。
「残念ですが、好きなだけというわけにはいかないでしょう。私も詳しくは存じませんが、ダンジョンは異空間から力を得て、その力で魔物を出現させたりアイテムを生成したりしているそうです。ですので、無限というわけではないと思います。ただ、ダンジョンマスターはダンジョン内を好きなように作り変えることができるそうです。和彦様がご希望の風呂や手洗いなども、作ることができるはずですわ」
「そうか。なら早く攻略しないとな。さて、じゃぁ行くか。これが終わったら8時間の休憩だ。一旦地上に戻って、風呂に入ってくる」
「畏まりました。では……」
軍手を交換した俺は、朱音と共に再び走り始めた。
「あれ?」
ゴブリンを殴り飛ばした時、俺は違和感を覚えた。ゴブリンが煙となる中、俺は自分の拳を眺めていた。
「和彦様、いかがされましたか?」
「いや、今のゴブリン、パンチ一発で消えたんだよな。これまで二発だったのに……ひょっとしたら」
ステータス画面を呼び出す。
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【名 前】 江副 和彦
【称 号】 第一接触者
【ランク】 E
【保有数】 24/∞
【スキル】 カードガチャ
(空き)
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「お、ランクが上がってるぞ。それにスキルも変化している。この『空き』ってのはなんだ?」
朱音に顔を向けるが、首を振った。どうやら知らないらしい。
「そもそもスキルは、ダンジョンでドロップする『スキル宝珠』や、長年の経験などで獲得します。稀に、ランクアップ時に発現する人もいるそうですが『空き』というのは初めてです。私はてっきり、打撃などをご修得されると思っていましたが……」
「ふーん……まぁ検証は後だ。まずはEランクになったことで、もう一度計算をやり直そう。次から、百匹を殺す時間を測るぞ」
左腕に付けた耐衝撃時計のスイッチを押した。
食事をして風呂に入った後は、再びダンジョンに戻る。ついでに水や食料、衣類、バッテリーなども補充する。トレーナーに着替えた俺は、セーフティーゾーンに置かれた革張りソファーに横になっていた。朱音も、普段の忍び装束ではなく絹製のオールインワンを着ている。
「ウフフッ……今宵は初めて、和彦様と褥を共にできるのですわね? 思う存分、私を御賞味くださいませ」
「いや、それも良いがその前にステータスだろ。この『空き』ってのはなんだ?」
頭が持ち上げられる。スルリと朱音が入ってきた。膝枕されながら、黒い画面を見る。だがドドンッと突き出た胸に邪魔されてしまう。仕方なく横向きになると、顔に胸が載ってきた。感触が心地よいので、そのままにさせておく。
「『空き』……ん?」
スキル枠の『空き』と表示された部分を指で触れると、画面が切り替わった。まるで表計算ソフトで作られたようなマス目が画面に広がり、それぞれに何か書かれている。
「『剣術』『槍術』『体術』……これはどうやら、スキルの名前だな。なるほど、この中から選択できるわけか。〈???〉となっているのは、なんらかの理由で不明になっているってことか? なるほど、指を当てると簡単な説明まで出る。まるでゲームだな」
「でしたら、体術などはいかがでしょう? 和彦様のこれまでの攻撃方法は、打撃中心でした。体術であれば、その経験も活かせると思いますが?」
「一理ある。だが却下だ」
「その理由はなんでしょう?」
俺はムクリと起き上がった。口頭でどう説明するか考える。ホワイトボードが欲しいと思った。
「ダンジョンがここ一つであるならば、朱音の意見に俺も賛成する。だが、一年後には六六六のダンジョンが出現する。俺一人では、とても潰しきれない。つまり『集団』の力が必要になる。俺が欲しいスキルは、集団を形成し、束ねるスキルだ」
「さすがは和彦様。目先のことではなく、遥か先を読んでのことなのですわね?」
俺は立ち上がり、ノートを手にした。朱音にスキルを読み上げさせ、ノートに書き込んでいく。
「後ほど、表計算ソフトで整理しよう。それぞれに特徴があるはずだ。ふーん。使えそうなのは……」
〈隷属支配〉
相手を支配し、自分の下僕とすることができる。支配された者は絶対服従する。支配するには相手の了承が必要だが、スキルが習熟すると了承なく支配することも可能になる。
〈鑑定〉
ステータスやアイテムなどを鑑定することができる。スキルが習熟することで、より詳細な鑑定が可能となる。
〈誘導〉
会話を通じて相手の意思をこちらが希望する方向に導くことができる。スキルが習熟することで、自然な形で相手に無理難題を押し付けることも可能になる。
〈回復魔法〉
神聖魔法とは異なり、回復に特化した魔法スキル。体力や負傷、状態異常を回復できる。習熟することで集団を一気に回復させることや、欠損部分の再生も可能になる。
「この四つくらいか? 『???』が多いため、いま取得すべきかも含めて、検討の余地があるな」
現時点で取るとするならば「回復魔法」の一択だろう。隷属支配は仲間を集める時に使えるかもしれないが、それは今のタイミングではない。鑑定については、そもそも鑑定したいモノが無い。誘導は仕事で使えそうだが隷属支配と同じく、仲間集めに使うほうが良いだろう。この中では「回復魔法」だけが即効性がある。ダンジョン攻略は命懸けだ。第二層で致命傷を負わないとも限らない。
「やはり『回復魔法』だな。これは取っておこう」
ステータス画面を押した。