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第020話:ダンジョン・ブートキャンプ

「第1日目が終わって、1キロ減。思ったほどではないわね。いえ、僅か10分間で1キロ減らしたと考えれば、凄いことなのは理解るけれど……」


 結果を伝えられた私は拍子抜けした。ダンジョン・ブートキャンプが始まった日、私は土曜日にもかかわらず官庁に出ていた。横浜ダンジョンからの報告を逐次受けるためだ。パソコンを使ったビデオ通話で連絡を取っている。


「それで、魔石の方の確保はどうなのかしら?」


「はい、1時間で60体、12時間で720体の魔物を倒しています。これは意図的に行なっているらしく、同行したカメラマンは、その気になればもっと討伐数を上げられるはずと言っています」


「魔石にすると2キロ強ね。今回のペースはバッファー5分を入れ45分サイクルだから、仮に10回やったとしたら、地上時間で7時間半。20キロ強ってところだわ。彼らからすれば、あまり良いペースではないわね」


「江副さんからは『1ヶ月間で計算してみてくれ』と言われています。第1日目は、被験者である田中さんを慣れさせるという意味もあり、ペースダウンしていたのではないでしょうか」


「そうね。始まったばかりだし、結論を出すのは早計だわ。私は18時までいます。その後は家に帰るけれど、連絡は逐次確認しておくわ」


 パソコンの画面を閉じた私は、窓から市ヶ谷の街並みを眺めながらコーヒーを啜った。


「期待しているわよ、江副さん」


 こうして、ダンジョン冒険者制度の命運を賭けた「ブートキャンプ」が始まった。




「うんまっ、うんまぁっ」


 ダンジョン内だけど、食事は結構豪華だ。今日の朝食はサラダとフルーツパンチ、それにカレーライスだった。福神漬なんかもちゃんとあって、ご飯が進む。幾らでもおかわりできるし、むしろそれを奨められる。強化因子を摂り込んで運動を続ければ、筋肉や骨組織が強化されるらしいけど、その栄養素は食事で取り込まなければいけないからだ。


「でも兄貴、僕たちは『魔法の革袋』があるから良いけど、これから冒険者になる連中は、食事に苦労するんじゃないかな? キャンプフードって、結構高いし」


「魔法の革袋は20枚以上ある。そのうち何枚かを運営局に回しても良いかも知れないな。だが基本的には自己責任だ。幾ら高いって言っても、ダンジョンでの収入はそれを上回るはずだ。ガチャをやれば革袋は手に入るんだし、そこまで面倒は見きれないな」


 江副氏が手にしているのは「魔法の革袋」といって、ラノベでいう「アイテムボックス」的な奴らしい。容量はそれほど大きくないそうだけど、時間停止機能があってパンやご飯が熱々で食べられる。スーパーの半額弁当を大量に買って、レンチンして入れておけば便利かも。


「よし。サプリメントも飲んだな? では今日のブートキャンプを始めるぞ。今日は5キロのウェイトベストに加えて、アンクルウェイトを片足3キロずつ付けてもらう。それで、昨日と同じように歩き続ける。休憩のサイクルも一緒だ」


「わ、わかったよ」


 やっとウェイトの重さに慣れたと思ったら、今度は足にウェイトを付けるらしい。今日もまた、筋肉痛に苦しみそうだ。ポーションが無かったら、とっくにへばっていたかも知れない。




 2日目終了の報告を受け取ったのは、1日目終了から45分後であった。ピッタリ、予定通りの時間である。


「第2日目は2キロ減、討伐数は毎時65体ずつ……本当に測ったように進めているわね」


 私はこの進め方に、江副和彦という男の性格が見えているような気がした。こと仕事においては「完璧主義者」なのだろう。食事のメニューはバラエティに富み、栄養もしっかり考えられている。全てが計算ずくなのだ。官僚である私から見ると、こうした仕事の進め方をする男は信頼できる。


「ダンジョンである以上、リスクはあるし不測の事態もあるでしょう。それらを全て想定しながらも、計画通りに進める。彼が作った『ダンジョン・バスターズ』は、本当にダンジョンを攻略してしまうかも知れないわね。いずれにしても、このやり方は使えるわ。マニュアル化して、自衛隊で運用するようにしましょう」


 第3日の結果が楽しみになってきた。




「よしっ! 7日間終了だ。明日は1日、ダンジョン内でゆっくりすれば良い。お疲れだったな」


 そう言われて、僕はフハァと床にへたり込んだ。いま付けているウェイトは、ベストが10キロ、リストウェイトが片腕3キロ、アンクルウェイトが片足5キロ、合計26キロを身に着けている。それでひたすら、ダンジョン内を歩き続ける。宍戸氏が「山手線ゲームやろうぜ」と言ってくれなければ、退屈で死にそうだったよ。


「よっしゃ! マンガ三国志全巻読破しよっ!」


 宍戸氏はこの日のために、マンガを大量に持ち込んでいた。少年マンガとか結構な量がある。一方の江副氏は、ノートパソコンで仕事するつもりらしい。そして僕は、携帯ゲームを持ち込んでいた。ダンジョン内には大容量のバッテリーが用意されている。3人が1日使う分には、問題なさそうだ。




「最初の2週間で、体重は15キロ減、魔物は毎時100体ずつ。12時間としたら36キロね。第一層では、この辺りが限界かしら。第二層は1体で4グラムだから、48キロになるわね」


「被験者の田中さんは、当初85キロでした。それが半日で70キロまで落ちたのです。これは驚異的なペースですよ。ダンジョン前に構えているメディアたちも、毎回痩せていく田中さんの写真を並べて、その効果を検証しています」


「ここまでは想定どおりよ。問題はここからだわ。冒険者になるには、魔物を殺せなければならない。それも、最初は素手でね。果たして、あの気弱そうな田中さんが、それができるかしら?」


「江副さんは計画的に考える人ですし、宍戸さんは格闘技のエキスパートです。お二人に任せれば、大丈夫でしょう」


 報告に頷き、画面を閉じた。




「さて、今日からいよいよ、睦夫にも魔物と戦ってもらう。それに先立ち、これを身に付けてもらう」


 江副氏が用意したのは、メリケンサックだった。トゲトゲなどはついておらず、プレーンなヤツだった。でも、ダンジョン内に武器は持ち込めないのではなかったのか。


「メリケンサックは攻防一体の防具だ。これを指に填めてテーピングする。あくまでも指を護るためだ。大丈夫、有効なのは検証済みだ」


 江副氏に言われて、僕はメリケンサックを指に填めた。そしてテーピングを巻き付けていく。上手くいかないので、宍戸氏がやってくれた。テーピングの練習もしないと……


「うっ……うぅっ」


 僕は人なんて殴ったことがない。あんな愛くるしい顔のウサギさんを殴るなんて…… そう思っていたら、江副氏がウサギを横から軽く足蹴にした。その瞬間、ウサギさんが夜叉のような顔に変わる。そうして僕は前に押し出された。


「倒さないと死ぬぞ。ここが境界線だ。冒険者になりたいのなら、橋を渡れ」


 ウサギが凄い表情で迫ってくる。僕は顔を背けながら、拳を前に突き出した。何かが当たった気がする。見るとウサギが床に落ち、そして煙になっていた。


「まだ第一歩だな。渡り切っていない。次だ。次は目を逸らさず、まっすぐ見据えて殺せ。倒すんじゃない。やっつけるんじゃない。殺すんだ」


 この2週間、ずっと泰然として温和だった江副氏が、厳しい表情を浮かべている。僕は涙目になりながらも、近寄ってくるウサギと向かいあった。愛らしいつぶらな瞳を向けてくる。でもこれは魔物だ。魔物なんだ! 僕は飛び掛かってくるタイミングに合わせて、パンチを突き出した。ウサギさんの顔面にめり込み、骨が砕ける感触がした。そうして僕は初めて、この手で生き物を殺した。




「睦夫は優しい奴だな。その優しさは決して間違ってはいない。お前の美点だ。だが全てに対して優しくなる必要はない。自分に襲いかかってくる魔物には容赦するな。『殺すくらいなら殺されよう』なんて精神を持つのなら、ダンジョンに入るな。ここは、人間と魔物の殺し合いの場なんだ」


 震えている睦夫の肩に、俺は手を置いた。こういう素朴で純粋な奴は嫌いじゃない。だが今は、ダンジョンが出現した異常世界だ。こういう奴らを護るためにも、ダンジョンを討伐できる戦士がどうしても必要だ。俺がダンジョンを起動させた。ならば俺の手で、ダンジョンを終わらせる。そのためならば、鬼にでもなろう。


「お前はいま、橋を渡った。一度渡ったら、もう戻れない橋をだ。これが『冒険者稼業』だ。振り返るな。振り返れば辛いだけだぞ」


「う、うん……僕、冒険者になったんだね」


「あぁ。お前は確かに、冒険者だ」


 睦夫は震えながらも次の一歩を踏み出した。睦夫はそれから、憑き物が落ちたように自然と戦えるようになった。だが時折、殺したウサギに対して瞑目している。これくらいは良いだろう。俺の中にも、罪悪感はあるのだから。




〈今は日曜日の、午前10時過ぎです。予定ではそろそろ、ダンジョン・ブートキャンプが終わるはずです。あっ、いまダンジョンの入り口に変化がありました。江副さん、宍戸さん、そして田中さんと自衛隊のカメラマンが出てきます。田中さんが手を振りました。元気そうです〉


〈ブートキャンプ開始時が、前日の午前11時、そして終了したのが翌日の午前10時過ぎ。およそ丸1日といったところですね。それでは、田中さんの驚きの変化を見てみましょう〉


〈ブートキャンプ前の田中さんは、身長172センチ、体重85キロ、体脂肪率29%と、かなり太めの方でした。そして、ブートキャンプ終了後の数字は驚くべきものです。身長こそ変わっていませんが、体重は20キロ減の65キロ、そして体脂肪率は8%にまで落ちています。まるで別人のようです〉


〈驚くべき効果は他にもあります。田中さんはかなりの近眼で、メガネを掛けていましたが、2週間目あたりからメガネを掛けなくなりました。自衛隊で調べた結果、両眼とも視力が回復しており、メガネは必要ないとのことです。視力が自然と回復するなど、まず考えられません。これが、ダンジョンが生み出す『強化因子』の効果なのでしょうか〉


 ボーッとテレビを眺めている。終わってみるとあっという間の1ヶ月だった。地上では僅か1日しか経っていない。なんとも不思議な気分だ。テレビでは医学者が、恥ずかしい体型をしていた頃の僕と、いまの僕の体型を比較している。


〈突き出ていたお腹はスッキリして、6つに割れています。胸筋、上腕二頭筋、大腿二頭筋なども発達し、全体的に相当な筋力アップが成されていますね。筋肉が増強するということは、それだけ基礎代謝が高まるということでもあり、言い換えれば「太り難い身体」になったと言えます。特にこの、背筋の発達が良いですね。鍛え上げたボクサーの身体のようです〉


そう。僕は確かに痩せた。身体は別人のように軽い。タプタプしていた顎もスッキリし、頬肉も落ちて全身が若返ったようだ。でも、だからこそ僕は気づいてしまった。若返って、僕は何をしたいんだろう?


「冒険者に……なるかな」


 冒険者という選択肢は確かにあるだろう。元々、江副氏に憧れて今回のブートキャンプに申し込んだのだ。魔物もたくさん倒したし、今なら冒険者になれる気がする。でも僕は、本当にそれで良いんだろうか。冒険者をやってお金を得て、それで僕は満足なのだろうか。


「浮かない顔だな」


 いつの間にか、江副氏が前に座っていた。一枚の紙を僕に差し出す。


「最後の2週間は、三人で狩りを続けた。その結果、1日あたり50キロの魔石を手に入れた。2週間で700キロ、7千万円だ。それをキッチリ3等分してある。お前の取り分は2千333万円とカード166枚だ。残り1万円は、こちらの経費として認めてほしい」


「え……でも僕は」


「2週間前、お前は冒険者になった。だったら報酬をちゃんと受け取るべきだ。これだけのカネがあれば、冒険者にならなくても、新しい生き方もできるだろう。カードはガチャに使うなり売るなり、好きにすればいい」


 そう言って立ち上がる。僕は思わず止めた。


「え、江副氏。僕は、これからどう生きれば良いんだろう。冒険者をやるべきか、迷ってるんだ」


 すると江副氏はこう問い返してきた。


「睦夫、お前は生まれ変わった。そう思えるほどに外見は見違えた。だが、まだお前に欠けているものがある。こればかりはブートキャンプでも身に付けさせることはできない。お前自身の問題だからだ」


「そ、それはなに?」


「『(こころざし)』だよ。お前は、何に命を使うか、何に情熱を傾けるか。それに迷っているんじゃないか? それはある意味で贅沢な悩みだ。大半の人間は志なんて関係なく、その日を生きるために働いているんだからな。金を得て、外見も見違えたお前だが、その状態では冒険者稼業は長続きしないぞ。お前を含めて、冒険者たちに必要なのは『冒険者たる理由』なんだ」


「冒険者たる理由……」


 すると江副氏は、どこからか2枚の紙を取り出した。1枚は色がついていて、まるで中世の羊皮紙のようにも見える。


「冒険者たる理由が見つからないのなら、俺がその理由を作ってやる。だがそのためには、コレにサインをしてもらわなければならない。宍戸も、コレにサインしている」


 羊皮紙らしき紙には、確かに宍戸氏のサインがある。江副氏は真剣な表情で僕に詰め寄った。


「言っておく。サインしたら、もう後戻りはできない。やっぱり無かったことにしたい、なんてのはナシだ。ダンジョンで渡った橋よりも、もっと深刻な橋を渡ることになる。だが、決して後悔はさせない」


 江副氏の志、それはダンジョンの謎を解き明かし、討伐すること。実際に、どうやって実現するかは解らないけれど、この紙にサインすればきっと、志の全体像が見えるはず。僕はツバを飲み、そしてボールペンを取り出した。


「さ、サインするよ」


 僕は今でも思う。この時、サインしなかったら僕の人生はどうなっていたのだろうか。でも、サインして良かったと心から言える。





 江戸川区にあるAランクダンジョン「深淵」の安全地帯(セーフティゾーン)で、睦夫がポカンとした表情を浮かべている。俺と彰と茉莉、レジェンドカードの朱音とエミリ、そしてミューがいる。


「では改めて。新しく仲間になった田中睦夫さんことムッチーだよ。俺のことはアッキーでいいかんね。で、こっちがマリリン、そっちのグラマーなくノ一が姉御、んで魔法使いのエミリとミューだよ」


「ちょっと、なんで私だけエミリのままなのよ!」


 エミリが頬を膨らませる。ムッチーこと田中睦夫は全身を震わせ、そして笑顔を浮かべていた。


「す、凄いぉ……キャラクターカードにテイム! ホント、異世界ダンジョンだよっ!」


 何かのスイッチが入ったらしい。全員が、椅子や床に思い思いに座る。俺はホワイトボードの前に立ち、これまでの経緯とダンジョン・システムについて説明した。


「つ、つまり世界を救う勇者パーティーってわけだね? 僕はその一員ってことなんだね?」


「まぁ、勇者というか…… ダンジョンを討伐しないと10年後にはかなりヤバイことになる。だから俺は仲間を集めている。今回のダンジョン・ブートキャンプも、本当の狙いは仲間集めのためだ。ダンジョンを社会に受け入れさせ、冒険者予備軍を大量に生み出す。その中から、俺たちの仲間になりそうな人材を探す。最低でも、全世界に散らばるであろうSランクとAランクダンジョン、そしてBランク上位のダンジョンは確実に潰したい。俺が睦夫に声を掛けたのは、冒険者としてはもちろんだが、それ以上に頼みたい仕事があるからだ」


「な、なに?」


「ダンジョン・バスターズのホームページ管理だ」


 そう言って、江副氏はノートパソコンを持ってきた。どこかのIT会社が制作したであろうホームページの原稿が載っている。クリックしながら確認すると、僕は首を傾げた。


「どうだ? 睦夫の意見は?」


「正直、面白くないね。これじゃあ、普通の企業のホームページと変わらないよぉ」


「だよな。だが俺には、どうすれば良いのか分からないんだ。俺も彰も、この手のことは苦手でな。冒険者やダンジョンに興味がある人たちが殺到するような、そんなホームページを作ってほしいんだ。資金は2千万円でどうだ?」


「そんなにいらないよ。そうだなぁ、まず欲しいのは、カード閲覧機能かな。キャラクターカードはさすがにヤバそうだけど、レアカード以下なら出しても良いと思うよ。あとダンジョン攻略方法や、動画も定期的にアップしたい。江副氏が良ければ、同人仲間集めて引き受けるよぉ」


「即採用だ。睦夫に全て任せる。資金が足りなければ言え。幾らでも出す。どうだ。週2日はダンジョンに入り、3日はホームページなどの広報担当になる。こんな働き方なら、お前も満足できないか?」


「面白そうだ。世界を救うためには、勇者パーティーをたくさん作らなきゃいけない。そのための仲間集め担当ってことだよね? やるやる。僕、頑張るよ」


「現在、俺たちの拠点となる本社を建てているところだ。このAランクダンジョンの真上だな。来年の四月には完成する。設計図を後で見せよう。広報部の広さなんかも考えないとな。それまでは今のアパートで暮らしてもらうことになるが……」


「別にいいよ。いきなり引越しと言われても困るよ。ワクドキメモリアルの涼ちゃんのフィギュアも完成していないし」


 見た目は20代後半から30歳くらいなのに、口調も趣味も全く変わっていない。だからだろうか。茉莉とエミリは完全に引いていた。だが俺は気にしない。ガリレオもニュートンもアインシュタインも、ダーウィンもエジソンもライト兄弟も、世界を変えた天才は常に「オタク」だったからだ。





〈やぁ、みんな! 僕は、ダンジョン冒険者の宍戸彰だよ! 今日は、いま世界中から注目されている画期的なエクササイズ『ダンジョン・ブートキャンプ』を紹介するよ!〉


 陸上自衛隊横浜ダンジョン施設団と合作で作成した動画を見ている。宍戸がキラリッと白い歯を見せている。うん、一昔前に「最強の50歳」とか言われていた人みたいだね。


〈ダンジョン・ブートキャンプの最大の特徴、それは「超々即効性」だ。何しろ、地上時間でたった1日、たった1日で十数キロという劇的なダイエット効果を得られる。翌日には知り合いから「お前、誰?」なんて言われるだろうね。それくらい効果的なんだ〉


「これ、嘘じゃない? ダンジョン時間なら1ヶ月でしょ? ダイエットコースでも2週間のはずだわ」


「嘘じゃないですよ。地上時間(・・・・)でたった1日と言ってるじゃないですか。ダンジョン時間で1ヶ月と言ってないだけで、嘘じゃない」


「……なんだか、貴方が詐欺師に見えてきたわ」


 石原局長が呆れ顔で首を振る。中央官庁の局長級となれば、簡単には会えないポジションのはずだが、札幌、仙台、大阪のダンジョンは取り囲んで封鎖しているだけなので、稼働しているダンジョンは、この横浜ダンジョンだけだ。要するに、暇なのだろう。


 睦夫を被験者にした「ダンジョン・ブートキャンプ」の様子はテレビでも報道され、大反響を呼んだ。俺は「24時間冒険者促成コース」と「10時間ダイエットコース」の2種類を設けるべきだと提案し、採用された。さすがに100歳の老人は入れられないが、18歳~60歳まで幅広く受け入れる。ただし、ダイエットコースの続きである冒険者促成コースは万一を考え、18歳以上50歳未満とした。

 画面では彰が爽やかな笑顔を浮かべて、ブートキャンプの紹介を続けている。


〈個人差はあるけど、ダンジョン時間で2週間、地上時間だと僅か10時間! それで、10キロから15キロのダイエットが見込める。このブートキャンプは毎週火曜日、木曜日、土曜日に開催予定だ! 健康診断前や結婚式前、あるいは久々の同窓会の前なんかに、参加してみないかい? 君の入隊を待ってるよ! (キラーン)〉


コミック版「ダンジョン・バスターズ 第4巻」がもうすぐ発売されます。特典SSなども付いています。ぜひお手に取ってください。


《書籍版》

挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)


《コミック版》

挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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ダイエットブートキャンプは民間のダイエット関連サービス業からクレームが来ないのかな?お上が民間の邪魔するなって。 であれば申込み窓口を民間サービスに任せた方が、自衛隊の申込み受付業務削減にも繋がり、…
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